平成20年度理数教育ステップアップ研修
数学B
数列
研究授業
∼生徒自らが作る数列の和の式∼
新潟県立新発田高等学校
1
期日
平成20年10月21日(火)
研究授業 13:45∼14:40 2年5組教室(仮校舎2階)
研究協議 14:55∼16:25 会議室(仮校舎1階)
2
指導目標
瀧澤
博信
簡単な数列とその和及び漸化式と数学的帰納法について理解し、それらを用いて事象を数学的に考
察し処理できるようにする。
3
本単元における「理数の面白さや深く追求する楽しさなどを味わわせる」視点
小学校での「伴って変わる二つの数量」と中学校での「文字を用いた式」をふまえ、数量関係の
問題はその後「関数」と「規則性の問題」(明記はされていないが)の2方向に分岐する。高校数学
では、関数の流れは実数全体に定義された x の連続関数として、2次関数、三角関数などを経て微
分積分に向かう。これは数学Ⅰ→数学Ⅱ→数学Ⅲのラインそのものであるが、もう一方の規則性の
問題の流れは数学Aの集合、場合の数などを経て、自然数 n に伴う規則性の集大成として数学Bの
数列に至る。この流れ(数学A→数学B)は現在の高校数学では傍流扱いになっているが、この後数
学Ⅲの最初に「無限数列」が待っており、数学Ⅱでは最小限の扱いで済ませてある極限の概念を、
より深く理解するための道具としての出番が用意されている。また数列で確立される、規則性に注
目した考え方の用途は広く、漸化式や数学的帰納法などは数学Ⅲ以外でも他の単元との融合がよく
見られる考え方である。
他方、この数列という単元を苦手とする生徒が、文系はもちろん、数学Ⅲを選択する理系にも多
く存在する。その原因としては、圧倒的な抽象性の高さ、これまで1,2,3,・・・程度の規則性で
済んでいた世界が、ほぼすべてに自然数の代表 n を用いた世界に拡大されることや、式変形の量と
細かさ(特に添え文字と指数)、Σに代表される公式群、そして他の単元では理解の助けになる図形
的な(目で見て分かる)要素が極端に少ないことなどがあげられる。また、ある程度使えるようにな
るために覚えておかなければいけない、公式化できない手法が、数列の和と漸化式を中心に多数存
在することも、大きな障害になっている。
これらすべてを同時に解決することは難しいが、今回は数列の和に注目して、これらの解決の糸
口としたい。自力で数列の和の式を作ることを通し、作成した式への素朴な驚き、更に難しい和へ
挑戦する態度、逆の発想が生む解法など、数列という道具が持つ魅力を伝えてみたい。
重要性を理解し、活用できるようになるまでに厳しい道のりが待っている単元であるが、それを
乗り越えたとき、規則性の持つ美しさ、面白さががそこに見つかるはずである。
4 指導と評価の計画(全30時間)
次
学習内容
学習活動
1 等差数列・等比数列
数列とその項
2
3
いろいろな数列
評価と方法
数列の意味とその表し方、一般項に
ついて理解する
等差数列
等差数列とその一般項、和の求め方
が分かる
等比数列
等比数列とその一般項、和の求め方
が分かる
和の記号Σ
Σの意味や平方の和の公式、Σの性
質などを理解する
数列の和と一般項
和の式から一般項を求めたり、階差
数列を活用することができる
いろいろな数列の和
多様な和の求め方を理解する
漸化式と数学的帰納 漸化式
法
数学的帰納法
漸化式の意味と、漸化式の解き方を
理解する
数学的帰納法の意味を理解し、等式
や等式の証明に応用できる
※本時はこれらの内容の履修後、2時間の内容として設定したうちの2時間目となる。
基本的には2「いろいろな数列」の復習であるが、考え方に漸化式や数学的帰納法も含まれる。
5
評価規準
関心・意欲・態度
全 数列を活用していろい
体 ろな事象について活用
しようとする
い 数列の和について、そ
ろ の規則を調べ、 n の式
い で表そうとする
ろ
な
数
列
数学的な見方や考え方
表現・処理
知識・理解
簡単な数列とその和お 数列や数学的帰納法を 数列や帰納法について
よび漸化式と数学的帰 用いて事象を処理する 理解している
納法を用いて事象を数 ことができる
学的に考察することが
できる
数列の和の意味を発展 Σ記号を用いて、数列 Σ 記 号 の 意 味 を 理 解
的に考え、多様な問題 の和を表すことができ し、数列の規則や和を
を考察することができ る
求める過程を理解して
る
いる
6
本時の計画(29/30、30/30時間)
(1) ねらい
任意の関数から数列の和の式を生徒に自作させる活動を通して、数列の和の不思議さを考えるとと
もに、そこから得られる考え方を用いて、新たな問題を自力で解く意欲を育てる。
(2) 本時における「理数の面白さや深く追求する楽しさなどを味わわせる」指導の構想
1時間目(10月20日、プリント①②参照)
1時間目の構想 「問題作成」という手法を使って
通常の問題作成の授業では、元問題の一部を変えた新しい問題を生徒に作成させることによって、
より発展的な内容に自ら気付かせることに主眼を置くことになる。その面からいえばこの「数列の
和の式を自作する」というのは、出てくるものが今までの内容の再確認にあたるものが多く、発展
的な内容は一部にしか期待できない弱点を持っている。しかし数列の和という抽象性の高い式を自
ら作り出す経験はそう簡単にできることではなく、その経験そのものが理数のおもしろさや楽しさ
につながり、与えられたものをこなすだけで精一杯という数列の学習に、新たな一面を加えること
が可能だと考えている。
①
例題1の提示
各項を部分分数に分けることによって得られる和の問題を提示
②
例題1から分かることの抽出(後出「魔法の鍵」参照)
項が規則にしたがって分割できるときの和の求め方をまとめる
③ 例題2の提示
例題1とは逆に、自分で関数を決めて和の式が作れることを提示
④
生徒による自作
自分で決めた関数から、いくつかの問題を作成させる。計算や証明ができるものは自力で
やってみる。
⑤
作成例の例示(板書)
※この段階での期待される作成例
①
f ( k ) = 3k
とすると
a k = f (k + 1) − f (k ) = 3(k + 1) − 3k = 3
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = 3 + 3 + L + 3 ・・・①
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = 3(n + 1) − 3 = 3n ・・・②
①=②より
3 + 3 + 3 + L + 3 = 3n
②
とすると
f (k ) = 3k
a k = f ( k + 1) − f ( k ) = 3 k +1 − 3 k = 2 ⋅ 3 k
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = 2 ⋅ 3 + 2 ⋅ 3 2 + 2 ⋅ 33 + L + 2 ⋅ 3 n ・・・①
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = 3 n +1 − 3 ・・・②
①=②より
注:整理すると
③A
2 ⋅ 3 + 2 ⋅ 3 2 + 2 ⋅ 33 + L + 2 ⋅ 3 n = 3 n +1 − 3
1 + 3 + 3 2 + L + 3 n −1 =
3n − 1
2
等比数列の和そのものになる
とすると
f (k ) = (k − 1) 3
a k = f ( k + 1) − f ( k ) = k 3 − ( k − 1) 3 = 3k 2 − 3k + 1
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = 3(12 + 2 2 + L + n 2 ) − 3(1 + 2 + L + n) + n ・・・①
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = n 3 ・・・②
①=②より
3(12 + 2 2 + L + n 2 ) − 3(1 + 2 + L + n) + n = n 3
注:①の整理に若干工夫が必要。
ここから
1 + 2 +L+ n =
2
2
n3 +
2
3
n(n + 1) − n
1
2
= n(n + 1)(2n + 1)
3
6
となる。
また、 f (k ) = k 3 でもできるが、 f (n + 1) − f (1) = n 3 + 3n 2 + 3n となりやや面倒。
教科書の証明ではこちらが用いられる。
③B
f (k ) = (k − 1)k (k + 1)(k + 2)
とすると
ak = f (k + 1) − f ( k ) = k ( k + 1)( k + 2)( k + 3) − ( k − 1) k ( k + 1)( k + 2)
= k ( k + 1)( k + 2){( k + 3) − ( k − 1)} = 4k ( k + 1)( k + 2) = 4k 3 + 12k 2 + 8k
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = 4(13 + 23 + ⋅ ⋅ ⋅ + n3 ) + 12(12 + 22 + L + n 2 ) + 8(1 + 2 + L + n) ・・・①
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = n(n + 1)(n + 2)(n + 3) ・・・②
①=②より
4(13 + 23 + ⋅ ⋅ ⋅ + n3 ) + 12(12 + 22 + L + n 2 ) + 8(1 + 2 + L + n) = n(n + 1)(n + 2)(n + 3)
注: ∑ k 3 =  1 n(n + 1)
n
2
k =1
2
を導く別解となる。この方法を拡張すれば、③Aの

n
方法を拡張するより少し楽に、 ∑ k 4 も求められる。
k =1
n
n
n
n
k =1
k =1
k =1
k =1
5∑ k 4 + 30∑ k 3 + 55∑ k 2 + 30∑ k = n(n + 1)(n + 2)(n + 3)(n + 4)
④
f (k ) = k 2 k −1
とすると
a k = f ( k + 1) − f ( k ) = ( k + 1) 2 k − k 2 k −1 = ( k + 2) 2 k −1
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = 3 ⋅ 1 + 4 ⋅ 2 + 5 ⋅ 2 2 + L + (n + 2)2 n −1 ・・・①
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = (n + 1)2 n − 1 ・・・②
①=②より
3 ⋅ 1 + 4 ⋅ 2 + 5 ⋅ 22 + L + (n + 2)2 n −1 = (n + 1)2n − 1
注: S n − 2S n を使って確認できる。この問題に近いものを生徒が作成してくれるように
誘導する。収束問題として「魔法の鍵」を解く問題として使う予定。
⑤
とすると
f (k ) = log 2 k
a k = f ( k + 1) − f ( k ) = log 2 (k + 1) − log 2 k = log 2
k +1
1
= log 2 (1 + )
k
k
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = log 2 (1 + 1) + log 2 (1 + 1 ) + L + log 2 (1 + 1 ) ・・・①
2
n
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = log 2 (n + 1) − log 2 1 = log 2 (n + 1) ・・・②
①=②より
1
1
log 2 (1 + 1) + log 2 (1 + ) + L + log 2 (1 + ) = log 2 ( n + 1)
2
n
注: log 2 (1 + 1)(1 + 1 ) L (1 + 1 ) = log 2 (n + 1) より (1 + 1)(1 + 1 ) L (1 + 1 ) = (n + 1)
2
n
2
である。
n
9月の第3考査で S n = log 2 (n + 1) から an を求める問題として出題している。
⑥
f ( k ) = 2 k ⋅ k!
とすると
a k = f ( k + 1) − f ( k ) = 2 k +1 ( k + 1)!−2 k k! = 2 k k!( 2k + 1)
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = 2 ⋅ 1!⋅3 + 2 ⋅ 2!⋅5 + L + 2 ⋅ n!⋅( 2n + 1) ・・・①
2
n
また、 S n = f (n + 1) − f (1) = 2 n +1 (n + 1)!−2 ・・・②
①=②より
2 ⋅ 1!⋅3 + 2 2 ⋅ 2!⋅5 + L + 2 n ⋅ n!⋅(2n + 1) = 2 n +1 (n + 1)!−2
注:数学的帰納法で証明するレベルの問題。計算手段のない場合の最終手段。
(参考:三角関数の例)
1
f (k ) = cos( k − )θ
2
とすると、 cos A − cos B = −2 sin A + B sin A − B (和積公式)より
2
2
θ
1
1
a k = f ( k + 1) − f ( k ) = cos( k + )θ − cos( k − )θ = −2 sin kθ sin
2
2
2
このとき、 S n = a1 + a 2 + L + a n = − 2 sin θ sin θ − 2 sin 2θ sin θ − L − 2 sin nθ sin θ ・・・①
2
2
2
また、 f (n + 1) − f (1) = cos( n + 1 )θ − cos 1 θ = −2 sin n + 1 θ sin n θ ・・・②
2
2
2
2
①=②より − 2 sin θ sin θ − 2 sin 2θ sin θ − L − 2 sin nθ sin θ = −2 sin n + 1 θ sin n θ
2
sin
θ
2
≠ 0 なら
2
2
sin θ + sin 2θ + L + sin nθ =
sin
n +1
n
θ sin θ
2
2
sin
2
2
となる
θ
2
注:この例題は本来、積和公式 sin α sin β = − 1 {cos(α + β ) − cos(α − β )} を用い、
2
sin kθ sin
θ
1
1
1
= − {cos( k + )θ − cos( k − )θ }
2
2
2
2
と分解して
sin θ + sin 2θ + L + sin nθ を求める問題である。入試レベルでも、誘導がかからない
限り無理な問題であろう。和積・積和公式は数学Ⅲの内容であるが、数学Ⅱの
教科書の発展事項で掲載されている。
2時間目(10月21日、本時)
2時間目の構想 「魔法の鍵」について
数列の和の自作を経てみると、いろいろな関数が「魔法の鍵」となって数列とその和を構成してい
ることが分かる。この「魔法の鍵」は最初に少し顔を出すだけで、最後の等式にはほとんどその姿を
見つけることができないので、あえてこの言葉を使っている。ここではもう一度「魔法の鍵」の役割
を考え、1時間目の「例題1から分かること」に戻った和の求め方を考え、一連の問題作成の収束先
としたい。
すべての数列 a n の一般項から、a k = f (k + 1) − f (k ) となる関数 f (k ) が見つかるわけではない。どちら
かというと「見つかるとうれしいな」程度のもので、実際の問題でも難度が高ければ誘導かかかる
であろう。これを自力で見つけるためには、下の②で示したとおり、ある程度 a k が導ける f (k ) の形
を類推できる力が必要になる。もっともこの関係は、数列の和 S n と一般項 a n 、 a n とその階差数列 bn
との間に見られる関係と近いので、方向性だけでも知っていれば誘導に乗ることは難しくないと思
われる。
またこの関係を深く調べると、一般的な方法として「 f (k ) の差分 a k から f (k ) を求める」ことに行
き着く。これは差分方程式(を解く)と呼ばれるもので、いろいろな関数の差分を求めること、その
組み合わせ方を考えることによってある程度までは公式化、手法化が可能であり、
「 F ( x) の微分 f ( x)
から F ( x) を求める」微分方程式を解く手順を組み立てる流れとほぼ同様でもある。
漸化式や帰納法でも見られる、この「局部的な変化の分析から、全体を類推する」という考え方
は、この後の微積分を中心とした数学の考え方にも大きく影響していくが、同時に現在の変化の状
況が未来に対してどのように影響するか、逆に現在の変化の状況がどんな過去から及ぼされたのか
を類推する過程、つまり未来や過去を現在から推測するという理数に共通するテーマの基礎となる
考え方でもある。魔法の鍵を見つける作業が単に和の処理のためではなく、未来へつながる作業で
あることを示してみたい。
①
生徒作成問題の分類、計算や証明の確認
②
収束問題としての「魔法の鍵」の見つけ方
a k → f (k ) → S n
S n = 1 ⋅ 1 + 4 ⋅ 2 + 7 ⋅ 2 + L + (3n − 2)2
の手順
(解答) a k = (3k − 2) 2 k −1
2
n −1
を求めよ
とする。
(作成例④と同様と考えられるので、)仮に f (k ) = (bk + c)2 k −1 と考えてみる。
このとき、 f (k + 1) − f (k ) = {b(k + 1) + c}2 k − (bk + c)2 k −1 = (bk + 2b + c)2 k −1
これが a k = (3k − 2) 2 k −1 と(恒等式として)等しいとき、 b = 3 、 2b + c = −2
これを解いて、 b = 3 、 c = −8 となる。つまり f (k ) = (3k − 8)2 k −1
このとき S n = f (n + 1) − f (1) = (3n − 5)2 n + 5 であるから、
S n = 1 ⋅ 1 + 4 ⋅ 2 + 7 ⋅ 2 2 + L + (3n − 2)2 n −1 = (3n − 5)2 n + 5
注:この問題は9月末の第3考査に出題した問題で、S n − 2S n の方法での完答率は 25%であった。
仮にとして計算が始まるところが恐ろしいが、最初の
1
1
1 も、 1
b
c
= −
= a( +
)
k (k + 1) k k + 1
k (k + 1)
k k +1
が恒等式となるとしてスタートすべき問題である。問題作成を通じて、 ak → f (k ) n の
洞察力が養えれば、と考えている。
(3)
2時間目の展開(別紙)
(4) 評価
回収したプリントの内容、生徒の取り組みなどから以下の観点で評価する
○自ら進んでいろいろな関数を試して、多様な数列の和の式を意欲的に作成することができたか
(関心・意欲・態度)
○自作した式を考察し、既習事項と結びつけて考えたり、新たな解き方として確立することが
できたか(数学的な見方や考え方)
○関数から数列の和の式を作る過程を、計算で表現できたか(表現・処理)
○既習の数列の和の公式等を再確認し、理解に結びつけられたか(知識・理解)
ダウンロード

平成20年度理数教育ステップアップ研修 研究授業 数学B 数列 ∼生徒