別紙様式2
名古屋大学地球水循環研究センター
共同研究報告書
平成 27 年 3月 31日
名古屋大学地球水循環研究センター長 殿
申請者(研究代表者)清水 慎吾
所属機関 (独)防災科学技術研究所
職
主任研究員
氏名
清水 慎吾
e-mail
[email protected]
[email protected]。
1 研究課題
偏波レーダと雷データによる雷雲の 3 次元構造と発雷過程の解明
2 研究組織
氏名
代表者
清水慎吾
所属
防災科学技術研究所
職
分担研究課題
主任研究員
偏波レーダデータの解析
CReSS による数値シミュレーション
偏波レーダデータの解析
雷データの解析
観測・予測研究領域
水・土砂防災研究ユニット
分担者
櫻井南海子
同上
研究員
センター対応教員
名古屋大学地球水循環研究
教授
坪木 和久
センター
3 研究内容 (別紙)
平成 26 年度
名古屋大学地球水循環研究センター共同研究報告書
別紙
研究課題「偏波レーダと雷データによる雷雲の 3 次元
構造と発雷過程の解明」
代表者:
(独)防災科学技術研究所
清水慎吾
分担者:
(独)防災科学技術研究所
櫻井南海子
1)研究の目的
現在、気象庁の雷ナウキャストでは、反射強度を元に開発が進められている。偏波レー
ダが観測する変数を用いることで、より高精度な発雷指数を提案することが本研究の目
的である。
研究の背景と目的
• 広範囲・高時間分解能で降水・風を観測するレーダは、雷の監視・危険度予測に有効だ
と考えられる。
• これまで日本では、反射強度を用いた発雷指標が調べられてきた。(Michimoto1993; 気象庁の雷ナウキャスト:等温度面エコー強度・VIL・エコー頂高度
H21年度予報技術研修テキスト)
• 偏波パラメタは粒子の形状情報を得られるため、精度の高い指標の確立が期待される。
• 世界的にみて、1つの発雷指標についての統計的解析は行われているが、複数の発雷
指標を比較した研究は少ない。
• 2台の偏波レーダ(海老名・木更津)で2013年9月2日に越谷付近に竜巻をもたらした積
乱雲を時間分解能1分で捉えた。
使用データ
• 海老名・木更津のXMPデータ
解析期間:13:11~13:53 JST
時間分解能:1分
空間分解能:1km×1km×0.25km
• 落雷データ:フランクリン・ジャパンの2次元
落雷位置データ(緯度・経度・落雷時刻・電流値)
• 高層気象データ:館野, 2013年9月2日00Z
MPレーダ観測領域
研究目的
反射強度・偏波パラメタ・鉛直流それぞれを用いた発雷指標を比較し、
2
関東暖候期に発生する雷雲に対する実況に適した発雷指標を明らかにする。
2)解析方法
2013 年 9 月 2 日に埼玉県越谷市に竜巻をもたらした積乱雲を解析対象とした。防災科
研が所有する 2 台のMPレーダとフランクリンジャパン社の 2 次元落雷位置データを解
析に用いた。2 台のレーダが観測した動径風を用いて、デュアルドップラーレーダ解析
を行い、3 次元気流場を推定した。気温の高度分布は、館野の 09JST のゾンデを用いた。
対象とする積乱雲を自動的に抽出するために、積乱雲追跡プログラム AITCC を用いた。
落雷データと関係する偏波パラメータの統計処理を行う上で、異なる積乱雲のデータの
混在を防ぐことが可能となる。今回の事例では、36 dBZ の反射強度の等値線で囲まれ
る閉曲線内を積乱雲の領域と定義した。
レーダの探知範囲内で、積乱雲の 3 次元構造が可能であった、13 時 11 分から 13 時 53
分に取得されたレーダデータを解析対象とした。この期間では、2 台のMPレーダはセ
クタースキャン観測を行い、2 分間隔で積乱雲の 3 次元構造を観測することができた。
解析方法:積乱雲の3次元レーダデータの抽出
1. 高度2kmにおける反射強度36dBZの閉曲線で閉じた領域の面積が10km2以上の時、そ
の領域をMCSと定義する。
2. 対流セル及びメソ対流系システム(MCS)の自動追跡プログラムAITCC(Shimizu and Uyeda, 2012)を用いて、1のMCSを追跡。
3. 高度2kmにおける反射強度36dBZの閉曲線で閉じた領域をMCS領域とし、高度0kmから
17.25 kmまでのレーダデータを抽出した。
1. 追跡するMCSの決定
2. AITCCを用いてMCSを追跡
13:58 JST
14:00 JST
3. MCSの3次元データを抽出
14:02 JST
反
射
強
度
検出・
追跡結果
MCS
3)発雷指標について
以下に示すような9つの指標と発雷の関係を調べた。
17.25km
比較した発雷指標
発雷指標
使用パラメタ
① ZHのエコー頂高度の気温 [℃]
ZH
② ZHの鉛直勾配 [dBZ/km]
指標の説明
エコー頂高度の気温が閾値の気温より低いかどうかを調べ
た。
解析高度:0~-20℃間。
③ 固体降水(霰・小雹)の体積
[km3]
(Palucki et al. (2011)を参照)
ZH, ZDR, KDP
④ 固体降水(霰・小雹)の体積
[km3]
(Suzuki et al. (2012)を参照)
レーダパラメタの閾値は、ZH>36 dBZ, ZDR<0.3 dB, KDP<0.3 deg/kmとした。
解析高度:0~-20℃。
降雨判定条件(ZH‐KDP関係式, ZH‐ZDR関係式)を使用。
解析高度:0~-20℃。
ZH‐ZDR関係式…2007年7月に観測された降雨事例からZHに対
する雨のZDRの存在比が70%の範囲の上限と下限の値を2次
曲線で近似したもの。
ZH‐KDP関係式…Park et al. (2005)の降雨強度推定式から求め
た、ある降雨強度でのZHとKDPの関係。
これらの関係式から求まるZDR, KDPの値に比べ、観測値が小
さい場合を固体降水と定義した。
⑤ 上昇流域の体積 [km3]
W
解析高度:0~-20℃。
⑥ 最大上昇流 [m/s]
解析高度:0~-20℃。
⑦ 平均上昇流 [m/s]
解析高度:0~-20℃。
⑧
③と⑤を満たす体積 [km3]
⑨
④と⑤を満たす体積 [km3]
ZH, ZDR, KDP, W
解析高度:0~-20℃。
解析高度:0~-20℃。
①と②は、従来の反射強度をベースとした指標で、③と④が偏波レーダによって取得す
ることができる、反射因子差(Zdr)や偏波間位相差変化率(Kdp)を用いた指標となって
いる。⑤から⑦は、2 台のレーダによるデュアルドップラーレーダ解析によって得られ
る、上昇流をベースとした指標である。⑧および⑨については、上記の指標を組み合わ
せて作られたものである。
4)発雷指標の評価方法について
発雷指標の時系列データにおいて、閾値を超えた時刻を「レーダによる発雷判定有り」
とし、同様に、解析した積乱雲の領域内に落雷が1回でもあれば、その時刻を「実況あ
り」とする。「発雷判定有り」と「実況あり」が同時に発生した場合、を「適中」とし
た。下の図に示すような式を持ち手、それぞれの発雷指数の閾値において、適中率、空
振り率、補足率を計算した。
発雷指標の評価方法
• 6つの発雷指標の時系列データにおいて、その発雷指標がある閾値を
越えた時刻を“レーダによる発雷判定あり”と定義。“発雷判定あり”と定
義された時刻の数を“発雷判定あり”の事例数とする。
• 二次元落雷位置データを用いて、解析した積乱雲の領域内に落雷が1回
でもあれば、その時刻を“実況あり”と定義。“実況あり”と定義された時
刻の数を“実況あり”の事例数とする。
• 様々な閾値を試行し、適中率が最大となる閾値で得られた結果を次頁に
示す。総時刻数(A+B+C+D)=43個
実況
レーダ
発雷判定
適中率 =
雷あり
雷なし
パラメタが閾値以上
A
B
パラメタが閾値以下
C
D
A+D
A+B+C+D
空振り率=
B
A+B+C+D
補足率 =
A
A+C
7
適中率が最大となる閾値を以下の表にまとめた。
発雷指標の比較
適中率
空振り率 捕捉率 発雷指標の閾値
①
0.8140
0.0000
0.6364 気温=‐20℃。ZH=48 dBZ
②
0.6977
0.0233
0.4545 ZHの鉛直勾配=‐3 dBZ/km
③
0.9070
0.0233
0.8636 体積=28~32 km3
④
0.8837
0.8837
0.1163
0.0930
1.0000 体積=121~132 km3
0.9545 体積=134 km3
⑤
0.9302
0.9302
0.0698
0.0465
1.0000 体積=137~146 km3, 上昇流=2 m/s
0.9545 体積=154~159 km3, 上昇流=2 m/s
⑥
0.6977
0.6977
0.1860
0.0000
0.7727 最大上昇流=5 m/s
0.4091 最大上昇流=7 m/s
⑦
0.8837
0.0930
0.9545 平均上昇流=1.5 m/s
⑧
0.8605
0.8605
0.1163
0.0233
0.9545 体積=3 km3
0.7727 体積=9 km3
⑨
0.8837
0.8837
0.1163
0.0698
1.0000 体積=36~46 km3
0.9091 体積=53, 54 km3
11
5) まとめ
以下の図に結論と今後の課題をまとめた。
まとめと今後の課題
まとめ
 2台のMPレーダによる雷雲の同時観測を関東夏季で実施し、高
時間分解能(1分)のレーダデータを取得した。
 レーダパラメタを用いた複数の発雷指標を比較した。
-上昇流域の体積を用いた指標は、比較した発雷指標の中で、
雷検出の適中率が最も高かった。
-偏波パラメタを用いた指標は、従来の反射強度を用いた指標に
比べて、雷検出の適中率が高かった。
偏波パラメタを用いた指標は、反射強度のみを用いた指標に比べ
て、上空の固体粒子(霰・小雹)を高精度で抽出できることから、発
雷指標として有効だと考えられる。
今後の課題
 解析事例を増やし、関東夏季における発雷の実況に適した指標
を抽出する。
 予報に適した指標を抽出する。
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