バルク法について
~deepconv を用いて地球の積雲対流の数値計算をするにあたって~
神戸大学 大学院 理学研究科
地球惑星科学専攻 M2
今関 翔
目次
 発表の概要
 修士論文について
 バルク法について
 deepconv でのバルク法
 まとめ
 今後の課題
発表の概要
発表の概要
修士論文に向けての目標を示す
地表面からの運動量・熱・水蒸気のフラックス
をバルク法を用いて表す
水蒸気混合比のフラックスの式について,
deepconv で現在用いている式と, 今後用い
ようと考えている式を示す
修士論文について
修士論文について
 目標
地球での積雲対流の数値計算をして, スコールラインのよう
に, 積乱雲がメソスケールの組織化をする際に, どのような
過程を経て発達していくのかを計算したい
 二次元対流モデル deepconv
(杉山耕一朗, 小高正嗣, 山下達也, 中島健介, 林祥介,
deepconv 開発グループ, 2008: 非静力学モデル deepconv,
http://www.gfd-dennou.org/library/deepconv/, 地球流体電
脳倶楽部. ) を使用
修士論文について
 問題
Yamasaki (1983) の気温と相対湿度の観測データを初期
値にするプログラムを追加したが, そのプログラムがうまく動
作していない
deepconv では地球用と木星用の設定ができるようになって
いるが, メインプログラムで木星用の水蒸気混合比のフラッ
クスを用いるように設定されていたため, 地球用に設定を変
更しなくてはならなかった
地球用の水蒸気の混合比フラックスはバルク法を用いて書
かれていたが, その式に少し問題があり, 書き換える必要が
生じた
バルク法について
乱流輸送量
バルク法
物理量の扱い
大気中の運動を記述するために物理量を以下
のように置く
 格子の大きさよりも運動のスケールが大きい運動を平均場, 格子の大きさよ
りも運動のスケールが小さい運動を擾乱成分と呼ぶ
レイノルズ応力の導出
まず, 直交座標系 (x,y,z) において以下のような運動方程式を
考える
•簡単のため密度一様の非圧縮流体を考える
次に物理量を平均場と擾乱成分に分け, 平均操作
をする
レイノルズ応力の導出
すると, 以下のような運動方程式が得られる
平均速度
についての運動方程式中に, 擾乱による項が含まれるため,
の方程式を導いても
ここで,
などがわからない限り
をレイノルズ応力という
は計算できない
乱流輸送量
レイノルズ応力の内の
は運動量の鉛直方向の輸送量を
表す
のように擾乱によって鉛直方向に輸送される物理量を時
間平均したものを乱流輸送量という
また顕熱と, 蒸発による水蒸気の乱流輸送量はそれぞれ,
と
のように表せる
以上のような乱流輸送量を
表す方法の一つにバルク法がある
を用いずに
などで
バルク法について
用語説明
乱流輸送量
バルク法
扱う系
<考える領域>
乱流による応力が高さによらず近似
的に一定と見なせる大気層
↓
接地境界層
<仮定>
風向きを x 軸に取る
<状況>
ある空気塊が初め, 高度
にある
↓
運動量を保持したまま乱流によって高度 z
まで上昇
↓
周囲の空気と完全に混合し, 保持していた
運動量を周囲に与える
バルク法の導出
l’ が十分に小さいとすると,
であり, 高さによらない応力を
と置くと
となる.
中立成層をした流体中では浮力の影響を無視できるので
と仮定する
また, 空気塊が鉛直方向上向きに移動する場合は
すると
となる
であると
バルク法の導出
より,
を得る. ここで, 正の比例定数
を得る. ここで
を用いて
を摩擦速度という.
であると仮定すると
バルク法の導出
を z について積分すると
が得られる.
地表面が完全に滑らかならば
で平均風速はゼロであるが, 現実の地
表面は凸凹があるので
で平均風速をゼロとすると
となり, 平均風速の高度分布が得られる
ここで地表面の凸凹の程度を表す量である
を粗度という
バルク法の導出
より,
ここで,
よって, 運動量フラックス
を得る
を抵抗係数またはバルク係数と呼ぶ
を以下のように表せる
バルク法の導出
運動量フラックスと同様にして, 顕熱と, 蒸発による水蒸気のフラックスを
: 顕熱フラックスのバルク係数
: 水蒸気混合比のフラックスのバルク係数
下付き添え字 s は地表面での値を意味する
のように表すことができる
ここで, 熱フラックスと水蒸気フラックスも接地境界層内では高さによらず一
定と近似した
以上のように, 運動量・熱・水蒸気の地表面からのフラックスを表す方法を
バルク法という
バルク法の利点
地表面 (
) では風速をゼロとできるので
1 高度のみの観測だけでよくなる
顕熱フラックスと水蒸気混合比フラックスを求
める際に地表面での値に関しては と だ
けわかればよい
deepconv でのバルク法
deepconv でのバルク法
現在用いられている水蒸気混合比フラックスの式
にあたる部分
問題①: 現在, deepconv では NAMELIST で
となるが,
問題②: さらに
に
と設定しているため
がかかっていないため混合比になっていない
のとき,
というよくわからない値が出てしまう
deepconv でのバルク法
今回, 用いようと考えている水蒸気混合比フラックスの式
であり, 地表面での水蒸気圧には飽和
水蒸気圧を用いるため
となる
まとめ
バルク法を用いて乱流輸送量を
用いて表せた
などを
現在 deepconv で用いている水蒸気混合比
フラックスの式では, 標準気圧と地表面気圧
の値が異なる場合に正しい式にならず, 使用
条件が限定されてしまう
また, 地表面での混合比に当たる項に湿潤気
体と乾燥気体の分子量の比がかかっていな
い
今後の課題
今後の課題
 作成中の, 気温・気圧・湿度の初期場を与えるプロ
グラムでうまく計算できているのかを確認する
初期値を計算するプログラムの見直し
初期値から手計算で求めた水の量などのオーダーと, 実
際に deepconv で計算して得られる値との比較
 地表面フラックス以外で木星用のモジュールを使っ
ている箇所がないか確認する
参考文献
 Johnson and Hamilton, 1988: The Relationship of Surface Pressure Features to the
Precipitation and Airflow Structure of an Intense Midlatitude Squall Line. Mon. Wea. Rev. 116,
1444-1472.
 小倉義光, 1978: 気象力学通論, 東京大学出版会, 249pp.
 Pedlosky, J., 1987: Geophysical Fluid Dynamics -2nd Edition-, Springer, 703pp.
 杉山耕一朗, 北守太一, 小高正嗣, 2007: 湿潤大気における 2 次元非静力学モデルの定式化
http://www.gfddennou.org/library/deepconv/arare/arare4_current/doc/dai1bu/htm/teishiki.htm
 竹内清秀, 近藤純正, 1981: 大気科学講座1, 東京大学出版会, 226pp.
 Yamasaki, M., 1983: A Further Study of the Tropical Cyclone without Parameterizing the
Effects of Cumulus Convection. Meteorology and Geophysics, 34, 221-260.
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