数学科の竹本です.意味がわからなくても素直に誘導に乗れば解ける問題です.意外に (2) ができな
かったりするのですが大丈夫でしょうか?ただの等比数列であることに気づけば難易度はそこまで高
くありません.
数学第1問(IIIC)
z を複素数とする.自然数 n に対して zn の実部と虚部をそれぞれ xn と yn として,2 つの
数列 {xn},{yn} を考える.つまり ,zn = xn + iyn を満たしている.ここで i は虚数単位であ
る.次の各問いに答えよ.
(1) 複素数 z が,実数 q を用いて z = cosq + isinq の形で与えられたとき,任意の自然数 n
に対して xn = cosnq,yn = sinnq が成り立つことを数学的帰納法を用いて証明しなさい.
(2) 複素数 z が,正の実数 r と実数 q を用いて z = r(cosq + isinq) の形で与えられたとする.
このとき,数列 {xn},{yn} がともに 0 に収束するための必要十分条件を r,q を用いて表せ.
(3) z =
•
•
1 + 3i
のとき S xn , S yn を求めよ.
n =1
n =1
10
(解答)
(1) 数学的帰納法で示す.
(i) n = 1 のとき
z = cosq + isinq より x1 = cosq,y1 = sinq であるから成り立つ.
(ii) n = k のとき
zk = xk + iyk = coskq + isinkq
が成り立つと仮定すると ,n = k + 1 のとき
zk+1 = xk+1 + iyk+1 = cos(k + 1)q + isin(k + 1)q
となることを示せばよい.
zk+1 = zk • z
=(coskq + isinkq)(cosq + isinq)
=(coskqcosq - sinkqsinq) + i(sinkqcosq + coskqsinq)
= cos(k + 1)q + isin(k + 1)q
となり n = k + 1 のとき成り立つ.
(i),(ii) より示せた.
(2) (1) より
zn = rn(cosnq + isinnq)
となるので
xn = rncosnq,yn = rnsinnq
となる.ここで
lim xn = 0 かつ lim yn = 0
n →•
n →•
であるとき
lim (xn 2 + yn 2 ) = 0 - lim r 2n = 0
n →•
n →•
となるので
-1 < r2 < 1 - 0 < r < 1
となることが必要である.逆にこのとき
0 ≤ xn = r n cos nq = r n cos nq ≤ r n
0 ≤ yn = r n sin nq = r n sin nq ≤ r n
となり,
lim r n = 0
n →•
であるから,はさみうちの原理より
lim xn = 0 , lim yn = 0 - lim xn = 0 , lim yn = 0
n →•
n →•
n →•
n →•
となり十分である.以上より求める条件は 0 < r < 1 である.
(3) z =
ª
1
3
1
p
p
+
i = cos + i sin
10 10
5
3
3
⎛ 1⎞
zn = ⎜ ⎟
⎝ 5⎠
n
º
と変形できるので (1) より
np
ªcos np
+ i sin
º
3
3
n
となる.ゆえに
(2) から z → 0 となるので
•
Sz
n =1
n
=
z
1-z
1 + 3i
10
=
1 + 3i
110
1 5 3
=
+
i
14
48
より
•
となる.
1
•
S xn = 14 , nS= 1yn =
n =1
5 3
48
解答の流れは理解できたでしょうか? (1) は有名問題で「ド・モアブルの定理」の証明です.複素数
の累乗の計算や n 乗根を求めるときに用います.そのためにはまず複素数を「極形式」で表さないと
いけません.(2) の形“ r(cosq + isinq)”の形を極形式といいます.(3) は (1),(2) を用いるために極形
式に変形していますが,今回はこの変形とド・モアブルの定理に注目して理解を深めていきたいと思
います.
《複素数平面と極形式》
複素数 z = a + bi に対して,z の実部 , 虚部を横軸,縦軸とする座標平面を複素数平面といいます.
z = a + bi と 実数の組 (a,b) は 1 対 1 に対応するのでこのようなことができます.複素数平面では横
軸に実部,縦軸に虚部をとります.複素数 z = a + bi に対して,直交座標 (x,y) の極座標表示を (r,q)
とすると
z = r(cosq + isinq)
が成り立ちます.これを複素数 z の極形式といいます.
もっと簡単に説明すると
2
r = a +b
2
Im
r
を求めて z を r でくくると
cos q =
a
b
, sin q =
r
r
となるから・・・ですが,図を見ると明らかですよね.
z = a + bi
b
q
O
a
Re
r を z の絶対値,q を z の偏角といい arg z で表します.
《極形式の積・商》
複素数 z1 = r1(cosq1 + isinq1),z2 = r2(cosq2 + isinq2) の積と商がどのようになるのか考えてみましょ
う.まず積からですが
z1z2 = r1r2(cosq1 + isinq1)(cosq2 + isinq2)
= r1r2{(cosq1cosq2 -sinq1sinq2) + i(sinq1cosq2 + cosq1sinq2)}
= r1r2{cos(q1 + q2) + isin(q1 + q2)}
となるので,絶対値は積の形に,そして偏角は和の形になるのがわかります.次に商ですが
z1
r (cos q 1 + i sin q 1 )
= 1
z2
r2 (cos q 2 + i sin q 2 )
=
r1 (cos q 1 + i sin q 1 )(cos q 2 - i sin q 2 )
r2 (cos q 2 + i sin q 2 )(cos q 2 - i sin q 2 )
r1 {(cos q 1 cos q 2 + sin q 1 sin q 2 ) + i(sin q 1 cos q 2 - cos q 1 sin q 2 )
r2 (cos 2 q 2 + sin 2 q 2 )
r
= 1 {cos(q 1 - q 2 ) + i sin(q 1 - q 2 )}
r2
=
となるので,絶対値は商の形に,そして偏角は差の形になるのがわかります.
以上のことから,極形式の積や商には拡大・縮小(= 絶対値の積・商)と回転 (= 偏角の和・差 ) と
いう図形的な性質があることがわかりました.
《ド・モアブルの定理》
極形式の積・商から n を整数として
zn = cosnq + isinnq
が成り立ちます.これをド・モアブルの定理といいます.実際,今回の問題では n が自然数のとき
を証明しましたが,n = 0 のときは明らかに成り立つことがわかります.n < 0 のときは m = -n と
して n > 0 のときの式を利用すれば証明できます.
《まとめ》
複素数 z1 = r1(cosq1 + isinq1),z2 = r2(cosq2 + isinq2) に対して次のことが成り立つ.
1 z1 z2 = r1 r2 , arg z1 z2 = arg z1 + arg z2 2 z1
r
z
= 1 , arg 1 = arg z1 - arg z2
z2
r2
z2
n
n
n
3 z1 = r1 , arg z1 = n arg z1 (n : 整数 )
上のまとめの式を見て,偏角が対数の性質に似ているなと思った方はなかなか鋭いと思います.
実は複素数の極形式は
cosq + isinq = eiq (e は自然対数の底)
という関係式があるのです. これをオイラーの公式といいます.q = p とすると
eip = -1
という素敵な(?)式がでてきます.超越数が一同に登場する華麗な式ですね!
最後に高校範囲(?)でできる証明を紹介しておきます.
(証明)
f(q) = (cosq - isinq)eiq
として両辺を微分すると
f ′(q) = (- sin q - icos q)e iq + (cos θ - i sin θ )ie iθ = 0
となるので,f(q)
は定数関数となり
f(0) = 1
であるから f(q) = 1 となる.よって
(cosq - isinq)eiq = 1
となるので両辺に cosq + isinq をかけて
cosq + isinq = eiq
となる.
今回は背後に複素数平面が見える問題を扱ってその背景を扱いました.少し高校範囲をオーバーし
ましたが・・・.背景がある入試問題では知っていれば断然有利なものが多いので余力のある人はチャ
レンジしてみてください.次回も恐らく複素数平面でいきます☆
ダウンロード

数学第1問(IIIC)