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農村部飲用水に2.8兆円
水インフラ整備で商機
浄水インフラの整備不足に加え、農村部で新たな環境汚染が深刻化。
2015 年までに安全な飲用水の確保に大規模な投資が見込まれる。
(王 長君・NTT データ経営研究所 社会・環境コンサルティング本部 シニアスペシャリスト)
農村部では古くから河川や湖沼、
が活発になり、生活スタイルが都市
中央政府は昨年3月に、
「全国農
ため池を水源として直接利用するこ
化したことで、工業排水や生活排水
村飲用水安全事業第12次五カ年計
とが多く、地方政府も住民も浄水や
の排出量が急増。一方で処理施設の
画」を公表した。2015年までに2億
水の供給などインフラ整備に対する
整備が遅れ、未処理のまま河川や湖
9800万人の農村人口に対する飲用
認識が甘い。飲用水の水源地が山間
沼、地下水に放流したことが環境汚
水の安全問題を解決する。全国に集
部などに分散しており、規模も小さ
染の要因である。
中式の水供給施設を22万5000カ
いことから水質の監視体系が構築さ
昨年の調査によると、農村部では
所、分散式の水供給施設を52カ所
れず、安定して安全な水を供給する
生活排水が年間90億t、生活ごみが
整備する。国が第11次五カ年計画
ことが困難になっている。
同2億8000万t、し尿が同2億6000
より約697億元多い1750億元(約
国が一部の地域で実施したインフ
万t発生している。さらに増加する
2.8兆円)を投入。東部、中部、西部
ラ整備は、フッ素症や住血吸虫症な
傾向にあるにもかかわらず、ほとん
の農村部の飲用水整備事業に対し
ど が 多 発 す る 所 が 中 心 で あ る。
どが未処理か簡単な埋め立て処理し
て、それぞれ費用の33%、60%、80
2000〜08年に618億元(約9800億
かしていないのが現状である。全国
%を補助する。
円)を投資し、1億6000万人の飲用
の60%の水源地が何らかの形で汚
農村部の飲用水に関わる法規制も
水の利用環境を改善した。だが、近
染されている。
整備した。水質の監視項目を従来の
年は農村部の水環境汚染や人口増加
化学肥料や農薬の大量使用といっ
35項目から106項目に増やし、フッ
を原因とする良質な水源地の減少や
た農業生産を起因とした汚染も発生
化物、硬度、塩化物など7項目の規
水不足などにより、安全な飲用水を
している。現在、全国で化学肥料の
制値をより厳しく設定した。
利用できない人口が増えている。
使用量が年間360万t、農薬の使用
大規模な投資によって水ビジネス
1980年代から農村部の工業活動
量が同100万tに達している。窒素
市場はますます拡大する傾向にあ
やリンなどの栄養物質や、農薬やそ
る。ただし、農村部の飲用水インフ
の他の化学物質が地下水や河川、た
ラの場合、施設ごとの処理能力を大
め池などの汚染源となっている。
きくできず、採算が取りにくい。地
農村部で安全な飲用水を利用でき
域によって水資源の条件も異なり、
ない人口は昨年時点で2億9800万
参入には十分な検討が必要だ。
安全な飲用水の確保が課題
■ 農村部が抱える水問題の原因
人に達した。そのうち1億200万人
水不足の人口
43.8 %
飲用水基準を
満たさない水を
利用する人口
56.2 %
はインフラの未整備が原因で、残り
の1億9600万人は水源の汚染や水
不足によって増加したものである。
出所:
『2010-2013年全国農村飲用水
安全事業計画調査報告書』
92 NikkeiEcology 2013.10
王 長君
1999年3月愛媛大学大学院博士課程修了博士
号取得。その後、環境コンサルタント会社を経て
2002年7月より現職。中国環境関連研究論文、
著書、学会発表など多数
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