船舶用レーダーとレーダービーコンを用いた
GNSS バックアップのための測位システム
A Positioning System using Maritime Radar and Radar Beacons as a Backup for GNSS
山林 潤
Jun Yamabayashi
小嶋 達也
Tatsuya Kojima
岡田 勉
Tsutomu Okada
柏 卓夫
Takuo Kashiwa
古野電気株式会社
FURUNO ELECTRIC CO., LTD.
はじめに
今日,GNSS(全地球航法衛星システム:Global Navigation
Sattelite Systems) は ECDIS,AIS,オートパイロット等の
多くのナビゲーションシステムの基盤技術となっている.そ
の一方で,GNSS は衛星システム障害に対する脆弱性に加
えて太陽フレアやジャミング等の妨害波に対する脆弱性が
指摘されている.また,IMO が推進する e-Navigation 戦略
においても GNSS バックアップシステムの必要性が指摘さ
れている.そこで現在,GNSS バックアップシステムとして
英 GLA(General Lighthouse Authority) が中心となり eLoran(Enhanced Loran)[1] が開発されている.eLoran はドー
バー海峡を中心に仮運用が開始されている.
しかし eLoran にも問題が存在する.それは,通常時は
GNSS があるために利用されないにも関わらず eLoran の受
信機を船舶に搭載し基地局を配備しておかなければならな
い,というものだ.
このような背景のもと筆者らは新たな GNSS バックアッ
プシステムとして,X 帯レーダーとレーダービーコン (レー
コンと呼ぶ) を用いた測位システムを開発した.本システム
ではレーダーおよびコンパスを用いて測位するため,船舶側
に普段利用しない装置を設置する必要はない.また,バック
アップシステムが必要な海域 (例えば港入り口や輻輳地帯等)
に絞ってレーコンを設置すれば良いため運用も簡便であると
いう特徴がある.
1
測位原理
レーコンは通常レーダーパルスを受けた場合,レーダー
PPI 画面上でモールス符号状に見える応答波を送信する.本
システムに用いるレーコンは,レーダーパルスの応答信号
として自身の設置位置データも重畳して送信する.レーダー
側では,レーコンからの応答を受信・復調しレーコンの位
置 (xn , yn ) を得る.また,レーダーの測距機能によって得た
レーコンまでの距離 ln・相対方位 θn と,コンパスから取得
した船首方位 θH とから,アンテナ 1 回転中にレーコンの情
報を 1 つ取得できた場合 (1-Rcn-Pos と呼ぶ) は式 (1),レー
コンの情報を 2 つ取得できた場合 (2-Rcn-Pos と呼ぶ) は式
(2) を用い自船位置 (x, y) を求める.ここで,レーコン位置,
レーコンまでの距離・相対方位のサフィックス n はアンテナ
1 回転中に取得できた複数のレーコンを区別するインデック
スである.
{
x = x1 − l1 cos (π/2 − θH − θ1 )
(1)
y = y1 − l1 sin (π/2 − θH − θ1 )
ら計 11Point において,停船した状態で測位データを取得し
た.収録時間は各 Point あたり 10∼20 分とした.
図1
実験海域
各 Point での測位精度を図 2 に示す.図中 Accuracy とは,
各実験における全測位点の 95%測位誤差である.なお,誤
差を算出するための真値として,実験船に搭載されていた高
精度 GPS の出力を用いた.また,1-Rcn-Pos(A/B) の括弧
内は測位に使用したレーコンを示している.
2
{
2
2
(x − x1 ) + (y − y1 ) = l1
2
2
(x − x2 ) + (y − y2 ) = l2
(2)
実験とその結果
イギリスでの実験海域を図 1 に示す.レーコンは海岸付近
の灯台 (海抜 37m) に,レーダーは実験船 (アンテナ高さ約
9m) にそれぞれ設置した.レーコンまでの距離を変えなが
3
図 2 各 Point での測位精度
2-Rcn-Pos は全実験ポイントを通して 7m 以下の Accuracy
であった.しかし,Point3,4,6,7 において 2-Rcn-Pos は
結果を出力できなかった.これはアンテナ 1 回転中にレーコ
ン A と B が同時に応答しなかったためである.レーコン A
の南方向の障害物が原因であると思われる.
おわりに
本稿では,レーダーとレーコンを用いた測位システムの測
位原理と実験結果を報告した.実験結果から,2-Rcn-Pos 測
位では GNSS 単独測位に匹敵する精度が得られることが確
認できた.一方で,キャリアに直進性の高い X 帯を用いてい
るため,eLoran 等の長い波長を用いる測位システムに比べ
て死角の問題が顕在化しやすい.これについては設置する際
の環境に注意することである程度解決できると考えられる.
4
参考文献
[1] “Enhanced Loran Definition Document,” International
Loran Association, Oct. 2007.
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講演要旨