RHICにおける
RHIC II & LHC
における
QGPの“発見”から“物性物理”
に向けて
平野哲文
コロンビア大学
We are here!
KEK研究会「QCDとハドロン物理の新展開 」
2004年のノーベル賞
D. Gross
H. Politzer
F. Wilczek
for the discovery of asymptotic freedom
in the theory of the strong interaction
カラーの閉じ込めと漸近的自由性
クォーク・反クォーク間の
閉じ込めポテンシャル
F.Karsch and E.Laermann, QGP3
S. Eidelman et al., Phys. Lett. B592, 1 (2004)
“スケール”によるQCDの二面性
× 摂動  ◎ 摂動
多体系QCD
如何にスケールを上げるか?
1. 圧力を加える密度のスケールの増大
2. 熱を加える温度のスケールの増大
クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)
(クォークとグルーオンを最小構成単位とする「物質」)
QGPは本質的に弱く相互作用をするパートンの集まり?
と、ここまでは30年来なされてきた
weakly coupled/interacting
Quark Gluon Plasma (wQGP)
のイントロ
しかし、RHICの重イオン衝突反応で
作られた(?)QGPは
強く相互作用をする
strongly coupled/interacting/correlated
Quark Gluon Plasma (sQGP)
Outline
• “中心度”という概念
• 基本チェック
• 重イオン衝突反応のダイナミクス
• 完全流体QGPの“発見”
• 重イオン衝突反応における物性物理に向けて
– カイラル対称性の回復
– ジェットトモグラフィー
– QGPの輸送的性質
• まとめ
重イオン衝突特有の物理量
ー中心度、Npart, Ncollー
原子核の厚み関数:
Woods-Saxon型核子密度関数:
核子の衝突回数
金の原子核:
r0=0.17 fm-3
R=1.12A1/3-0.86A-1/3
d=0.54 fm
y
x
sin ~ 42mb @200GeV
重イオン衝突特有の物理量
ー中心度、Npart, Ncoll(つづき)ー
衝突に関与した核子数:
1-(生き残り確率)
小:Npart,Ncoll  中心度  大:Npart,Ncoll
(大衝突径数小)
基本チェック
チェック I: エネルギー密度は十分か
Bjorkenの公式
t: 固有時
y: ラピディティ
R: 有効半径
mT: 横質量
Bjorken(’83)
Lattice QCD計算
Stolen from Karsch(PANIC05)
エネルギー密度の中心度依存性
もしt=1fm/c
ととれば
ec よりも十分上
ec from lattice
PHENIX(’05)
注意事項 I
• 必要条件o.k.でも熱平衡しているか?
• どうやって時間tを決めるか?
• どうやって面積pR2を決めるか
• もし熱平衡していれば仕事pdVのおかげで実
はもう少し大きな値になる。
チェック II: 化学平衡(“温度”情報)
直接放出
レゾナンスからの寄与
Two fitting parameters: Tch, mB
Good job!?
T=177MeV, mB = 29 MeV
Latticeの予言するTcに近い
注意事項 II
• 実はe+e-やpp衝突でもfitできてしまう
See, e.g., Becattini&Heinz(’97)
• そうなると得られた結果の意味は?
See, e.g., Rischke(’02),Koch(’03)
• 何故Tcに近い?
 重イオン衝突におけるハドロン物質は化学平衡
にない!?
 本質的に動的な過程
膨張の割合
 散乱する割合
(素過程に依存)
see, e.g., U.Heinz, nucl-th/0407067
チェック III: 横方向のフロー
Sollfrank et al.(’93)
圧力勾配がフローの駆動力
Inside: 高圧(運動学的平衡)
Outside: 真空
重い粒子ほどフローの影響を
受けやすい
Blast waveモデル
(熱平衡+ドップラーシフト)
スペクトルの形の変化
O.Barannikova, talk at QM05
pp & dAu: べき則
Au+Au: 上に凸
べき則
熱平衡+ドップラーシ
フトの描像とコンシス
テント
注意事項 III
• 実はppでも有限のフローが得られる!?
– (T,vT)~(140MeV,0.2)
– 単純なblast waveモデルは定量的に信用できるか?
• 完全な熱平衡でなくてもスペクトルの変化は起こる
– 例)ハドロンカスケードモデル
• どのようにフローが作られるか?
• コンシステントか?
– f や Wの chi square minimumは違う場所
• 化学凍結と運動学的(熱)凍結は違う温度
•
タイムスケール: 初期宇宙マイクロ秒
 重イオン衝突10-23 (10 yocto)秒
フローのプロファイル? どこで凍結? 薄皮一枚?
基本チェックから何が言えるか?
• QGP探索のための必要条件(これらなしでは
これ以上進む必要なし?)
– エネルギー密度>ec
– 温度~Tc
– 圧力大
時空発展を追えるフレームワークで
解析する必要性
重イオン衝突反応
のダイナミクス:
楕円型フローを
中心に
重イオン衝突のダイナミクス
t
レプトン対
光子
ジェット
ハドロン
ハドロンの熱凍結
ハドロンの化学凍結
QGPハドロン相転移?
(相転移の次数?)
時間のスケール
10fm/c~10-23sec
温度のスケール
100MeV~1010K
z:衝突軸
化学平衡へ向かう?
(QGPの生成?)
局所熱平衡へ向かう?
(GPの生成?)
0
パートン分布関数
重イオン~グルーオンの塊
光速の99%以上
金イオン
金イオン
非等方的な粒子の“流れ”
y
f
x
z
x
散乱平面
横平面(衝突軸に垂直な面)
A.Poskanzer & S.Voloshin (’98)
楕円型フロー
Ollitrault (’92)
空間的に歪んだ分布を持ってきて系の応答を見てみよう
相互作用なし
流体力学的な振る舞い
y
f
x
インプット
空間的な 非等方性
2v2
アウトプット
dN/df
dN/df
粒子間の相互作用
運動量の非等方性
0
f
2p
0
f
2p
ずれ粘性の運動学的記述
See, e.g. Danielewicz&Gyulassy(’85)
超相対論的粒子を想定(体粘性はゼロ)
完全流体:
l=1/sr  0(強結合)
ずれ粘性  0
“輸送”散乱断面積(前方散乱は粘性に効かない)
パートンの世界における楕円型フロー
完全流体の極限
Zhang et al.(’99)
v2
Time evolution of v2
View from collision axis
b = 7.5fm
時間
v2 は
• オーバーラップ領域に一様にグ
ルーオンをばらまく
• dN/dy ~ 300 @ b = 0 fm
• 運動量分布はT = 500 MeVを仮
定
生成粒子間の相互作用によって作られる
早い時期に飽和
断面積~平均自由行程~粘性に敏感
楕円型フローは衝突初期の輸送的性質の情報を担う!
相対論的流体力学
エネルギー運動量保存則
保存流(バリオン数、ストレンジネス、…)
方程式系を閉じるためには
状態方程式
完全流体(粘性無し)では
P(e,ni)
エネルギー密度
圧力
4元速度
が必要
 流体力学は原理的には
格子QCDと結びついている
流体力学は第一原理計算と現象を結びつける橋渡し役を
担っている。適用条件?適用領域?粘性の効果?
エネルギー密度分布の非等方性  運動量空間の非等方性
TH&Gyulassy(’06)
QGP
mixed
hadron
横平面におけるエネルギー密度
速度平面におけるエネルギー
あくまでもドミナントな膨張は縦(衝突軸)方向境界は内側へ向かう。
完全流体QGPの
“発見”
“Perfect Liquid”って?
•レイノルズ数
Iso, Mori, Namiki (’59)
R>>1
Perfect liquid
•1+1D Bjorkenフロー
Bjorken(’83)
Baym(’84)Hosoya,Kajantie(’85)Danielewicz,Gyulassy(’85)Gavin(’85)Akase et al.(’89)Kouno et al.(’90)…
(Ideal)
(Viscous)
h : ずれ粘性 (MeV/fm2), s : エントロピー密度 (1/fm3)
h/s は自然単位系(+kB=1)における
粘性の効果を見るのに最適
TH&Gyulassy(’05),TH,Heinz,Kharzeev,Lacey,Nara(’05)
Hydro meets Data: 三本柱
1. 完全流体的なQGPコア
• 流体力学でQGP相を記述
• 十分大きなv2を得るために必要
2. 散逸的なハドロン相のコロナ
• ボルツマン方程式でハドロン相を記述
• 十分な横膨張を得るために必要
• 粒子比を固定するために必要
3. グラウバー模型による初期条件
• 衝突径数依存性
現在のところ、どの一つが欠けても合わない
流体+ボルツマン複合模型
TH et al.(’05)
ハドロン
カスケード
JAM
t
sQGP
3D流体
z
0
c.f. Similar approach by Nonaka and Bass (DNP04,QM05)
(Option)
カラーグラス
凝縮
cf.)板倉さんのトーク
流体モデルよるv2(pT)の歴史
2000 (Heinz, Huovinen, Kolb…)
完全流体、化学平衡 in ハドロン相
2002 (TH,Teaney,Kolb…)
+粒子比固定 in ハドロン相
2002 (Teaney…)
+ハドロン相における粘性
2005 (BNL)
“RHIC serves the perfect liquid.”
2004-2005 (TH,Gyulassy)
v2(pT)の傾きのメカニズム
20-30% 2005-2006(TH,Heinz,Nara,…)
+(とある)カラーグラス凝縮の初期条件
Future
興味深い実験結果の後押しもあり、 “To be or not to be (consistent
with hydro), that is THE question”
ここ数年で流体モデルは飛躍的に
-- anonymous
発展を遂げてきた
TH et al.(’05)
流体&ボルツマン複合模型による
v2(Npart)
•(とある)CGCモデル:
 完全流体は疑問
 粘性が必要
•グラウバー模型:
 早い熱平衡
 メカニズムは?
•考えられるシナリオ:
カラーグラス凝縮(中心)
グラウバー模型 (かすり)
ハドロンカスケードの結果: Courtesy of M.Isse
完全流体の発見は初期条件の不定性で消された!?
sQGP!
Molnar&Gyulassy(’00)
s ~ 15 * spert
注意: ボルツマン方程式の
希薄ガス近似はl~0.1fmに
適用可能か?
2体の分布関数の影響?
パートンカスケード
(ボルツマン方程式)
による計算
!
もし、複合模型的な記述が正しければ、その
物理的な意味は?
TH and Gyulassy (’05)
h : ずれ粘性, s : エントロピー密度
cf.)夏梅さんのトーク
Kovtun,Son,Starinets(’05)
•ずれ粘性
•(ずれ粘性)/(エントロピー密度)
!
エントロピー密度の急激な増加のおかげで
RHICにおける流体的な記述が良くなった?
閉じ込めの破れの現れ?
重イオン衝突反応
における
QGP物性物理に
向けて
今後のRHIC II & LHCにおけるQGP
物性の潮流
1. QGPの情報の引き出し “物性”物理
•
•
•
•
熱光子(内部の温度)
レプトン対(カイラル対称性)
ジェット、重いクォークなどの稀なプローブ
…
2. ダイナミクス自身
•
•
•
•
粘性の影響(輸送的性質)
熱平衡のメカニズム
Latticeを用いた状態方程式
…
もう一度、流体モデルの意義の確認
静的
•格子QCDによるEOS
•有限温度密度の場の理論
•臨界現象
•ハドロンスペクトルの変化
動的(重イオン衝突反応)
•膨張、フロー
•熱力学量の時空発展
何故、時空発展がそれほど重要か?
バルクの運動量分布
T
um
X: 温度、パートン密
度、フロー、化学ポテ
ンシャル、時空体積
etc.
クォーク再結合
T
パートンのエネルギー損失
M
B
r
熱放射
m
u
T, m
1.カイラル対称性
の回復:
penetrating probe
による系内部の情
報の引き出し
Hatsuda-Kunihiro(’84-)
QCD物質の物性物理
Hatsuda, talk at HFD06
重イオン衝突反応におけるカイラル対
称性の部分的回復?(SPSの例)
1. Backgroundからの
excess
2. 特にrho mass以下
の収量の増大
媒質中における
ハドロンスペクトル
の変化
Stolen from Miskowiec(QM05)
Chiku-Hatsuda(’98)
有効モデルによる生成率計算の一例
s,p 質量の温度依存性
p,s チャンネルのスペクトル関数
ある温度における生成率
生成率(反応率)~
単位時空体積辺りの反応数
流体計算と生成率の組み合わせ
• 生成率(単位時空体積辺りの個数)
Weldon (’83), McLerran & Toimela (’84)
Gale & Kapusta (’91)
m
u
T, m
• 「実験と比較すべき」運動量分布
Srivastava & Sinha(’94), Sollfrank et al.(’97),
Alam et al.(’01) and a lot of work
特に温度場と時空体積が重要
cf.) ハドロン相はパイオンなどの化学ポテンシャルも考慮
2.ジェット
トモグラフィー
•性質の良く分かっているprobe
•probe自身のdetect
•計算可能なprobeの歪み
未知の物質の内部
情報の引き出し
プローブとしての(ミニ)ジェット
核子-核子衝突
重イオン-重イオン衝突
エネルギーを
失ったジェット
ジェット
180度相関の消失?
?
媒質なし
媒質あり
Bjorken, Gyulassy, Wang, Plumer…
RHICにおけるジェットクエンチングの
発見
Nuclear Modification Factor
=
(重イオン反応での収量)
Ncoll×(pp反応での収量)
大きな運動量を持った
パートンが媒質中でど
のようにエネルギーを
損失するか?
PHENIX(’03)
ジェットクエンチングは
高密度物質の帰結
dN/dy~1000
2002年ごろ(ピークの消失)
(1/Ntrig) dN/d(Df)
ジェット対の相関
2004年ごろ(ピーク幅の広がり)
STAR Preliminary
4  pTtrig  6 GeV/c
Au+Au 5% 0.15  p
T
 4 GeV/c
0.15<pT<4(GeV)
Df
1/Ntrig dN/d(Df)
2<pT<pT,trig(GeV)
PHENIX
2005年ごろ
(ピークの移動?)
2<pT<3(GeV)
高密度物質の発見からその性質へ
Ruppert, talk at CNS-RIKEN workshop
マッハ数、音速、方位角相関
(マッハ数)-1 = cos qM
= (音速)/ (パートンの速度)
方位角相関関数における
away-sideのピークのずれ
QCD物質の音速
J. Casalderray, E. Shuryak, D. Teaney,
(2004) hep-ph/0411315
3.QGPの
輸送的性質
実験結果を基礎としたバルク物質の
情報の抽出
• フローに関わる実験結果
– pT分布(特にidentified particles)
– vn(特にv2)
– etc.
比較
• 状態方程式(圧力勾配がフローの源)
• 粘性(フローに影響)
ナイーブなNavier-Stokes方程式と緩
和時間
cf.)杉山勝、数理科学(2002年8月号)
•非相対論的な場合 (Cattaneo (’48))
バランス方程式:
構成方程式:
t0: フーリエ則
t : 緩和時間
因果律を破る
熱伝導方程式(放物型)
有限の緩和
電信(Klein-Gordon)方程式(双曲型)
Mueller,Israel,Stewart,…
“現代的な”相対論的粘性流体方程式
バランス方程式
どうやって構成方程式を得るか?
重要な指針:熱力学第2法則
構成方程式
近似としての完全流体の“発見”から
輸送係数の制限に向けて
•Navier-Stokes方程式の範囲
応答 =(輸送係数) × (熱力学的な力)
体粘性、ずれ粘性、熱伝導率
Lattice QCD + Kubo formulaで
「原理的には」導出可能
Nakamura,Sakai
•現代的な相対論的粘性流体方程式
粘性量に対する緩和時間:Boltzmann方程式との
比較から導出可(分布関数n(1±n)の高次のモー
Israel,Stewart
メント)
しかし、第一原理的に求められないか?
Latticeによる輸送係数の計算
I love to
see this
region!!
A.Nakamura and S.Sakai,PRL94,072305(2005).
Latticeによるずれ粘性
とエントロピー密度の比
(スペクトル関数に
Lorentz形を仮定)
eta/s < 1
はRHICで流体描像
が良いこととコンシ
ステント
注)pure gluons
まとめ
• RHICにおけるQGPの“発見”
– 基本チェックを通した実験結果の簡単な解釈
– 完全流体モデルを核とした複合ダイナミカルモデ
ルによる楕円型フローの“再現”
– (ジェットクエンチングの発見)
• RHIC II, LHCに向けたQCD物性物理の展望
– カイラル対称性の回復の検出
– ジェット・トモグラフィー
– 粘性流体力学の導入
グラウバー模型とCGC模型が流体の
初期条件として適している理由
中心度依存性
ラピディティ依存性
Glauber-BGK
•グラウバー模型
Npart:Ncoll = 85%:15%
•カラーグラス凝縮模型
e(x,y,h)を使う
CGC
Latticeによる音速の計算
Softening
of EoS
Stolen from Karsch(PANIC05)
Latticeによるスペクトル関数の計算
M.Asakawa,T.Hatsuda(’04)
J/psi survives up to ~1.6Tc!?
sQGP
=Strongly Interacting QGP
(Strongly coupled) QGP
or
=Strongly Correlated QGP
(Asakawa-san)
Hadron phase below Tch in H.I.C.
• “chemically frozen”  Themalization can be
•
maintained through elastic scattering.
There still exit “quasi-elastic” collisions, e.g.
• The numbers of short-lived resonances can be
•
varied. (Acquirement of chemical potential)
Recent data suggests importance of (process
dependent) hadronic rescattering
– Hard to describe this by hydro.
How Do Partons Get Longitudinal
Momentum in Comoving System?
Free Streaming eta=y
Sheet:
eta=const
dN/dy
dN/dy
Sum of delta function
y
Width “Thermal” fluctuation
y
22 Collisions Do Not Help!
Only 22 collisions,
partons are still in a
transverse sheet
eta~y~const.
23 may help.
Xu and Greiner, hep-ph/0406278
Temperature Dependence of h/s
•Shear Viscosity in Hadron Gas
Danielewicz&Gyulassy(’85)
•Assumption: h/s at Tc in the sQGP is 1/4p
Kovtun, Son, Starinets(‘05)
No big jump in viscosity at Tc!
•We propose a possible scenario:
h/s from MD simulations
eta/s has a minimum
in the vicinity of Tc !
Y.Akimula et al., nucl-th/0511019
No thermal qqbar
production
Preliminary result
ダウンロード

QGPの“発見”から“物性物理”に向けて