新商品開発
基礎演習 8組
はじめに
1993年以降のバブル崩壊、1970年代の2度に渡るオイルショック、円高を迎えた
1980年以降、円高不況による現在と、日本経済は激変を遂げている。世界的な政治、経
済、社会の変動の中で、日本経済にも、構造的な変革が進んできている。今後の新商品開発
においても、時代の変化に即した新しい考え方、研究の仕方を創っていくことが必要となる
だろう。
ではどのようなやり方で、新商品開発を進めて行くべきであろうか。
1.世界の変化に対応する製品開発
変化する世界の中で、当然顧客のニーズも変化してきている。変化に対応するためには、
高橋富男・原健次(1997年)によると、「研究開発戦略と経営戦略の整合化が重要な課
題である」と書いてある。「研究開発の成果が、新事業として、立ち上がるまでには、10
年、15年、と時間がかかり、その間にどんどん新事業を取り巻く情勢は変化する からで
ある。したがって、きちんと方向性が決まった企業の経営戦略のもとに、研究開発戦略が進
められることが重要である。」(高橋・原 1997年)
時代に即した研究開発戦略と経営戦略により、顧客のニーズに対応することが可能となる
だろう。
2.何を目指した研究開発か
Ⅰ 高橋・原(1997年 )によると「経営、事業戦略の枠組みに位置づけされる研究
開発戦略は、大きく次の3つに分類される。
①既存事業の枝を強固にし、太らせる。(現時業の維持、拡大)
②既存事業の枝に新しい実を付ける。(現時業の品揃え、拡張)
③新しい事業の枝を創る。(新事業開発)
研究開発戦略が、これらの3つのどれを目指しているかは、経営、事業戦略のレベルでき
ちんと決定されていなければならない。それが明確でないと、経営戦略と研究開発戦略の間
で、不整合化、混乱が起こる。」
経営トップのはっきりとした、経営、事業戦略が新製品開発の成功には、とても重要である。
Ⅱ
各社のモノづくりの原則の類似性
経営トップの経営、事業戦略をはっきりさせるためには、つねに1つの目標や理念を示し、
それをチェックポイントの基準とすることも1つの方法である。その例として、花王の「商
品開発に5原則」ソニーの「研究に関する5つの物差し」キャノンの「研究開発の5原則」
シャープの「5つのモノづくりの原則」などがある。(高橋・原 1997年)
花王の商品開発の5原則
1,開発されるべき商品が真に社会にとって有用なものであること
2,自社の創造的技術が盛り込まれているということ
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3,パフォーマンス、バイ、コストで他社のそれに勝っていること
4,商品発売前に、徹底的な消費者テストが行われていること。
5,流通のあらゆる段階で、その商品に関わる情報をうまく伝達しうること
ソニーの研究に関する5つのものさし
1,その研究は新しいビジネス領域を開拓できるか
2その研究はソニーのどのビジネスにいつ役立つか
3,その研究はどこにオリジナリティがあるか
4,その研究は世界のトップレベルにあるか
5,その研究は事業部がはぎ取りに来るほど魅力的か
キャノンの研究開発5原則
1,軍事目的の研究をしない
2,環境、エコロジーに反する研究をしない
3,世の中になかった技術ジャンル・商品ジャンルを創り出す
4,他社の同様な技術ジャンル・商品ジャンルを尊重する
5,世界適地で研究・開発活動を行い、成果を上げた国での実用化をめざす
シャープの5つのモノづくりの原則
1,消費者の目線を忘れるな
2,目標は明確に、ハードルは高く
3,途中で妥協はするな
4,組織の壁を乗り越えろ
5,技術の「律速」を引き上げろ
どれも、なるほどと思えることが書いてある。また、いくつもの共通点が見えてくる。まず、
各社の原則は、5原則のモノが多い。いずれも、研究開発戦略の策定力、研究開発目標の設
定力、研究開発成果の活用、事業化力のどれかに当てはまる。
3.ユーザーの真のニーズは何かを考える
単に「ユーザーのニーズ」といっても、個々人が抱く要求は様々であり、ユーザーの大多数
が共有できる真のニーズを引き出すことは、あまりにも困難であると思われる。高橋・原(1
997)によると、「世の中で広く受け入れられてきた商品、たとえば、ウォークマン、ワ
ープロ、携帯電話などでも「こういうモノが欲しい」というユーザーの声を繁栄して開発さ
れたモノはほとんどないということである。ほとんどが、研究する側が、世の中の動き、人々
からの意見、本人の感性、モノづくりに対する思いなどから、「こういう技術、商品を開発
すれば、きっとお客様が喜んでくれるのではないか、世の中の役に立つのではないか。」と
いうアイデアを世の中に提案し、お客様と、何度も何度もキャッチボールすることにより、
次第に技術コンセプト、商品コンセプトが固まり、さらに技術的な開発目標が決定し、モノ
づくりに対する思いが昇華した結果、お客様に受け入れられる製品商品として、結実したモ
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ノである。」ということである。
これらのプロセスを浦川卓也氏は、『マーケット対話型研究開発』と呼んでいる。(浦川卓
也 1994年)これは、「アイデアをお客様(マーケット)に提示し、説明、説得、売り
込み文句を受けることにより、マーケットニーズを喚起しながら、アイデア提示側(研究開
発)もキャッチボールで戻ってきたアイデアを、自分自身にフィードバックさせながら、技
術の需要、商品のコンセプトを共に、創造していく活動である」と書いてある。
マーケット対話型研究開発では、新しく、魅力あるコンセプト(概念)の創造が最も重要だ
と思う。
4.環境問題と研究開発
これまで我々は、大量の資源やエネルギーを消費し、より快適な生活を営むために、様々
な製品を開発してきた。しかし、資源の消費量や、人工、廃棄物の急増、化学物質による環
境汚染などにより、これまでのあり方が見直されてきている。
武井玲子(1993年)によると「環境問題は、これまで、色々なレベル、人々によって、
論じられてきているが、環境問題は、商品開発、ビジネス展開を担う企業が、その責任の一
端を負うべき問題であることは当然である。それと同時に、新たなビジネスチャンスを創出
する、あるいは成長させるチャンスである」と書いてある。
また、環境問題の解決には、個々人の認識自覚が必要である。地球温暖化に対する省エネ
ルギー政策、オゾン層破壊に対するフロンに代わる製品の開発、森林資源の保全に対する再
生紙の利用、廃棄物現象のための包装紙の削減など、考えなければならない問題がたくさん
ある。これらに対する研究開発の、期待されるところは大きいだろう。
一般消費財の場合「消費者にとって、便利でよい商品と、環境によい商品は両立しない。」
という声をよく聞く。(高橋・原 1997年)確かに、両立は困難なことであるけれど、
これからの商品は、機能性、便利性、快適性と環境問題を両立させなければならないと思う。
1987年に、花王が開発した、コンパクトか洗剤「アタック」は、世界の潜在業界に一
大革命を起こした。この洗剤の特長を環境面から見てみると、原料、包装材料、生産、輸送、
流通、家庭、廃棄など、あらゆる面で環境に対応した商品であることがわかる。(花王 環
境・安全推進本部 1994年)これらの特長は、研究開発の成果と見ることができる。
コンパクト化洗剤はそれまでの従来型の洗剤と比べて、容量が1/4になっている。した
がって、包装材料が約1/2に減少し、輸送エネルギーも約1/3減少している。さらに、
洗剤使用時の正確なスプーン計量により、使いすぎを防止し、生活排水への、影響を低減し
ている。流通段階での在庫・陳列スペースの縮小、廃棄物の削減などにも寄与していること
はいうまでもない。
また、包装材料一つとっても、その削減には研究開発が必要であるが、その方法としては、
商品の中身の濃縮か、詰め替え用商品の開発、減量化、計量化方式の開発が考えられる。(花
王 環境・安全推進本部 1994年)
製品開発研究において、環境問題に目を付けたことは成功だと思う。環境問題と製品開発は、
これからも、大いに問題とされることだろう。そして、最も期待される分野であろう。これ
らの対応に積極的に取り組むことによって、マイナス思考の研究開発から、プラス思考の研
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究開発に変換していくことが望まれる。
まとめ
新商品開発をスムーズに進めるために、必要なことは、時代の変化に即して、考え方、研
究方針を変えることである。世界は絶えず変化してきている。そんな中で、お客様の思考も、
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様々に変化し、多様化してきていると思う。
このような変化に対応し、新商品開発を成功させるためには、お客様とのキャッチボール
が、重要になってくる。そして、お客様のニーズを予測し、商品開発を進めていくのである。
この有効な方法として『マーケット対話型研究開発』がある。
お客様の真のニーズが見えてきたら、明確なテーマを決め、はっきりとした経営・事業戦
略を考える必要がでてくる。これは、新製品開発にはとても重要である。その際、1つの目
標や理念を示し、それを基準とすることも1つの方法である。
また最近、地球の環境破壊が盛んに叫ばれるようになった。地球に優しい製品開発は、時
代のニーズに即していると思う。この分野の開発は、今後、もっと注目されるべき項目であ
ると思う。
商品開発は、以上のような点を満たすとき、成功に導かれるのであると私は考える。
【参考文献】
1.高橋富男・原健次:『新商品開発マネジメント』日本技連出版社、1997年4月
30日
2.浦川卓也:「研究開発のためのマーケティングと研究・技術開発」『新商品開発事例
集』研究叢書,no92,企業研究会、1994.
3.花王(株)環境・安全推進本部:『花王の環境開発対応』1994.
四.武井玲子:「新製品開発における環境問題」『フレグランスジャーナル』Vol21.No
1.1993.
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