2-133
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
一般化座標系における遠心力を考慮した波動方程式の導出
中央大学理工学部
(株) エコー
中央大学理工学部
1.はじめに
○山田
拓也
正会員
原
信彦
フェロー会員
山田
正
~
x3
α
津波の河川遡上や洪水波の流下等,河川を伝播する波動現
y
~
x2
象は河川管理上非常に重要な問題である.特に河川蛇行部で
正会員
θ~
x1
は曲率に伴う遠心力の影響により,波の振幅が増大する事が
X3
谷線
~
x2
X1
~
x1
θ
X2
θ0
谷線
x
蛇行流路曲線
考えられる. 本研究では任意河川形状に沿う一般化座標系を
蛇行長 L
α
用いて地形形状を正確に考慮した河川に於ける波動解析を行
う.テンソル解析に基づき任意河川形状に沿う座標系へオイラ
蛇行流路中心線
図-1 変数及び座標系の定義図
ー方程式を座標変換する.さらに変換した基礎式を用いて河
(1)(2)の全項は反変テンソル成分である.
川形状による遠心力を考慮した波動方程式を導出し,Sine
2.2 河川に沿う一般化座標系への座標変換 河川に沿う一般
Generated Curveで表現される蛇行水路を例として遠心力が波
化座標の概要及び変数定義を図-1に示す.河川に沿う座標系
に与える影響を解析した.
とデカルト座標の関係式を式(3)(4)(5)に示す.式(6)を適用する
2.一般化座標系でのオイラー方程式・不定流方程式
と,Sine Generated Curve 座標系となる.式(1)(2)を河川に沿う一
2.1 テンソル表記の基礎方程式 流体運動を理論解析や数値
般化座標系に変換すると式(7)(8)(9)(10)となる.式(7)は連続式,
実験で解析する場合,解析空間は通常複雑な地形形状を有
式(8)(9)(10)は各々 ~
x1, ~
x 2 ,~
x 3 方向の運動方程式, u i はテ
する場合が多い.この場合,デカルト座標系に基づき矩形メッシ
ンソル成分から物理成分へと変換した河川に沿う座標での i 方
ュを作成して解析を行う事は,物理現象を正しく捉えられず,
向流速である.但し,式(8)(9)(10)は谷線と流路中心線との偏角
解析上も境界条件の設定が非常に複雑になるため解析手法と
θ (Sine Generated Curve では式(13))を適用しておらず,従って
して有効ではない.この様な背景から,本研究ではテンソル解
偏角 θ の与え方により様々な河川形状に適用可能な,極めて
析を用いて任意の地形に沿う一般化座標系への座標変換を行
一般的なオイラー方程式である.現実の河川形状を理論・数値
い波動解析を行う.テンソル成分表記のオイラー方程式及び
解析における座標系として取り込むためには,偏角 θ を実際の
連続式は式(1)(2)で表される. ~
xi = (~
x1, ~
x2, ~
x3 ) は地形適合座標,
河川形状に合う様に定めればよい.ここで独立変数の表記を
xi = (x1, x2 , x3 ) = (x, y, z) はデカルト座標, u~ i は i 方向流速の
~
xi = (~
x1, ~
x2, ~
x3) = (sa, na, za) と書き直す.式(10)を用いて静水圧近
テンソル成分,下付添字はテンソルの共変成分,上付添字は
~
反変成分を表す.また ρ は密度,g は重力加速度, G ij は共変
似を適用後,式(7)(8)(9)を z a 方向に断面積分を行い流下方向
計量テンソル,L は蛇行長,下付添字;は共変微分であり,式
但し水面には運動学的条件,河床は平坦床と設定した.式
及び横断方向の流量フラックス M,N を用いて上式を書き直す.
~
~x 1
x1
∂u~ i ~ j ~ i
1 ~
~ ∂x 3
+ u ⋅ u ; j = − G ij p; j − gG ij ~ j (1)
x1 =  ∫ cos θd~
x1 − ~
x 2 sinθ  cos α + ~
x 3 sin α (3)
x 2 = ∫ sinθd~
x1 + ~
x 3 cos α
u~ j ; j = 0 (2)
0
0
∂t
ρ
∂x


1
~
1
3
~
x1
2
x
π


∂
u
u
∂
∂
∂
∂
θ
θ






θ = θ 0 cos
x 3 = − ∫ cos θd~
x1 − ~
x 2 sinθ  sin α + ~
x 3 cos α (5)
+ 2 1 − ~
x 2 ~1 u 2  + 1 − ~
x 2 ~1  ~ 3 = 0 (7)
(6)
L

 0
∂~
x 1 ∂~
x 
∂x  ∂x
∂x   
−1
−1
−1
1
1
1
1
∂θ  dθ
∂θ  1 ∂P
∂u
∂u
∂u  ~ 2 ∂θ  1 ∂u


x 2 ~1  ~1 − g cos θ sin α + 1 − ~
x 2 ~1 
= 0 (8)
+ 1 − x ~1  u ~1 + u 2 ~ 2 + u 3 ~ 3 − u 1u 2 1 − ~
x1
∂x  dx
∂x  ρ ∂~
∂x
∂x
∂x 
∂x
∂t 


−1
−1
2
1 ∂P
∂θ  dθ
∂u 2
∂u 2
∂u 2  ~ 2 ∂θ  1 ∂u 2
=0
x 2 ~1  ~1 + g sinθ sin α +
+ 1 − x ~ 1  u ~ 1 + u 2 ~ 2 + u 3 ~ 3 − u 1 1 − ~
∂x  dx
ρ ∂~
x2
∂x
∂x
∂x 
∂x
∂t 

( )
∂N
∂t
−1
1 ∂P
∂u 3
∂u 3
∂u 3  ~ 2 ∂θ  1 ∂u 3
=0
+ 1 − x ~1  u ~1 + u 2 ~ 2 + u 3 ~ 3 + g cos α +
ρ ∂~x 3
∂x
∂x
∂x 
∂x
∂t 
 β 2 MN 
1
∂η
2β 2 MN
dθ
=0
− gη cos θ sin α + gη cos α
 −


dθ  ∂sa
 η  η 1 − n dθ  dsa


1
n
−
a
a




dsa 
dsa 


∂M
∂η
1
 β1M 2 − β 3 N 2  dθ
1
1
∂η
∂  β 2 MN  ∂  β 3 N 2 
− gh
= 0 (14)


−

= 0 (13)
+ gη sinθ sin α + gη cos α
+
 +

∂t

dθ  ∂sa
∂na
η

dθ  
dθ  ∂sa  η  ∂na  η  
 dsa
1 − na


1 − na

1 − na
ds
dsa 
dsa 
a 



d 2θ ∂η
na
1
1
1
dθ ∂η
dθ ∂M 2
∂ 2η
∂ 2η
∂ 2η
dθ  M 2 
1
∂η
gh
gh
gh
+
−
=0
gh
−
+
−


gh
=
0
+
+
(15)
2
2
2
3
2
∂t 2


∂na
∂na

dθ  dsa ∂na
dθ  dsa ∂na
dθ  dsa  h 

 dsa ∂sa

 ∂sa
d
d
θ
θ
1 − na


h1 − na

1 − na
1 − na

1 − na




dsa 
dsa 
dsa 
dsa 
dsa 





∂η
∂M
dθ ∂N
1
N
+
−
+
=0
∂t 
dθ  dsa ∂na
dθ  ∂sa 
1 − na

1 − na

dsa 
dsa 


∂N
∂t
(9)
(4)
(η − h )
M
= gh
h
h
(17)
(11)
1
∂
∂M
+
∂t 
dθ  ∂sa

1 − na
dsa 

 β1M

 η
2
 ∂
 +
 ∂na
∂ 2η
∂ 2η
∂ 2η
∂η 
1
1
d 2θ ∂η
dθ ∂η
g
dθ  ∂η 2
na

=0
− gh
− gh
+ gh
+ gh
−
− 2h
2
2
2
3
2
∂t 2
∂
∂
∂na 
s
ds
n
ds




∂
∂
ds
s
n
θ
θ
d
d


a
a
a
a  ∂na
dθ 
dθ 
a
a
a




−
−
1
1
n
n
a
a




1 − na ds 
1 − na ds 
dsa 
dsa 


a 
a 


(18)
キーワード 一般化座標 蛇行河川 波動解析 遠心力
連絡先 〒112-8551 東京都文京区春日 1-13-27 中央大学理工学部 TEL03-3817-1805 E-mail:[email protected]
-265-
(10)
(12)
(16)
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
第1最大曲率断面
Sa=L/4
第3最大曲率断面
Sa=5L/4
(11)は連続式,式(12)(13)は各々,流下方向(Sa),横断方向
h
Sa=L
Sa=0
5.2[m]
数,η は水位(全水深)である.また式(12)(13)の左辺第4項は,
Sa=3L/4
第2最大曲率断面
遠心力効果を表している.
図-2 計算水路概要
表-1 入射波及び水路設定諸元
3.一般化座標系に基づく遠心力を考慮したの波動方程式
入射波振幅
入射波周期
平均水深
水路幅
3.1 二次元不定流方程式の書き換え 河川における波動方
程式の導出では,連続式(11)及び流下方向・横断方向流量フ
ラックス表示の断面積分型運動方程式(12)(13)を用いる.簡単
0
‐1
各々,流線及び等ポテンシャル線である.従って,実際の河川
の流れも座標軸の取り方により流線である流下方向軸からのズ
0
の横断方向流量フラックスは無視する.本解析では蛇行部で
には考慮していない.また,蛇行河川において生じる波の振幅
は微小であるとして水面勾配項以外の水位(水深)η は静水深
h で代替し,方程式中の遠心力項を除き線形化する.以上より
式(12)(13)から式(14)(15)を得る.横断方向の運動方程式
(15)には左辺第二項に遠心力項が存在し,これにより河川蛇
行部を伝播する波に遠心力の影響が生じる.
3.2 遠心力項の書き換えと波動方程式の導出 式(14)(15)
を用いて任意の抱こう水路において遠心力の影響を考慮した
波動方程式を導出する.式(14)を流下方向 sa で, 式(15)を横
断方向 na で1階微分し,1 階時間微分を行った式(11)に代入
すると,式(16)を得る.さらに式(16)中末項の遠心力項を,水
位 η を用いて表記する.蛇行水路で生じる波は水深に比べて
波長が十分長い長波であると考え,長波の水位と流量の関係
式(17)を用いる.式(17)を式(16)の遠心力項に代入すると,
水路蛇行部における遠心力の影響を考慮した波動方程式
(18)を得る.式(18)は水路蛇行部における遠心力の影響を考
慮した波動方程式であるが,未だ座標系を確定していないた
め,実在の河川の形状を座標系として設定することで様々な河
川に適用する事が出来る極めて一般的な波動方程式である.
4.一般化座標での波動方程式の数値計算
4.1 数値計算条件 波動方程式(18)を用いて流れの無い蛇行
水路の波動伝播数値計算を行った.水路形状として式(6)を用
いて蛇行水路を表す Sine Generated Curve を設定した.数値計
算には実験室スケールの矩形断面水路を設定しており,計算
の1.5倍
10
Time[s]
[sec]
20
図-3 最大曲率断面外岸の時系列水位変動
入射波振幅に対して第 1 最大局率断面外岸では入射波の 1.5 倍,
第 2 及び第 3 最大局率断面外岸では入射波振幅の 2.1 倍まで波の
振幅が大きくなっている事が解る
生じる二次流の影響は鉛直断面積分により流下方向及び横断
フラックスを微小として無視しているため二次元の影響は厳密
入射波振幅
の2.1倍
–2.5
レは小さいとし,運動方程式(12)(13)の移流項及び遠心力項
方向の流量フラックスにくみ込まれているが,横断方向の流量
Input Wave Height
(η–h)/a
1
a 0.01[m] 蛇行長
L 20[m]
T 2[sec] 最大偏角 θ0 π/9
h 0.3[m] 水路床勾配 α 0
B 3[m]
Sa= L/4 OUTER
Sa=3L/4 OUTER
Sa=5L/4 OUTER 入射波振幅
2.5
のため,運動量補正係数 β1,β2,β3 は1とし,河床は平坦床とし
がポテンシャルフローの場合,流下方向軸及び横断方向軸は
39[m]
方向
伝播
波の
(na)の二次元不定流方程式である. β1,β2,β3 は運動量補正係
た.式(3)(4)(5)を用いて河川に沿う座標系を設定すると,流れ
B
2-133
水路概要を図-2,入射波及び水路設定緒元を表-1 に示す.
4.2 遠心力による波の振幅変化 Sa=0 より周期 2 秒,振幅
0.01mの正弦周期波を入射させ,遠心力により波の振幅が増
大すると考えられる最大曲率断面外岸における時系列の水位
変動を図-3 に示す. 図-3 より第 1,2,3 最大曲率断面外岸に
於ける時系列の水位変動幅を見ると,いずれの地点に於いて
も入射波の振幅に比べ波の振幅が増大している事が解る.各
地点に於ける入射波振幅を基準とした水位変動幅は第 1 最大
曲率断面外岸では 1.5,第 2 断面外岸では 2.1,第 3 断面外岸
では第 2 断面外岸と同じ 2.1 であった.従って第 2,3 断面外岸
に到達した波は入射波に比べ波高が 2.1 倍大きくなっている.
これは水路蛇行形状による波高増大効果に加え,蛇行部の内
岸から外岸方向へ遠心力が働くためだと考えられる.また第 1
最大曲率断面外岸の水位変動に比べ第2 断面外岸,第3 断面
外岸で水位変動が大きいのは,遠心力により第 1 断面外岸で
波高が増大した波が,第 2 断面外岸に於いて遠心力の効果に
よりさらに波高が増大するためだと考えられる.波の伝播速度
に注目すると,第 1,2,3 断面外岸は約 10m間隔であり,波の到
達時刻の差から伝播速度を算定すると,長波の伝播速度で伝
播している事が解る.
5. まとめ テンソル解析を用いて任意河川形状に適用可能
なオイラー方程式,二次元不定流方程式及び遠心力を考慮し
た波動方程式を導出し,数値解析により Sine Generated Curve
で表される蛇行河川を伝播する周期波の振幅変化を示した.
参考文献 1)池谷 毅,玉井 信行:平坦固定床蛇行水路における 3 次
元流況解析,土木学会論文報告集 Vol.342, pp.107-113.(1984)
-266-
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一般化座標系における遠心力を考慮した波動方程式の導出