医療法人と出資持分(その1)
医療事業部より
平成 26 年 12 月
医療法人と出資持分について
平成 19 年に施行された第五次医療法改正において、医療法人の非営利性を徹底し、医業を
安定的に継続させる観点から、出資持分のある医療法人の新設ができなくなりました。
この背景には、以下のような問題点があったためです。
1.出資持分に対する相続税課税の問題
医療法人は剰余金の配当ができないことから、剰余金が多額となるケースがあります。多
くの場合、創業者である理事長が医療法人の出資持分の大半を所有しており、その相続の
際に、後継者は多額の相続税を支払うこととなります。そのため、承継を危うくさせてし
まう可能性があります。
2.出資持分の払戻請求権を行使した場合の金銭的負担の問題
出資持分を持つ社員は退社に伴い、その出資持分についての払戻しを請求する事が出来ま
す。出資額に応じた払戻しとなりますから、内部留保が多くなればなるほど、払い戻す金
額が多くなります。この出資持分の払戻しが、医療法人経営を圧迫します。
3.医療法人の非営利性に対する問題
モデル定款と同旨の定款を定めている医療法人の場合、解散時の残余財産は、各出資者に
その出資額に応じて分配されます。この解散時の残余財産の分配や上記2のケースのよう
に退社時の出資持分払戻しは、本来、剰余金の配当ができない医療法人の実質的な剰余金
の配当にあたるとの指摘がされています。
このようなことから、経過措置型医療法人(既存の出資持分のある医療法人)が、非営利
性の徹底と医療法人の継続を両立させるための方法として、出資持分のない医療法人への
移行を検討すること、もしくは出資持分のある医療法人のまま存続することによる長所、
短所を見直すことは、必要な経営課題と考えられます。
法人の定款や運営の現況、後継者の有無、移行に伴う時間、コストなどを勘案して、総合
的な判断が重要となります。
なお、持分なし医療法人への移行を検討する医療法人は、平成 26 年 10 月 1 日から平成 29
年 9 月 30 日の間の3年間に移行計画を厚生労働省へ申請し認定を受け、一定の要件を満た
せば、相続税の納税猶予が受けられる措置が準備されています。
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出資持分のない医療法人の移行モデル
特定医療法人へ
出
社会医療法人へ
資
持
分
の
出資持分のない
医療法人へ移行
めのない医療法人へ
あ
一定の要件を満たす必要あり
都道府県知事の認定を受けたもの
認定要件を満たす必要あり
①贈与税を払って出資持分のない医療法人へ移行
②一定要件を満たし、贈与税課税なく
出資持分のない医療法人へ移行
る
基金制度を採用 した
社
医療法人へ
団
出資持分のない
医
医療法人との合併
療
法
人
一般の出資持分の定
租税特別措置法第67条の2第1項に規定する特定の医療法人
出資持分のある
医療法人のまま
現状のまま
出資額限度法人へ
資金的な準備が必要
請求権の行使に関しての準備等が必要
定款変更及び
みなし贈与課税を受けないための一定要件あり
上記は、出資持分のある医療法人が、出資持分のない医療法人へ移行する方法、もしくは
出資持分のある医療法人のままとした場合の移行モデルです。
それぞれの概要は以下の通りです。
出資持分のある医療法人のまま
出資持分のある医療法人のままとする場合には、出資社員が死亡した場合に、相続人に対
する相続税負担が大きくなること、社員の退社等の払戻請求権の行使による医療法人の金
銭的負担が大きくなることが短所として考えられます。また、経過措置型とあるように経
営の基盤である組織形態が将来的に変わる可能性があります。
一方、限られた近親の出資者のみで構成されている場合などは、経営の意思決定が早いこ
とや、払戻請求権の問題は生じない可能性が高いなどの長所が考えられます。
出資額限度法人への移行
出資額限度法人とは、出資持分のある医療法人であって、出資持分の払い戻しや解散に伴
う残余財産の分配の範囲について払い込み出資額を限度とする旨を定款で定めている法人
を言います。
相続により出資額を限度として払い戻した場合には、他の残存出資者又は医療法人に対す
る、みなし贈与となるケースがあります。課税を受けないためには、
「みなし贈与課税を受
けないための要件」を満たす必要があります。小規模な医療法人では、出資割合、役員数
の要件を満たさないケースが想定されます。
①出資者の 3 人及びその者と親族等特殊関係を有する出資者の出資金の合計額が出資総額
の 50%以下であること。
②社員の 3 人及びその者と親族等特殊関係を有する社員の数が、総社員数の 50%以下であ
ること。
③役員のそれぞれに占める親族等特殊関係がある者の割合が 3 分の 1 以下であることが定
款で定められていること。
④社員、役員又はこれらの親族等に対し特別な利益を与えると認められるものでないこと。
特別な利益とは、以下のような状況をいいます。
・理事等だけが利用する社宅あるいは理事長等への土地・建物等の貸し付けがある
・理事等に対し、個人的な貸付金がある
・医療法人が所有する資産を、理事等に無償または著しく低い価格で譲り渡している
一般の出資持分の定めのない医療法人への移行
一般の出資持分のない医療法人へ移行する場合には、以下のケースが考えられます。
①贈与税を払って出資持分のない医療法人へ移行する場合
出資持分の放棄をすることにより、出資者から医療法人への贈与という問題が生じます。
法人では贈与税を支払って、出資持分のない医療法人へ移行することができます。
贈与税の負担が生じることが短所といえます。
②贈与税課税なく移行する場合
出資持分の放棄をした場合でも、一定の要件を満たすと贈与税の課税なく、出資持分の
ない医療法人へ移行することができます。小規模の医療法人では、役員等の総数について
要件を満たさないケースが想定されます。
・相続税又は贈与税の負担が不当に減少されない
・医療法人の運営組織が適正であること
・同族親族等関係者が役員等の総数の3分の1以下であること
・医療法人関係者に対する特別利益供与が禁止されていること
・残余財産の帰属先が国、地方公共団体、公益法人等に限定されていること
・法令違反等の事実がないこと
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6 ―『医療法人と出資持分~その1~』