宿題の解説 10 月 27 日
c
三井隆久ç
Department of Physics, Keio University School of Medicine,
4-1-1 Hiyoshi, Yokohama, Kanagawa 223-8521, Japan
(Dated: November 10, 2015)
問I
答え
電気双極子モーメント p~ の定義は「a」なので、単位は
「b」である。電子と陽子が 0.1nm 離れて居る場合の電気
双極子モーメントは、
「c」である。これは小さな数字であ
り、不便なので慣習として D(デバイ) という単位を用いる
場合がある。1D=3.3356Ç10Ä 30 Cm である。この単位を
用いると、「c(既出)」は、「d」である。
理科年表によると、分子の電気双極子モーメントは、KI:
11.05D, CO: 0.110D, HCl: 1.12, H2 0: 1.94D である。水
分子 1 個に 1V/m の電場を加えた場合のトルクの最大値
は、「e」である。
(a) 窒素分子の高度を h、質量を m とすれば、位置エネ
ルギーは mgh であるから、è= mgh となる。エネルギー
èの状態が実現する確率は、高さ h の状態が実現する確率
に比例するので、ここでは、P (h) を高さ h の状態が実現
する確率として、これがカノニカル分布に従うとしよう。
カノニカル分布の比例定数を P (0) とおいて、高度 h に分
子がいる確率を、
í
ì
mgh
P (h) = P (0) exp Ä
(2)
kB T
答え
(a) 負の電荷 (-q) から見た正の電荷 (+q) の位置ベクトル
が ~l のとき、この正負の電荷によって作られる双極子モー
メント p~ は、~
p = q~l である。
(b) 単位は、[Cm] である。
(c) 1.6Ç10Ä29 Cm.
(d) 4.8D.
~ = p~ Ç E
~ なので、最大
(e) トルク (静電気式 (41)) は N
Ä 30
値は、1.94DÇ1V/m=6.47 Ç10
Nm である。
問 II
床においたボールが自然に机の上に跳ね上がることは日
常生活ではあり得ないが、目の前にある窒素分子が 1 年後
に上空 1 万メートルに行くことは十分にあり得ることであ
る。両者は全く異なっているように思えるが、物理学の観
点からはボールと窒素分子に本質的な差はなく、両者の挙
動は熱平衡状態における物体の振る舞いとして統計力学に
より統一的に扱われる。統計力学の成果によれば、温度が
T のとき、エネルギーが èの状態が実現する確率 P (è) は
P (è) / exp(Äè=kB T );
(1)
であることが導かれる。ここで、kB =1.38Ç10Ä 23 J/K は
ボルツマン定数である。
(a) 窒素分子の高度分布を求めよ。N2 の分子量 28、ア
ボガドロ定数 NA =6.022Ç1023 /mol, g=9.8 m/s2 .
(b) 1g の物体が高さ 0-0.1 mm に存在する確率と
0.1mm-無限遠に存在する確率の比を求めよ。
(c) 図は、光合成に関与する酵素の活性を温度を変え
て測定した結果である。この酵素の活性化エネルギーを求
めよ。
とする。比例定数は例えば C と置いてもよいが、ここで
は C = P (0) なので、はじめから P (0) とおいた。
T =300 K, N2 の分子量 28 と g=9.8 m/s2 を使うと、
P (6300m)=P (0m)=0.5 となる。
類似の議論は遠心分離器にも使える。遠心分離器では円
運動による遠心力で外側に r! 2 の加速度が働く。したがっ
て、位置エネルギー Ämr2 ! 2 =2 を用いたカノニカル分布
となる。ただし、液体中で行うので、位置エネルギーや外
側に向かう力には浮力の補正が必要である。
(b) m=1g として、
í
ì
mgh
P (h) = P (0) exp Ä
(3)
kB T
となる。物体は高さ 0 m から高さ 1 までのどこかにある
ことは確かなので、P (h) は、
Z 1
P (h)dh = 1;
(4)
0
を満たす。
Z
1
0
P (h)dh = P (0)
kB T
;
mg
(5)
なので、P (0) = mg=kB T となる。したがって、h1 =0.1mm
として、0-h1 及び h1 -1 に存在する確率 P1 , P2 は、
Z h1
P1 =
P (h)dh = 1 Ä exp(Ämgh1 =kB T ); (6)
Z0 1
P2 =
P (h)dh = exp(Ämgh1 =kB T );
(7)
h1
14
となる。値を代入すると、P2 = 10Ä 10 であり、ほとんど
ゼロであり、P1 はほとんど 1 である。このことから 1 g の
物体が熱エネルギーで自然に飛び上がることはほとんどあ
り得ないことがわかる。
2
(c) どのような自然現象についても言えることだが、温
度に強く依存する現象があり、温度依存性が式 (1) のよう
になっていれば、その自然現象はエネルギー èで特徴付け
られている可能性が高く、エネルギー èが具体的には何な
のか探索すると未知の物体を見いだせたり現象の解明がで
きる場合が多い。今回の例も、横軸を 1/(温度+273.15)、
縦軸を対数目盛としてグラフを描くと、なんとなく直線に
なっているように見える。直線を式で書くと、
activity(rice) = 1:4 Ç 1019 exp(Ä
1:6 Ç 10Ä 19 J
);
kB T
activity(barley) = 6:1 Ç 1014 exp(Ä
と書くことができる。実際には A-C や G-T など様々組み
合わせがあるが、ここでは、単純化して A-C のみをまち
がった組み合わせとして扱おう。式 (14) を解いて、結合
エネルギーの差は、0.85Ç10Ä 19 J = 0.53 eV となる。
遺伝子に間違いが生じる確率は、ボルツマン分布から、
温度を上げるほど増大する。式 (14) の右辺に T =320 K と
エネルギー差を代入して、遺伝子に間違いが生じる確率は
3:6 Ç 10Ä9 となる。
(8)
1:2 Ç 10Ä19 J
); (9)
kB T
となる。このことから、rice には 1:6 Ç 10Ä 19 J, Barley に
は 1:2 Ç 10Ä19 J のエネルギーが関与する過程があること
が分かる。具体的にこのエネルギーがどのような酵素の活
性化エネルギーかなどの議論はこの先の研究にゆだねる
が、文献など調べて活性化エネルギーが同じで尤もらしい
酵素があれば候補になる。
参考文献:The Eãect of Temperature on the Rates of
Photosynthesis, Respiration and the Activity of RuDP
Carboxylase in Barley, Rice and Maize Leaves, Ryuichi
ISHII, Ryuh OHSUGI and Yoshio MURATA, Japan. J.
Corp. Sci. 46(4):516-523(1977)
問 IV
地球磁場は南北方向に 0.3Ç10Ä4 T 程度である。東西方
向に水平に電子を等速直線運動させることで、電子に作用
する重力とローレンツ力が釣り合う速度を求めよ。電子の
電荷 Ä1:6 Ç 10Ä 19 C, 電子の質量 9:10938 Ç 10Ä 31 kg.
答え
qvB = mg を用いる。v = 1:86 Ç 10Ä6 m/s.
問V
一様な磁場 B の中を磁場に垂直な初速度 v で動く電子
の運動を求めよ。
問 III
正常な DNA は A-T, G-C がペアになっている。しかし
これは厳密に成立しているわけではなく、確率は低いが
A-G 等の結合も存在する。某氏の測定によれば、遺伝子
に間違いが生じる確率は 300 K において 10Ä 9 だそうであ
る。A-T の結合エネルギーと他の(遺伝子的には間違い)
結合エネルギーとの差を求めよ。また、温度を 20 ℃上げ
た場合 (320 K) に間違える確率を求めよ。
答え
A-T の結合エネルギーを èAT , A-G の結合エネルギーを
èAG とする。それぞれの結合が生じる確率を PAT , PAG と
すれば、
ÄèAT
);
kB T
ÄèAG
= C exp(
);
kB T
PAT = C exp(
(10)
PAG
(11)
(12)
また、間違いが生じる確率は 10Ä 9 なので、
10Ä 9 =
PAG
;
PAT
èAG Ä èAT
= exp(Ä
);
kB T
(13)
(14)
(15)
答え
磁場の向きを z 軸、初速度の向きを x 軸とする。電子の
運動方程式は、
m
d
~
~v = q~v Ç B;
dt
(16)
と な る 。速 度 の z 成 分 は 常 に ゼ ロ な の で 、~v
=
~ = (0; 0; B) を代入し、外積を計算して
(vx ; vy ; 0),B
成分で書くと、
dvx
= qvy B;
dt
dvy
m
= Äqvx B;
dt
dvz
m
= 0;
dt
m
(17)
(18)
(19)
となる。さらに、式 (17) を一階微分して式 (18) へ代入す
ると、
í
ì2
d 2 vx
qB
=
Ä
vx ;
(20)
dt2
m
これは単振動と同じ微分方程式なので、初期条件を満たす
解は、
vx = v cos(
qB
t);
m
(21)
3
vy = v sin(
qB
t);
m
(22)
vz = 0;
(23)
さらに時間で積分して、
mv
qB
sin(
t);
qB
m
mv
qB
y=
(1 Ä cos(
t));
qB
m
z = 0;
x=
(24)
(25)
(26)
となる。したがって、電子が円運動をすることがわかる。
~ と速度 ~v の両方に垂直な向き
別解:電子には、磁場 B
に大きさ qvB の力が働くから、この力が向心力となり円
運動をする。円運動の向心力は mr! 2 で、これがローレン
ツ力 qvB と釣り合うので、
mr! 2 = qvB;
(27)
! = v=r;
(28)
に分割された個々の微小面の面積は、rdûdr である。この
ような方法を用いて、円の面積を求めよ。
(c) 半径 R 高さ L の円柱の側面積を、円筒座標を用い
て求めよ。円筒座標を用いると、面積を求める対象の座標
は (x; y; z) = (R cos(û); R sin(û); z)、ここで 0 î z î L,
0 î ûî 2ôである。
(d) 3 次元の極座標を用いて、半径 R の球の表面積を
求めよ。極座標を用いると、面積を求める対象の座標は
(x; y; z) = (R cos(û) sin(í); R sin(û) sin(í); R cos(í))、こ
こで 0 î í î ô, 0 î û î 2ô である。また、dS =
R2 sin(í)dûdíである。
答え
(a) 第 4p象限における面積を求めたい場所 (x; y) は、0 î
x î R, Ä R2 Ä x2 î y î 0 である。
Z
Z
dS =
dxdy
第 4 象限の面積 =
となる。円運動の角周波数が
=
qB
!=
;
m
(29)
=
となることが導かれる。このような電子の円運動をサイク
ロトロン運動といい、qB=m をサイクロトロン (角) 振動
数という。この現象は、金属に磁場を加えて金属内部の電
子の状態を知る、未知の物質の組成の解析、天文学では星
の周囲の状態を知るために利用する。
Z
Z
第 4 象限面
Z 0
R
dx
0
R
0
Ä
第 4 象限面
p
R2 Ä x2
dy
p
ôR2
dx R2 Ä x2 =
;
4
(31)
(b)
円の面積 =
Z
dS =
円内部
Z
R
dr
0
Z
2ô
0
Z
rdû= 2ô
R
rdr = ôr2 ;
0
(32)
(c) dS = dzRdûなので、
問 VI
(a) 半径 R の円の面積を求めよう。この面を、微細な正
方形に分割して、個々の正方形の面積 dxdy を足し合わせ
る。求めたい面積内の位置を表す座標
(x; y) は、第1象限
p
では 0 î x î R, 0 î y î R2 Ä x2 となる。他の象限で
も同様である。
Z
Z
第 1 象限の面積 =
dS =
dxdy
=
Z
=
Z
第 1 象限面
第 1 象限面
Z pR2 Äx2
R
dx
0
Z
dS =
側面
Z
L
dz
0
Z
2ô
Rdû= 2ôRL
0
(33)
(d) dS = R2 sin(í)dûdíなので、
Z ô Z 2ô
dS =
dí
dûR2 sin(í)
球表面
0
0
Z ô
= 2ôR2
dísin(í) = 4ôR2 ;
(34)
球の表面積 =
Z
0
dy
0
R
0
円柱の側面積 =
p
ôR2
dx R2 Ä x2 =
;
4
(30)
第 4 象限において同様の計算を行い、面積を求めよ。第
1-4 象限の寄与を足し合わせると、円の面積が ôR2 になる
ことを確認せよ。
(b) 面積を求める際の分割方法は自由である。別な分割
方法で求めてみよう。極座標と呼ばれる表現方法を用いる
と、面積を求めたい場所の位置は (r; û), ここで 0 î r î R,
0 î û î 2ôとなる。直交座標との関係は、x = r cos(û),
y = r sin(û) である。極座標を用いて円の面積を求めると
きの円の分割方法は、「蜘蛛の巣」状である。蜘蛛の巣状
問 VII
ガウスの法則の積分形を用いて、点電荷 (電荷 q) の周囲
に作られる電場を求めよ。ただし、積分は極座標を用いよ。
答え
点電荷は原点に有るとする。対称性から、電場を
~ r ) = E(r) ~r ;
E(~
r
(35)
4
と仮定する。すなわち、中心からの距離 r = j~rj のみに大
きさが依存し、向きは原点を中心とした放射状。
ガウスの法則を適用するは、積分領域は、原点を中心と
した半径 r の球表面とする。このとき、球表面の微小面積
~ は、
要素 dS
~ = r 2 sin(í) ~r dídû;
dS
r
となる。
Z
~ S
~=
Ed
球表面
Z
ô
0
Z
dí
2ô
dûr 2 sin(í)E(r) = E(r)4ôr 2 ;
0
(37)
(36)
となるから、E(r) = q=(4ôèr 2 ) が導かれる。
ダウンロード

5 - Keio University