発達障害教育情報センター 研修講義
平成24年度キャリア教育に関する研究事業中間発表会
中芸高等学校教育フォーラム
くらしやすい学級,
わかりやすい授業づくり
~中芸高等学校での実践を踏まえて~
平成24年 11月 30日
国立特別支援教育総合研究所
梅田 真理
[email protected]
今日の予定
1 特別支援教育について
2 学校で見られる「困った」場面
3 学びにくさに気づく
4 学びにくさへの対応
1 特別支援教育について
特別支援教育の進展
平成13年に「21世紀の特殊教育のあり方について」
(最終報告)が公表
平成19年4月より一部改正された学校教育法の施行
特別支援教室構想の実現等,一層の発展・充実
2009.渥美
特殊教育から特別支援教育へ
発達障害のある子どもへの支援が,
この移行の中での大きな柱。
1.
特殊教育における「特別な場における支援」から
「支援ニーズに対応した支援」へ
2.
その背景として,社会全般における障害につい
ての考え方,理解等の大きな変化がある
2009.渥美
健常者
障害がない
発達障害
障害者
障害がある
連続している(境界がはっきりしない)
法律の話:発達障害とは
1.
発達障害についての厳密で普遍性のある定義
はない。
2.
医療,教育,福祉などの分野によって,また国に
よって定義は様々である。
3.
わが国においては,法律として発達障害者支援
法 第2条に定義されているものが基本になる。
(平成17年4月1日施行)
2009.渥美
発達障害とは
1. 発達障害者支援法 第2条
・自閉症,アスペルガー症候群,その他の広汎性発達
障害
・学習障害
・注意欠陥多動性障害
2. 発達障害者支援法施行令(政令第150号第1条)
・言語障害
・協調運動障害
3. 発達障害者支援法施行規則(厚生労働省令第81号)
・心理的発達の障害 ・行動及び情緒の障害
障害者基本法の一部を改正する法律案
2011/7/29 参議院可決・成立
2011/8/5
交付・施行
【障害者の定義 第二条 1】
身体障害・知的障害・精神障害(発達障害
を含む)その他の心身の機能の障害がある
者であって、障害及び社会的障壁(事物・制
度・慣行・観念等)により継続的に日常生
活又は社会生活に相当な制限を受ける状態
にあるもの(社会モデルの観点を反映)
内閣府HP参照
【教育 第十六条】
国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢
及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた
十分な教育が受けられるようにするため、可
能な限り障害者である児童及び生徒が障害
者でない児童及び生徒と共に教育を受けられ
るよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改
善及び充実を図る等必要な施策を講じなけれ
ばならない。
障害者基本法の一部を改正する法律案
に対する付帯決議
衆議院・参議院
三 国及び地方公共団体は、発達障害児につ
いて、将来の自立と社会参加のため、特性や
能力に応じた中等・高等教育を受けられるよ
う、必要な環境の整備を図ること。
2 学校で見られる「困った」場面
1.学習面
• 黒板を写すことがうまくできなくていらいらし,大きな
声を上げる。
• 音読ができない。特に漢字が読めない。
• 漢字の書き取りができない。新出漢字が覚えられな
い。
• 一斉指導での指示が理解できない。
• 注目・注視ができない。
• 今やるべきことを指示しても,「いやだ」と言ってやら
ない。
• バランス感覚が悪く,体育ができない。
2.生活面
• 聞いたことをすぐ忘れる。
• 身の回りの整理整頓ができない。
• 忘れ物が多い。
• 同性の友だちに抱きついたり,さわったりする。
異性にも過剰にさわる。(男子)
まず最初に検討すること
1) 知的発達はどうか?
2) 家庭環境はどうか?
3) 育ちの過程に問題はな
かったか?
全てが発達障害
ではない
こういった問題があ
る場合は,最初にと
るべき方法がはっき
りしている。
4) 自分の授業,学級経営を振り返る
→教師の意識を変える
資料:2),3)に関連して
読み書きの力が育つ基礎
必要な3要素
1. 正常の機能を備えた中枢神経
2. 適切な環境からの刺激にさらされて
3. 臨界期のうちに
資料:2),3)に関連して
たいていは,耳から聞いてイメージをつかみ文字
を眺めているうちに読めるようになる。
資料:2),3)に関連して
言語・コミュニケーションの発達
言語発達の順序
書く
読む
話す
聞く
体験
3 学びにくさに気づく
*行動面への対応だけでなく,
生徒の学びも保障する
学習障害(LD)のある子どもの困難さ
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言葉の指示を理解することが難しい
言いたいことをうまく話せない
教科書がうまく読めない
頻繁に文字を書き間違える
繰り上がりや繰り下がりの計算ミスが多い
図形の問題や文章題を解くことが難しい
ハサミやのり,ボール,リコーダーなどがうまく扱え
ない
…などなど
学習障害のある子どもが経験している大変さ
•
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•
•
分からない,できない,失敗が多い
なぜできないのか分からない
やる気がない,努力不足と判断されがち
基礎的な練習を繰り返し行うことを要求され,
さらに自信,意欲を失う
• 生活全般に意欲のなさ,自信のなさが影響する
頭では分かっているのに,自分の思うように取り
組んだり,表現したりすることが難しい
ADHDと学習の困難
• LDとの重複:認知の問題+行動上の問題
*ADHDから起こる読み書きの問題
<不注意・衝動性>
・読み間違い,読みとばし
・促音,拗音のルール変化に気付かない
・漢字の読みのルール変化に気付かない
・文章の意味を正確に理解できない
・書字が乱雑,マス目に入らない
・漢字の形を正確に覚えられない
*ADHDから起こる算数の問題
<不注意・衝動性>
・数字の書き間違い
・桁がずれる
・計算間違い
・正しく文章問題を読まない(読み間違い)
*学習活動全般にかかわること
<多動性>
・集中力が続かない
・着席していられない
人一倍好奇心が
旺盛で,何にでも
興味をもつが,考
えるより先に動い
てしまう
高機能自閉症,アスペルガー症候群と
学習の困難
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•
•
間違って理解している言葉がある
内容をイメージ化できない
重要なキーワードに気づかない
文章を一通り読むだけで,読み直したり確認
したりしていない
• 誤った解決方法を身に付けている
正しい理屈や方法を教えられても
なかなか受け入れられない
不器用と学習困難
・鉛筆がうまく持てず,筆圧が弱い(あるいは強い)
・物差しやコンパスなどの道具がうまく使えない
(楽器,裁縫道具なども…)
・書字動作が遅いため,速くたくさん書くことができない
・眼球運動の問題があり,目で文字を追うことが難しく,う
まく読めない
(文字や行をとばす,どこを読んでいるか分からなくなる
…)
・姿勢の保持が困難
…などなど
4 学びにくさへの対応
本人が抱える「特徴」に合わせて,
対応の仕方を考える
一番困ってい
るのは本人
誤った対応を続けると,「二次的な問題」が生じてしまう。
障害特性に合わせて対応することで,本人が困っている状況
を軽減することが出来る。
まず…
・どの段階でつまずいているかに気づく
(障害名でくくらない。子ども一人ひとりを見る)
・特に苦手なことはどんなことか?
・気づいたことを職員間で共有する
・要因となるものは何かを考える
子どもの気持ちに
より添いながら
工夫,試行錯誤を重ね,
個々の生徒にあう支援の方法を見つける
子どもにとって
わかりやすい授業とは?
支援の前に…学級づくりの基本をおさえる!
*子ども個人にかかわ
る要因をおさえる。
*学習の環境にかかわ
る要因をおさえる。
・認知特性
・注意・集中
・処理速度
・自信や意欲
・興味・関心 など
・学習環境
・課題設定
学習環境を
・指導方法
整える!
・教材・教具
・時間配分 など
個別の支援の前に…学習環境を整える
1)教室環境の整備
・整理された教室(備品,掲示物など)
・学級の物と個人の物の区別
・個人の持ち物の整理,管理(落とし物など)
・プリント類の保管
(ノートに貼る,綴じる→作業時間の確保)
2)座席の配慮
・子どもの特性に応じた座席(一番前がいいとは限らない)
3)学級のルールを決める
・明確に示す(みんなで共有できるルール)
・叱る基準を明確にする(なぜ叱られたか分かるように)
・守れたら必ず誉める
・守る手本は先生から!
4)分かりやすい指示
・具体的で簡潔な指示
・学習のめあては始めに示す
・一度出した指示は変えない
・子どもが活動している時は指示をしない
5)見通しをもって生活する
・予定は目に見える形で知らせる
(学年便り,学級便りの活用,行事黒板の活用)
・一日の予定はよく見える場所に書いて伝える
(変更点は言葉も添えて丁寧に伝える)
6)必要な物を忘れない工夫
・早めの連絡
・メモを取る習慣づけ
・忘れた時に対応できるよう,教師側で準備しておくこと
も大切
わかりやすい授業づくり
1)聞く姿勢を作る
・静かになってから話す習慣作り
・分かりやすく短い発問
・一つの指示で一つの活動
2)授業の構成
・活動の流れを文字や図で示す
(後どのくらい,が分かるように)
・活動のパターンを作る
「聞く」→「見る」→「考える」→「書く」→「発表する」
・活動時間を短くする
3)発表・指名の仕方
・ルールを守って発表する(騒いでも指名しない)
・話し方の手順を決めて提示しておく(「発表の仕方」等)
・子どもの言いたいことを察知し,話した内容を繰り返し
言葉にする
・発表しようとした姿勢を誉める
4)ノート指導
・板書の工夫:文字の大きさ,量,色を意識して書く
写す部分を明確に示す
・書きやすいノートの準備(マス目,横罫?)
・ノートの使い方を丁寧に指導する(実物投影機の活用)
・ノートの取り方は教科によってパターン化する
5)集中して視写する
・書く時は一斉に(机間巡視,指導が可能になる)
・どこまで書くかを明確に(子どもに応じて)
6)教材・教具の工夫
・写真や絵など視覚に訴える教材を使う
・実際に操作できる教材を使う(考え方が目に見える)
・見やすく書き込みやすいプリント
・九九表やローマ字表などの支援ツール
(誰でも使えるようにする)
・それぞれが使いやすい道具を使えるように
http://icedd.nise.go.jp/
発達障害教育情報センター
個別の支援:子どもの得意なところを活かす
強い部分を活かす
トップダウンか?
弱い部分を伸ばす
>
ボトムアップか?
・年齢に応じて方法を検討する必要があります。
・本人のプライドや興味関心を大切にしましょう。
・苦手な部分は,力を落とさない工夫を!
ex 家庭で一人でもできるドリルワークを工夫する…など
指導・支援の前に…
① 言葉がけは短く,やるべきことを具体的に伝える。
② 注意はその場で!「だめ」なことは「だめ」
と一貫した態度で接する。
③ 感情的にならない。
④ 言葉に惑わされないで!
⑤ 本人のプライドを大切に!
⑥ 先生はみんなの鏡。先生がすることは他のこども達
は注目している。(集団でのほめ方,注意の仕方を
十分配慮して)
⑦ 成功体験を大切に !「できるまでつきあう」ことが
大切。
自尊感情を育てる
・ほめる,認めることを大切に
…できたことより努力する姿勢をほめる
簡単なこと,小さなことから挑戦させ,達成感をもたせ
る(できなくてもあきらめない)
目に見える形でほめる
・困ったときに「助けて」と言えるように
…「わからない」「教えて」等が言える関係作り
どんな聞き方・頼み方をすればよいかを身に付ける
正しい自己理解の大切さ
*自分の特徴を知る
<得意不得意を正しく理解する>
・自分のよいところ,得意な部分を知る
・弱いところ,不得意な部分を知る
人と比べてでは
なく,自分なりの
特徴として…
周囲は…
・特徴を肯定的に認める環境づくり
・善悪の価値観を,正しく教える
「集団」で育つ
・分からない
・失敗が多い
・自信がない
・居場所がない
*「参加する」「分かる」「できる」経験
*自分の役割があり「認められる」機会
*「教え合う」「支え合う」人間関係
学級への帰属意識(居場所がある)
仲間がいるという安心感
自分に自信をもつ
*自立に向けて
どのような進路であれば自分の特性を活かせるか?
どんな目標があればがんばって仕事ができるか?
特別なことではなく,
どの子にとっても大切なこと
ダウンロード

梅田先生講演パワーポイント