I-739
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
鉄道橋における斜角桁のたわみ差に関する検討
鉄道総研 正会員
鉄道総研 正会員
○曽我部 正道
松本 信之
鉄道総研 正会員 池田 学
鉄道総研 正会員 古川 敦
1.目的 鉄道橋では,列車の走行安全性と乗り心地を確保する観点から,桁にたわみ制限を設けている.
また同様の理由から,鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物) 1)では,斜角桁における左右のレール
位置でのたわみ差にも制限を課している.このたわみ差の制限は,1974 年の建造物設計標準(鋼鉄道橋)から採
用されているが,その根拠が簡易な数値計算によっていることから,本研究ではより詳細な数値解析を行い再
検証することとした.
2.解析手法 (1)1 自由度モデル 図-1 に斜角桁におけるたわみ差の解析モデル図を示す.現行標準の
制限値は,左右のレールのたわみ差により生じるローリング回転角を,車体重心点に働く水平加速度に換算し,
乗り心地の観点から制限値を定めている.具体的には,桁を半正弦
波(単純桁)の連続とし,車両をローリングに関する 1 自由度モデル
レール
として,車両の最大応答を求めている.車体の回転剛性,車体重心
x
G
高さ,ローリング固有振動数を仮定すると,車体の水平加速度は式
(1)のように近似することができる 1).
l
 δ
 Lb
 l 
   G 

α = −400n i 
Lb
(1)
δ sin π
x
Lb
桁端緩衝区間
ここに,αは車体水平加速度,ni はスパン数に対する応答倍率,
図-1 斜角桁の解析モデル
δはスパン中央の桁のたわみ量,Lb は桁のスパン,l は左右レール
の位相差,G は軌間である.
(2)走行シミュレーション 既往の研究と同様に,構造物は振動しない剛体と仮定し,
列車モデルを半正弦波
に沿って走らせる解析手法を用いた 2).ただし,走行安全性を適切に評価するために,桁端前後計 3.0mの区
間には式(2)に示す,レール剛性を考慮した緩衝区間を挿入した.
θ β ( x '− Lc )
{cos β ( x'− Lc) + sin β ( x'− Lc)}
x' ≤ Lc
e
δ '=
4β
(2)
θ − β ( x '− Lc )
{cos β ( x'− Lc) − sin β ( x'− Lc)} + θ ( x'− Lc)
δ '=
x' ≥ Lc
e
4β
ここに,x’は緩衝区始点からの距離,Lcは1/2緩衝区間長さ,δ’は緩衝区間のたわみ形状,θは端部の折れ
角,βは相対曲げ剛度である.斜角の影響については左右の半正弦波に位相差を与えることにより表現した.
複数スパンが連続する場合には,図に示した半正弦波たわみを繰り返し用いた.
図-2に車両モデルを示す.解析には,完全1車両の三次元モデル(31自由度)を用いた(1両編成).図-3に車
z
空気バネ
台車
z
ψ
ψ
φ
z T ψT
φT
zT
K3, C3
軸バネ
輪軸
ψWφ
y
ψT
θT
ψW
W
K1, C1
Kwy
yT
フランジ
zW
Kwz, Cwz
zW
θ
連結器
踏面勾配
yW
θW
Kwx
K2, C2
クリープ力
輪軸
台車
車体
非線形バネ
台車
車輪
公称半径:r
車体
フランジ圧
線形バネ
輪重
レール
ダンパー
レール小返りバネ
遊間 :u
図-2 車両モデル 図-3 車輪/レール間モデル
キーワード 斜角桁,鉄道橋,たわみ制限,走行安全性,乗り心地
連絡先 〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38 (財)鉄道総合技術研究所 構造力学 TEL 042-573-7290
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土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
限界値
0.4
0.3
斜角 90°
斜角 70°
斜角 50°
斜角 30°
0.2
0.1
0
20
車輪横圧(kN)
輪重減少率
0.5
車体加振振動数f=v/Lb(Hz)
7.04.0
1.0
斜角 90°
斜角 70°
斜角 50°
斜角 30°
15
10
5
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
スパン長Lb(m)
(a)輪重減少率
2
車体加振振動数f=v/Lb(Hz)
7.04.0
1.0
水平加速度(m/s )
I-739
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
スパン長Lb(m)
(b)車輪横圧
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
車体加振振動数f=v/Lb(Hz)
7.04.0
1.0
斜角 90°
斜角 70°
斜角 50°
斜角 30°
限界値
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
スパン長Lb(m)
(c)車体水平加速度
図-4 斜角桁の列車走行性(桁たわみ Lb/3000,列車速度 300km/h)
0.3
0.2
限界値
0.1
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
スパン長Lb(m)
(a)輪重減少率
20
車体加振振動数f=v/Lb(Hz)
1
0.5
斜角 90°
斜角 70°
斜角 50°
斜角 30°
15
10
5
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
スパン長Lb(m)
(b)車輪横圧
6
2
斜角 90°
斜角 70°
斜角 50°
斜角 30°
6
水平加速度(m/s )
0.4
車体加振振動数f=v/Lb(Hz)
1
0.5
車輪横圧(kN)
輪重減少率
0.5
6
車体加振振動数f=v/Lb(Hz)
1
0.5
0.9
0.8
斜角 90°
0.7 限界値
斜角 70°
0.6
斜角 50°
0.5
斜角 30°
0.4
0.3
0.2
0.1
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
スパン長Lb(m)
(c)車体水平加速度
水平加速度が0.08Gとなるたわみ限度Lb/δ
制限厳しい:小←たわみ量→大:制限緩い
図-5 斜角桁の列車走行性(桁たわみ Lb/1500,列車速度 130km/h)
シミュレーション
輪/レール間のモデルを示す.車輪/レール間に働く動的相互
100
○ 列車速度160km/h
□ 列車速度260km/h
作用力のモデルは,一定の踏面勾配γと鉛直フランジを有する
◇ 列車速度350km/h
車輪軸が,遊間uを持って軌道上を走行する蛇行動モデルを適用
した.車輪踏面とフランジは,傾きの緩やかな車輪踏面部分と
鉛直のフランジ部分に分割しモデル化している.
1000
3.解析結果 新幹線については桁のたわみを Lb/3000 とし
現行標準の理論値
速度 260,300,350km/h について,在来線については桁のたわ
2000
(1自由度系)
3000
みを Lb/1500 とし速度 130,160km/h について検討した.
5000 たわみ差3mm(1067mm)
図-4 に新幹線を想定した 300km/h における解析結果を示す.
たわみ差2mm(1435mm)
走行安全性は,輪重減少率(動的な輪重減少量/静輪重),車輪
10000
90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
横圧,脱線係数(図では省略した)等で評価するが,何れの速度
斜角(度)
域においてもほとんど斜角の影響は見られなかった.乗り心地
図-6 斜角とたわみ制限の関係
については,現行標準では,最大水平加速度 0.8m/s2 を基準とし
てたわみ差の制限を求めているが,かなり余裕のある値となっている.
図-5 に在来線を想定した速度 130km/h における解析結果を示す.在来線では,桁のたわみ制限を新幹線よ
りも緩和していること,低速であるため車体ローリング動(通常,固有振動数は 0.5~0.7Hz)がスパン長に刺激
されやすいこと,などにより斜角の影響がやや大きい.走行安全性への影響を最小限にするためには斜角を
50°程度に留める必要があることが分かる.
図-6 に乗り心地から求まる斜角とたわみ制限の関係を示す.現行標準の基礎となった最大水平加速度 0.8
m/s2 に照らして制限値を計算すると,台車,車軸の弾性支持の効果により,シミュレーション解析は従来の 1
自由度モデルよりも余裕のある結果となった.
4.結論 ①新幹線に対しては,現行標準では在来線よりも厳しい 2mm を適用しているが,本来のたわみ
制限が厳しいため,斜角によるたわみ差の影響は少ない.②在来線については,たわみ制限が緩く速度が遅い
ため新幹線よりは斜角の影響を受けている.走行安全性から定まる斜角の限度 50°と通常想定される最大の
桁たわみ Lb/1000 とを比較すると現行の 3mm の基準は妥当と考えられる.今後,更に詳細な検討を行い設計
標準の改訂に反映していく予定である.
参考文献 1)国土交通省鉄道局監修,鉄道総合技術研究所編:鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼・複合構造,丸善,2001. 2)
曽我部正道,松本信之,藤野陽三,涌井一,金森真:共振領域におけるコンクリート鉄道橋の動的設計法に関する研究,土木学
会論文集,No.724/Ⅰ-62, pp.83-102, 2003.
-1478-
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