サービス基盤
スマートデバイスの利用を促進する
リモートデスクトップ・ソフトウェア
鈴木 一郎・門松 康樹
要 旨
スマートデバイスの企業導入が増加する一方で、「既存資産の有効活用」「ユーザーインタフェースの踏襲」
「情報漏えいリスクの回避」という導入課題があります。「スマートデバイス向けリモートデスクトップ」は、
これらの導入課題を解決する、「すぐ使える」「使いやすい」「安全」を特長としたソフトウェア製品です。
本稿では、3つの特長を実現する各種機能と、想定利用シーンを説明します。
キーワード
●スマートデバイス ●開発不要 ●資産活用 ●ユーザビリティ ●セキュリティ ●BYOD ●業務システム
1. まえがき
スマートデバイスの目覚ましい普及の中でも、特にタブ
レット端末の企業導入が増加しており、2016年度には140万台
(2011年度比で約8倍) 1) もの導入が予測されています。
しかし、実際の導入には、次の3つの課題があります。
・ 既存資産の有効活用
新たな開発が不要で、これまでの業務システムやアプリ
ケーションをスマートデバイス上で使える仕組みが必要
・ ユーザーインタフェースの踏襲
スマートデバイス特有の操作感だけでなく、従来のPC
操作と同等の操作も可能な仕組みが必要
・ 情報漏えいリスクの回避
個人所有のスマートデバイスであっても、セキュリティ
を確保できる仕組みが必要
そこでNECシステムテクノロジーでは、「すぐ使える」「使
いやすい」「安全」を特長とした、スマートデバイスから社内
業務システムに接続・利用できる「スマートデバイス向けリ
モートデスクトップ」(以下、本製品)を開発しました。
本稿では、第2章から第4章にて、本製品の特長を実現する
各種機能について、第5章では本製品の想定利用シーンを説明
します。
ま使えるようにするリモートデスクトップ機能で「すぐ使え
る」を実現します。
リモートデスクトップ機能とは、離れた場所にあるPCのデ
スクトップ画面を手元で操作できるようにするものです。本
製品ではスマートデバイス側にソフトウェアをインストール
するだけで、このリモートデスクトップ機能を実現します
( 図1 )。スマートデバイスに本製品をインストールするだ
けで、オフィスのPCに接続してすぐ使えるようになります。
専用サーバの設置や、PCにサーバモジュールやミドルウェア
などをインストールする手間は不要です。
リモートデスクトップ機能は3つの要素から構成されます。
(1) リモートデスクトップ・クライアント
本製品が提供するスマートデバイス上で動作するソフト
ウェアです。PCに接続してリモートデスクトップ画面
を表示します。またPCのマウス・キーボード機能をソ
フトウェアで提供します。外付けのマウス・キーボード
も利用できます。
2. 「すぐ使える」を実現する機能
本製品では、システムの簡単導入と、開発不要で既存の
Windows業務アプリケーションをスマートデバイスからそのま
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図1 システム構成(シンプルな導入パターン)
スマートデバイス活用ソリューション特集
(2) リモートデスクトップ・サービス
PC上で動作するソフトウェアです。リモートデスク
トップ・クライアントからの接続要求を受けてデスク
トップ画面の情報を送信します。またマウス操作・キー
ボード入力などの操作情報を受け取って、PC上で動作
するアプリケーションに渡します。本製品ではマイクロ
ソフト社のWindowsに標準で搭載される機能だけを利用
しており、PCへのソフトウェアの追加やネットワーク
アプライアンスサーバなどの専用ハードウェアの追加は
不要です。
(3) リモートデスクトップ・プロトコル(RDP)
リモートデスクトップ・クライアントとリモートデスク
トップ・サービスの間の通信プロトコルです。本製品で
はマイクロソフト社のRDPプロトコルを採用しています。
リモートデスクトップ機能を使うとスマートデバイスから
Windowsのアプリケーションがすぐに使えます。スマートデバ
イス用に既存の業務アプリケーションを書き直す必要はあり
ません。既存の業務アプリケーション資産を有効利用できる
ので、例えば、スマートデバイスの使いやすいユーザーイン
タフェースをフル活用した対面営業用カタログアプリケー
ションの新規開発に開発投資を割り当てるなど、付加価値向
上に注力できます。
3. 「使いやすい」を実現する機能
本製品では、スマートデバイス特有のピンチイン・ピンチア
ウト、フリックといったジェスチャー操作を使ってリモートデ
スクトップを操作できます。更に、スマートデバイスでは操作
しにくいPC特有のマウス・キーボード操作を、独自のユー
ザーインタフェースを開発して使いやすくしました( 図2 )。
(1) 透明ボタン(特許出願済み)
Windowsアプリケーションのウインドウ上端の右隅にあ
る「最大化」「最小化」「閉じる」ボタンに対応する半
透明のボタンです。Windowsの操作でこれらのボタンは
高い頻度で使用しますが、スマートデバイスの画面では
ボタンが小さく操作が難しいため、押しやすいサイズに
拡大したボタンを画面上に配置しました。ボタンは背景
が透けて見えるうえ、任意の場所に移動できるため邪魔
になりません。
図2 ユーザーインタフェース機能
(2) 透明マウス(特許出願済み)
ソフトウェアによる透明2ボタンマウスを、必要なとき
に画面に表示して使えます。デスクトップのアイコンク
リックや画面のスクロールなどはマウスを使わず指タッ
チでも操作できますが、例えば表計算ソフトのセル幅の
変更やプレゼンテーションソフトの描画ツールの操作な
どは、操作対象が小さいため指タッチでは指に隠れて操
作が難しくなります。このような場合に透明マウスを使
用します。この透明マウスの特徴は、伸びるマウスカー
ソルです。画面の四隅にいくほどマウスカーソルを伸ば
すことで、画面の四隅の操作をしやすくしています。
(3) 透明キーボード(特許出願済み)
リモートデスクトップを操作しやすくするソフトウェア
キーボードです。例えばPCで表計算ソフトを使う場合、
矢印キーを頻繁に使います。また業務アプリケーション
では、画面上の入力ボックスを行き来するために
「Tab」「Shift+Tab」「Enter」「Shift+Enter」などの
キーをよく使います。しかし、これらのキーはスマート
デバイスに標準的に組み込まれているキーボードにはあ
りません。本製品ではスマートデバイスからWindowsア
プリケーションを使いやすくする、さまざまなソフト
ウェアキーボードを使えるようにしました。
・ ショートキーボード:業務アプリケーション操作や文字
列編集用で使用頻度の高いキーを集めて、画面の最下段
に1列表示するキーボード
・ テンキーボード:テンキーと矢印キーを組み合わせた表
計算ソフトで使いやすいキーボード
・ リモートフルキーボード:日本語109キーボード相当の
NEC技報 Vol.65 No.3/2013 ------- 47
サービス基盤
スマートデバイスの利用を促進する リモートデスクトップ・ソフトウェア
キーを提供するフルキーボード。複数キーを組み合わせ
るコンビネーションキーも入力可能
これらのソフトウェアキーボードは全て透過型で、キー
ボードの下の画面が見えるようになっています。スマー
トデバイスのキーボードは一般的に画面の下半分に覆い
かぶさって表示されるため、入力中の画面が見えない場
合があります。この透明キーボードでは、入力中の画面
を見ながらキー入力することができます。
(4) 指タッチをWindows操作に融合
本製品では、指タッチをマウスのホイール操作のように
使ってWindowsアプリケーションのスクロール操作がで
きます。Windowsオペレーティングシステムでは、
Windows 8から指タッチ操作が一般的にサポートされま
したが、本製品ではWindows XP、Windows 7でも「タッ
プ」「フリック」「ドラッグ」「ピンチ」などの指タッ
チを組み合わせたスマートデバイス特有の操作で、
Windowsを使うことができます。
4. 「安全」を実現する機能
スマートデバイスはノートPCと比較しても可搬性に優れて
おり、社外に持ち出しての業務活用が期待されます。しかし
一方で、業務データを入れたスマートデバイスを紛失するリ
スクや、悪意あるユーザーによるデータ抜き取りのリスクが
出てきます。またスマートデバイスは急激に普及したためPC
と比較して企業利用におけるマルウェア対策が確立できてい
ません。更に私有端末の業務利用(Bring Your Own Device:
BYOD)がトレンドになりつつあり、企業システムに接続さ
れるスマートデバイスの管理が煩雑化する可能性があります。
一般的に、リモートデスクトップを使うと、オフィスのPC
と同じデータを扱っても、実際のデータはスマートデバイス
には保存されません。また、リモートデスクトップの接続を
切断すれば画面データもスマートデバイス上から消えるため、
情報漏えいのリスクは少ないと言えます。
本製品では、更に安全にスマートデバイスを業務利用でき
るように、5つのセキュリティ強化を行いました。
(1) ファイルダウンロード禁止
リモートデスクトップ機能には標準でファイルを端末に
*1
*2
UltraLiteタイプVB(1.2kg)からLifeTouch L(0.5kg)に変更した場合。
UltraLiteタイプVB(29.5mm)からLifeTouch L(7.9mm)に変更した場合。
48
転送する機能が含まれますが、本製品ではこの機能は使
えません。
(2) ローカルクリップボード連携禁止
スマートデバイス側でのクリップボードを使ってのコ
ピー・貼り付けを禁止しています。
(3) ローカルプリンタの使用禁止
スマートデバイス側のプリンタにリモートデスクトップ
からの出力を行えなくしています。
(4) キーロガーマルウェアの心配なし
独自の透明キーボードは、直接リモートデスクトップに
キー情報を送信します。スマートデバイスが万が一キー
ロガー系マルウェアに感染していても、本製品の透明
キーボードを使えば、キー入力データを抜き出される心
配はありません。
(5) デバッグモードからの起動不可
スマートデバイスをデバッグモードに設定して開発環境を
接続すると、スマートデバイスで動作するソフトウェアの
動作情報を抜き出すことができますが、本製品はスマート
デバイスがデバッグモードに設定されていると起動できな
いため、情報の抜き出しを防止できます。
5. 想定利用シーン
本製品を利用すると、スマートデバイスの専用アプリケー
ション利用と持ち出しPCの利用という、端末2台分の利用が
スマートデバイス1台でできます。
例えば、対面営業では操作性の良いスマートデバイス専用
アプリケーションを使います。そこで在庫照会が必要になっ
たら、同じスマートデバイスから既存の業務アプリケーショ
ンにアクセスします。既存の業務アプリケーションをスマー
トデバイス用に開発する必要はなく、自席PCと同じ操作性で
利用することができます( 図3 )。
スマートデバイスを持ち出しPCの代替用途に絞って活用す
ることも有効です。自席のデスクトップPCと社外作業用の持
ち出しPCの2台を持っている場合、本製品を導入して、持ち
出し用のノートPCをスマートデバイスに代替すると、重量は
半分以下 *1 、厚さ3分の1以下 *2 になります。
スマートデバイス活用ソリューション特集
関連URL
スマートデバイス向けリモートデスクトップ:
http://www.nec.co.jp/remotedesktop_sd/
図3 想定利用シーン
6. むすび
本製品により、スマートデバイスに適用された最新のハー
ドウェア技術、通信技術とコストパフォーマンスの良さを、
簡単、安全、低コストですぐに業務に活用することができま
す。「スマートデバイス向けリモートデスクトップ」は企業
のスマートデバイス活用を加速します。
*Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標で
す。
*Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの登録商標です。
参考文献
1) モバイルコンピューティング推進コンソーシアム:スマートフォン/タ
ブレット市場の中期予測について, MCPCモバイルソリューション
フェア2011, 2011.11
http://www.mcpc-jp.org/
執筆者プロフィール
鈴木 一郎
門松 康樹
NECシステムテクノロジー
プラットフォーム事業本部
スマートデバイス・
ソリューションセンター
NECシステムテクノロジー
プラットフォーム事業本部
第一ソフトウェア事業部
シンクライアント技術エキスパート
センター長
NEC技報 Vol.65 No.3/2013 ------- 49
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スマートデバイス向けコンテンツ配信サービス 「Contents Director」
BYOD に最適なスマートデバイス活用基盤 「UNIVERGE モバイルポータルサービス」
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