SuperDARN北海道-陸別HFレーダーと
太陽放射強度データを用いた太陽フレア時
における電離圏環境変動の量的特性の研究
名古屋大学太陽地球環境研究所
渡辺太規, 西谷望, 今田晋介
背景
Impulsive 型フレアに伴う各放射線成分の時間変化 (Donnelly, JGR, 81, 4745, 1976)
Normalized Solar Flux Components
Impulsive Component
Source region : 104 - 106 oK
Related Slow Component
Source region :
(1 - 30) x 106 oK
- 硬X線(< 1Å) D 層電離
- EUV(90~1027Å)
・E, F 層電離
・強度は最大で静穏時の数十 % 増
- マイクロ波電波
- コロナからの軟X線(1~90Å)
・D, E 層電離
・強度は最大で静穏時の約1,000倍
- EUV E, F 層電離
- 主に軟X線(1~8Å)、EUV も
Very Slow Component
Source region : (1 - 30) x 106 oK)
Time (min)
出典:小川忠彦,STE現象報告会(2013)
モデルフレアの Impulsive
成分 による電子の生成率
モデルフレアの Slow 成分に
よる電子の生成率
(Donnelly, JGR, 1976)
(Donnelly, JGR, 1976)
非フレア時と大きな
差は見られない
非フレア時に比べ
下部電離圏の電子
生成率に大きく影響
出典:小川忠彦,STE現象報告会(2013)
太陽フレア発生時における、電離圏電子密度変動の高度
分布を観測した研究はあまり多くない。
研究の目的
・SuperDARN北海道-陸別HFレーダーの観測より下部電
離圏、F層において、それぞれどのような電子密度変化が
生じているかを解明する。
・RHESSI衛星, SDO衛星観測によるX線、EUV放射強度
データを用いて、電子密度変化を見積もる。
太陽放射
電離圏電子
密度変化
光化学反応を考え、電離圏
電子密度変化量を見積もる。
レーダーに
よる観測
ドップラーシフトの性質を
解析し、電離圏電子密度
変化量を見積もる。
北海道-陸別HFレーダー
・SuperDARNレーダーの一つ
・現在あるSuperDARNレーダーの中
で最も低緯度を観測できる。
・太陽天頂角が小さいので
太陽フレアの影響が良く見られる。
・緯度の違いによる太陽放射の影響
の変化が小さい。
エコーの種類
電離圏エコー
:電波が電離圏の不規則構造で後方散乱され
返ってくるエコー
ground scatterエコー:電波が一回または数回電離圏下部と海面や地面
の間を繰り返し反射し、地表および海面の不規則
構造から後方散乱を受けて返ってくるエコー
本研究ではground scatter
エコー(1 hop)に注目した。
1 hop
2 hop
太陽フレア発生時、短波帯電波にドップラーシフトが生じる。
Kikuchi et al. (1985)
(1)下部電離圏電子密度変化の影響
下部電離圏(nondeviating slab)の電
子密度が増加することにより屈折率
が小さくなり、電波の見かけの経路
が小さくなる。
Fig.5
(2)F層電子密度変化の影響
F層の電子密度が増加する
ことにより反射高度が低下し、
電波の経路が小さくなる。
ドップラーシフトのレンジ・仰角依存性
レンジ:電波の発信点から後方散乱を受ける点までの経路長
(1)下部電離圏電子密度変化の場合
θ
Δf
小
大
(2)F層電子密度変化の場合
大
k  d dN 1
Δf 


c  f dt sinθ
レンジが小さくなるほど(仰角が
大きくなるほど)ドップラーシフト
は大きくなる。
f dh
Δf  2   sinθ
c dt
θ
Δf
レンジが大きくなるほど(仰角が
小さくなるほど)ドップラーシフト
は大きくなる。
小
d:下部電離圏の層さ c:光速 f:周波数
N:電子密度 h:反射高度 θ:仰角
レーダーのground scatterエコーの仰角の算出
電波の反射高度を250kmで一定と
仮定すると仰角θは、電波の経路長
ℓを用いて
ℓ/2
θ
250km
250
sinθ
l/2
250
θ arcsin
l/2
と表わすことができる。
結果
2011年2月15日(X2.2)
Velocity(m/s)
Doppler velocity
30
25-50 kev
3 – 6 kev
12-25 kev
6 -12 kev
EUV (5‐37
nm)
Irradiation(W/m2)
X-ray
count rate
-30
Time(UT)
01:49UTにおけるレンジ・仰角とドップラー速度の関係
要因(A)
要因(B)
仰角依存性
∝1/sinθ
∝sinθ
レンジ依存性
正の相関
負の相関
レンジに対し正の依存性、仰角に対し負の依存性を示した。
→下部電離圏電子密度変化の影響
仰角依存性解析による電子密度変化量の推定
ドップラー速度は v 
k  d dN 1
dh



2

sinθ と表わすことができる。
2
f
dt sinθ
dt
d:下部電離圏の層さ c:光速 f:周波数
N:電子密度 h:反射高度 θ:仰角
1
最小二乗法により v  a 
 b  sinθ にフィッティング
sinθ
1
v  6.4 
 12.35  sinθ
sinθ
k=8.06×10-11 、f=11(MHz)を用いて、
下部電離圏の電子密度変化量は
dN
d
 9.6  3.9 (1012個/m2・s)
dt
と見積もることができた。
光化学反応モデルによる電子密度変化の推定
∞
光学的深さ (, ) = 
(, )

光のフラックス
 ,  ′ ′

Φ ,  = Φ , ∞ exp{−(, )}
∞
電子生成率
  =
0
Φ ,   ,   ,  
χ:太陽天頂角 σabs, σion :吸光断面積、光イオン化断面積
n:中性粒子密度 xは中性粒子の種類(O2,N2,O,Nのみを考える)
σはFennelly and Torr (1992)より、nはMSISモデルより、
Φ(λ,∞)はSDO衛星のEVEによる観測よりそれぞれ得た。
height(km)
電子生成率(/m3・s)
高度120-170km付近に電子生成率増大のピーク。下部電離圏は?
→50Å~1020Åの波長帯のEUVしか考慮していないためD層では
影響が見えない
電子の消滅がイベント前の生成率と等しく、イベント中一定と仮定
01:49UTにおいて高度70-120kmでの平均電子密度変動量
dN
qL
dt
dN
d
 7.09
dt
(1012個/m2・s)
まとめ
・北海道-陸別HFレーダーにより、フレア発生時にground scatter
エコーに、ドップラーシフトの正の変化を観測し、その時間変化と
X線,EUV放射強度の時間変化は一致した。
・ドップラーシフトはレンジに対し正の相関、仰角に対し負の相関
を持った。
→下部電離圏電子密度変化の影響が強い
・ドップラーシフトの仰角依存性を定量的に解析し、電子密度変
化量を見積もることができた。
・太陽放射強度データを用いて、電子密度変化量を見積もること
ができた。
今後の課題
・X線帯の放射の影響を考える必要がある。
・多くのイベントを解析し、統計的にレーダーによる観測と太陽放射
強度変動の対応を探る。
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陸別HFレーダーを用いた太陽フレアによる電離圏環境変動