児童・思春期精神科病棟に勤務する看護師の看護実践に対する認識
第 1 報 困難を感じることに焦点を当てて
船越明子 ( 三重県立看護大学 )、宮本有紀(東京大学大学院)、
服部希恵 ( 名古屋第一赤十字病院 )、郷良淳子(医療法人長尾会 ねや川サナトリウム)、
土田幸子(三重大学)、土谷朋子(東京女子医科大学大学院)、
アリマ美乃里 ( 香港日本人学校 小学部香港校 )、田中敦子 ( 医療法人八誠会 守山荘病院 )
緒 言
児童・思春期精神科病棟での看護においては、専門性の高い臨床の現状にあった文献や研修の場が少ないといわれている。
目 的
本研究の目的は、児童・思春期精神科病棟に勤務する看護師が、看護において感じる困難を明らかにすることである。
方 法
全国児童青年精神科医療施設協議会加盟病院の、
児童または思春期を対象とした専門病棟を有する
18 病院のうち、協力が得られた 14 病院に勤務す
る看護師を対象に、児童・思春期精神科看護にお
ける 7 つのケア領域(表1)毎に、
「困難または
疑問を感じていること」について、自由記載によ
る自記式質問紙調査を実施した。得られた回答は、
ケア領域毎に内容分析を行った。まず、一内容を
含む単語・文章を記録単位とし、意味内容の類似
性に基づいて、記録単位を分類し、カテゴリーを
抽出した。次に、カテゴリー毎に回答した対象者
の数を集計(複数回答)した。
表1 児童・思春期精神科看護におけるケア領域とその定義
暴力・暴言への対応
暴力・暴言を防ぐためにルールを設定し、暴力・暴言が発生した場合は、タイムリーに介入をする。介入後
は子どもと一緒に行動の振り返りを行う。
患児への個別の関わり
子どもとの一対一のコミュニケーションを通して、信頼関係を構築し、子どもの成長・発達を促す個別的な
関わりをすること。
集団への関わり
集団としての子どもを対象に、遊んだり作業をする時、ファシリテーターとしての役割を担う。全体を見な
がらも注意が必要な子どもに意識して目をむける。
家族への支援
家族が思いを表出できるよう配慮し、家族の不安などの気持ちを聞き、受け止める。また、家族の抱えてい
る問題を見極め、子どもへの接し方などを助言する。
子どもを知る
疾患、年齢、成育歴などのカルテ情報、他のスタッフの意見、自分が感じた手がかりについて考えながら、
子どもと関わることで子どもの言動の背景にあるものを知る。
外泊・就学への支援
入院中の院内学校(学級)への通学を支援するとともに、退院後に通う地元校にスムーズに登校できるよう
準備する。
医療チームの一員
としての関わり
多職種チームおよび看護チームの一員として情報の共有に努めることで、子どもを幅広い視点で理解する。
他の職種と連携する時は、職種の特性・役割を踏まえた上で、それぞれの専門性が発揮できるよう調整する。
※) 船越明子、田中敦子、服部希恵、アリマ美乃里:児童・思春期精神科病棟におけるケア内容 ―看護師へのインタビュー調査から― . 日本看
護学会論文集 : 小児看護 , 41, 191-194, 2010. より
結 果
230 名(有効回答率 68.4%)を分析対象とした。まず、困難を感じた内容の報告があった者をケア領域別に図1にしめす。
家族への支援
図1 児童・思春期精神科病棟の看護において看護師が感じる困難(N=230)
次に、看護において感じる困難として回答数が多かったもの
上位 5 項目をケア領域毎に図 2 ∼ 8 に示す。
暴力・暴言への対応
図2 子どもの暴力や暴言に対応するときに感じる困難 (N=230)
患児への個別の関わり
図3 子どもに対して個別的なケアや一対一の関わりをするときに感じる困難 (N=230)
集団への関わり
図4 集団に対するケアや複数の子どもの対応をするときに感じる困難 (N=230)
図5 子どもの家族に関わるときに感じる困難 (N=230)
子供を知る
図6 子どもの問題をアセスメントするときに感じる困難 (N=230)
外泊・就学への支援
図7 子どもの外泊や就学の支援をするときに感じる困難 (N=230)
医療チームの一員としての関わり
図 8 他の看護師や看護師以外の他の職種と協働するときに感じる困難 (N=230)
考 察
看護師が心理的な負担を感じるなどの暴力・暴言への対応や、家族が精神面で問題を抱えているなど家族への支援についての困難が
多く挙げられた。児童・思春期精神科病棟での看護実践の質の向上にむけて、本研究で明らかとなった看護師が感じる困難をふまえ
た臨床での研修・教育の実施が求められる。
倫理的配慮
対象者に対して、研究の主旨、匿名性の確保、研究結果の公表、調査への参加は自由意志であること、研究参加への有無によって不
利益を被らないことを書面で説明し、調査票の返送をもって同意が得られたとした。また、三重県立看護大学研究倫理審査会による
承認を受けた。
謝 辞
本研究にご協力くださいました看護師の皆さまに深く感謝申し上げます。本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金 若手研
究(B)「児童・思春期精神科病棟における看護ガイドラインの開発(課題番号:22792279)」の助成を受けて実施しました。本
研究の詳細は、「子どものこころのケアと看護」と題したホームページ上に記載しております。
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結 果 考 察 謝 辞 緒 言 目 的 方 法 倫理的配慮