情報処理学会 インタラクション 2014
IPSJ Interaction 2014
B0-3
2014/2/28
Cyber Chamber:オンラインショッピングにおけるプロジェクタと
タブレット端末を用いた複数人での購買活動支援システム
牟田将史†1 向健次†1 東本遼太郎†1
益子宗†2 平野廣美†2 林靖之†2 星野准一†3
近年,オンラインショッピングの利用が盛んで,タブレット端末やスマートフォンからの利用が増加している.しか
し,現在のオンラインショッピングにおいては,実世界での購買で一般に見受けられる,複数人での買い物に対応し
ているとは言い難い.そこで本稿では,オンラインショッピングにおける複数人での新たな買い物の形態のためのシ
ステム Cyber Chamber を提案する.プロジェクタを用いた壁面への投影とタブレット端末を用いたインタラクション
を利用し,パブリックでの情報共有,プライベートでの商品探索を組み合わせたシステムを開発した.提案システム
について,その有用性を評価するため実験を行った.その結果,提案システムの有用性に関して一定の評価が得られ,
興味深い傾向がみられた.
Cyber Chamber:Shopping Assistance System with Multiple People
using Tablet Devices and Projector in the Online Shopping
MASAFUMI MUTA†1 KENJI MUKAI†1 RYOUTAROU TOUMOTO†1
SOH MASUKO†2 HIROMI HIRANO†2 YASUYUKI HAYASHI†2
JUNICHI HOSHINO†3
In recent years, the use of online shopping is thriving. Especially shopping from tablet devices and smartphones has been
increasing. However, in the current online shopping, it seems not to have enough support to do shopping with more than one
person, which is a scene generally seen in the real world. In this paper, we propose a novel system which gives a new shopping
experience in online shopping with multiple people. We developed Cyber Chamber, a system that enables to make interaction
with the tablet devices and a projection on the wall by a projector so that each user can search items privately by their tablet
devices, and they can share items they want in public, on the wall. We performed experiments to evaluate its usefulness. As a
result, the evaluation of the constant obtained for the usefulness of the system, an interesting trend was observed.
1. はじめに
買では一般に見受けられる.
そのような複数人での買い物を,単一のインタフェース
近年,オンラインショッピングは,我々の生活の一部と
で行うことは不便である.その一因として,オンラインシ
なり,家電や日用品,食品や衣類まで様々なジャンルの商
ョッピングを行う機器(PC,タブレット端末,スマートフ
品をインターネットショップサイトで購入することが可能
ォン)の特性上,やり取りが 1 対 1 であることが挙げられ
となっている.総務省の情報通信白書[1]によると,平成 22
年には 36.5%もの 15 歳以上の国民が,何らかの商品をオン
ラインショッピングによって購入しているという調査結果
る.画面を共有し辛く,操作を行うのも 1 人であるため,
個人が購入したい商品を他者に提示したり,複数人の意見
をまとめたりすることも難しい.
が示されており,オンラインショッピングの普及が読み取
また,購入するものによっては,商品同士の組み合わせ
れる.また,無線 LAN などのインターネットインフラや,
を考慮したい場合が多々ある.インテリアやファッション
タブレット端末やスマートフォンなどの手軽な機器の普及
のコーディネートなど,従来のインタフェースでは,購入
により,そのような機器からオンラインショッピングを行
を検討している商品画像を並べて,その組み合わせについ
う機会が増加している[2].
て複数人が共有することは困難である.
しかし,インターネットショップサイトの多くは個人で
複数人での買い物や商品同士の組み合わせ検討をオン
の買い物向けであり,複数人で買い物をする際に適してい
ラインショッピングで実現するには,参加者各々が商品の
るとは言い難い.旅行へ行く際の準備や,共同で使用する
探索作業を行えること,スムーズに共同購買者との情報共
部屋のインテリア購入など,複数人で購入商品の候補を出
有ができること,また商品同士を 1 画面に並べられること
し合い,相談しながら買い物をする場面は,実世界での購
が必要だと考えられる.
†1 筑波大学 システム情報工学研究科
Systems and Information Engineering, University of Tsukuba
†2 楽天株式会社 楽天技術研究所
Rakuten, Inc. Rakuten Institute of Technology
†3 筑波大学 システム情報系
Faculty of Engineering, Information and System, University of Tsukuba
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そこで本稿では,個人の持つ手元のタブレット端末で商
品探索を行い,壁面へのプロジェクションにより複数人で
商品情報を共有する,複数人(2 人~5 人程度)での新たな買
い物の形態のためのシステム Cyber Chamber を提案する.
340
提案システムを利用することで,個人の探索を容易に行
ンを行うものとして,Nancel ら[7]の大型壁面ディスプレイ
うことができ,購入候補の商品についての情報共有や共同
に関する研究では,我々が普段利用するようなタブレット
購入者との相談,商品同士の組み合わせについての検討を
を 用 い た 壁 面 と の イン タ ラク シ ョ ン を 提 案 し てい る .
円滑に行うことができると期待される.
Kaufmann らの研究[8]は,手元のデバイスから壁面へのプ
システムの効果を検証するため,開発したシステムを利
ロジェクションを行うものであるが,壁面に仮想のワーク
用した複数人での買い物の評価を行う.具体的には,大手
スペースがあり,プロジェクタによりその一部を照らすこ
ショップサイトを運営する楽天株式会社と連携し,インテ
とで閲覧,操作を行うという手法である.これをスマート
リアの購入という購買目的を与え,複数人での商品探索・
フォンに応用した研究として.Kaufmann ら[9]はこの研究
検討の効率や,買い物結果に対する満足度などを評価し,
に関連して,プロジェクタ付の携帯電話を用い,ワークス
今回提案するシステムの有用性を明らかにする.
ペースの一部を照らし出すようなインタラクションを行っ
2. 関連研究
2.1 Computer Supported Cooperative Work
ている.また Yamaguchi らは SWINGNAGE[10]というシス
テムを提案している.SWINGNAGE では,モバイル端末と
大画面ディスプレイのインタラクションをデジタルサイネ
本研究の主目的は,複数人でのオンラインショッピング
ージに特化したシステムを構築している.モバイル端末の
体験を支援するシステムの提案である.今回焦点を当てる
追加によって,ディスプレイにカーソルが出現し,表示さ
複数人による購買行動は,グループで購入するものを探
れている広告の選択などが行える.本稿で提案するシステ
索・検討するという行動を伴うことから,協調作業である
ムの構成と類似しているが,複数人による協調作業という
と言える.そこでこの節では,グループの協調作業を支援
点は考慮されていない.
する Computer Supported Cooperative Work(CSCW)の関連研
究を挙げ,その研究との差異を示す.
壁面へのプロジェクションや複数ディスプレイを用い
た大画面とのインタラクションについての多くの研究では,
Amershiらは,CoSearch[3]というシステムを提案してい
操作方法,情報提示の方法,操作の検出のためのアルゴリ
る.このシステムでは,1 台のPCを共有ディスプレイとし,
ズムについて詳細な検討がなされている.しかし,複数人
それに対して複数ユーザが,それぞれのマウスやモバイル
での買い物という具体的なタスクに特化して設計されたイ
端末を用いて利用するシステムである.モバイル端末では,
ンタフェースは見つけられなかった.本稿では,以上の研
マウス機能,クエリ入力やページの閲覧,メモなどを行う
究により得られた知見をもとに,複数台のデバイスと大画
ことが可能である.またPaekらが開発したシステム[4]も複
面のもつスペースの機能を個人スペース - 共有スペース
数のユーザが1つのディスプレイを共有し,各ユーザが操作
として分離し,これらを活用した複数での買い物に特化し
するモバイル端末で協調検索を行えるシステムである.
たインタフェースを提案する.
これら2つの研究において,1台の共有ディスプレイとそ
れに対して各々の持つモバイル端末で操作を行えるという
システムの形態は,本提案と類似している.しかし,購入
する商品同士の組み合わせを検討したい場合,これら2つの
システムでは対応できない.
2.3 オンラインショッピングにおける購買支援システム
本稿のように,オンラインショッピングに焦点を当て,
その購買行動を支援する研究が行われている.
庄司ら[11]は,欲しいもののイメージが曖昧なところか
らスタートして徐々に明確にするようなコンセプト精緻型
WebSurface[5]やWeSearch[6]はテーブルトップインタフ
の購買を支援するシステムを構築している.結果として,
ェースを用いたシステムであり,複数人が同時に検索作業
システムの有効性が示されている.しかしこのシステムで
を行えるものである.ユーザはこれらのシステムを利用す
は,ユーザは 1 人しか利用できず,今回提案する複数人に
ることで,効率的に各ユーザと情報の共有を行え,作業を
よる購買については対応できない.
行うことができる.
小池ら[12]も,コンセプト精緻型の購買に焦点を当て,
しかし,これら2つの研究では,独自のインタフェース
ネット上の購買においても提供可能な環境の構築を目的と
を構築しており,一層の家庭内への普及が見込まれるプロ
した,協調購買インタフェースを提案している.この研究
ジェクタやタブレット端末に着目したものではない.また
では複数人での購買に着目し,タブレット PC 上にシステ
先述したいずれの研究においても,今回のようにオンライ
ムを構築することで,その有効性を示している.
ンショッピングに特化した試みはない.
2.2 大画面ディスプレイへのインタラクション
壁面などを利用した,大画面ディスプレイとのインタラ
クションを行う研究は多く行われてきた.
このシステムでは 2 人での同時利用を想定して提案され
ているが,本稿では人数を制限しないシステムを目指す.
小池らのシステムも改良することで,更に多くの人数が同
時利用できるように変更できるとされている.しかし,タ
本稿で想定している,タッチによる操作が可能なタブレ
ブレット PC の画面では人数が増加すると,情報共有画面
ットなどを用いて,大画面ディスプレイとインタラクショ
が狭く見辛くなり,利便性が失われると考えられる.利用
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人数の増加を考慮すると,複数人での情報共有と個人の探
求められる.ユーザ名を入力すると,壁面に投影された
索は分離されることが理想であろう.
CCBoard の画面上にユーザに対応したカーソルが出現する
そこで本研究では,更に多くの人数にも対応できるシス
(図 2 参照).このカーソルはタブレット端末を上下左右に
テムを実現しようと考え,壁面を大画面ディスプレイとし,
傾けることで移動させることができ,後述する操作に利用
情報共有画面として活用することにする.
される.カーソルにはユーザごとに異なる色が割り当てら
3. システム概要
提案システムにおいて,投影用アプリケーションを
Cyber Chamber Board(以下 CCBoard),タブレット端末用
アプリケーションを Cyber Chamber Client(以下 CCClient)
として,共に Web アプリケーションとして実装した.
3.1 システムの要件分析
複数人での買い物を支援するにあたり,提案システムの
要件分析を行った.インターネットショップサイトを複数
人で利用することを想定すると,1 つの画面で探索を行う
れるようにし,これによりユーザを識別することができる.
まず,各ユーザはタブレット端末から CCClient を利用し
て商品を探す(図 3 参照).商品探索の際には,画面に設け
られた検索窓にキーワードを入力して検索を行う.
CCClient は入力したキーワードをもとに楽天商品検索
API[13]を利用して検索結果を取得し,リスト表示する.ユ
ーザは興味を持った商品を選択して,その商品の詳細を確
認できる.商品を探す中で他のユーザと共有したい商品を
見つけた際は,Push ボタンをタップする.
この操作により CCBoard に商品情報が転送され,その画
場合,操作は 1 人に任せることになり,個人が欲しい商品
像と商品名,そして商品を送信したユーザ名が壁面に投影
を思いついた際に他者に提示することが困難である.その
される.画像にはユーザのカーソルと同じ色の枠が与えら
ため買い物に参加する個人がそれぞれ端末を持ち,商品を
れるようにし,これにより誰が共有した商品かが一目でわ
探索できることが必要である.
かるようにした.これらは転送したユーザのカーソル位置
買い物に参加する個人がそれぞれ端末を使用して,商品
に表示されるが,直後にタブレット端末を上下左右に傾け
の探索を行うと,それぞれが購入候補に挙げる商品が全く
ることで投影位置を自由に移動させ,Drop ボタンをタップ
異なってくることは容易に考えられる.それぞれが挙げた
することで位置を確定させることができる.なお,一度位
購入候補の商品情報を,参加者全体で共有,または相談し
置を確定させたものについても,カーソルを画像の上に移
たい場合,直接端末画面を見せ合う,または商品名を伝え
動させ,Drag ボタンをタップした後同様の操作で位置を変
て,他の参加者に検索させるといった行動がとられる.
更させることができる.
しかし,これでは他の参加者の探索行動を妨げてしまう.
このように壁面での商品を移動させられるようにした
また,参加者が多くなればなるほど,前述した情報共有の
ことで,商品のグループ化や並べ替えといった操作を可能
手段が困難になってくる.直接端末画面を見せ合う行動は
にし,複数の商品の視覚的位置関係から新しい気づきを得
言うまでもなく,商品名を伝える行動は,意図した物を他
ることをサポートした.
の参加者が,円滑に情報共有できるとは限らない.それを
また,壁面に投影された商品の中で必要ないものと判断
行うためには,探索画面とは別に,情報共有画面が必要で
された際,カーソルを画像の上に移動させ,Delete ボタン
あろう.そのため,プロジェクタによる壁面スクリーンを
をタップすることで,その商品情報を削除することが可能
利用し,個人が探索し,推薦したいと思った商品をタブレ
である.もし間違って削除した場合には,CCBoard の画面
ット端末から提示できる共有スペースを提供する.
下部に存在するごみ箱に,削除した商品が蓄積されるので,
それに伴い,タブレット端末から壁面スクリーンへの商
品情報の提示を実装する.さらに,他人の提示した商品情
報を,円滑に手元の画面で確認可能にするため,壁面スク
その削除した商品画像にカーソルを合わせ,Drag ボタンを
タップすると元に戻すことができる.
タブレット端末から壁面に商品情報を送信できる一方,
リーン上で商品をポインティングし,タブレット端末上で
壁面からタブレットに情報を受信することもできる.ユー
その商品ページにアクセスできる機能を実装する.
ザが壁面に共有された商品の詳細を知りたいと思った際に
また,どの商品を購入するかといった相談を支援するた
は,CCBoard 上のカーソルを商品画像の上に移動させ,
めに,投票機能を持たせる.加えて商品の移動操作ができ
CCClient の Pull ボタンをタップする.この操作により,
るようにすることで,購入の決まった商品を取り置いたり,
CCClient 上で商品情報の詳細ページが開き,他の画像や価
商品ジャンルによって場所を分けたりすることができる.
格,あるいは口コミといった情報を確認することができる.
推薦者による分類は,商品情報の色分けによって実現する.
以上のように,タブレット端末と壁面間で情報を送受信
3.2 システムの機能
この節では,提案システムの機能をシナリオ形式で詳細
に述べる.提案システム全体の構成を図 1 に示す.
ユーザが CCClient を開くと,表示するユーザ名の入力を
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することにより,個人での商品探索と,候補を挙げて相談
するための情報共有を円滑に行うことが可能である.
複数の商品に関する議論の手助けとなる機能として,上
に述べた商品を自由に移動できる機能に加え,投票機能を
342
実装した.カーソルを商品画像に合わせた状態で CCClient
上の Like!ボタンを押すことで,カーソル上の商品に投票す
ることができる.1 つ以上の投票が行われると商品画像の
上に投票数バッジが表示され投票数が表示される.あえて
ユーザごとの持ち票数や,1 つの商品に対して投票できる
数といった制限は持たせないことで,利用する状況に応じ
て柔軟に利用できるようにした.
例えば,できるだけ多く商品を提案しようという状況で
あれば,他のユーザから興味が惹かれるような商品が提案
された際に Like!ボタンを連打してモチベーションを高め
るような使い方が想定されるし,逆に議論が成熟し,2 つ
の商品のうちどちらを選ぶかという状況であれば,運用上
の投票数を決めて,最終投票を行うといった使い方も想定
される.
4. 実装
システムの構成の詳細,データのやり取りを図 4 に示す.
プロジェクタに接続された PC では,ブラウザから Board
が配置された URI を開き,全画面表示で利用する.
各タブレット端末では,ブラウザを開き,CCClient が配
置された URI にアクセスして利用する.HTML5 と
JavaScript を利用した Web アプリケーションとしたことに
より,最新の標準的なブラウザが動作する環境であればプ
ラットフォームを問わず簡単に利用することができる.こ
の際に特殊なアプリケーションの導入やプラグインの導入
は必要ない.
なお,CCClient における操作と CCBoard における表示を
同期させ,またそのリアルタイム性を確保するためにはサ
ーバからブラウザへのプッシュ型通信を行う必要がある.
item images /
# of vote
これを実現するため,サーバとブラウザ間の通信に
WebSocket を利用した.また,WebSocket による通信を実
Server
装するにあたっては,サーバサイドアプリケーションを
Node.js 上で構築し,Node.js 用のライブラリである Socket.io
を利用した.Socket.io は WebSocket を容易に扱うためのブ
send item info /
vote to items
ラウザに依存しない API を提供し,さらに WebSocket が利
retrieve item info
PC
Projector
Wall
Living Room
Tablet
図 1
システム構成全体図 *
用できなかった場合に XHR polling のような通信手段にフ
ォールバックし,リアルタイム性を保持する機能を持つ.
ネットワークは CCBoard に接続するコンピュータおよび,
CCClient に接続するタブレット端末の両方が,一般的なオ
フィス環境で 802.11g 以上の品質が確保できる無線 LAN に
接続されていることを想定している.なお,通信状況に依
存するが,タブレット端末から LTE を用いた携帯電話通信
網を経由した接続を行った場合でも,無線 LAN 経由の接
続を行った場合と遜色なく利用できたことを付記しておく.
図 2
CCBoard(壁面投影)
図 4
システム構成詳細図
5. 評価実験
提案システムの有効性を検証するため,1 グループ 3 名
図 3
CCClient 操作画面
*"Projector" image is by Hakan Yalcin, from The Noun Project.
"Server" image is by Anna Laura Fara, from The Noun Project.
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の構成で 3 グループ,計 9 名を対象とし実験を行った.
被験者の内訳は,20 歳~30 歳までの男性 9 名である.
また 3 グループそれぞれの被験者は,日常的にスマートフ
343
表 1
ォンを使用しており,オンラインショッピングを月に 1 度
実験後のアンケート内容
は利用している被験者である.
質問内容
実験方法は,1 つの被験者グループに対し,3 つの実験
Q1
最終決定した商品に納得できたと思いますか
を行った.各実験では下記のように異なるインタフェース
Q2
自分が提案した商品が話題に取り上げられましたか
を用いたオンラインショッピングを行ってもらった.
Q3
自分が気づかなかった商品に気づかされましたか
Q4
部屋全体の雰囲気がつかめましたか
Q5
買った家具を置いた部屋のイメージがわきましたか
Q6
自由記述
実験 D:デスクトップ PC1 台
実験 T:タブレット端末 3 台
実験 C:提案システム
被験者には,実験後のアンケートの設問 Q1 から Q5 に対し
この際,後に行う実験で被験者が以前の結果を使いまわ
してしまうことを防ぐために,実験ごとに予算規模を変更
した.予算規模が変更されると,想定する部屋の広さと予
算の金額が連動して変更される.
て,1 点から 5 点の 5 段階評価で回答を求めた.
5.1 実験手順
この節では,今回の被験者実験の手順を記述する.
まず被験者に今回の実験の趣旨について説明した.その
際,提案システムの場合には, 20 分程度の時間を取り,
予算規模 小:8 畳,10 万円
操作方法の説明と練習を行ってもらった.その後,課題と
予算規模 中:10 畳,20 万円
して与える購買目的を伝えた.
予算規模 大:12 畳,30 万円
実験時間は最大 30 分で買い物を終了するように設定し
た.その後,表 1 の内容でアンケートの回答を得た.
各インタフェースを利用する順序と想定する予算規模の
5.2 実験結果
順序による影響を防ぐため,各グループはインタフェース
実験後アンケートの結果を図 5 に示す.縦軸は各設問に
と予算規模ともに異なる順序で実験を行った.また,イン
対する回答の平均値である.検定にあたっては,アンケー
タフェース - 予算規模の組み合わせも重複しないように
トの Q1 から Q5 の結果に対して,Steel の方法を用いて多
選択した.実際に行った実験パターンは以下の通りである.
重検定(p<0.05)を行い,Cyber Chamber とデスクトップ PC
D(大)は実験 D を予算規模大の設定で行うことを意味する.
間,Cyber Chamber とタブレット端末間について,有意差
があるかどうかを調べた.
グループ 1:D(大)→T(中)→C(小)
グループ 2:T(小)→C(大)→D(中)
グループ 3:C(中)→D(小)→T(大)
その結果,Q1 から Q3 に関しては,Cyber Chamber とデ
スクトップ PC 間,Cyber Chamber とタブレット端末間のす
べてにおいて,帰無仮説を保留するに留まった.Q4,Q5
に関しては,Cyber Chamber とデスクトップ PC 間,Cyber
また,今回設定した購買目的は,以下のような内容である.
Chamber とタブレット端末間のすべてにおいて,有意差が
見られた.
課題:ここにいる 3 名でシェアハウスをすることになりま
した.各個人の部屋は存在します.3 人が共同で使
用するリビング(洋室)のインテリアを 3 人で議論
しながら購入する商品を決定してください.その際,
インテリアのコーディネートに留意しながら,購入
する商品を決めてください.
リビングの広さは(8 or 10 or12)畳で窓は存在し,
予算は(10 or 20 or 30)万円とします.
エアコンは既についているものとします.
実験中の様子をビデオカメラで撮影し,発話内容を録音
した.加えて,実験後にアンケートに回答してもらった.
その内容を表 1 に示す.
図 5
実験後アンケート結果
更に実験中の発話内容の分析を行った.Cyber Chamber
を用いての実験の際,壁面に投影された商品情報を取得で
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344
きる機能について便利だ,といった内容や,個人の推薦し
大手ショップサイトを運営する楽天株式会社と連携し,実
た商品を壁面で並べて見られることに関して,イメージが
際に購買目的が設定された状態で,デスクトップ PC1 台と
わきやすい,といった発話がされていた.これは提案シス
タブレット端末複数台,提案システムの 3 パターンで比較
テムを評価するものであり,自由記述でも,選択した商品
実験を行った.
同士の組み合わせの検討や比較,グループ間での情報共有
その結果,提案システムによる買い物の満足度の向上は
のしやすさ,背景画像によるイメージの補助の評価などの
見られなかったが,情報共有のしやすさや商品同士の組み
記述が見られ,システムの有用性が評価されていた.
合わせに関して,提案システムの有用性を確認でき,商品
6. 考察
Q1 の結果に関して,帰無仮説を保留するに留まった.利
用するインタフェースが何であれ,複数人で相談を行うこ
の提案のしやすさに関して,有意な傾向が見られた.
今後の課題として,考察で得られた傾向や帰無仮説を保
留するに留まった商品の提案のしやすさに関して,サンプ
ル数を増やした追実験により,詳細に検討していく.
とができれば,買い物に対する満足度が向上すると考えら
れる.
しかし,発話内容に加えて実験中の映像から,特筆すべ
き興味深い傾向がみられた.それは,Cyber Chamber の使
謝辞
評価実験にご協力いただいた皆様,また会話分析
に関して議論をさせて頂き,有意義な助言をして頂いた黒
嶋智美氏に感謝の意を表する.
用の有無に関わらず,デスクトップ PC とタブレット端末
では,購買参加者同士の合意を形成する対象が異なる傾向
参考文献
にあるということである.
1) 平成 23 年度版 情報通信白書,
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc2133
10.html
2)
益 子 宗 , Shirmenbaatar Myagmarsuren, 酒 巻 隆 治 :
KiTeMiROOM:モバイル端末のためのファッションコーディネー
ト 支 援 シ ス テ ム , 電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌 ,
Vol.J96-D,No.10,pp.2286-2294 (2013).
3) Saleema Amershi, Meredith Ringel Morris. CoSearch:A System for
Co-located Collaborative Web Search. CHI’08, New York (2008).
4) Tim Paek, Maneesh Agrawala, Sumit Basu, Steve Drucker, Trausti
Kristjansson, Ron Logan, Kentaro Toyama, Andy Wilson. Toward
universal mobile interaction for shared displays. CSCW’04, New York
(2004).
5) Philip Tuddenham, Ian Davies, Peter Robinson. WebSurface:an
Interface for Co-located Collaborative Information Gathering. ITS’09,
New York (2009).
6) Meredith Ringel Morris, Jarrod Lombardo, Daniel Wigdor.
WeSearch:Supporting Collaborative Search and Sensemaking on a
Tabletop Display. CSCW’10, New York (2010).
7) Mathieu Nancel, Olivier Chapuis, Emmanuel Pietriga,
Xing-DongYang, PourangIrani, MichelBeaudouin-Lafon.
High-Precision Pointing on Large Wall Displays using Small Handheld
Devices. CHI’13, Paris (2013).
8) Bonifaz Kaufmann, David Ahlström. Revisiting Peephole Pointing:
A Study of Target Acquisition with a Handheld Projector. MobileHCI
'12, San Francisco (2012).
9) Bonifaz Kaufmann, Martin Hitz. X-Large Virtual Workspaces for
Projector Phones through Peephole Interaction. MM '12, Nara (2012).
10) Tokuo Yamaguchi, Hiroyuki Fukushima, Shigeru Tatsuzawa,
Masato Nonoka, Kazuki Takashima, Yoshifumi Kitamura.
SWINGNAGE: Gesture-based Mobile Interactions on Distant Public
Displays. ITS’13, New York (2013).
11) 庄司裕子, 堀浩一: 購買におけるコンセプト精緻化を支援す
るためのインタラクション手法とその評価, 日本知能情報ファジ
ィ学会誌, Vol.15, No. 3, pp.297-308 (2003).
12) 小池宏幸, 酒巻隆治: タブレット型デバイスによる協調購買
インターフェースの提案, IPSJ Interaction 2012.
13) 楽天 WEB SERVICE 楽天商品検索 API,
http://webservice.rakuten.co.jp/api/ichibaitemsearch/
デスクトップ PC の場合,例えばテレビであれば大きさ
といった,属性に対して合意形成を行おうとする.どうい
った属性の商品を買うかを合意形成した後,具体的な商品
探索に入っている.
タブレット端末の場合,具体的な商品に対して直接合意
を形成しようとしている.この理由は恐らく,タブレット
端末であると個々人で商品を直接提案可能だからと考えら
れる.実際にデスクトップ PC では具体的な商品の提案に
関する発言は少ない傾向がみられた.
一方で,Cyber Chamber はタブレット端末と同様の合意
形成が見られるが,それに比べて提案する敷居が低い.タ
ブレット端末だと提案するためには,必ず自分に注目して
もらわなければいけないが,他の人が集中して作業してい
る場合は,特にこれはプレッシャーになる.Cyber Chamber
では視覚的に提案できるから,画面に映すと自発的に気づ
いてくれるためである.
Q2,Q3 のアンケート結果について,帰無仮説を保留す
るに留まった.しかし,その結果から提案システムにおい
て,商品の提案のしやすさが傾向として見られる.自由記
述でも,選択した商品を簡単に共有できた,といった記述
が見られた.Cyber Chamber が商品の提案の敷居を下げ,
あるユーザの提案に他者が耳を傾ける機会を増加させたと
考えられる.
この傾向に関しては,サンプル数を増やした追実験によ
り今後詳細に検討したい.
7. まとめと今後の課題
本稿では,複数人で行う買い物に着目し,オンラインシ
ョッピングにおける複数人で行う新たな買い物の形態のた
めのシステム,Cyber Chamber を提案した.評価として,
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