地球には
わかっていないことが
まだたくさんある
山賀 進
2015年10月2日(金)
自己紹介
• 中学・高校の地学教員を40数年間
– 地学って? 私が目指したもの
– 「地学」から「天地(人)学」へ
「天地(人)学」とは
我々はどこからきたのか、我々は何者か
我々はどこへ行くのか
天(宇宙システム)
地(地球システム)
地(人類社会)
天
天文学(宇宙科学)
宇宙地球科学
太陽エネルギー・宇宙線・
隕石
地
地球惑星科学
地文学(地球科学)
食糧・資源・エネルギー、
災害
人
宇宙観、宇宙探査
地球観、環境問題
人類学・人文学
– 宇宙から人類までを総合的にとらえる
• 140億年の時間と140億光年の空間の中のヒト
• 個別還元的に見るのではなく、まず全体を見る
まだわかっていなこと
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生命の誕生
生物の大絶滅
地球の内部
地震の予知
過去の気候と温暖化
放射能をどうするか
地球の定員
拙著では13の話題
その中からいくつかを
ベレ出版2011年11月
ISBN9784-48064-301-0
生命とは何か
• 生命とは何か(じつは曖昧、cf.ウィルス)
– 膜で内外に別れている
– 内部の状態を一定に保っている(代謝)
– 炭素を鎖とする高分子(有機物)が体をつくっている
• これを脂肪族という、亀の子(ベンゼン環)は芳香族
• 元素周期表で一つ上(化学的性質似ている)のケイ素は?
– 液体の水を必要としている
• 液体メタンは?(土星の衛星タイタンの海)
– 増殖する
• ドラえもんは?(私立某中学校入試問題)
有機物の合成(1)
• 有機物の材料(元素)
– ヒト(トップテン=H,O,C,N,Ca,P,Na,K,Cl)
• 海水(塩分)の組成と極類似、地球表層ともほぼ同じ
– P(リン)は海水中に少ないがDNA、ATPの材料
– 地球・太陽系・宇宙に普遍的に存在する元素
• 有機物を含む隕石(炭素質コンドライト)もある
– 生体内の化学反応(生命活動)もトリッキーでない
有機物の合成(2)
ミラーの実験
問題点:原始地球大気の組成
それほど還元的でなかった
※ 還元的=NH3やCH4を含む
現在の大気マイナスO2だった
意義:有機物を簡単に合成
原料プラスエネルギー→有機物
有機物の合成(3)
• 有機物合成の場(地球)
2013年2月15日 ロシアに落下した隕石
http://www.foxnews.com/science/2013/02/
15/injuries-reported-after-meteorite-fallsin-russia-ural-mountains/
ブラックスモーカー
http://www.pmel.noaa.gov/eoi/gallery/
smoker-images.html
合成された有機物の特徴
• 右旋性と左旋性のものが等量できる
– 右旋性(D型)と左旋性(L型)
• 同じパーツからできているが、立体的配置が異なる
• 右手と左手の関係と同じ(3次元的に重ね合わせ不可能)
• 光に対する性質が異なる
– 化学的な性質は同じ
http://ayabe-s.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-79c8.html
2001年の野依良治氏のノーベル化学賞
どちらかを選択的に合成する方法を見つけた業績
生命の不思議(バクテリアからヒト)
• L型のアミノ酸しか使っていない
• DNA(RNA)の暗号が同じ
アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン
(C)の4つの塩基でつながった二重らせん
つながる相手は決まっている(A=TとG=C)
3つの塩基の並びでアミノ酸を指定=同じ
(例:GAC→ロイシン)、並び方64通り 必須アミノ酸
は20種なのでこれで十分
→生命の起源は単一である?
生命の進化
• 化石などから進化をたどる
中心体
ゴルジ体
核
核膜
核小体
染色糸
ミトコンドリア
細胞膜
真核生物(動物)の細胞
「マクロ進化と全生物の系統分類」(シリーズ進化学1、岩波書店、2004年12
月)のp.97の図1を少し変更して簡略化
5億年前のスター
アノマロカリス
http://www.uraken.net/bato/paleo/paleo10.html
☆わかっていないこと(その1)
• 化学進化から生命への大ジャンプ
– 化学進化(←実験で再現できる)
– 元素→簡単な分子→複雑な分子→有機物
←この大ジャンプがわからない
– 生命誕生
• 生命の進化(←化石などからわかる)
– (RNA)→原核生物→真核生物→ヒト
地球は数億年の時間をかけることができる
学者一人は数十年、近代科学が始まって数百年
生物の大絶滅
• 過去の5大絶滅事件
⑤K/P境界の大絶滅
恐竜などが滅んだ
※ K:kreid P:paleogne
ティラノザウルス
http://www.fieldmuseum.org/SUE/about.asp
日経新聞(2013年8月24日)
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO58747510R20C13A8000000/
5億4100万年
6600万年
③P/T境界の大絶滅
サンヨウチュウなど種の
96%が絶滅
サンヨウチュウ
カナダ・ヨーホー国立公園ビジターセンター
白亜期末の大絶滅(K/P境界)
• 隕石の衝突(6600万年前)
– 直径10kmの隕石がユカタン半島沖に落下
• 衝突のエネルギーは1024J(ジュール)
– マグニチュード9の地震の100万倍、広島原爆の100億倍
–
–
–
–
衝撃波、津波(メキシコ湾)、熱い落下物
粉塵が太陽光線を遮る→光合成できなくなる
低温(あるいは高温?)
※ 地球自体にとってはたいしたことない
• 証拠
– 境界の地層にイリジウム濃縮、クレーター
• デカン高原の火山活動も関係?
☆わかっていないこと(その2)
• ペルム紀末(P/T境界)の大絶滅の原因
– 大絶滅だったことは確実
– 海水が無酸素になったことはわかっている
• 現在の黒海のような状態(原因or結果?)
– 隕石衝突の痕跡がない(未発見なだけ?)
– シベリアで超大規模な火山活動があったらしい
古生代の海:日経サイエンス1996年9月号
http://www.nikkeiscience.com/page/magazine/9609/perm.html
磯崎行雄氏:
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/044/research_11.html
地球の構造
• 地球の層構造(静的構造)-1-
全体の層構造
地殻とマントル
• 地球の層構造(静的構造)-2-
地震波の伝わり方
超高圧発生装置
http://www.spring8.or.jp/j
a/news_publications/resea
rch_highlights/no_57/
日経サイエンス2007年01号「ついに見えてきた地球コア直上の世界」
(廣瀬敬、p.44)の図をもとに作成
地球の層構造(動的構造)-1-
• 地球表面を覆うプレートと境界の種類
地震調査研究推進本部
http://www.jishin.go.jp/resource/pamphret/
世界の震源分布(USGSのデータをもとに作成。)
http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/search/
地球の層構造(動的構造)-2-
• プレートとの境界(3種類)
• プレートと地殻・マントルの関係
地球の層構造(動的構造)-3-
• 表面のプレートと内部のプルーム
地震波CT
http://www.japanacad.go.jp/japanese/news/2011/121201.html
丸山茂徳・磯崎行雄「生命と地球の歴史」(岩波新書、1998年)より作成
☆わかっていないこと(その3)
• 核(内核・外核)の様子がわからない
– 核は鉄主体、ニッケルが混じっている合金
• その他あるはずの元素がわからない
– 核の温度がわからない
• 外核は液体、内核は固体⇔温度と融点(圧力で上がる)?
– 外核の対流の様子がわからない
• 液体である外核の対流が地磁気の原因らしい
• 地震波CT→マントル深部が見えた⇔新しい技術必要
• 地球の中心までの距離は月までの1/60なのに
地震の予知
• 地震とは断層である
岩盤のひずみ→限界→破壊(地
断層の種類と力の関係
地震調査研究推進本部:http://www.jishin.go.jp/の素材集
震)
※ 地震=断層を理論的に明らかにしたのは丸山卓男(1963年)
日本付近の地震
2011年3月11日東北地方太平洋沖地震
(プレート境界型)
巨大地震
4つのプレートがひしめき合う日本
地域ごとの地震の型(タイプ)
地震調査研究推進本部:http://www.jishin.go.jp/の素材集
気象庁札幌管区気象台:http://www.jmanet.go.jp/sapporo/bousaikyouiku/mamechishiki/jikazanknowledge/jikazanknowledge1_3.html
過去の巨大地震
• 東南海・南海地方の巨大地震の起き方
国土交通省中部地方整備局営繕部
http://www.cbr.mlit.go.jp/eizen/policy/seismic/02.htm
マグニチュード(M)と被害
• M7は線状、M8は面状
1995.1.17兵庫県南部地震
(M7.3(Mw6.9))の被害
防災科学技術研究所
http://dil.bosai.go.jp/workshop/02kouza_jirei/s17fire/f7kobe.htm
2011.3.11東北地方太平洋
沖地震(M9.0(Mw9.1))の
震度分布
気象庁
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/2011_03_11_tohoku/
※ マグニチュードはエネルギーの目安(1つ大きくなると約30倍)
今後30年間に予想される揺れ
2010年版
(震度5以上)
2014年版
(震度6弱以上)
地震調査研究推進本部
http://www.jishin.go.jp/evaluation/seismic_hazard_map/shm_report/shm_report_2014/
☆わかっていないこと(その4)
• 地震予知がわからない
– いつ起こるのかが正確にわからない
– どこで起こるのかが正確にわからない
– Mがどのくらいの地震かわからない
• 予知が可能かどうかもわからない
– 破壊現象の予知の難しさ
• 現段階では日にちを特定した予知はデマ
• 観測を始めてまだ百数十年であることを自覚
付録:村井俊治氏式予測?
• GPSデータから岩石ひずみ→予測
• だが
– GPSの誤差を考慮していない
• 国土地理院の注意無視
– 予想範囲(空間・時間)が広すぎ
– 結果の検討(予知の三要素)をしていない
• 科学的予知とはとてもいえない(占いレベル)
村井氏の予測例
要警戒地域
(震度5以上の地震が発生する可能性が
極めて高い)
・南海、東南海地方
・奥羽山脈周辺及び日本海側
・北信越地方(岐阜県飛騨地方含む)
要注意地域
(震度5以上の地震が発生する可能性が
高い)
・東北、関東の太平洋岸
・南関東地方
・北海道釧路、根室、十勝、浦河周辺
・南西諸島
・福島県、茨城県、千葉県内陸部
・鹿児島県、熊本県、長崎県周辺
フジTV系列Mr.サンデー(2015
年6月7日)
左の「予測」を図示 横浜地球物理学研究所
http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/89d7ff7f3cc6ef
446b2cbe14f3524920
※ この範囲で言い続ければ、そのうち起こる(当たる)、でも
9月12日は東京湾震源0km(震源57km)、震度5(調布だけ)
は?
地球温暖化
• 地球の温度
– 太陽からの入射=地球からの放射
• 太陽からの入射(1.37×103J/m2・s)①
• これを地球の断面積で受け取る(①の1/4)
• 地球の太陽エネルギー吸収率も考慮
– 大気圏外では70%、地表ではさらに減って50%
– 結局、大気圏外で①の1/6、地表では①の1/8
• 計算すると-18℃ でも実際は15℃
• この33℃の差が温室効果
温室効果
• 熱をこもらせるはたらき(H2O、CO2、CH4、O3、フロンなど)
二酸化炭素の増加
IPCC第4次報告書(2007年)
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/syr_
spm.pdf
IPCC第5次報告書気象庁訳(2013年)
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_jpn.pdf
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動を巡る政府間パネル)
気温の上昇
環境白書「地球温暖化の重大影響‐21世紀の日本は
こうなる‐」(環境庁1996年)
IPCC第5次報告書気象庁訳(2013年)
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_jpn.pdf
IPCCの警告
地球温暖化は人類の出す温室効果ガスのためだとほぼ断定
IPCC第5次報告書気象庁訳
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_jpn.pdf
過去の大規模な気候変動
• 億年オーダーでの変動
• 無氷河期ー氷河期ー全球凍結期
– 無氷河期:地球上に大規模な氷床がない
• 中生代(恐竜の時代)
– 氷河期:極地方に大規模な氷床が発達=現在
• その中でも氷期(とても寒い)と間氷期(=現在)
– 全球凍結期:赤道まで凍結
• 6億年前に終わる
http://www.spaceref.com/news/viewpr.html?pid=40260
現代の気候変動
• 現代(第四紀)は氷河期(かなり寒い時代)
– その中で氷期と間氷期を繰り返している
– 現在は次の氷期までの間氷期(たぶん)
最
後
の
氷
期
終
了
後
の
急
激
な
昇
温
ヒプシサーマル期
三内丸山遺跡 5500~4000年前
http://sullivansline.com/forums/ubbthreads.php?ubb=showflat&Number=20415
ミランコビッチ説
• 地球軌道の周期的変化→気候変動
http://tgr.geophys.tohoku.ac.jp/JSPS/no3.html
☆わかっていないこと(5)
• 気候変動の原因がわからない
– ミランコビッチ説が適用できるのは第四紀
• ミランコビッチ説は本当に正しいかわからない
• 太陽の活動が一定かわかない
• 自然の変動vs人類の影響がわからない
– すでに氷期に向かっているのを阻止?
– CO2を出せなくなったら?
• 人類が気象観測を始めて百数十年
– 46年に1回の希な現象=46億回も起きている現象
放射能について
• 原子力発電は放射能を生み出す(必然)
– 100万kWの原子炉は1年で150kgの Uを消費
235
• 日本全体では? 広島原爆は1kg弱(800g程度)
• 原子力炉と原爆 核反応は同じ
– 制御しながら反応=原子炉 一気に反応(爆発)=原爆
放射能と放射線
• 放射線を出す物質・性質=放射能
• 核反応でできてしまう放射性物質
半減期(放射能が半分になる期
間)
半減期は熱・圧力、化学反応では変化しない
人間の力では短くできない!
放射線の種類と透過力
資源エネルギー庁原子力AtoZ:http://www.enecho.meti.go.jp/genshi-az/index.html
透過力の弱いα線を体内で被曝したら?
被曝したらどうなる
• 急性障害(250mSv以上)
– やけど、出血(内臓からも)、けいれん、脱毛、目の水
晶体混濁、意識混濁、白血球減少、永久不妊などが
あり、さらに多量に浴びた場合は死に至る。致死量は
5~7Sv(cf.1999年東海村核燃料工場被曝事故)
250mSv以下
「直ちに健康に害はない」
• 晩発性障害(白血病、ガン、遺伝障害)
– 潜伏期間は白血病で数年、それ以外では数十年
– 評価(原因の特定)が難しい
※ Sv(シーベルト)は被曝量の単位
被曝量と危険性
• 放射線の害=放射線が分子を破壊(DNAだと悲
惨)
• しきい値があるか(DNAの修復能力は有効か)
– まだ科学的にはどうともいえない
危険性についての3つの考え
放射性廃棄物(死の灰)は?
• 政府の方針=深地層処分(未定)
• プルトニウム239の半減期は24000年
放射性廃棄物のHP:
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/gaiyo/gaiyo03-4.html
数百mで“深”地層? 日本は変動帯
☆わかっていないこと(6)
• 放射線の害がよくわからない
– とくに低線量被曝が長期間にわたる場合
• 死の灰をどうしたいいのかわからない
– 地層処分の正式決定国はフィンランドのみ
• 10万年以上(人類以後も)の保管を想定
2020年稼働? フィンランド・オンカロの処分場
http://www.posiva.fi/en/media/image_gallery#.VgnsY9KheCV
地球の人口
• 現在の人口とこれまでの人口の推移
2015年10月2日8時40分ころ
世界人口カウンター
農
耕
・
牧
畜
革
命
アメリカ国勢調査局:http://www.census.gov/population/international/
産
業
革
命
5000年前以上
世界の人口増加の推移(2回のジャンプ)
ウィスコンシン大学:http://pages.uwc.edu/keith.montgomery/Demotrans/demtran.htm
現在の人口増加率=1.2%/年 →70年で倍増
食糧生産
• 基礎は太陽エネルギー
– 農耕・牧畜革命、産業革命はフィードバック
• 単位面積あたりで得られる食糧
– 農耕・革命革命により50倍~800倍、産業革命によりさらに50倍
– 産業革命の結果、工業のエネルギー>食糧
地球の定員は?
• ① 地表に到達する太陽エネルギー
– 1.5×107J/m2・日
• ② 耕地の面積
– 地球の表面積の3%=1.5×1013m2 (陸は地球の30%)
• 日本の耕地面積は4.6×1010m2(日本の12%)
• ③ 穀物の光合成のエネルギー効率(穀物/太陽)
– 先進国の農業で0.1%
• ④ ヒトの必要量
– 9.2×106J/人・日(=2200kcal/人・日、1cal=4.2J)
• 定員=(①×②×③)÷④
240億人
本当は? あと何年?
日本の定員は?
☆わかっていないこと(7)
• 地球の適正な定員がわからない
– 定員を決めるのは食糧だけでない
– 穀物以外の食糧も必要
– 南北問題(飢えている人と飽食の人)
世界人口の日(7月11日):http://www.teamunite.org/world-population-day-posters-wallpapersimages-paintings-greetings-2015/
ニュートン
• 私は真理の大海原を
前に、浜辺できれい
な小石や貝殻を拾っ
て遊んでいる子供に
過ぎない。
ニュートンのリンゴ
(小石川植物園)
-了-
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地球には まだわかっていないことが たくさんある