た(図 6)。そこでファントムによる検証を行なった。希釈造影剤
(370mgI/mL 造影剤を 5% 希釈)を寒天で固め、中心に Tungsten 球
を配置いたファントムを作成した。撮影条件は図 2 に示す。撮影後、
40keV と 140keV の Monochromatic Image を作成し、これらのエネ
脳動脈瘤コイル塞栓術後評価を目的とした
Monochromatic Imageの選択利用法
ルギーサブトラクションを行なった。結果として、塞栓コイルの
消去と希釈造影剤の高い CT 値の確保が可能であった(図 7)
。
特定医療法人 札幌白石脳神経外科病院 放射線部 特定医療法人 札幌白石脳神経外科病院 脳血管内治療センター
図 3:塞栓コイルの組成と線減弱係数
笹森大輔 田村 豊 高橋 明 野中 雅
(National Institute of Standards and Technology より変更引用 )
はじめに
keV まで 101 段階のエネルギー変調が可能である。我々は、CT
当院では、2009 年に脳血管内治療センターを設立し、年間 200
Angiography(CTA)を用いた脳動脈瘤コイル塞栓術後評価を想定し、
例程の脳血管内治療を実施している。脳動脈瘤コイル塞栓術は、
希釈造影剤 (2、3、4、5、10、15、20、30mgI/mL) と塞栓コイル「トゥ
肘動脈あるいは大腿動脈からカテーテルを挿入し、その先端部を
ルフィル DCS オービット」(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)
頭蓋内血管の脳動脈瘤まで誘導し、塞栓コイルなどの体内埋め込
のエネルギー変調による CT 値変動を計測した。撮影条件は図 2 に
み型医療機器(デバイス)を留置することで、瘤内への血流を遮
示す。塞栓コイルの組成は、Platinum(Pt)と Tungsten(W)であった。
断するものである。このように、脳血管内治療はデバイスに対す
これら金属のエネルギーに対する線減弱係数の関係を、National
る依存度が高い治療法である。多くのデバイスは金属製であり、
Institute of Standards and Technology(NIST)のデータ 1) より引用
これまでの CT における術後評価は、アーチファクトにより困難で
すると図 3 となる。Pt や W は、設定エネルギー下において極めて
あった。
高い線減弱係数を有していることを確認した。
2011 年 9 月に Discovery CT750 HD を導入し、Gemstone Spectral
希釈造影剤の CT 値はエネルギー変調により指数関数的変動とな
Imaging(GSI)による仮想単色エックス線画像(Monochromatic
り、高濃度であるほど低エネルギー側で高い CT 値を示した。一
図 6:階調制限を利用したエネルギーサブトラクション
図 4:Monochromatic Image のエネルギー変調と CT 値の関係(希釈造影剤と塞栓コイル)
図 7:ファントムによる検証結果
(左上)
40 keV Monochromatic Image(右上)
140 keV Monochromatic Image
(左下)
ファントム概要(右下)
40 keV-140 keV Monochromatic Image (Energy Subtraction)
Image)の利用が可能となった。本稿では、脳動脈瘤コイル塞栓術
後評価を目的とした Monochromatic Image の選択利用法と実際の臨
a
Monochromatic Image の選択利用法
床画像について紹介する。
図 5:階調制限による CT 値への影響
Monochromatic Image の特性
方、塞栓コイルの CT 値は、エネルギー変調による変動を示さず、
Monochromatic Image の選択利用法を図 8 に示す。まず、GSI モー
3071HU 一定であった(図 4)
。この結果は、本 CT 装置における
ドにて mask image と live image の撮影を行う。当院の撮影条件
12bit(-1024 〜 3071)の階調制限(Turn Off Extend HU モード)
は図 9 に示す。ヘリカルスキャンの場合は、アーチファクト抑制
によるものと考えられ、階調制限を無くした状態(Turn On Extend
のため、mask image と live image を同一回転軌道上にて軌道同期
CTA に お け る 脳 動 脈 瘤 コ イ ル 塞 栓 術 後 評 価 を 目 的 と し た
ビームハードニング現象
従来の CT 画像は、連続X線画像であるため、X線が物質を透過
する際、スペクトルの低エネルギー側がより多く吸収され、結果
的にエネルギーピークが高い方にシフトするというビームハード
HU モード)で塞栓コイルの CT 値を計測すると、全ての設定エネ
b
ニング現象がみられる。このことから、物質固有のエネルギーに
使用上の階調制限により、物質の線減弱係数が既知であっても、
対する線減弱係数の関係は、エネルギーシフト分の幅をもって曖
アーチファクト低減等を考慮した最適なエネルギーレベルの選択
昧さを生じ、CT 値による物質密度の算出には限界があるのが現状
ができない場合がある。
である(図1a)
。
階調制限を利用したエネルギーサブトラクション
これに対し、Monochromatic Image は、Dual-Energy 演算(Raw
Data)によるビームハードニング補正が行われており、物質固有
Monochromatic Image のエネルギー変調と CT 値の計測結果より、
のエネルギーに対する線減弱係数の関係は一対一となり、CT 値に
よる高精度な物質密度の算出が可能となる。つまり、物質の線減
弱係数が既知であれば、アーチファクト低減を考慮した最適なエ
塞栓コイルの CT 値に対する階調制限の影響が明らかとなった。
図 1:連続X線画像と仮想単色X線画像の特性
(a)
Polychromatic Image とビームハードニング/
(b)
Monochromatic Image とビームハードニング
ネルギーレベルの Monochromatic Image を選択できることになる
(図1b)
。
・撮影範囲:20mm
・コンフィグ:0.625mm × 32ch
エネルギー変調と CT 値
・回転速度:0.9sec
・Scan Type:GSI Cine(GSI-9)〜 600mA
GSI による Monochromatic Image は、撮影後に 40keV から 140
GE today June 2013
我々は、この臨床使用上の階調制限をエネルギーサブトラクショ
図 8:Monochromatic Image の選択利用法
ンにて有効に利用することを考案した。塞栓コイルは、エネルギー
変調による CT 値変動を結果的に示さないことから、エネルギーサ
・撮影範囲:155mm
・撮影範囲:40mm
ブトラクションにて消去可能ではないか。また、希釈造影剤の CT
・コンフィグ:0.625mm × 32ch
・コンフィグ:0.625mm × 64ch
値は、指数関数的変動を示すことから、最も変化量が大きい 40
・ヘリカルピッチ:0.531:1
・回転速度:1.0sec
・回転速度:0.5sec
・Scan Type:GSI Helical
(GSI-6)
〜600mA
・Scan Type:GSI Helical
(GSI-20)
〜600mA
・トータル撮影時間:15sec
keV-140 keV エネルギーサブトラクションにて利用すると、従来の
CTA では得難い高い CT 値の確保が可能となるのではないかと考え
図 2:撮影条件(GSI Axial)
2
ルギー下において 3071HU を超えていた(図 5)。このように臨床
図 9:撮影条件(左)GSI Helical /
(右)GSI Cine
3
させる。撮影後に、Advantage
行なった後、各 phase の直前の phase を差分する手法であり、造影
Workstation Volume Share 5(以
剤の瞬間的な分布や変化量を画像化することができる。
下 AWVS5)の「GSI Protocols」
撮影断面の設定について
→「General」にて、各々 40keV
と 140keV の Monochromatic
Image を作成する。この際、
「Edit
図 10:Edit Volumes
題と考えているが、変化に応じた設定を行っているのが現状である。
(図 20)。Sequential Image 法は、造影剤の瞬間的な分布や変化量を
画像化することが可能であった(図 21)
。造影剤の変化量が大き
臨床応用
い領域は High Density に描出された。この領域の拡大または縮小
ここまで脳動脈瘤コイル塞栓術後評価を目的とした Monochromatic
を経時的に解析できるようになれば、再発動脈瘤に対する再治療
Monochromatic Image の選択利用法は、塞栓コイルの消去と造影
Image の選択利用法と、DSC-CTA との組み合わせによる画像処理方法
戦略の指標となる可能性があると考える。
剤の CT 値上昇を可能とするが、アーチファクトを完全に消し去る
を紹介した。
この画像処理方法を用いた当院の臨床応用例を呈示する。
おわりに
Volumes」 に エ ネ ル ギ ー 設 定
ことはできない。よって、臨床において有効に適応するためには、
を行っておくと作成が容易となる(図 10)。「Add/Sub」を用いて
アーチファクト低減を考慮した撮影断面の設定が不可欠である。
40keV と 140keV のエネルギーサブトラクションを行うと、塞栓コ
脳動脈瘤コイル塞栓術後の形態的な塞栓結果の評価は、Raymond
脳底動脈先端部(BA-tip)の未破裂動脈瘤に対して脳動脈瘤コイル
造影剤の CT 値上昇が可能となった。脳動脈瘤コイル塞栓術後評価
イルが消去され、live image の造影剤の CT 値は上昇する。その後、
分類に準じて行われている。これは、多方向からの血管撮影にお
塞栓術を施行し、CO にて治療を終了した。直後に撮影した従来の
として、再発の有無はもとより再発動脈瘤内の血流評価や再治療
血管周囲の骨構造を取り除く目的で、エネルギーサブトラクショ
いて、動脈瘤体部および頸部に造影剤の流入が認められないもの
CT 画像は、塞栓コイルからのアーチファクトにより術後評価は困
戦略に結びつく画像作成が可能となった。このことから、患者負
ン後の mask image と live image のタイムサブトラクションを行う。
を complete occlusion(CO)、造影剤の流入が頸部にのみ認められ
難であった(図 15)。10 ヶ月後のフォローアップの際、頭部単純エッ
担は、DSA による入院検査から、CTA による外来検査へと軽減さ
結果として、CT 値上昇した造影剤の情報のみが残り、塞栓コイル
るものを neck remnant(NR)、体部にまで造影剤の流入が認められ
クス線写真にて塞栓コイル塊のバラつきを確認し、DSA にて動脈
れる可能性がある。今回の方法には未だ多くの課題があることを
近傍の血管を明瞭に描出することが可能となる。
るものを body filling(BF)とするもの
瘤の再発を認めた(図 16)。その後、図 17 に示す撮影断面を設定し、
認識している。今後、更なる検討を進めていきたいと考えている。
4)
である(図 13)
。これら
症例 …70 代女性
Monochromatic Image の選択利用法により、塞栓コイルの消去と
を考慮し、我々は母血管と塞栓コイルの接線を基本的な撮影断面
GSI Cine 撮影を行なった。撮影後に Monochromatic Image の選択利
として設定している(図 14a)
。
用法と DSC-CTA との組み合わせによる画像処理を行なった。
これに加えて、coil compaction や migration(塞栓コイルの移動)、
Base Image 法は、従来の CT 画像では得られなかった再発動脈
Monochromatic Image の選択利用法により、塞栓コイルの消去
そして、脳動脈瘤の再発による塞栓コイル塊のバラつきが確認さ
瘤内における造影剤の流入を動画にて描出可能であった(図 18)。
と造影剤の CT 値上昇が可能となった。辻岡らの報告による DSC-
れれば、その塊が疎である部分は造影剤の流入が考えられるため、
さらに、40mm のボリュームデータであることから 4D 画像を構築
参考文献
CTA を組み合わせることによって、CT による従来にない脳動脈
最大限含めるように撮影断面を設定している(図 14b)。
可能で、その Maximum Intensity Projection(MIP)画像と血管撮影
1) Tables of X-Ray Mass Attenuation Coefficients and Mass Energy-Absorption
Dynamic Subtraction Cine CTA(DSC-CTA)2)、3)
との組み合わせ
瘤コイル塞栓術後評価が可能となる。撮影条件は図 9 に示す GSI-
のゴールドスタンダードである DSA と比較しても、造影剤の描出
Cine を用いる。組み合わせ方法は、Monochromatic Image の選択利
に大きな差異を認めなかった(図 19)。時系列の造影剤濃度の変
用法のエネルギーサブトラクションを行なった後、タイムサブト
化を描出していることから、Time Density Curve(TDC)を用いた
ラクションに DSC-CTA を適応する。DSC-CTA には、タイムサブト
従来にない再発動脈瘤内の血流評価 の可能性が高まったと考える
Coefficients(http://www.nist.gov/physlab/data/xraycoef/index.cfm)Physical
Reference Data(http://www.nist.gov/physlab/data/index.cfm)
2) 竹下元 : 頭部領域における DSC-CTA, ヘリカルスキャンの基礎と臨床 ,16 ~
36,1998
3) 辻岡勝美 : サブトラクション CT .INNERVISION,24・11,74 ~ 76,2009
4) Roy D: Endovascular treatment ofunruptured aneurysms. Stroke 32:1998-2004, 2001.
ラクション方法の異なる“Base Image 法”
(図 11)と“Sequential
Image 法”
(図 12)がある。Base Image 法は、ダイナミック撮影を
図 13:Raymond 分類
a
b
図 15:臨床例
図 18:選択利用法を併用した DSC-CTA Base Image 法の
図 21:選択利用法を併用した DSC-CTA Sequential 臨床画像
Image 法の臨床画像
図 11:DSC-CTA Base Image 法
図 14:撮影断面の設定
(a)
基本設定/
(b)
塞栓コイル塊のバラつきがある場合
撮影計画にあたりリファレンスとする画像は、過去の DSA 画像
図 16:動脈瘤再発への経過
図 19:選択利用法を併用した DSC-CTA Base Image 法
と DSA の比較
や直前の頭部単純エックス線画像である。DSA 画像の血管と骨の
ミスレジストレーションから撮影断面設定のためのメルクマール
を導出し、検査直前の頭部単純エックス線画像にて塞栓コイル塊
図 12:DSC-CTA Sequential Image 法
のバラつきの確認を行っている。撮影断面設定のため、被験者に
は可能な限り頭低位や頭高位、頸部の左右屈曲を依頼している。
phase を mask image として各 phase を差分する手
しかし、内頸動脈 (C2/C3 segment) の内向きまたは外向きの動脈瘤
法である。これにより、経時的な造影剤濃度の変化を画像化する
などは、撮影断面が被験者に対して矢状断面となり、ポジショニン
ことができる。また、Sequential Image 法は、ダイナミック撮影を
グに難渋することがある。ポジショニングの再現性については、課
行なった後、1
st
図 17:撮影断面の設定(臨床応用例)
4
GE today June 2013
図 20:再発動脈瘤内の血流解析
5
ダウンロード

脳動脈瘤コイル塞栓術後評価を目的とした Monochromatic Imageの