平成 17 年度
社会工学類 都市計画専攻 卒業研究中間発表会
2005/12/07
これまでに設定した調査対象大学・学科のうち、私立大学の一部を除くほとんど
わが国の大学における都市計画に関する教育内容の変遷と現状の考察
都市交通研究室4年
1.
【資料の収集状況(詳細は裏面 表3を参照)
】
200200994 鈴木智巳
指導教員 堤 盛人
の資料を入手した。入手したデータの内容は、大きく次の3種類に分かれる。
①
科目名、単位数、学年のみを掲載したもの(科目一覧等)
②
(1)に加え、簡単な授業内容まで掲載したもの(授業要目等)
③
教育目標や内容、評価方法など全体的な授業計画を掲載したもの(シラバス)
研究の背景と目的
②
わが国の大学における都市計画に関連する教育は、1880 年代に旧帝国大学において建築学科・土木学科が設立され、その周辺領域
③
教育目標や内容、評価方法など全体
的な授業計画を掲載 (シラバス)
簡単な授業内容まで掲載
(授業要目など)
① 科目名、単位数、学年、区分を掲載
として取り上げられたことから始まっている。その後、建設系あるいは造園・農学系の学科新設や改組、またそれらの学科における
(科目一覧など)
都市計画を専門に扱う講座やコースの設置を経て、1962 年、日本で始めて「都市計画」を主要領域とする東京大学都市工学科が設立
された。その後も都市工学・社会工学を専門に扱う学科の設立が進み、1977 年には筑波大学社会工学類都市計画専攻が設置されてい
る。
現在、都市計画は、土木、建築、環境科学、人文科学、社会科学、情報、デザインなど、
様々な分野と連携した学問領域へと発展した。しかし非常に学際的な学問領域であるため
研究の背景と目的
既往研究の整理と本研究の特色
~昭和50年度
に、都市計画学という明確な領域を定めることが難しく、その教育体系も確立されていな
いのが現状である。
日本都市計画学会 21 世紀ビジョンの重点的取り組みにおいても都市計
画学の確立と大学教育の充実が掲げられており、都市計画教育に関する議論が今後、ます
ます必要になると考えられる。
大学の都市計画教育、または土木・建築など建設系の学科の教育を扱った既往研究や参
考文献としては、日本都市計画学会学会誌「都市計画」の特集
対象の設定
対象とする大学・学部、資料の設定
3.
教育内容データの作成
資料の収集とデータの整理作業
(1)
や土木学会学会誌の特
教育内容の分析
ラムの構成や授業内容の変遷を考察したもの、学科名称を対象にした研究であり、複数の
時系列的に見た教育内容の変遷
現在の教育内容の特徴
分野別、大学・学科相互の比較
そこで本研究では、日本の建設系学科のカリキュラムを調査・分析対象とし、都市計画
結論と今後の課題
か(現状)を定量的に把握する。それによって今後、都市計画学やその教育体系の確立、
図 1.本研究の構成
また大学のカリキュラムに関して議論を行う際の一助とすることを目的とする。
調査対象とする大学・学科は、右図のように設定する。
国立大学については、旧帝国大学(7大学)の土木、建築、
都市・社会工学系の学科の他、東京工業大学、筑波大学の都市
和 50 年度以降の、授業内容に関する記述があるデータを対象とし、各科目がどのようなテーマを扱っているか、どのような内容を対象に
しているかを把握することにした。
は、それぞれの分野の専門領域について各学会の論文審査希望分類表(4)~(6)を参考に重複項目や細部項目の統合を行った。さらに実際
に分類作業を行う際に足りない項目を補足した。これらの分類項目表を裏面に示す(表4)
。この分類項目に従い、年度・大学学科ごとに
で整理した。
表1.調査対象とする大学・学科
対象とする大学・学科
降の資料に簡単な授業内容の記述(授業要目等)、また今年度のデータには詳細な授業計画(シラバス)が掲載されている。そこで主に昭
科目の授業内容に関する記述を確認して分類する作業を行っている。分類は記述中のキーワードに着目し、対応する項目を複数カウント
研究の対象
2.1
2.2で述べたように、入手したカリキュラムに関する資料の内容は、大学・年度によって異なる。昭和 30~50 年度の資料には、科目
具体的な作業としては、まず建築、土木、都市・社会工学の分野別に教育内容を分類する項目を作成した。分類項目の作成にあたって
に関する教育がどのように行われてきたのか(変遷)
、また現在どのように行われているの
2.
分析の枠組み
名や単位数、対象学年のみが掲載されており、具体的な授業内容や方法を知ることは難しい。一方で、ほとんどの大学では昭和 50 年度以
集(2)、また内山(2002)(3)などがある。しかしこれらは、個別の大学におけるカリキュ
大学や分野にわたり、その教育内容にまで踏み込んで調査・分析したものではない。
現在
図2.データの内容
さらにそれぞれの科目の教育内容がどのような方法を用いて教授されているかを把握するために、教育手法と評価方法に関する分類項
目も設定した。教育手法については、講義と実習・演習の 2 つの項目に分け、さらに対象をどういった観点から講義するか、具体的にど
のような実習・演習を行うかという細項目を設けた。評価方法については今年度のシラバスのみが対象となるが、4 つの項目を設定した。
【分類作業の具体例】
東京工業大学社会工学科 昭和 51 年度 教授要目より
(「都市・社会工学」に関する分類項目を適用)
計画専攻を調査対象とした。また明治時代に日本で初めて私立
大学の建設系学科として設立された早稲田大学、日本大学につ
08501 地区設計第一(District Design Ⅰ)
いても調査対象に加えた。これら調査対象における学科の設立
Ⅰ
秀樹
助教授
前学期
2-0-0
(※講義-演習-実習の単位数)
都市開発のためには、健康で明るい住宅地の計画が基礎になるといえる。住宅事情を論じた後、集合住宅の設計、住宅
群の計画、近隣施設の配置等を通じて、住宅地の設計技術を修得させる。演習をあわせて行う。
と変遷を表2(裏面)に示す。
旧帝国大学では、工学部の設置と共に設立された土木系学
梶
Ⅱ
各国の住宅事情概説、住宅立地論、住宅人口構造、集合住宅計画、住区計画、コミュニティ計画論、住宅地の交通計画
科・建築系学科が近年、学際的な学科として再編されるパター
ンが目立つ。こういった学部では、入学以後にコース制によっ
この場合、記述全体から住宅地の計画を題材としたものあることがわかり、4.1
て専門分野を選択させている。この傾向は、対象大学以外の全
の「住環境」にカウントする。さらに詳細に見ていくと、Ⅱの前半部分で住宅事
国の国公私立大学でも進んでいる。一方で、東大、東工大、早
大、日大は設立当初の建築系と土木系の学科編成を保っている。
2.2
教育内容に関するデータの収集
本研究では、対象とする学科の授業内容と教授方法を把握す
るために、科目一覧や授業要目、シラバス(授業計画)等の資
料を収集した。収集する年度は、東京大学社会基盤工学科(前・
土木工学科)について入手したものを基準に、昭和 30 年度から
約 10 年ごとに設定した。資料収集にあたっては、筑波大学中央
図書館を通して各大学附属図書館に文献複写を申し込むか、あ
るいは直接訪問して複写を入手している。
情や立地論、人口構造など一般的な知識や理論を与えているので分類項目 9.1 の
「土地論・住宅論」にカウントする。後半部分では、設計における技術を解説し
ているので 8.1 の「景観計画・都市デザイン・設計」にもカウントする。また近
隣施設や住区、コミュニティの計画についても触れるので 4.2 の「地区施設・地
区整備計画」と 1.1 の「都市論・コミュニティ論」にもカウントする。この年度
においては評価方法に関する記述はない。
教育手法については、講義項目として「理論や一般論を解説する」
「実用的な考
え方や知識を身につける」
「設計・製図技術を解説する」が当てはまり、さらに「演
習」の記述があるので「設計・製図技術の演習を行う」がカウントされる。この
ように一つの科目について教育内容・教育方法それぞれ、対応する項目を複数カ
ウントしている。
図3.分類作業過程
資料を入手した大学順に各科目の分類作業を行っている。これまでに名古屋大学、東北大学、東京大学、東京工業
付録
表2.対象大学における学科の設立と変遷
大学について分類作業を進めており、同時に分析方法を検討している。
【分析の例】
東京工業大学社会工学科について分類作業を行っ
たデータを用いて、教育内容がどのように変化してき
たかを見た。分類では、資料に記述のある内容を複数
カウントしているので科目によってカウント項目数
が異なる。そこで各科目の重みを単位数が表している
と仮定し、単位数をカウント数で割ったものを対応す
る分類項目に割り振った。
その値をすべての授業科目について項目ごとに合
計し、全科目中において取り扱われた割合をグラフで
表示した(図4)。集計には、都市・社会工学系分類
項目(表2)の大分類 15 項目(
「総合実習・演習」を
図4.分類作業過程
除く)での分類結果を用いた。
都市論・都市計画論・都市計画史
国土計画・地域計画・農村計画
都市基本計画・都市総合計画
市街地整備・住環境
防災・環境問題
昭和51年度
表4.各専門分野の分類項目
交通計画
緑地計画・観光レクレーショ ン
景観・都市デザイ ン
住宅問題・土地問題
行政・制度・参加・教育
平成17年度
都市解析・地域解析・調査分析論
経済学
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
社会学・社会工学
数理
情報処理
表1.調査対象とする大学・学科
昭和 51 年度と現在における取り上げられた内容の変化を見ると、割合が大きく減少した項目として「市
街地整備・住環境」
「交通計画」「都市・地域解析」が挙げられる。逆に「都市計画」
「国土計画」
「緑地・
レクレーション」
「景観・都市デザイン」
「住宅・土地問題」
「行政・制度・参加」
「情報処理」の項目は増
加している。特に、
「緑地・レクレーション」
「行政・制度・参加」は昭和 51 年度には取り上げられてい
なかった内容であり、社会的な背景や要請によって教育内容に加えられたことが予想できる。
4.
今後の展開
引き続き、分類作業と年度・大学ごとに教育内容の変化を見るための集計行う。その後、大学間の比較や分野別の比
較等、対象全体について教育内容・方法の変遷と現状を把握するための分析方法を検討し、作業を進めていく。
参考文献
(1)日本都市計画学会五十五年史
Vol.50、No.4、2001 特集「大学の都市計画系学科設立と教育」
(2)土木学会誌 Vol.90、2005.7 特集「土木工学科の変革
-土木教育の変遷と発展-」
(3)内山弘美「建設系学科における環境冠学科の設置メカニズム-高等教育論の視点から-」環境システム研究論文
集、Vol.30、2002
(4)日本都市計画学会 都市計画論文・都市計画報告投稿規程(2005 年度版) 審査希望分類表(1~13)
http://wwwsoc.nii.ac.jp/cpij/rule2005/field.pdf
(5)土木学会 土木学会論文集 土木学会論文集投稿要項 査読部門
http://www.jsce.or.jp/committee/jjsce/file/yoko2005.pdf
(6)日本建築学会発表 論文集応募原稿募集 部門・細分類表
http://www.aij.or.jp/jpn/databox/2004/bunrui.pdf
(7)土木学会 土木計画学研究委員会
第 30 回土木計画学シンポジウム「新しい国づくり・街づくりをめざして」
(8)津々見崇、渡邉貴介、村田尚生、羽生冬佳「東京都における小学校の社会科副読本に見られる都市及び都市計画
に関する教育内容の分析」都市計画 234 号、pp.-、日本都市計画学会、
表3.各専門分野の分類項目
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