はじめに
現在、明治大学文学部英米文学専攻には、英語学を担当する専任教員が 3 名います。これに、10 名の兼
任講師(学部・大学院)を加えた総勢 13 名によって、英語学の教育を行っています。決して大きな所帯ではあり
ませんが、2004 年度よりカリキュラムを大幅に見直し、英語学の段階的・系統的な質の高い教育を提供し、みな
さんが英語学の基礎的事項からより専門的な内容まで一歩一歩確実に身に付けることができるよう、スタッフ間
で綿密に連携をとりながら進めています。このような段階的・系統的カリキュラムは、欧米の主要な大学では以前
から広く行われていますが、日本で採用している大学は未だにあまり多くなく、その点、明治大学文学部では充
実した英語学の教育が受けられるものと自負しております。
各学期開始の際に、各教員から、それぞれの専門分野に関して参考文献などの指示がなされると思いますが、
それらを 1 冊の案内としてまとめて提供できれば、これからの勉強の指針となるであろうと考えできあがったのが、
このリーディングリストです。明治大学文学部では、卒業論文が必修となっていますが、みなさんは、各自の興
味にうまく合致した演習・卒業論文指導を選び、多少なりとも専門的な勉強を行い、自分なりの成果を提出する
必要があります。そのためにも、このリーディングリストを最大限に活用していただきたいと思います。
本冊子では、各分野について、入門・中級・上級の3レベルに分けて紹介しています。各レベルの基準は以下
の通りです:
[入門]
当該分野の授業を履修する前であって、特に背景知識を持っていない段階でも独力で読むことができ
るもの。
[中級]
当該分野の授業でテキスト・参考書として使用しているもの、及びそれと同等レベルのもの。
[上級]
当該分野の授業を履修した後で、さらに専門的な内容を深めたいと思うときに読むことを薦めるもの。
英語学の分野は日進月歩の状態であり、さらに優れた概説書・研究書が次々に出版される状況にあります。
そのような新しい成果を取り入れるべく、このリーディングリストも改訂を重ねていきたいと考えています。
2007 年 4 月
明治大学文学部文学科英米文学専攻
英語学セクション
1
概 説
[入門]
Bauer, L. and P. Trudgill (1999)
Language Myths, Penguin.
(バウワー・トラッドギル(著) 町田健・水嶋いづみ(訳) (2003) 『言語学的にいえば…—ことばにまつわる「常
識」をくつがえす』 研究社)
言語をめぐるさまざまな疑問を解決するため、言語学者たちの見解を集めた本。「ある言語は別の言語に比
べて難しい」、「もはや子どもたちはちゃんと話したり書いたりできない」、「イタリア語は美しく、ドイツ語は醜い」な
ど、言語をめぐる「神話」や「常識」をいくつか取り上げ、真実はそれほど単純ではないこと、そしてそのような間
違った見解が広がってしまった理由について、言語学者たちが解説している。翻訳もあるが、原著もやさしい英
語で書いてあり、とても読みやすい。
Trask, R. (1999) Language: The Basics (Second Edition), Routledge.
人間の言語の特徴から始まり、文法および意味、さらには、言語の多様性と変化、言語と精神、脳との関係、
第 1 言語の習得、言語に対する姿勢など、人間の言語とはどのようなものかということに関しての概説書。いたっ
て簡潔かつ明快に書かれているのでとても読みやすい。
[中級]
Tserdanelis, G. and P. Wong (editors) (2004) Language Files: Materials for an Introduction to
Language and Linguistics (Ninth Edition), Ohio State University Press.
(オハイオ州立大学言語学科(編) 筧寿雄・嶋村誠・西光義弘(訳) (2000)
論』
『ランゲージ・ファイル-英語学概
研究社)
英語学の各分野がそれぞれ短い項目を伴ったファイルに分かれていて、簡潔にまとめられている。重要な用
語は太字で示され、巻末にはそれらをまとめた用語集も付いている。各項目ごとに練習問題もあり、その多くが
英語に限定せずに多様や言語を検証できるようになっていて、言語分析の方法が身に付くようになっている。
影山太郎・日比谷潤子・ブレント デ・シェン (2003) First Steps in English Linguistics 『英語言語学の
第一歩』 くろしお出版
英語学・言語学がまったく初めての人にも分かりやすく、英語学・言語学の全体像を紹介する入門書。統語
論、意味論、形態論、音声学・音韻論、語用論のほか、英語史、社会言語学、心理言語学の全領域をカバーし
ている上に、やさしい英語で書かれいるので読みやすい。練習問題も充実していて、幾つかの Exercises では、
インターネットのコーパスを使って用例集めの練習をするものもある。本文および関連事項を録音した CD も付
いていて、耳からも理解が深められるようになっている。
Crystal, D. (1997) The Cambridge Encyclopedia of Language, Cambridge University Press.
言語に関わる諸分野を網羅的に扱っている事典。音声・形態・統語・ 意味から、文字体系、社会方言、言語
獲得、コーパス言語学、脳科学まで、多数のカラー写真・図表・統計などを用いて、わかりやすく説明されてい
る。
2
音 声 学 ・ 音 韻 論
[入門]
英語音声学研究会編 (2003) 『大人の英語発音講座』NHK 生活人新書
専門用語を使わずに分かりやすく説明してある入門書で、実用的な面でも役に立つが、英語の音声について
の考え方の基本を身につけることもできるように配慮されている。
竹林・渡邊・清水・斎藤共著 (1991) 『初級英語音声学』 大修館書店
アメリカ英語の発音を、母音・子音、アクセント、イントネーションと、体系的に分かりやすく解説してある。練習問
題多数。別売りのテープあり。2年次選択科目「音声学 A・B」の教科書に使用。
斎藤純男著 (1997) 『日本語音声学入門』 三省堂
日本語を中心とした一般音声学の入門書。 外国語の音声について学ぶためには、まず無意識に発音してい
る自分の母語の音声について客観的になる必要があるので、読んでおいて欲しい。
[中級]
竹林滋・斎藤弘子著 (1998) 『改訂新版・英語音声学入門』 大修館書店
アメリカ英語およびイギリス英語の発音を母音・子音、アクセント、イントネーションと、体系的に分かりやすく解説
してある。上記『初級英語音声学』の上級版で、より精密な音声表記法が用いられており、英米の音体系を比較
対照しつつ把握することができる。練習問題、聞き取りテスト多数。別売りのテープあり。
Carr, P. (1999) English Phonetics and Phonology , Oxford: Blackwell.
イギリスの大学生用の音声学の教科書。音声学の基本部分は最小限に抑えて音韻論に重点が置かれており、
音韻論への導入部分は特に充実している。また、RP・GA・スコットランド・オーストラリアなど英語の種類による
音声的・音韻的変動についての記述も本書の特徴である。各章ごとに練習問題がついて、内容の理解を確認
できるようになっている。
竹林・清水共訳『英語音声学・音韻論入門』 研究社(2002)があり、3・4年次選択科目「英語学研究」の教科
書に使用。
Roach, P. (2000) English Phonetics and Phonology: a practical course, 3rd ed., Cambridge
University Press.
イギリス発音の入門書。とくに、イントネーションが詳しい。CD, テープあり。
島岡丘・三浦弘共訳『英語音声学・音韻論』大修館書店(1996)がある。
3
[上級]
竹林滋著 (1996) 『英語音声学』 研究社
日本語で書かれた英語音声学書としては最も詳しく網羅的。
Wells, J.C. (1982) Accents of English, 3 vols., Cambridge University Press .
英国および米国の英語を中心に、世界各地の英語の発音を詳しく記述したものであるが、第1巻の
Introduction は アクセントの差異に対する基本的な考え方を、社会言語学の知見も交えて説いて
あり、必読。
4
形 態 論
[入門]
Akmajian, A., R. Demers, A. Farmer, and R. Harnish (2001) "Chapter 2: Morphology: The Study of
the Structure of Words," in Linguistics: An Introduction to Language and Communication (Fifth
Edition), MIT Press.
定評のある言語学入門書の形態論の章。英語のデータに基づいて、形態論の基礎的事項を簡潔に論じてい
る。特に、文法関係の変更を伴う派生接辞"-able"についての説明は、簡潔ながらも形態論と統語論との接点が
理解できる様になっている。
O’Grady, W., J. Archibald, and M. Aronoff (2004) “Chapter 5 Syntax: The Analysis of Sentence
Structure,” in Contemporary Linguistics: An Introduction (Fifth Edition), St. Martins.
言語学入門書の定番の形態論の章。形態論の基礎的事項について、具体例とともに手際よく簡潔にまとめら
れている。英語以外の言語についても扱われていて、練習問題も充実しているので、形態論分析の手順を身に
付けるのに適している。
西光義弘(編) (1997) 『日英語対照による英語学概論』の第 2 章「形態論とレキシコン」 くろしお出版
英語と日本語を題材とし、形態論の基礎的事項について、簡潔にまとまっている。統語論との接点を含めた語
形成過程についても比較的詳しく取り上げられている。
[中級]
Katamba, F. and J. Stonham (2006) Morphology (Second Edition), Palgrave Macmillan.
形態論についての背景知識がそれほどなくても、理解できるように書かれた入門書。形態論の基礎的な事項
とともに、音韻論や統語論との接点ついても手際よくまとめられている。練習問題も充実していて、さらに理解を
深めることができるようになっている。
影山太郎 (1999) 『日英語対照による英語学演習シリーズ2 形態論と意味』 くろしお出版
英語と日本語とを比較しながら、「語」の持つ意味的・統語的特性について、豊富な具体例を用いて明快に
述べられている。練習問題も充実しており、形態論の面白さが実感できるような内容となっている。
[上級]
Spencer, A. (2007) Morphological Theory: An Introduction to Word Structure in Generative
Grammar (Second Edition), Blackwell.
形態論への包括的かつ詳細な入門書。生成文法以前の形態論の基礎的事項の説明から始まり、形態論へ
の初期生成文法のアプローチ、そして、より最近の成果へと、形態論の発展の歴史に沿って論じられている。さ
らに、形態論と統語論との接点、複合語、接辞、Bracketing Paradox についても詳しく説明されている。内容・
分量とも十分であり、これ一冊で形態論についてかなりの理解が得られる。
5
統 語 論
[入門]
Fromkin, V., R. Rodman, and N. Hyams (2006) “Chapter 4 Syntax: The Sentence Patterns of
Language,” in Introduction to Language (Eighth Edition), Heinle.
(フロムキン・ロッドマン・ヒアムズ(著) 緒方孝文(監修) (2006) 『フロムキンの言語学(第 7 版)』 トムソンラー
ニング;ビー・エヌ・エヌ新社)
言語学入門書の定番の統語論の章。説明は簡潔かつ明快であり、統語論とは何かについて大局的な理解で
きるようになっている。初版が出版されてから(内容が改訂されつつも)すでに 30 年以上たっているが、正統派
の入門書として現在でもその価値が薄れることはない。
O’Grady, W., J. Archibald, and M. Aronoff (2004) “Chapter 5 Syntax: The Analysis of Sentence
Structure,” in Contemporary Linguistics: An Introduction (Fifth Edition), St. Martins.
こちらも言語学入門書の定番の統語論の章。Fromkin, Rodman, and Hyams (2006)と比べて、最近の成
果が組み込まれ、より広範な現象が扱われている。技術的細部に立ち入った記述もあるが、説明が簡潔な上に
明快なので読みやすい。主題役割や束縛理論について扱っている Chapter 7 "Semantics: The Analysis of
Meaning"の Syntax and Sentence Interpretation の節も一緒に読むことを勧める。練習問題も充実してい
る。
[中級]
Aarts, B. (2001) English Syntax and Argumentation (Second Edition), Palgrave.
統語論の基礎について、形式と機能の違いから始まり主題役割・X バー理論・移動規則まで、豊富なデータ
に基づき丁寧に論じられている。さらに、論証の仕方についても重点が置かれていて、統語分析の方法を身に
付けるのにも適している。現在「統語論 A・B」、「英語学研究 A」のテキストとして使用している。
Carnie, A. (2006) Syntax: A Generative Introduction (Second Edition), Blackwell.
統語論全般について簡潔にまとまっていて、Aarts (2001)では扱われていない、構造上の関係、X バー理論
の文および名詞句への適用、束縛理論、移動規則への制約などについての説明もある。本文中で扱われてい
るのは殆どが英語であるが、練習問題では英語以外の言語も多く扱われていて、比較統語論への入門にもなる。
現在、「英語学研究 B」でテキストとして使用している。
柴谷方良・影山太郎・田守育啓 (1982) 『言語の構造 意味統語篇 - 理論と分析』 の第 2 部「統語論」 くろ
しお出版
英語のみではなく様々な言語の分析を通して言語理論を包括的に論じた言語学入門書の意味統語篇。日本
語で書かれた入門書は知識偏重となる傾向があるが、それに対して本書は、本文および練習問題を通じて、実
際の言語データから読者自らが分析するような構成となっていて、知識としてではなく言語学の分析方法が身
に付くようになっている点、日本語で書かれた入門書の中では秀逸である。
6
[上級]
Haegeman, L. (1994) Introduction to Government and Binding Theory (Second Edition),
Blackwell.
原理・パラメータモデル、特に「統率・束縛理論」への入門書。句構造・格理論・束縛理論・コントロール理論・
移動・論理形式・障壁などの話題に関して、包括的かつ詳細に論じられている。第 2 版では、さらに、相対的最
小条件・機能範疇の章も加えられた。練習問題も含めて、分量・内容ともかなり読み応えがあり、これ一冊で統
語論に関してかなりの理解が得られる。
Radford, A. (2004) Minimalist Syntax: Exploring the Structure of English, Cambridge University
Press.
統語論に関する背景知識がそれほどなくても、ミニマリスト・プログラムが理解できるように書かれた入門書。著
者独特の語り口でのミニマリスト・プログラムに関しての明快な説明に加え、著者自身の考えや提案も示されて
いる。さらに、多くの示唆に富む練習問題やそのヒント・用語説明も含まれていている。分量は多いものの、上記
の Aarts (2001)や Carnie (2006)と比べても決して読むのが難しいということはない。なお、この本には同著者
による縮約版 English Syntax: An Introduction, Cambridge University Press (2004)もある。
中村捷・金子義明・菊池朗 (2001) 『生成文法の新展開』 研究社
原理・パラメータモデルにおける、「統率・束縛理論」からミニマリスト・プログラムまでの手際よくまとまっていて、
日本語で書かれたものの中では、最も包括的な統語論への入門書の一つ。技術的詳細に関する事項も多いが、
いずれも丁寧に説明されているので、時間をかけてじっくり読めば統語論への理解が深めることができる。
7
意 味 論
[入門]
O’Grady, W., J. Archibald, and M. Aronoff
(2004)
“Chapter 7 Semantics: The Analysis of
Meaning,” in Contemporary Linguistics: An Introduction (Fifth Edition), St. Martins.
言語学入門書の定番の意味論の章。意味論の基礎的事項について、具体例とともに手際よく簡潔にまとめら
れている。練習問題も充実しているので、意味論の分析方法を身に付けるのに適している。なお、Syntax and
Sentence Interpretation の節は、統語論の章と一緒に読むと理解しやすい。
Fromkin, V. (editor)
(2001)
“Chapter 7: Semantics I, Chapter 8: Semantics II, Chapter 9:
Semantics III,” in Linguistics: An Introduction to Linguistic Theory, Blackwell.
定評のある言語学入門書の意味論の章。豊富な具体例に基づき、説明を補足する絵や図も適時使われてい
て、形式意味論への簡潔で明快な入門となっている。練習問題も充実している。
西光義弘(編) (1997) 『日英語対照による英語学概論』の第5章「意味論」 くろしお出版
英語と日本語を題材とし、意味論の基礎的事項から始まり、形式意味論、そして認知意味論まで簡潔にまとま
っている。
[中級]
Hurford, J., B. Heasley, and M. Smith
(2006)
Semantics: A Coursebook (Second Edition),
Cambridge University Press.
意味とは何かから始まり、指示と意義および直示について、さらに、形式意味論で必要となる命題論理学・述
語論理学の基礎について、豊富な練習問題を通じて段階的に身に付けることができるように構成されている。
発話行為理論や会話の含意などの語用論についての解説もある。
Saeed, J. (2003) Semantics (Second Edition), Blackwell.
意味論の様々なアプローチを概説した入門書。意味論とは何かから始まり、指示と意義などの語の意味につ
いて、および、真偽値や主題役割などの文の意味についての明快な解説に続き、直示や会話の含意、そして、
発話行為理論などの語用論の分野について詳しく述べられている。さらに、概念構造、語彙意味論、形式意味
論、認知意味論についての簡潔な解説もある。練習問題も充実している。
杉本考司 (1998) 『日英語対照による英語学演習シリーズ8 意味論2 ─認知意味論─』 、『日英語対照に
よる英語学演習シリーズ 5 意味論1 ─形式意味論─』 くろしお出版
意味論の全体像が分かるように、英語と日本語とを比較しながら、文の意味関係・多義性・同義性・前提・語
の意味関係について明快に述べられている上に、形式意味論と認知意味論についての入念な解説がある。
8
[上級]
Heim, I. and A. Kratzer (1998)
Semantics in Generative Grammar, Blackwell.
形式意味論の包括的かつ詳細な入門書。集合や関数についての基本的事項の導入から始まり、真理条件
的意味論についての概説がある。そして、関係節・量化詞・束縛代名詞・省略・照応形などの具体的言語現象
の分析を通じ、形式意味論への理解が段階的に深まるよう構成されている。分量・内容ともかなり読み応えがあ
り、これ一冊で形式意味論の関してかなりの理解が得られる。
9
コ ー パ ス 言 語 学
[初級]
斉藤俊雄他(編)(2005)『英語コーパス言語学 基礎と実践』東京:研究社.
コーパス言語学にかかわる様々な事柄をカバーした非常にすぐれた概説書。やや高度な内容も平易に解説
されている。まずこの一冊。
中尾浩他 (2002)『コーパス言語学の技法〈1〉テキスト処理入門』夏目書房.
テキストを整形して自分用のコーパスを準備するための作業が具体的に解説されている。<1>を読んだら続け
て<2>を読もう。
伊藤 雅光 (2002) 『計量言語学入門』 東京: 大修館書店.
ある作品の特徴を数値的にとらえる計量言語学の入門書。解説は非常に丁寧で自習可。久保田の3年生用
授業の教科書の一つとしても使用。
阿部友計 (2005) 『秀丸エディタ 正規表現&マクロ厳選テクニック』ナツメ社.
エディターで正規表現を使ってテキストファイルの操作を行うための解説書。エディターソフト「秀丸」は実習教
室のコンピュータにインストール済で、久保田の演習、卒論等でも使用。
[中級]
英語で書かれた優れた入門書として次の2冊を推薦する。『英語コーパス言語学 基礎と実践』などの日本語
概説書の次に読む一冊としてよい。
Hunston, S. (2002) Corpora in Applied Linguistics.
Cambridge: CUP.
Partington A. (1998) Patterns and Meanings: Using Corpora for English Language Research and
Teaching. John Benjamins Publishing Co.
[上級]
Nelson G., Wallis S. and B. Aarts (2002) Exploring Natural Language: Working With the British
Component of the International Corpus of English. John Benjamins Pub Co.
ICE-GB という統語解析を施したコーパスの解説書であるが、第9章はコーパスを用いたリサーチ一般におい
て留意すべき点を解説している。大学院に進学したい人には一読を勧める。
10
記 述 文 法
[初級]
Swan, M. (2005) Practical English Usage (3rd). Oxford: Oxford University Press.
次にあげる2冊のような本格的、記述的な文法書ではなく、規範的な実用書だが、英語で書かれた語法、文
法の入門書として1、2年次から読むことができるはず。高校の教員に有用な本でもある。
[中・上級]
Quirk R., Greenbaum S., Leech G., and J. Svartvik (1985) A Comprehensive Grammar of the
English Language. Harlow: Longman.
1万8千円前後と高価だが、本格的な勉強をしたい人、教員志望の人、文法書を一冊だけ買いたい人はこの
本を買っておくべき。分厚さに圧倒されるかもしれないが、小項目構成の本文に詳細な索引がつけられていて
実は大変使いやすい。プロは Quirk et al.と呼ぶ。
Biber D., Johansson S., Leech G, Conrad S, and E. Finegan (1999) Longman Grammar of Spoken
and Written English. Harlow: Longman.
Quirk et al. (1985) のアップデート版であり、記述も平易になっている。英語の姿を収集した資料(コーパス)
から読みとるという姿勢を徹底している点が大きな特徴。Quirk et al. (1985)とペアで使用することを勧める。
11
社 会 言 語 学
[入門]
P. トラッドギル著.土田 滋訳.(1975).『言語と社会』.岩波新書.
英国の代表的な社会言語学者トラッドギルが 1974 年に著した著書の翻訳。社会言語学のすぐれた入門書。
意欲がある方はぜひ原書で読んでください:
Trudgill, P. 1974. (Revised edition 1983). Sociolinguistics – An Introduction to Language and
Society. Penguin Books.
東 照二著.(1997).『社会言語学入門 ─ 生きた言葉のおもしろさにせまる』.研究社.
著者はアメリカのユタ大学で教鞭をとる社会言語学者。すぐれた入門書だが、アメリカの事例の解説が中心
で、英語の例が多用されるので、英語が苦手な人にはやや読みにくいと感じられるかもしれない。
町田 健編.中井 精一著.(2005).『シリーズ・日本語のしくみを探る 7 社会言語学のしくみ』.
研究社.
日本における社会言語学研究は、地域語研究をもとにして、1980 年代から本格的に行われるようになったと
言われている。本書は、そうした日本の社会言語学研究の流れを概説している。日本語の例が豊富に提示され
ており、解説は具体的でわかりやすい。
[中級]
田中春美・田中幸子編著.(1996).『社会言語学への招待 ─ 社会・文化・コミュニケーション』.ミネルヴァ書
房.
社会言語学で扱われる主なテーマをバランスよくカバーしているすぐれた概説書。各章末の練習問題を解く
ことによって理解を深めることができる。また、各章末に参考文献一覧もついているので、とくに興味をもったテ
ーマについてさらに参考文献を探すのに有用。選択科目「社会言語学」のテキストとして使用している。
スザーン・ロメイン著.土田 滋・高橋 留美訳.(1997).『社会のなかの言語 ─ 現代 社会言語学入門』.三省
堂.
著者はハワイやパプア・ニューギニアなどで用いられているピジン・クレオル諸語を中心に研究している言語
学者。社会言語学で扱うテーマのなかでもとりわけ多言語使用の問題、言語変化、言語接触に関する解説がく
わしい。タイトルには「入門」とあるが、内容的にはやや高度なので、入門書を読んだあとに読むことを勧める。
意欲のある方は原書で読んでください。翻訳は初版の訳ですが、原書は第 2 版が刊行されています:
Romaine, S. (2001). Language in Society: An Introduction to Sociolinguistics. 2nd ed. Oxford
University Press.
12
[上級]
中尾 俊夫・日比谷 潤子・服部 範子著.(1997).『社会言語学概論 ─ 日本語と英語の例で学ぶ社会言語
学』.くろしお出版.
社会言語学で扱われるテーマを日本語と英語の例を用いながら解説している。とくに言語変化とそうした変
化を誘発する要因についての解説がくわしい。データ収集と分析、問題点の抽出のし方についても具体例が豊
富で、内容的にやや高度だが、こうした分野での研究方法を知るのに参考になる研究書。巻末の参考書目に
はレベル別の表示があって参考になる。
真田信治編.(2006).『社会言語学の展望』.くろしお出版.
社会言語学は 1960 年代から 70 年代にかけて欧米を中心に発展してきた学問領域だが、本書では日本にお
ける社会言語学研究のこれまでの流れと今後の研究の動向や方向性についてくわしく述べられている。将来的
に、社会言語学の分野での研究を志す人には、今後の研究の展望を知るうえで有用な研究書。
13
心 理 言 語 学
[入門]
大津由紀雄・池内正幸・今西典子・水光雅則(編) (2002) 『言語研究入門・生成文法を学ぶ人のために』
研究社
基礎的知識を前提としない言語研究の入門書。13・14 章で「言語の獲得」が扱われているが、言語獲得研究
と有機的に関連した、言語研究のさまざまな分野が平易に紹介されているので、この章だけでなく本全体の通
読を薦める。
[中級]
Guasti, Maria Teresa. (2002) Language Acquisition: The Growth of Grammar. Cambridge, Mass.:
MIT Press.
英語を中心に、主にヨーロッパの言語の獲得研究が平易に解説されている入門書。これまでの言語獲得研
究の大まかな流れを把握するのに便利である。
杉崎鉱司 (2006) 「言語獲得」大津由紀雄・波多野誼余夫・三宅なほみ(編著) 『認知科学への招待2』
研究社
言語獲得の論理的問題と普遍文法の関係・関与について主に日本語を例として平易に解説されている。「心
理言語学」の授業の復習に最適である。
[上級]
Crain, Stephen, and Rosalind Thornton. (1998) Investigations in Universal Grammar: A Guide to
Experiments on the Acquisition of Syntax and Semantics. Cambridge, MA: MIT Press.
UG に含まれる原理が、言語獲得の非常に早い段階から機能し始めることを示す研究が主に整理されている。
子どもに対する実験方法について特に詳しく、実験の立案・実施の際有益である。
大津由紀雄 (1989) 「心理言語学」柴田方良・大津由紀雄・津田葵 『英語学の関連分野』 (英語学体系第 6
巻) 大修館書店
1960 年代から 1980 年代における言語獲得研究の成果が網羅されている概説書。言語獲得研究の基本的前
提についても学ぶことができ、言語獲得研究を行なう際に必読の書。
14
生 成 文 法
「生成文法」の授業は特に設けてはいませんが、生成文法に関する解説書が色々と出版されていて、どの本
を読めばいいのか迷ってしまう場合もあると思います。生成文法について真に理解するには、解説書ではなく、
Chomsky の著作を読むのが一番確かな方法です。しかし、Chomsky の著作は難解な部分も多々あるので、入
門・中級で挙げたものから読みはじめることをお薦めします。
[入門]
Jackendoff, R. (1995)
Patterns in the Mind, Basic Books.
(ジャッケンドフ(著) 水光雅則(訳) (2004) 『心のパターン-言語の認知科学入門』 岩波書店)
生成文法について平易な語り口で一般向けに紹介している本。これまでの生成文法の成果について、特に、
言語習得が生得的であるという言語生得説について、簡潔かつ明快に述べられている。さらに、言語と同様の
能動性が見られる、音楽・視覚・思考・文化など人間の他の認知領域についても取り上げられている。
Pinker, S. (1994)
Language Instinct: How the Mind Creates Language, William Morrow and
Company.
(ピンカー(著) 椋田 直子(訳) (1995)
『言語を生みだす本能(上・下)』 NHK出版)
言語習得が生得的であること(本書では、「本能」ということばを用いている)を、わかりやすくかつ深く解説して
いる一般向けに書かれた本。一般向けとはいえ内容はかなり豊富で、言語分析の技術的な事項に関わることが
含まれている章もある。言語進化に関しては、Chomskyと全く相反する見解が示されているが、全般的にはバラ
ンスのとれた生成文法の解説書といえる。
酒井邦嘉 (2002) 『言語の脳科学−脳はどのようにことばを生みだすか』
中央公論新社
生成文法での主張である言語生得説が最新の脳科学によって裏付けられることを、一般向けにわかりやすく
紹介している本。本書の主眼は、言語という難問への脳科学の視点からの挑戦に関してであるが、生成文法に
おける言語へのアプローチが、自然科学における理論物理学などのアプローチと全く同じであることがよく分か
る。
[中級]
中井悟・上田雅信(編) (2004) 『生成文法を学ぶ人のために』の第1章「生成文法の言語観と研究方法」 世
界思想社
自然科学的な言語研究としての生成文法の基本的な考え方と方法論を解説したもの。方法論的自然主義や
言語学の研究方法、そして、生成文法の基本的事項から研究目的まで、簡潔にまとめられている。
15
黒田成幸 (1999) 「文法理論と哲学的自然主義」
チョムスキー(著)大石正幸(訳)『言語と思考』(松柏社)に収録されている、理論言語学の第一線の研究者で
ある黒田氏による、生成文法の方法論に関する哲学者向けの講演を基にした論文。方法論的自然主義につい
て詳しい説明があり、自然科学としての生成文法の営みを理解するのに大変役に立つ。是非目を通していただ
きたい論考である。
[上級]
Chomsky, N. (2004)
Generative Enterprise Revisited, Mouton De Gruyter.
(チョムスキー(著)福井直樹・辻子美保子(訳) (2003) 『生成文法の企て』 岩波書店)
1979〜80年と2002年に行われたインタビューを収録したもので、Chomsky が自らの科学観と言語観を、比
較的平易に、そして詳細に述べている。対談に基づいているおかげで、Chomsky による他の文献よりは読みや
すいので、労を惜しまずにじっくり読めば、生成文法についての理解が深まるであろう。理論言語学の第一線の
研究者である福井氏によって書き下ろされた序説も、理論言語学の主張や論点についてとても明快にまとまっ
ていて、上記の黒田氏の論考と共に、第一線の研究者によるものの質の違いが実感できる。
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