平成 23 年度
都市計画主専攻
卒業研究中間発表会(H23.11.16)
震災を契機とした行動変化の分析と展望
社会工学類都市計画主専攻 4 年
1. 研究背景
1.1. 東日本大震災の発生と影響
200811394
宮本隆太郎
指導教員:岡本直久
3. 研究内容
3.1. 研究対象
2011 年 3 月 11 日、三陸沖を震源とする M9.0 の東北地方
(株)サーベイリサーチセンターは「大震災による行動の変
太平洋沖地震が発生した。地震によって発生した津波の他に
化に関する地域別アンケート調査」を行っている。これは震
も、地震の揺れによる倒壊や液状化現象、地盤沈下、ダムの
災によって行動の変化が生まれたことを長期的・定期的に観
決壊などによって、
東北と関東の広大な範囲で被害が発生し、
測するものである。
各種ライフラインも寸断された。震災による死者・行方不明
・調査手法:WEB 調査
者は約 2 万人、建築物の全壊・半壊は合わせて 27 万戸以上
・調査日程
で、試算された被害額は 16 兆~25 兆円にのぼる。
地震発生直後より通信障害が発生し、首都圏では JR、私鉄、
第 1 回:平成 23 年 5 月 27 日(金)~6 月 8 日(水)
第 2 回:平成 23 年 9 月 2 日(金)~9 月 20 日(火)
地下鉄の全線が運行を停止したため、職場などから自宅へ帰
第 3 回:平成 23 年 11 月下旬~12 月上旬(予定)
宅することが困難となった帰宅困難者が発生し、以降の災害
第 4 回:平成 24 年 3 月(予定)
せも話題になっている。被災地を中心に交通が機能しなくな
(※第 4 回調査は、実査の日程上分析の対象外とする。
)
ったことで輸送に困難が生じ、ガソリン等の燃料をはじめ、
様々な物品が供給不足となった。一定の人々は過剰に買い溜
・有効回収数
表1
有効回収数と各地域サンプル数
めを行ったりする一方で、十分供給ができるとして買い控え
る電力不足を受けて、東京電力管内では地域を分けて順に停
電させる計画停電が実施され、この影響などにより、各鉄道
路線でも列車の運休や減便などが行われた。計画停電は 4 月
に一旦終了したものの、需要の増加による電力不足が予想さ
れ、
原発事故と合わせ、
根本的な問題は解決に至っていない。
また震災後の経済活動の回復も待たれる。
たことである。行動に影響を与えるときは本来、ある問題が
存在し、それを解決することで変化が起きるが、震災によっ
て半ば強制的に変化させられ、継続するものも存在すると考
継続
割合
第2回
回答者
関東(1 都 3 県)
519
526
351
68%
関西(京阪神)
506
527
351
69%
宮城県(仙台)
262
255
176
67%
宮城県(仙台以外)
239
252
172
72%
広島県(広島市)
279
271
182
65%
広島県(福山市)
242
252
165
68%
合計
2047
2083
1397
68%
1.2. 震災によって生じた行動の変化
今回特徴的なのは、震災によって人々の行動に変化が表れ
継続
第1回
の運動も起きた。さらに、複数の発電所が停止したことによ
3.2. 調査項目
主に 5 つの観点から調査がなされている。
3.2.1 交通行動
・震災前と調査時それぞれの目的別交通手段(複数回答可)
えられている。社会全体がこのような変化を起こすことはこ
①通勤・通学時
れまでに無く、今後の社会構造変化の可能性を秘めている。
②平日の買物・飲食時
現在、長期的・定期的な観測が行われており、この変化が一
③休日の買物・飲食時
時的なものか、持続するのかを分析することで、人々の行動
(徒歩/自転車/原付/自動二輪/タクシー・ハイヤー/
や意識の変化を知ることができる。交通行動・省エネ・ライ
乗用車/軽乗用車/貨物車/自家用バス・貸切バス/
フスタイル等の変化を分析することで、震災という刺激によ
路線バス/モノレール・新交通/鉄道・地下鉄・路面電車
る人々の行動や意識の変化を地域別・年齢別・時系列などで
/船舶/飛行機/その他)
把握することが求められる。
2. 研究目的
・震災前後での変化があった場合(複数回答可)
①通勤・通学先、買物・飲食先が変わった
②交通手段が使えなくなった
以上のように、交通行動・省エネ・ライフスタイル等の変
③省エネルギーを考えて
化を、社会全体の危機を迎えた時の日本人の意識と、交通手
④災害時の安全を考えて
段の変化やエネルギーの節約などから、賢く交通を利用する
⑤その他(健康のため、など)
方策を考察し、日本の今後の交通政策に貢献することを目的
とする。
3.2.2. 自動車利用
自動車の運転有無を尋ねたうえで、運転する人に対して以
(自分自身/同居家族/非同居家族/親戚/友人/
その他/特にいない)
下の質問がなされる。
・MM の取り組みの認知状況
・2011 年 4 月の走行距離と、前年同月との変化(7 段階)
・性別、年齢(20~69 歳)
・自動車の走行距離が短くなった場合の理由
・地域(郵便番号データあり)
①使いたくても使えなかった
(ガソリン入手困難や道路状況の悪化など)
②使えたが使わなかった(ガソリンの消費を控えた)
③使う必要が無かった
(外出頻度が低下し、自動車使用の機会が減った)
・自動車の走行距離が短くなった場合の代替交通手段
長くなった場合の被代替交通手段
3.3 分析方針
3.3.1 集計方法
第 1 回から第 3 回までの調査データを扱うため、各調査の
単純集計、およびクロス集計を実施する。また、継続回答者
に関しては、時系列での変化を把握するためパネル集計を実
施する。
(徒歩/自転車/自家用バス・貸切バス/ 路線バス/
モノレール・新交通/鉄道・地下鉄・路面電車/船舶/
3.3.2 分析対象
飛行機/その他/全体の交通頻度の減(増)
)
・交通行動
・エコドライブの認知・実施状況
①震災前から知っていた
(震災前から実践/震災後に実践/実践していない)
②震災後に知った(実践している/実践していない)
③聞いたことはある
①交通手段の変化
震災前後における交通手段の変化を把握する。
②変化理由の「強制的変化」と「自主的変化」
交通手段の変化理由が自身の都合上「強制的」に変化した
のか、あるいは自身が「自主的」に変化したのかを捉える。
④全く知らない
・自動車利用
3.2.3. 2011 年 GW のレジャー状況
・予定通りに行ったか
(予定通り/変更あり/取りやめ/もともと予定なし)
・変更した場合(複数回答可)
①エコドライブの「認知」
「実践」への移行
エコドライブには「認知段階」と「実践段階」があり、前
後で変化が起きているかを捉える。また震災から時間が経過
するとともに、
認知・実践はどう推移していくかを計測する。
①変更内容(行き先/日数/時期/その他)
②変更理由
(行き先が震災地/現住所が震災地/急用の発生/
地震発生を考慮/何となく/その他)
・レジャー
①被災地の影響と「応援意識」の変化
震災直後の自粛ムードや現在も問題となっている原発事故
・変更前の行き先と実際の行き先
の影響で、レジャーに関して控えめになった人々もいる一方
・取りやめた場合の過ごし方(複数回答可)
で、被災地を支援したり経済活動に貢献したり、積極的に出
(外出せず家で過ごした/近場で行楽・買物・外食・散歩/
かける人々も存在する。時間とともにどのように変化が起き
会社で仕事/被災地にボランティア/その他)
るかを捉える。
3.2.4. エネルギー使用
・エネルギー使用
・2011 年 4 月と昨年同月の電気/ガス使用量
①電気・ガスの使用量変化と節約意識
原発停止による電力供給量の減尐に伴う、震災直後の計画
3.2.5. その他
停電や、夏の 15%節電要請を受けて、人々の電気に対する意
・平均的な帰宅時間/例年の同時期の帰宅時間比較
識の変化を、
使用量に注目して震災前後、
季節毎で比較する。
・職業(14 項目)
また、電気とともにエネルギーとして家庭で利用されている
(学生/農林漁業/採鉱・採石業/技能工・生産工/
ガスもどのように変化しているかを計測する。
販売業/サービス業/運輸・通信業/保安職/
事務職/技術・専門職/管理職/主夫・主婦/
無職/その他)
・同居家族(10 項目・複数回答可)
(配偶者/両親/子供/兄弟姉妹/祖父母/
配偶者の祖父母/恋人/友人/その他/一人暮らし)
・震災で周囲の被害に遭われた方(7 項目・複数回答可)
4. 分析
4.1. 第1回調査の分析結果
4.1.1 交通行動の変化
・震災後の自転車利用の増加
震災前後で代表交通手段をサンプル全体で比較すると、表
2 のようになった。
表2
通勤通学時の代表交通手段
震災後
鉄道 バス 自動車 二輪車 自転車 徒歩 その他 震災前合計
鉄道
560
1
14
4
8
9
3
599
バス
4
61
3
0
2
3
1
74
震
自動車
7
0
624
5
9
8
5
658
災
二輪車
0
0
1
49
1
0
0
51
前
自転車
3
1
5
1
250
5
3
268
徒歩
4
1
5
1
1 189
2
203
その他
6
4
1
1
3
1
178
194
震災後合計 584
68
653
61
274 215
192
2047
りなど、被災地域の供給問題が影響しているのではないか。
・年齢別
年齢別にエコドライブの認知と実践を集計したものが図
1-2 である。
50 代
鉄道やバスなどの公共交通機関や、
自動車は減尐している。
これは、通勤通学先が変わったことも考えられるが、震災時
30 代
に鉄道が運転見合わせになったことを考慮し、災害時の安全
60 代
20 代
40 代
を考えて手段を変えたり、ガソリンの供給不足やガソリン価
60 代
50 代
格の上昇を受けて、省エネルギーを考えて変えたりしている
と考えられる。
40 代
30 代
20 代
東日本大震災以降、特に通勤の足として見直されているの
が自転車で、被災地とその周辺だけでなく全国的な広がりを
見せ、
「健康のためにいい」
「経費の節約にもなる」といった
声も目立つ。自転車での通勤通学は全体としては増加(13.1%
→13.4%)している。理由としては、先述のものに加えて、
「健
康を考えて」などといったものも挙げられた。
一方で、東京都内では東日本大震災が起きた 3 月以降の半
年間で、通勤・通学中の自転車事故が 2,129 件にのぼり、前
年に比べ 5%増加している。地域毎、目的毎の分析は今後の
課題となる。
図 1-2
エコドライブ認知と実践(年齢別)
こちらも認知、
実践ともに震災前に比べて増加しているが、
この集計では認知における増加率に多尐ではあるが差が見ら
れた。20 代では.2.6%、30 代では 1.3%、40 代では 1.8%、50
4.1.2 「エコドライブ」の認知と実践
代では 0.9%、60 代では 2.8%と、20 代と 60 代が高い傾向が
・地域別
うかがえる。これまでに増して若年層や高齢層に認知が広が
地域別にエコドライブの認知と実践を集計したものが図
ったと解釈できる。
1-1 である。
4.1.3 電気・ガスの使用量変化
宮城
認知
図 2 は、2010 年 4 月の 1 日当たり電気使用量をもとに、
1都3県
広島
2011 年 4 月の使用量の増減割合を示したものである。広島
京阪神
よる集計を行っている。
については 2010 年の電気量のデータがないため、3 地域に
宮城
1都3県
実践
京阪神
広島
図 1-1
エコドライブ認知と実践(地域別)
認知、実践ともに震災前に比べて増加しているが、この集
計では実践における増加率に差が見られた。
宮城では 15.4%、
1 都 3 県では 7.1%、京阪神では 4.1%、広島では 4.7%と地震
の被害を受けた地域が高い傾向がうかがえる。これはガソリ
ンが届かなかったり、ガソリンスタンドに長蛇の列ができた
図 2-1
電気使用量と 2011 年 4 月の使用量の関係
応援の意識を探る。
・エネルギー使用
各季節における節約の度合いや、パネルサンプルの時間経
過による変化を検証する。
これらの集計に、鉄道の節電ダイヤやガソリン価格、節電
呼びかけなどの外的要因を考慮することで、それぞれの調査
結果・またパネルの結果の分析を進める。
図 2-2
各地域の電気使用量と2011 年 4月の使用量の関係
6.2 予定
全体的には使用量の大小にかかわらず減らしているため、
節電が実現している。地域別にみると宮城と 1 都 3 県では使
用量の大小にかかわらず減っているが、京阪神では使用量が
尐ない人々は使用が増えている。震災の被害がなかった地域
では、節電意識が低いことが考察される。
また、エネルギーの観点からガスも加えて、各属性におけ
る節約の割合を示したのが図 3 である。ここでは、世帯の使
図4
今後の予定表
用量として適当でない値(回答時の記入エラー等)を除くた
めに、スミルノフ・グラブス検定を用い、正規分布μ + 3σの
7. 参考文献
範囲を有効値とした。
・サーベイリサーチセンター『大震災による行動の変化に関
する地域別アンケート調査』
・サーベイリサーチセンター(2011)『大震災による行動の変
化に関する地域別アンケート調査について』
第 6 回 JCOMM 発表資料
・警察庁 http://www.npa.go.jp/index.html
最終閲覧日:23/11/14
・内閣府 http://www.cao.go.jp/
図3
節約率(左:電気 右:ガス)
電気と同じようにガスも節約がなされており、
「エネルギー
23/11/14
・山本直人(2011)
『ヤマモト・リポート 震災後の生活と新たな機会』
の節約」という意識のもと生活していた可能性がある。ガス
http://www.naotoyamamoto.jp/yamamoto-report/Yreport_11
も被害が尐ない地域にいくほど節約の度合いが低くなり、ま
0317.pdf
た、年齢が高くなるほど節約し、男性よりも女性が節約して
・Business Media 誠『震災後、
“脱痛勤”の人が増えている』
いることが明らかになった。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1108/26/news040.html
23/11/09
23/11/08
6. 今後について
6.1 取り組み
まず、各項目の集計を継続することが挙げられる。
・交通行動
震災が公共交通利用、賢いクルマの使い方を促進させる契
機になりうるかを考える。
・自動車利用
走行距離の変化は一時的なものなのかを各回の集計をもと
に明らかにする。また、エコドライブの意識が薄れていって
しまうのではないかという観点からも分析を行う。
・レジャー(第 2 回:夏季休暇、第 3 回:秋の連休)
震災から時間が経つにつれて、自粛ムードの薄れや被災地
・毎日 jp『銀輪の死角:震災後、事故5%増 都内の交通マ
ヒ影響』
http://mainichi.jp/select/jiken/ginrinnosikaku/news/201110
14ddm041040151000c.html
23/11/08
ダウンロード

震災を契機とした行動変化の分析と展望