Ⅱ.エチオピア連邦民主共和国における調査
第1
エチオピア連邦民主共和国の概況
(基本データ) 面積:109.7 万平方キロメートル(日本の約3倍) 人口:約 8,700 万人(2012 年:Population Reference Bureau) 首都:アディスアベバ 民族: オロモ族、アムハラ族、ティグライ族等約 80 の民族 言語:アムハラ語、英語 宗教:キリスト教、イスラム教他 政体:連邦共和制 議会:二院制(人民代表議会〔下院〕と連邦議会〔上院〕) GNI:310 億米ドル(2011 年:世銀) 一人当たりGNI:310 米ドル(2011 年:世銀) 経済成長率:10.1%(2010 年:世銀) 物価上昇率:33.2%(2011 年:世銀) 在留邦人数:207 人(2011 年 10 月現在) 1.内政
1974 年に軍事革命により帝政が廃止され、社会主義政権が発足した。社会情勢の混
乱が続き、メレス首相らによる反政府運動により、1991 年に当時のメンギスツ政権は
崩壊した。1995 年に第1回国会選挙が行われ、以降5年毎に国会選挙が実施されてい
る。2010 年5月に第4回選挙が平穏に実施され、現与党が圧倒的な勝利を収め、メレ
ス首相が再任されるも、2012 年8月に同首相が逝去した。その後、同年9月にハイレ
マリアム(当時副首相兼外相)が首相に就任した。
2.外交
アフリカ連合(AU)や国連アフリカ経済委員会(ECA)の本部が置かれるアフ
リカ地域の外交の一つの中心地であり、
「アフリカの角」地域の安定勢力として、ソマ
リアの安定化やスーダン和平に積極的に関与している。
エリトリアとは、同国が 1993 年にエチオピアから独立して以降、緊密な関係を維持
していたが、1998 年5月、国境画定問題を巡って武力闘争が発生した。その後 2000
年 12 月、「和平合意」が成立するが、国境画定に係る意見の相違から国境問題は未解
決で、国交正常化には至っていない。
国内の経済発展、民主化を重視し、新5カ年計画(GTP:Growth and Transformation
Plan)達成のため、海外からの技術移転、貿易投資促進に取り組んでいる。
-9-
3.経済
干ばつによる農業生産の落ち込みや、エリトリアとの国境紛争による難民・避難民
の大量発生が経済に打撃を与える中、政府は 2000 年に「第2次国家開発5カ年計画」
を、2005 年に次期5カ年開発計画として貧困削減計画(PASDEP)を策定した。
近年は、経済成長が続き、2010/11 年まで8年連続二桁の経済成長(政府発表)を達
成した。
政府は、2010/11-2014/15 年の新5カ年開発計画(GTP)を策定し、経済成長と
経済改革に重点を置いた取組みを推進中で、5年後の国民総生産倍増等を目指してい
る。一方で、一人当たりのGNIは 310 米ドル(2011 年)と昀貧国の水準にとどまっ
ており、慢性的な食料不足に加え、高度経済成長に伴って生じたインフレや、世界金
融不安や原油等の国際価格の上昇に伴う影響が顕在化している。政府は通貨切り下げ、
主要商品価格のシーリング設定など政府主導型の経済安定化策、外貨準備高の積み増
し等を行っている。
4.日・エチオピア関係
(1)政治関係
1930 年
修好通商条約署名
1933 年
在大阪エチオピア名誉領事館開設
1936 年
在エチオピア日本公使館開設
1952 年6月
1955 年
対日平和条約批准
外交関係回復
1958 年4月
双方大使館開設
(2)経済関係
①貿易額・主要貿易品目(2010 年、財務省貿易統計) 輸出
39.5 億円
コーヒー、原皮等 輸入
76.0 億円
自動車、機械類等 ②我が国からの直接投資 1951 年~1974 年に 13 件計 683 万1千ドル。1974 年以降は実績なし。 (3)二国間条約・取極
1930 年 11 月
修好通商条約
1957 年 12 月
友好条約
1968 年 1月
貿易協定
1971 年 11 月
日本青年海外協力隊派遣取極
1997 年 5月
日・エチオピア航空協定発効
2011 年 12 月
技術協力協定
(出所)外務省資料より作成
- 10 -
第2
我が国のODA実績
1.概要
エチオピアに対する経済協力は、1967 年に実施した当時の帝国中央衛生研究所への
「技術協力支援」に遡る。1971 年には初の技術協力を開始(「天然痘撲滅対策プロジ
ェクト」、「JOCV 派遣取極」)し、1972 年には円借款を開始(「地下水開発プロジ
ェクト」および「空港ターミナル建設プロジェクト」)した。一方で、1974 年の革命
以降、1991 年の社会主義崩壊まで支援は一時低調となったが、現政権移行後の支援は、
無償資金協力を中心に積極的な支援を実施している。なお、円借款は 1972 年以降実
施されていない。
年度
2007
2008
2009
2010
2011
累計
我が国の対エチオピアODA実績(単位:億円)
有償資金協力(円借款)
無償資金協力
技術協力
43.79
13.24
62.54
13.62
71.07
20.67
41.31
27.29
63.52
36.25
37.00
1,036.74
305.43
1.円借款、無償資金協力はE/Nベース、技術協力はJICA経費ベース。
2.円借款の累計は債務繰延・債務免除を除く。
2.対エチオピア経済協力の意義
エチオピアは、人口約 8,500 万人の大国であり、ソマリア、南北スーダン、エリト
リアなどと国境を接し、ナイル川流域及び東アフリカ地域の安定と発展にかかる戦略
的要衝にある。また、首都アディスアベバにはアフリカ連合(AU)や国連アフリカ
経済委員会(UNECA)の本部が置かれ、アフリカ地域外交の中心地の一つでもあ
る。国連などの国際交渉の場において我が国がアフリカ諸国と協力を図る上で、エチ
オピアは戦略的に重要国と言える。
一方で、エチオピアは、干ばつ、飢餓、長年の内戦・紛争による難民等の発生等の
問題を抱えており、2004 年以降6年間の経済成長率は平均 11.2%と高い水準を維持し
ているものの、一人当たりGNIが 310 米ドル(2011 年)と世界で昀も低い水準にと
どまっている。小規模農業による天水に依存した農業、未成熟な製造業、増加しつつ
ある対外借入れ等と相まって経済基盤は脆弱である。また、慢性的な食料不足、安全
な水供給不足、社会インフラの未整備による都市と農村の格差などの課題があり、こ
うした諸課題の解決を支援することは、貧困削減、人間の安全保障、持続的成長など、
我が国のODA大綱やTICADプロセスによる支援方針とも合致するものである。
3.対エチオピア経済協力の重点分野
エチオピア政府が策定した、2010/11 年~2014/15 年の「5カ年開発計画」
(GTP)
- 11 -
において、農業を核として経済成長を図りつつ、工業にも重点を置いた経済構造へシ
フトさせ、2020~2030 年までには中所得国入りを目指すとしている。我が国は、対エ
チオピア国別援助方針に基づき、中期的には「食料安全保障及び工業化に対する支援」
を大目標とし、①農業・農村開発、②民間セクター開発、③インフラ開発、④教育を
重点分野として協力を実施している。また、日本やアジアの経験を活かした産業開発
支援にも積極的に取り組んでいる。
4.参考
〔主要援助国のODA実績(支出純額、単位:百万ドル)〕
暦年
2006
2007
2008
2009
2010
1位
米 315.78
米 371.73
米 811.37
米 726.04
米 875.34
2位
英 164.01
英 291.07
英 253.68
英 342.92
英 406.95
3位
伊 105.39
独 96.48
加 152.55
日 97.76
加 140.38
4位
加
62.48
加
90.52
蘭 113.63
スペイン 94.00
独
96.45
5位
日 57.85
伊 75.47
独 98.25
加 87.18
日 93.89
うち日本
57.85
36.03
47.12
97.76
93.89
合計
1,026.38
1,244.89
1,843.42
1,816.56
1,927.72
〔最近の我が国の主な経済協力実績(単位:億円、E/N ベース)〕
無償資金協力
技術協力
H21. 4「緊急給水計画」(8.00)
「小規模農民のための優良種子振興プロジェクト」
H21. 7「オロミア州給水計画」(10.29)
「農民研究グループを通じた適正技術開発・普及プロジェ
H22. 2「森林保全計画」(17.0)
クト」
H22. 2「食糧援助」(8.50)
「灌漑設計・施工能力向上プロジェクト」
H22. 2「貧困農民支援」(5.90)
「一村一品促進プロジェクト」
H22. 4「ディグライ州地方給水計画(詳細設計)
」
「農産物残留農薬検査体制・能力強化支援プロジェクト」
(1.04)
H22. 5「アバイ渓谷ゴハチオン-デジュン幹線道路機
材整備計画」(9.60)
H22.10「食糧援助」(5.50)
H23. 3「国道一号線アワシュ橋架け替え計画(詳細
設計)」(0.45)
H23. 6「国道一号線アワシュ橋架け替え計画」
(12.01)
「半乾燥地域ファームフォレストリープロジェクト」
「南部諸民族州給水技術改善計画プロジェクト」
「地下水開発・水供給訓練計画(フェーズ3)」
「飲料用ロープポンプの普及を通した地方給水・生活改善
プロジェクト」
「品質・生産性向上(カイゼン)普及能力開発プロジェク
ト」
「産業政策支援対話(フェーズ2)」
H23. 6「アムハラ州中学校建設計画」(12.08)
「地すべり対策能力向上プロジェクト」
H23.10「WFP 連携食糧援助」(5.80)
「橋梁維持管理能力向上プロジェクト」
H24. 3「貧困農民支援」(4.90)
「住民参加型初等教育改善プロジェクト」
H24.12「南部諸民族州小中学校建設計画」(13.10)
「理数科教育改善プロジェクト」
H24.12「貧困農民支援」(4.90)
「母子栄養改善プロジェクト」
H25. 6「第四次幹線道路改修計画2/2期(本体)」 「アムハラ州感染症対策強化プロジェクト」
(75.21)
「オロミア州地方政府マルチセンター計画・予算策定支援
H25. 6「アムハラ州南部小都市給水計画」(6.33)
プロジェクト」
「アワシュ川中流域地下水開発計画プロジェクト」
「デジタル地図データ作成能力強化プロジェクト」
(出所)外務省資料より作成
- 12 -
第3
調査の概要
1.品質・生産性向上(カイゼン)普及能力開発プロジェクト(技術協力プロジェク
ト)
(1)事業の背景
エチオピアは近年高いGDP成長率を見せているものの製造業は伸び悩んでおり、
またGDPに占める割合も小さく、特に中小企業を含め純粋な民間企業の成長は鈍い。
背景として、国営企業や政党とつながりを持つ企業の存在が大きいこと、技能や経営
技術の不足、資金調達環境の劣悪さ等が挙げられる。更に民間部門での品質・生産性
の低さが輸出や国内外からの投資の障壁となっている。このため、持続的な経済成長
及び貧困削減に向けて、民間セクターの開発、特に成長の停滞している製造業の品質・
生産性の向上による競争力強化が不可欠となっている。
(2)事業の目的
民間企業の適正な競争環境における健全な成長が、国の経済発展の原動力となる。
エチオピアにおける産業開発を支援するため、本プロジェクトは、日本式の品質・生
産性の向上の手法である「カイゼン」を同国に普及するための技術協力を行い、同国
政府に対し公正な競争市場の実現やより良好な経営環境の整備を促すものである。
「カイゼン」とは、日本企業で発展してきた「品質・生産性の向上のために、職場
の従業員が参加し、全社的に改善を継続していこう」というボトムアップの取組であ
り、日本の製造業の重要な要素として、世界でも通用する用語である。特に、トヨタ
社のトヨタ生産方式の一つの強みとして有名である。カイゼンは上からの命令で実行
するのではなく、作業者が自分で知恵を出して変えていくことが大きな特徴であると
ともに、カイゼンは一度実施されれば完了ではなく、次々とカイゼンが行われるとい
う持続性、継続性が重視される。また、カイゼンの基礎となる活動として、
「5S活動」
(整理、整頓、清掃、清潔、躾)がある。各職場において徹底されるべき事項をこれ
らの5つ言葉に集約したものであり、製造業・サービス業の職場環境の維持改善で用
いられるスローガンでもある。
(3)事業の概要
○協力期間:2011 年 11 月~2014 年 10 月
○プロジェクトの概要等:カイゼンプロジェクトは、メレス前首相が東アジアの産業
開発経験及びカイゼン活動に高い関心を有しており、日本政府に産業振興分野での
協力を要請したことを契機に 2009 年7月に第1フェーズとなる「品質・生産性向上
計画調査プロジェクト」をスタートした。第1フェーズでは 2009 年 10 月から 2011
年6月までの間、30 社へのパイロットプロジェクトの実施、教材の作成、カイゼン・
コンサルタントの養成、カイゼン普及計画の作成等を目的として実施した。現在、
- 13 -
カイゼンを民間企業へ持続的に普及するための人材育成と体制作りを目的とする3
年間の第2フェーズ「品質・生産性向上(カイゼン)普及能力開発プロジェクト」
が進行中である。
(4)現況等
現在、カイゼンプロジェクトはエ
チオピアだけでなく、ケニア、ザン
ビア、タンザニア、ガーナの5か国
で実施されており、エジプトとチュ
ニジアでは既にプロジェクトを終了
している。エチオピアではカイゼン
の第1フェーズの段階で 30 社を対
象に導入しており、MARU社はそ
の1社である。同社は 1975 年に設立、
トラック、トレーラーの車輌製造、
(写真)工場内の整理整頓された様子
鋼版・鋼材等の加工を主に行ってお
り、現在、社員数約 200 名の優良企業である。プロジェクト活動の一環として、2010
年5月に2週間の本邦研修(名古屋)にマネージャーが参加し、日本におけるカイゼ
ン活動を体験した。また、同年、プロジェクトによる企業診断では「5S活動と標準
作業表を活用し、職場と作業の環境整備を確実に実施している」との評価を得ている。
派遣団は、MARU社事務所において、カイゼン導入企業としての事業活動の現状
等につき、マル社長から説明を聴取した後、工場内を視察した。
<説明概要>
カイゼンの定着には時間を要するが、
徐々に成果が出てきている。JICA
と日本政府の支援に感謝する。今後も
協力関係を継続したい。更に日本企業
との連携関係も構築したい。
カイゼンを導入するに当たって、従
業員にそのメリットを説明して理解を
得た。そのメリットとは、第一に仕事
場を整理整頓することで、作業の安全
性が向上すること、第二に、生産性が
向上することである。特に前者は重要
(写真)マル社長からの説明聴取
で、昀近では年間2件の事故しか起き
ていない。
- 14 -
<質疑応答>
(Q)御社の工場は、日本のカイゼン導入企業と同等の水準にあると感じた。カイゼ
ンの効果は、取引先、融資元銀行にも良い影響を与えているのではないか。
(A)まだ関連会社にまでカイゼン効果が行き渡っている段階ではない。今は自社内
にカイゼンを根付かせることに注力し、その後、取引先にカイゼン導入を働きか
けたい。
また、カイゼンを社会に根付かせるためには若者への浸透が必要で、そのため
には教育が重要となり、今、職業訓練学校等でカイゼンを教えている。それには
JICAが貢献してくれている。
(Q)御社の成功の要因の一つは、エチオピアの国民性にあると思われる。勤勉性、
真面目さは日本に相通ずるものがあると思うが、どのように考えるか。
(A)同感である。
2.その他(在外公館文化事業)
派遣団は、ODAに係る案件以外に我が国在外公館の取組として、文化庁助成によ
る在外公館文化事業の様子を視察した。
在外公館文化事業は、伝統文化から
アニメ・漫画等のポップカルチャーま
で我が国が有する豊かなコンテンツを
活用した文化事業を海外に発信して、
対日理解の促進や親日層の形成を図る
ことを目的として行われるものである。
エチオピアにおいては、この事業の一
環として、本年(2013 年)9月6日及
び7日の2日間にわたりアディスアベ
(写真)和太鼓や獅子舞の公演の様子
バ市内において「Japan Music Project
2013」を開催し、和太鼓、笛等の和楽器による伝統的な邦楽の演奏や獅子舞踊りなど
を披露しており、派遣団は盛況の中、日本人による公演の様子を視察することができ
た。
- 15 -
第4
意見交換の概要
1.ラザロス・カパンブエAU委員会委員長経済担当特別補佐官
冒頭、カパンブエ特別補佐官から概況説明があった後、意見交換を行った。
<概況説明>
(総論)
TICAD Vの成功を祝する。アフリカにとってもTICADプロセスの進展とし
て極めて重要な出来事であった。アフリカからは 39 名の国家元首・首脳クラスが参加
したと伝えられるが、それ以外の国からもハイレベルの出席者が多かったと感じてお
り、これはアフリカ各国がTICAD Vを重要視している証左でもある。
参議院ODA特別委員会が、今後、TICADプロセスにおいて求められる役割とし
て、以下の3点が挙げられよう。第一に、TICAD Vで表明された支援において、
アフリカ各国やAUが有しているアイディアやイニシアティブに貢献すること、第二
はTICAD Vで日本が行ったコミットメントがきちんと履行されているかを監視
していくこと、第三にアフリカを知ってもらうこと。今回の調査団のように実際にア
フリカに来ていただき、内情を見て日本に戻り、その結果を国民に伝えていただけれ
ば大きな影響が期待できる。
TICADとは、その参加国によって開催され、またその参加国によってプロセス
の実施状況がモニターされる仕組みとなっている。この点、AU委員会の役割は本O
DA調査団の役割と似ており、各AU加盟国が責任を持ってTICAD Vにおけるコ
ミットメントを履行するよう監視している。また、AUは各AU加盟国が各国のパー
トナーシップを共に履行している多くのことについて、その履行状況の加盟国間の調
整機能をも果たしている。これらにより、アフリカとしての戦略的コンセプトや枠組
みの作成を支援している。
(日本の対アフリカ支援)
日本のODAは、アフリカの開発に
影響力があり、非常に効果的と結論付
けられる。他方、アフリカ各国に対す
る技術協力や技術移転が重要である。
各パートナーは、アフリカに対する資
金援助を実施してきているが、資金援
助ではアフリカ開発は促進されず、資
金援助はあくまでアフリカ各国が行っ
てきている活動の補完的要素でしかな
い。開発や成長のために必要なのはF
DI(直接投資)である。一方で、保
(写真)カパンブエ特別補佐官からの説明聴取
- 16 -
健分野等、民間資金に頼っていたのでは発展しない分野においては、ODAが依然と
して重要である。
AU委員会は、AU加盟国に投資環境を整えるための民間投資促進方針の作成を奨
励している。日本の民間部門は、投資における経験を有していると思う。それゆえ、
日本企業に一層アフリカに進出して欲しいと考えている。しかし、日本企業はリスク
に対して極めて敏感で神経質であり、特に各国の政情について注視している。アフリ
カでは確かに紛争は起きているものの、それは全ての国ではなく、一部の地域でしか
ない。総じてアフリカは平和である。
この観点から、今回の調査団のアフリカ訪問は極めて喜ばしい。経済は、政治の動
きを注視しており、政治が動けば経済もそれについてくるものである。政治家の方々
がもっとアフリカに来れば、アフリカの安全が証明され、民間企業の進出も増加する
であろう。是非とも帰国後は、他の議員の方々にもアフリカを訪問するよう働きかけ
ていただきたい。
(2015 年以降のアフリカ開発)
今後のアフリカ支援において重視されるのは次の点であろう。
第一に、ポスト 2015 年開発目標(ポスト・ミレニアム開発目標。MDGs:Millennium
Development Goals)の議論である。2015 年以降、アフリカが目指す方向としては活
動の拡大(scale up)である。これまでMDGsの下では貧困や諸問題の「削減」を
念頭に置いて活動が行われてきたのが、今後は貧困等の「撲滅」を目標として掲げな
ければならない。貧困のみならず、教育や健康等の分野でも、それぞれの問題を「撲
滅」することが不可欠である。また、若年層の雇用創出や児童・社会的弱者に対する
社会保護の充実が重要である。更にMDGsの履行状況についても監視、アカウンタ
ビリティをフォローアップするメカニズムが必要である。これらの点を押さえること
によって、ポストMDGsの下、アフリカは持続可能な成長を遂げることができよう。
第二に、開発や経済成長に関しては、その持続可能性についても言及しなければな
らない。アフリカ各国は、グリーン経済(環境配慮型経済)及びその技術に関心を有
しており、議論を続けていくことが重要と考えている。これらの分野に深い知見のあ
る日本と緊密に協議していきたい。また、ブルー経済(海洋利用型経済)についても
注視する必要があろう。海岸線を有する国は、その領海やEEZの開発を行っている
が、他方、国際社会による公海の開発も重要である。その際は、環境汚染に注視する
必要がある。また、航海路の安全の確保は重要であり、海賊対策や麻薬取締等が貿易
の発展につながると考えている。
第三に、現在、議論が進行中で未解決な問題である。例えば、海岸のない内陸の開
発途上国問題、アフリカ各国のWTO加盟問題、後発開発途上国に関するイスタンブ
ール・イニシアティブ、島嶼国開発のためのモーリシャス・イニシアティブ、気候変
動に関するUNFCCC(気候変動枠組条約)フォーラム等である。これらの問題が
ポストMDGsの議論に反映されることが不可欠であろう。
- 17 -
<質疑応答>
(派遣団)FDIの重要性、日本企業の慎重さについては同感である。一方で、投資
においては平和環境整備が必要なのも事実である。この点で、アフリカ各国はど
のような努力を行っているか。
(特別補佐官)AUは、アフリカ経済の成長のための方策の一つとしてアフリカ中央
銀行設立構想を検討中で、現在、規則やガイドラインなどの昀終擦り合わせ段階
にある。また、共通通貨の導入については、西部地域において既に取り入れてい
る地域もあるが、東部南部アフリカ市場共同体(COMESA)においては、共
通の関税はないがPTA銀行(COMESAの中央銀行的役割を果たす機関)や
PTA単位通貨への試みがあり、COMESA域内での共通通貨の準備段階とな
っている。さらに、関税同盟の自由貿易圏(CFTA)のパイロット版として3
地域経済圏(東部アフリカ共同体(EAC)、南部アフリカ途上国共同体(SAD
C)、COMESA)の実現に向けて協議中であり、各地域が別個に行うより共同
で行う方が効率的で望ましいと考えている。
(派遣団)日本では、政府や特に日銀において、東南アジアでの関税の取組や中央銀
行設立の経験があり、この経験をアフリカと共有することができる。
(特別補佐官)外国企業・地元企業の紛争を削減するために、アフリカ各国の立法に
関する能力向上が必要である。
(派遣団)アフリカに来て感じたことは、都市給水整備の必要性である。そして、給
水と同時に下水処理も極めて重要な問題である。この点、日本は多くの経験を有
しており、協力できよう。
グリーン経済に関しては、日本は高度経済成長期を経て経済発展を遂げたものの、
同時に環境汚染も引き起こした歴史がある。しかしながら、日本はこれを技術力で
乗り越えた。世界において急成長する国は多く、同じく環境問題も多く発生してい
る。アフリカが将来的に発展することは確実であるが、その持続可能性を確保する
ためにも環境配慮は重要であり、日本として協力していきたいので、議論を続けて
いきたい。
2.アーメド・シデ財務経済開発省担当国務大臣
冒頭、シデ国務大臣から概況説明があった後、意見交換を行った。
<概況説明>
(総論)
TICAD Vの成功を祝する。また、日本が発表した支援策も含め会議の成果には
満足している。会議全体を振り返っても、運営・議論の中身とも素晴らしいものであ
った。日本とアフリカの関係は極めて重要であり、日本には、これまでも、またこれ
からもガバナンス、民主化等様々な分野において、アフリカに貢献してくれるものと
- 18 -
期待している。
日本によるTICADを通じて貧困削減、経済改革、ガバナンスの改善を支援しよ
うとする取組は大いに評価している。日本は経済発展に成功した国であり、我々はそ
の経験を、技術協力を通じて学ぶことにより、アフリカの貧困を撲滅しようとしてい
る。また、TICADでの貿易や投資、技術移転に関する支援も日・アフリカが協力
できる分野として重視している。
エチオピアはAU本部をホストしている国として、また本年(2013 年)のAU議長
国として、その経済協力を通じ日本とアフリカの関係の深化に寄与したいと考えてい
る。
(日本の対エチオピア支援)
日本が実施している支援は非常に有用であり、特にインフラ整備は目に見えるもの
である。また、日本の経験を学ぶ技術協力、例えば「カイゼン」は昀も重要な支援の
一つである。さらに、給水、教育、保健といった社会開発分野のほか、農業分野の支
援も多く、農業生産性の向上や農村への市場経済の確立等に大きく寄与している。
当地の大使館や開発ユニットと協働し、日本のODAを有効に活用していきたい。
そのためには、優先度に応じて双方でよく話し合い調整していきたい。
つい昀近要望書を新たに提出したが、現在議論されている円借款の再開を通じて更
なる関係強化が図られよう。ODA以外でのTICADで打ち出された貿易や投資の
分野での協力関係の進展に期待している。
<質疑応答>
(派遣団)日本企業の海外投資については、南ア等を中心にアフリカ全体においても
拡大していると感じる。日本にとっても成長著しい国との協力は必要である。エ
チオピアとの良好な関係を継続していくのが望ましい。
(国務大臣)円借款については、ハ
イレマリアム首相も関心を示して
おり、TICAD Vでの二国間会
談を受け、すぐさま円借款向けの
案件の立案を指示しており、先般、
要望書を提出したところである。
アルト・ランガノ地熱発電所に
ついては、既に二国間会談でも言
及されているとおりであり、重要
案件と認識している。
加えて、現在要請中の都市給水
(写真)シデ国務大臣との意見交換を終えて
案件も重要であり、ハイレマリアム首相がTICAD Vで訪日の際、JBIC副
総裁とも本件について話し合ったと聞いており、アルト・ランガノ案件と併せ、
- 19 -
我が方からの要望につき前向きに御検討願いたい。
(派遣団)エチオピアが経済成長を続けていることは高く評価する。他方、日本は高
度経済成長期を経て経済発展を遂げたものの、同時に深刻な環境破壊を引き起こ
した歴史がある。しかしながら、日本は経済成長と環境問題解決を同時に達成し
た数少ない国の一つである。実際、世界において急成長している国は多いが、こ
れに伴い環境問題も多く発生しているのも必然の帰結である。
貧困削減や経済改革を進めていくに当たっては、その持続可能性を確保するた
めにも、環境への配慮は不可欠であろう。そのためには給水のみならず下水設備
整備も重要であり、健康促進や貧困撲滅につながるものであり、日本としても協
力を続けていけるものと考えている。
(国務大臣)環境問題に関しては、我々も優先順位が高い事項と考えており、
『気候変
動に強靱なグリーン経済戦略』を既に作成している。2025 年までに温暖化ガス排
出量をゼロにするという野心的な「カーボンフリー経済」の達成を目指している。
環境問題は、故メレス首相も関心を有してきた分野であり、我が国としても先
般、環境保護庁を環境・森林省に格上げして体制の強化を進めているところであ
る。環境配慮を損なうことなく、経済改革を進めていきたい。
(派遣団)エチオピアは英語圏であり、インターネット活用により若年層の教育にお
いてアドバンテージがあると考えられるが、エチオピアにおけるインターネット
環境の現状と拡張計画についてどのような状況にあるか。
(国務大臣)現在、通信・ICT省において、大事業を計画しており、国内あらゆる
ところでインターネット利用が可能となるようインフラ整備に注力しているとこ
ろである。当国唯一の通信業者であるエチオピアテレコムは、政府系企業である
が、民間企業並みの経営努力と改革を行っているところであり、今後の成果が期
待できる。
現在、当国では 2,400 万人が携帯電話を利用しており、それは2年後には 4,000
万人に達する見込みである。また、全国レベルで3Gサービスの導入を進めてお
り、将来的には外国企業の協力を得て4Gサービスにランクアップする予定であ
る。
通信網の整備によって、教育環境の改善、電子政府の実現、地方分権の進展を
進め、特にアディスアベバと地方各都市間の通信状況を改善し、地方との連携強
化を図りたい。ICTは過去 10 年で急速に拡大進展したが、現状では回線の質や
早さに改善の余地がある。
(派遣団)中国企業が同分野で大きなシェアを占めつつあると聞くが、日本企業が中
国企業を支えているというのが実情である。日本のICT企業がこの分野でエチ
オピアと協力していけるのではないか。
(国務大臣)そのようなオファーは歓迎する。すでにZTEやファーウェー等から技
術は得ているが、財政的なパッケージとともに日本企業の準備が整っているので
あれば、協議する用意がある。
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第5
青年海外協力隊員、JICA関係者、日本企業関係者等との意見交換
派遣団は、次のとおり意見交換を行
い、出席者それぞれの活動状況等につ
いて説明を聴取した後、今後の取組に
当たっての課題、我が国の支援の在り
方、現地における生活環境等について
意見交換を行った。
9月6日には、日本企業(西日本技
術開発(株)、鹿島建設(株)、佐藤工業
(株)、国際航業(株)、(株)ヒロキ、丸
紅(株))関係者と意見交換を行った。
9月7日には、青年海外協力隊員及
(写真)JOCV、SVとの意見交換を終えて
びシニア海外ボランティア等と意見交
換を行った。
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Ⅱ.エチオピア連邦民主共和国における調査