「寝たきり老人」と/のリハビリテーション
-特に1990年以降について
2009年6月6日(土)
第7回福祉社会学会
テーマセッション<老いをめぐる政策と歴史--その変容>
於:日本福祉大学名古屋キャンパス
立命館大学大学院
田島明子・各務勝博
立命館大学ポストドクトラルフェロー
北村健太郎
問いの原点
維持期・慢性期のリハビリテーションは、
急性期・回復期リハビリテーションに比
べ、質・量ともに十全ではない、それは
なぜか
本研究の目的
特に1990年以降における高齢期(特に「寝たき
り老人」)に対するリハビリテーションの諸様相を
1.制度・政策
2.リハビリテーションの医療経済
3.リハビリテーションにおける言説
の3つの視点とその連関から整理し、当事者か
らの批判的論点を押さえつつ評価を行い、今後
の方向性について規範的主張を行うこと
1.1990年以降の高齢期の制度・施策
調査の対象・方法
1) 「白書等データベースシステム」
<http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wp/index.htm>
から、キーワードを「寝たきり(老人)」として簡易検索
→112件ヒット
2) さらに条件設定をして絞込み
・高齢に関する内容であること
・1990年以降であること
→67件(調査対象)
表1:各年版における調査対象件数
基礎データ:
<http://www5.ocn.ne.jp/~tjmkk/hakusyo-netakiri1990ikou.htm>
まとめ (図1)
 (寝たきり)予防
→「骨粗鬆症」「廃用性症候群」など具体的疾病名称に変容
「転倒」予防など、具体的対策検討に移行
「予防重視型システム」
 サービス基盤の整備
→市区町村レベルの「予防的取り組み」「地域の介護施設整備」の促進

介護保険制度、後期高齢者医療制度の創設
2.1990年以降の
リハビリテーションの医療経済
2006年の診療報酬改定:
急性期・回復期リハビリテーションの回数制限が従来の1
日最大6単位(2時間)から最大9単位(3時間)に引き上
げリハビリテーションの算定日数制限を超える慢性期・維
持期の患者に対する自費でのリハビリテーションの実施が
禁止
→公私混合医療化は消滅
 4種類の疾患群別に日数制限の上限が導入
 慢性期医療については、リハビリテーション医療を含めて
大幅に切り捨てられるか、介護保険給付へ移行

介護報酬改定:


施設サービス(入所)、居宅サービス(通所・訪問):「短期
集中リハ」を設定
予防重視型システムへの転換として予防給付の見直しと
地域支援事業が創設
2007年の診療報酬改定:

算定日数上限の除外対象患者の範囲が拡大されるとと
もに、「リハビリテーション医学管理料」の新設により、医
療保険でも維持期リハビリテーションが実施できるよう
に
2008年診療報酬改定


地域移行支援・地域療養支援に重点
介護保険・自立支援法領域との連携を視野に入れた取
り組みを求める
まとめ

医療費財政から、リハビリテーションの「医療」の範疇
が定まってきている
急性期・回復期:医療保険
維持期・慢性期:介護保険
発症からの日数、回復・改善の可能性


医療から介護保険制度下におけるリハサービスへの円
滑な「移行」に力点がシフト
予防重視型システムへの転換
3.リハビリテーションにおける言説
1970、1980年代


田島明子・坂下正幸・伊藤実知子・野崎泰伸
2008/06/08 「1980年代のリハビリテーション雑誌のな
かの「寝たきり老人」言説」福祉社会学会第6回大会
於:上智大学(口頭発表)
http://www.arsvi.com/2000/0806ta.htm
田島明子・坂下正幸・伊藤 実知子・野崎 泰伸
20070916-17 「1970年代のリハビリテーション雑誌の
なかの「寝たきり老人」言説」 障害学会第4回大会
於:立命館大学(ポスター報告)
http://www.arsvi.com/2000/0709ta2.htm
調査の目的
1.
2.
1990年以降の「老い」をめぐるリハビリテーショ
ンにおける言説を把握すること
1990年以降の「寝たきり(老人)」についての言
説を把握すること
対象文献

1990年~2005年までの『総合リハビリテーショ
ン』誌から、タイトルに「老い」に関連する「老人」
「高齢」「痴呆・認知症」などのキーワードのあるも
の
→全部で155文献
各年代の文献数(表2)
155文献の著者名・タイトル・巻号頁数
<http://www5.ocn.ne.jp/~tjmkk/netakiririha-seizongaku2008-taisyoubunken.htm>
分析方法

基礎データ化
「寝たきり(老人)」についての記述、文献の概要・結論、新
たな知見が含まれている箇所を抜粋
<http://www5.ocn.ne.jp/~tjmkk/netakiririha-seizongaku2008-kisodeta.htm>
調査目的1
155文献にデータ番号を付し、内容の類似性でグルーピン
グ
 調査目的2
155文献中、「寝たきり(老人)」の記述のあった42文献を対
象とし、データ番号を付し、内容の類似性でグルーピング

結果1-「老い」をめぐるリハビリテーション言説

1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
14グループが生成
加齢による身体変化の特徴
加齢に特有の疾患やそれに伴う身体変化の特徴、リハビリテーション治療の
ポイント
移動能力・下肢能力・転倒
日常生活能力・生活体力
高齢者の心理と生活適応に向けたアプローチ法
社会参加
抗加齢医学(アンチエイジzング)・予防
早期リハビリテーションの効果
評価法
(認知高齢者に対する)在宅ケア・介護家族への支援の方策
老人保健施設の目的・現況・問題点
特別養護老人ホームのサービス提供のあり方を検討
認知症に関わる諸文献
高齢者の実態把握や法制度・政策の動向とその批判
結果2-「寝たきり(老人)」についての言説
8グループが生成
【「寝たきり」の原因と予防】

1 「寝たきり」の原因
2 認知症と「寝たきり」の相互関係
3 「寝たきり」を予防するためには
【「寝たきり老人」に対するリハビリテーション・ケア】
4 「寝たきり老人」のリハビリテーション・ケア
【地域・在宅での「寝たきり老人」とその家族へのサービス】
5 「寝たきり」高齢者の介護者ストレス
6 地域の「寝たきり」の実態とサービス展開
【高齢者問題としての「寝たきり」とその実態】
7 高齢社会問題としての「寝たきり」
8 「寝たきり老人」の生存期間
『高齢者リハビリテーションのあるべき方向』



2003年7月、高齢者介護研究会(座長:掘田力)の後を
受けて厚生労働省老健局に設置された高齢者リハビリ
テーション研究会(座長:上田敏)において示されたもの
2006年の診療報酬、介護報酬改定に大きな影響を与
えただけでなく、今後の高齢者リハビリテーションのあり
方を大きく方向づけた
<http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s03313.html#mokuji >にて全文を閲覧可
考察
-「老い」をめぐる言説のなかの
「寝たきり(老人)」についての言説の位置

「寝たきり(老人)」という用語の使用は1990年以降
減少
1970年代-33文献中17文献(52%)
1980年代-79文献中42文献(53%)
1990年以降-155文献中42文献(27%)

「寝たきり」の状態を呈した人に対するリハビリテー
ション・ケアについての言説は少数
全体考察
1)1990年以降の高齢期(特に「寝たきり老人」)リ
ハビリテーションの諸様相
2)当事者である人たちからの批判
3)1990年以降の諸様相についての評価と今後の
方向性についての規範的主張
1)1990年以降の高齢期(特に「寝たきり老人」)
リハビリテーションの諸様相

1.
2.
3.
4.
5.
特徴となるポイント
「寝たきり(老人)」をキーワードとした予防施策の推進
主に財源的根拠を背景としたリハにおける「医療」の
範囲の確定
医療から介護保険サービス・地域生活へのスムーズ
な「移行」へ重点がシフト
「寝たきり(老人)」をめぐるリハビリテーション言説は、
これまで「寝たきり(老人)」という一元的な状態像とし
て集約されてきた言葉が、原因究明と予防的観点から、
さらに細分化・具体化した多様な言説に変容
「寝たきり」の状態を呈した人に対するリハビリテーショ
ン・ケアについての言説はごく少数
2)当事者の人たちからの批判


多田富雄らの闘い
鶴見和子
リハの対象
リハ医療の範疇
生存・生命を守る
維持期リハも
歴とした医療
「生存・生命を守る」リハとは
例えば、「寝たきり」という身体能力や状態像を対
象から排除するものではなく、生存・生命を水準
とした老い衰えゆくあらゆる身体を包摂するリハ
ビリテーション ではないか
3)1990年以降の諸様相についての評価と
今後の方向性についての規範的主張

1.
2.
3.
1)の特徴となるポイントを
リハビリテーションの「寝たきり(老人)」の予防言
説について
リハビリテーションの「医療」の範疇化について
医療から介護保険サービス・地域生活への「移
行」支援について
の3点に整理・集約し、2)の当事者の論点から評価を行い、規
範的主張を行う
1.リハビリテーションの「寝たきり(老人)」の
予防言説について
まず確認しておきたいこと
・ごく最近の方向性として、機能を維持するリハの
重要性が強調された

cf.『高齢者リハビリテーションのあるべき方向』(2004年)
・多田富雄らの批判は2006年で、その批判は、まさに
維持期・慢性期リハの実情を示すものであった
・その維持期・慢性期リハは、昨今増加している軽度
の要介護者を対象、「寝たきり」の状態にあるような
重度の高齢障害者は対象ではない
?
存在価値
能力価値
2.リハビリテーションの「医療」の範疇化について
医療費財政からリハビリテーションにおける「医療」
の範疇が定まってきている
 急性期・回復期を「医療」圏内に、維持期・慢性期を
「医療」圏外である介護保険サービス下に
 「医療」の範疇は確定的なものでもなく、時代の様々
な力学により変動する可能性を内在している
→・正当性・妥当性を持っている!
・時代の生存・生命を守るあり様に応じて「医療」の
内実が変容すべき!

3.医療から介護保険サービス・地域生活
への「移行」支援について

関連団体や最近の動向
・登壇者の所属する作業療法士の職能団体である日本作業療法士協会
の動向
・地域連携クリティカル・パス
↓
量的拡大が目指されている が
(今後、維持期・慢性期リハに人材は向かい、多くの高齢期にある人たち
が、身近にリハを受けやすくなる基盤は整備されていくだろう)
⇔多田富雄、鶴見和子らの重要な論点は含まれていない
●「(リハビリテーションの理論に)能力主義的な障害観(感)に対抗し、その
人が感受する障害(身体)世界を肯定できる明確な基準線がリハビリ
テーションの理論にはない」(田島[2008:459])
●お二人の主張は、存在価値が能力価値に揺らぐことのない基準線を迫っ
ているのではないか、存在の肯定が基盤となるリハビリテーションを求め
ているのではないか
田島明子 2008 「障害受容再考-障害受容をめぐる問い・11 『障害受容』から「障害との自由」へ・1-「できないこ
と」の表象」『地域リハビリテーション』3-5:457-459.
まとめ-1990年代、2000年代とは
維持期・慢性期リハビリテーションが


予防・地域移行の有力な手段
医療費抑制をベースとして介護保険とリハビリテ
ーションを接合
としての位置取りを付与され、そのように語られる
ようになった時代といえる
作業療法5カ年戦略




日本作業療法士協会が、2008年6月19日付で策定
「昨今のめまぐるしく変化する医療保険制度改革、介護
保険制度改革、並びに作業療法の対象となる領域の拡
大等に迅速に対応するべく」策定された
「地域生活移行」という国の施策の方向性に対して協会
として、積極的に取り組む姿勢をアピールするもの
「地域生活移行支援の推進~作業療法5(GO)5(GO)
計画~」






介護老人保健施設においても、訪問リハビリテーション
においても、その配置基準は維持期リハビリテーション
を担うには極めて薄い基準が取られている。そこで、
2009年度の改定に向け、人員配置の引き上げ、報酬
単価の引き上げ、訪問リハステーション創設の要望を
行っている。
市町村事業である地域支援事業への参画
介護老人福祉施設、介護療養型老人保健施設、在宅
での終末期に関わる作業療法の実践の蓄積
地域包括支援センターにおける配置要望
通所・訪問サービスにおける予防給付対象者へのアプ
ローチ
認知症高齢者、ご家族を含めた支援
地域連携クリティカル・パス





2008年の診療報酬改定で、地域移行支援・地域療養支
援、介護保険サービスとの連携の重要性が強調
クリティカル・パスとは・・・
急性期・回復期・維持期の連携強化
情報交換のツールを協議→全体的視野でサービスの質
を評価できるシステムづくり
サービスの質の安定化
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