第275号
(財)水道技術研究センター会員 各位
JWRC
平成 23 年 8 月 12 日
(財)水道技術研究センター
水道ホ ット ニュース
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「ろ過を行っていない米国の 5 大都市」から(その3)
ポートランド市の水道事情について
(訳注)オレゴン州ポートランド市の水道事情については、水道ホットニュース第 119-2 号(平成 20
年 7 月 25 日)、第 120-2 号(平成 20 年 8 月 1 日)及び第 121-2 号(平成 20 年 8 月 8 日)に
おいて、「米国長期第 2 次地表水処理強化規則(LT2ESWTR)を巡る訴訟と判決(その1~そ
の3)」と題して紹介しているので、参照されたい。
http://www.jwrc-net.or.jp/hotnews/pdf/HotNews119-2.pdf
http://www.jwrc-net.or.jp/hotnews/pdf/HotNews120-2.pdf
http://www.jwrc-net.or.jp/hotnews/pdf/HotNews121-2.pdf
1.ポートランド市の水道の歴史
1892 年 6 月 17 日、Benjamin Harrison 大統領(訳注:米国第 23 代大統領、1833 年−1901 年)は、
Bull Run 流域を国立森林保護区(a national forest reserve)として布告した。これは、流域に対し
て重要な保護をもたらすものであった。1 年以内に、Bull Run から Portland への 24 マイル(約
38.6km)の建設が開始された。この巨大なプロジェクトは、ほとんどが人力によるものであった。水
委員会(the Water Committee)は、Mt. Tabor 及び City Park(現在の Washington Park)におい
て、貯水池の建設及び市内の配水システムの拡張に着手した。これらの大掛かりな公共工事は 1894
年まで続けられた。
1895 年 1 月 2 日、Bull Run からの最初の水がポートランドに流入した。ポートランドのホテルの
メニューは、優雅なレストランのディナーには Bull Run の水のみが提供されることを誇りとした。2
年以内のうちに、市の健康担当官は、腸チフス患者数の驚くべき減少及び当時において極めて低い死
亡率となったことを文書で明らかにした。
ポートランド市は、この水資源を保護することに努めている。1904 年、Theodore Roosevelt 大統
領(訳注:第 26 代大統領、1858 年‐1919 年)は、流域に近づくことを制限する「不法行為法(Trespass
Act)
」に署名した。今日、ポートランド市は、Bull Run の継続的な利用及び保護を確実なものとする
ため、州・連邦の機関及び政策立案者とともに従事している。
1920 年代を通じて、ポートランド水道局(the Portland Water Bureau)は、ポートランド首都圏
域の需要を満たすため、配水システムを拡大し、増加する市の人口及び拡大する用水供給先に水を供
給してきた。
1929 年、水道局は Bull Run の貯水設備として第 1 ダムを建設し、消毒のために塩素処理を始めた。
大恐慌(the Depression、1929 年~1933 年)の間、水道局は建設及び維持プロジェクトを延期した。
第 2 次世界大戦の間、水道局は供給及び貯水を改善するためにシステムにタンクを追加した。
戦後、ポートランドは成長し、水道局は、需要の増加に見合うように、タンク、ポンプ場、公共水
栓などを追加した。1962 年、水道局は Bull Run において第 2 ダムの建設を完了した。
1970 年代において、水道局は、将来の成長のために再び準備を始めた。主要な調査において、供給、
保全、水力発電の可能性、料金及び腐食抑制について考察が行われた。水道局は、コロンビア南部沿
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岸区域(the Columbia south shore area)に探査用井戸を掘削した。
1980 年代において、ポートランド水道局は、いくつかの重要なプロジェクトを完成させた。1983
年、Washington 郡供給管路により、西部地域の顧客に対して自然流下による水供給が行われること
となった。コロンビア南部沿岸区域の井戸群による給水が開始され、1987 年の渇水の間、夏期の供給
量を増大することができた。
(出典)http://www.portlandonline.com/water/index.cfm?c=29461
2.ポートランド市が浄水処理要求事項に対して適用除外措置を申請
(記者発表、2011 年 1 月 3 日)
本日、ポートランド水道局は、長期第 2 次地表水処理強化規則(LR2)の浄水処理要求事項に対し
て、適用除外措置(variance)の申請を行う意向であることを発表した。適用除外措置は、連邦環境
保護庁によって勧告され、オレゴン州保健福祉局の飲料水プログラムによって承認されれば、ポート
ランド市は、クリプトスポリジウム原虫に対処するために市の Bull Run 流域における浄水設備の設
計及び建設の必要とされる 100 百万米ドル(約 85 億円)もの費用を避けることが可能となる。
David Shaff 水道局長は、
「ポートランドは、昨年、Bull Run 内においてクリプトスポリジウムの
集中的な水質サンプリング-取水地点での 449 検体の試験及び 300 以上の上流箇所-を実施した。」
と語った。また、
「このサンプリングの努力は、多分、米国内でこれまでに実施された保護流域におけ
るクリプトスポリジウムの最も集中的なスクリーニングである。その結果、過去も現在もクリプトス
ポリジウムが検出された事例はゼロである。それゆえ、我々は、クリプトスポリジウムに対する浄水
設備を建設しなくとも、水道局が Bull Run の 1 世紀にわたる長期の職務を継続することができると
いう非常によい事例を持っているものと信じている。」と語った。
浄水処理の適用除外措置は、もし、水道システムの原水の水源の特性から、公衆の健康を保護する
ために要求されている浄水処理を必要としないことを公共水道システムが実証できれば、連邦飲料水
規則への適合の代替手段とする安全飲料水法(SDWA:the Safe Drinking Water Act)の規定である。
オレゴン州の飲料水プログラムは LT2 規則の法的権限を有しているが、ポートランドの適用除外申請
の評価において先導的な役割を保持する環境保護庁(EPA)に対して公式に請求するものである。
ポートランドは、Bull Run 流域が、もし消費されると病気を引き起こすことのあるクリプトスポリ
ジウムのタイプ及び量を伝播するリスクがあるかどうかの問題に関連した証拠を収集するため、2009
年 12 月に集中的な水質モニタリングを開始した。Bull Run 貯水池からの原水が最初に水道システム
に入ってくる取水施設において、2010 年 12 月まで、毎週、概ね 200 リットルの水が試験された。水
道局は、クリプトスポリジウムが入ってくる可能性がある Bull Run 川及び 2 つの配水池がいわゆる
「ホットスポット(hot spots)かどうか決定するため、9 ヶ所の上流域地点における定期的なサンプ
リングにより、当該試験を増やすこととした。そして、どの場所、どの試験においても、クリプトス
ポリジウムは検出されなかった。この集中的なモニタリングの結果は、2002 年 9 月以来、クリプトス
ポリジウムが流域で検出されたことを証明する過去の定期的な試験結果を基礎としている。
1 年間にわたる水サンプリングプログラムの結論をもって、昨月、ポートランド市議会は、水道局
に対してさらなる専門的知識を提供し、浄水処理の適用除外措置申請を推し進めて書面にすることを
手助けするため、Camp Dresser and McKee, Inc. (CDM)との契約を承認した。ポートランド市は、
2011 年春に LT2 の適用除外申請を提出する予定である。
(出典)http://www.portlandonline.com/water/index.cfm?a=331964&c=29344
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3.長期第 2 次地表水処理強化規則の浄水処理に関する FAQ
(ポートランド水道局、2011 年 4 月)
(環境保護庁の「LT2 規則」の浄水処理要求事項とは何か、また、ポートランド市にとって何を意味
するのか?)
連邦の LT2 規則(長期第 2 次地表水処理強化規則)の浄水処理に関する規定では、地表水又は地表
水の影響を直接受ける地下水を利用する公共水道システムは、クリプトスポリジウムを処理するか、
又は浄水処理の適用除外措置を得ることを要求している。ポートランド市は、その末端給水の顧客に
水を供給するとともに用水供給の顧客に対する契約上の義務を履行するため、規則を遵守しなければ
ならない。ポートランド市は規則を遵守するため、2 つの手段を並行して追い求めている。
(市が規則を遵守するために追い求めている2つの並行した手段とは何か?)
2 つの手段とは、
①オレゴン州保健福祉局の飲料水プログラムに申し込むことにより、規則に対する適用除外措置を求
めることである。もし、その水源の特質から、規定された浄水技術と同等の公衆の健康保護レベル
を有することを水道システムが主張することができれば、連邦の浄水処理要求事項に対して適用除
外措置を用いることができる。水道局は、1 年にわたる Bull Run 流域の水質サンプリング計画を実
施してきた。これまでに集められたデータは、適用除外措置が適切であるという強力な論拠を市が
有していることを示唆している。
それ故に、水道局は、環境保護庁に対して浄水処理の適用除外措置を主張する申請を行う予定であ
る。水道局は、2011年の第2四半期の間に浄水処理適用除外措置の申請を提出する予定であり、2011
年末までに決定がなされるものと見込んでいる。
②Bull Runからの水供給のための追加の浄水処理設備の建設を計画することにより、LT2規則を遵守
することである。2014年4月1日が規則遵守の期限であることから、必要とする場合に備えて浄水設
備を設計するために複数の請負業者に業務を依頼している。
(浄水処理適用除外措置という路線を選択するとどうなるか?)
ポートランド水道局は、適用除外措置申請の証拠となるかどうかを判断するためにBull Run流域の
水質データを収集・分析している。2010年12月時点でのサンプリング計画の結論としては、クリプト
スポリジウムは不検出ということである。もし、適用除外措置申請が却下されれば、市はクリプトス
ポリジウム対策としてBull Runの水を処理することが必要となるであろう。
(規則を遵守するという路線を選択するとどうなるか?)
公衆の健康を保護するために適した水の処理方法は多数ある。ポートランド市浄水処理市民パネル
(A City of Portland Treatment Citizen’s Panel)は、規則遵守のための最低費用の選択肢として紫
外線処理を推奨した。さらに、2009年にポートランド市議会は、より好ましい選択肢として紫外線消
毒を選択している。
適用除外措置が却下された場合、ポートランド市は 2014 年 4 月 1 日である規則遵守期限を守るた
めの準備をしなければならないことから、浄水処理設備の計画及び設計が進められている。環境保護
庁がポートランド市の浄水処理適用除外措置申請に関する決定を行うまで、設備の建設は行われない
予定である。
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(紫外線処理はどのように機能するのか?)
米国で水道水の消毒に紫外線を用いるのは、1916年に遡る。それは、薬品を使わない消毒プロセス
である。紫外線は、DNAに含まれている遺伝子情報を破壊する。病原体(例えば、クリプトスポリジ
ウム)は再生能力を失い、不活化される。紫外線処理は薬品を使わない消毒技術であることから、薬
品処理による方法とは異なり、クリプトスポリジウムが紫外線に耐性を持つようになることはできな
い。紫外線技術は、薬品を追加することなく、また、有害な副作用がなく、数秒でクリプトスポリジ
ウム及びジアルジアを不活化できる。(紫外線消毒は、水中の溶解有機物、無機物質又は微粒子を除
去するものではない。それは、ろ過による浄水方法ではない。)
(紫外線処理技術は安全か?)
紫外線処理技術は、比較的にリスクは少ない。ポートランド市が選択した紫外線システムは、紫外
線ランプを保護するために石英スリーブシステムを用いるとともに、低圧紫外線ランプを使用するこ
ととしている。低圧紫外線システムは、その他のタイプのシステムに比べて、水銀が少なく、冷温で
の運転であり、また、低い内部操作圧となっている。低圧水銀ランプは、紫外線ランプの内側に付着
される少量の水銀を用いる。もし、ランプが壊れた場合、水銀は固形状のままで留まり、パイプの底
部に落下するので、そこで除去され、水道の配水システムに入る前に安全に処理される。米国で最大
の公共水道システムであるニューヨーク市のCatskill/Delaware設備、そして、サンフランシスコ公共
事業委員会はともに、LT2規則を遵守するために紫外線消毒を選択している。
(もし、ポートランド市が浄水設備を建設しなければならないとすれば、費用はどのくらいで、どの
ように資金を調達するのか?)
紫外線処理設備の推定費用は1億米ドル(約85億円)である。1億米ドルの資本費(capital cost)は、
債券の購入を通じて資金が調達されるであろう。債券の発行に伴う利子についても、返済しなければ
ならない。債券の額を返済するため、ポートランド水道局は顧客に請求される水道料金を値上げしな
ければならない。
(出典)http://www.portlandonline.com/water/index.cfm?c=53849&a=345911
(文責)センター常務理事兼技監
安藤
茂
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