進行波状に変形する境界が駆動する流れにおける有限レイノルズ数の影響
(a)
(b)
山田広平 (指導教員 飯間信 )
(a)
(b)
北海道大学理学部 , 北海道大学電子科学研究所
1
概要
微生物は境界の変形により自身の周りに流れを発生さ
せる事で遊泳する。そのとき、微生物が遊泳するうえで
有限のレイノルズ数が及ぼす影響の大きさについて調
べた。結果、微生物の遊泳の平均速度 U を変形の振幅と
波長の比で展開すると、1 次の効果では微生物は平均的
に速度を持たないため動かないが、2 次の効果では平均
速度を持つため, 微生物の遊泳が説明できる。またその
平均速度は、レイノルズ数 (慣性と粘性の比) の減少関数
であることがわかった。
2
∗
∗
∂ψ
∂ψ
u∗ = ∗ , v = − ∗ ,
∂y
∂x
[∇∗ × u∗]z = ∂x∗v ∗ − ∂y∗u∗ = −∇2∗ψ ∗,
手法
Figure 1 の様に微生物の繊毛の先をつないだものを境界
と考える。これらの変動で微生物は自身の周りに流れを
作る。そうした流れによる微生物の遊泳速度は、微生物
上に固定した座標系から見た、無限遠での一様流の大き
さがわかればよい。粘性が非常に大きい場合は、ストー
クス近似がしばしば用いられる。しかし、ここではナビ
エ・ストークス方程式を用いて粘性の大きさの影響を見
積もる。
となる。(1) の回転を取ると、
∂
2∗ ∗
∗ ∂
2∗ ∗
∗ ∂
2∗ ∗
(−∇
ψ
)
+
u
(−∇
ψ
)
+
v
(−∇
ψ)
∗
∗
∗
∂t
∂x
∂y
− ν ∗∇2∗(−∇2∗ψ ∗) = 0.
ここで、(x∗, y ∗) を (ξ, η) と変数変換して書き直すと、
(
)
∗2
∗2
∗
k
k
∂
ω
∂
∂
2 ∗
4 ∗
+
−
−
ψ
ψ
∇
ψ
−
∇
ψ = 0,
η
ξ
∗2
∗
∗
∗
k ν
∂ξ ω
∂ξ ω
∂η
( 2
)
2
∂
∂
という式を得る。ただし、∇2 = ∂ξ
+
2
∂η 2 ,
(上の ∇2∗ とは定義が異なる点に注意。)
以下、無次元化するために
ω∗
R = ∗2 ∗
k ν
,
k ∗2 ∗
ψ = ∗ψ ,
ω
とおくと
(
)
∂
∂
∂
R − + ψη − ψξ
∇2ψ − ∇4ψ = 0.
∂ξ
∂ξ
∂η
(3) の右辺に ψ (1) を代入して、ξ 平均をとると、
R2
∗
∗ −(1+λ∗)η
∗
2 −(λ+λ∗)η
Re[AB (1 + λ )e
+ (λ + λ )|B| e
].
2
を満たす関数として導入する。
2 次元の場合、速度場の z 成分はゼロと考えると、渦度は
一成分(z成分)しかなく、
目的
微生物の遊泳の仕組みを調べる。微生物は自分の体を変
形させて周りに流れを作って遊泳する。その流れを流体
の方程式に当てはめて平均速度を求める。その時、粘性
の大きさは遊泳速度にどう影響するのかということを
調べる。本発表では教科書 [1] の 3.4 章を勉強した内容を
まとめたものである。必要なベクトル解析の知識は文献
[2] で勉強した。
3
∂u∗
1 ∗ ∗
∗
∗ ∗
∗ ∗2 ∗
∗
+
u
·
∇
u
+
∇
p
−
ν
∇
u
=
g
,
(1)
∗
∗
∂t
ρ
とかける。ここで、u = (u, v) は速度場、ρ は密度、
p は圧力場、ν は動粘性係数、g は重力場である。
流れ関数 ψ ∗ を
ここで ϕ を ψ (2) の ξ 平均とする。周期を T として、(3) の
左辺の ξ 平均をとると
∫ T
∫ T 4
4
∂
1
∂
1
(2)
Lψ (2)dξ =
ψ
dξ = 4 ϕ.
4
T 0
T 0 ∂η
∂η
これらをつなげ、得られた方程式を η で積分し、無限遠
での境界条件から
2
R
(2)
∗
∗ −3 −(1+λ∗)η
∗ −3
2 −(λ+λ∗)η
ϕ = U η+ Re[AB (1+λ ) e
+(λ+λ ) |B| e
],
2
境界条件 (3.1 節) と O(ϵ2) までの近似で U (2) は以下のよう
に求まる。
U
(2)
1 2
1
= Re[ b(bλ + (λ + 1)(β − iγ)) − a
2
2
R2
(AB ∗(1 + λ∗)−2 + (λ + λ∗)−2|B|2)].
+
2
尚、この式に対応する [1] の (3.24) 式には誤植があり、
(1 + λ∗)−2 と (λ + λ∗)−2 の積になっているが、これは間
違いである。
従って、O(ϵ2) では一様流が存在し、これにより、微生
物の平均遊泳速度を求めることができた。
4.3
a = 0 としたきの平均遊泳速度 U の R 依存性を示す
(4) の単純な場合として、a = 0 のときを考える。この
とき
(2)
U = U (1) + U (2)
R はレイノルズ数と呼ばれる。ここでは R = O(1) を仮
定する。
Figure 1: 微生物のイメージ。繊毛の先を繋いで境界を
作っている。
3.1
境界条件
*は次元のある量を表す
2 次元の場合を考える。(x∗, 0) を中心として、変動する
繊毛の先端の座標を (x∗s , ys∗) として、
x∗s = x∗ + a∗ cos(ξ − Φ∗)
= x∗ + β ∗ cos(ξ) + γ ∗ sin(ξ),
ys∗ = b∗ sin(ξ),
とする。(Figure 2)
ここで、ξ = k ∗x∗ − ω ∗t∗ , η = k ∗y ∗
また、a∗k ∗ ≪ 1, b∗k ∗ ≪ 1, を仮定する。
(推進波の速さ = ω ∗/k ∗) とおくと、
微生物の表面での境界条件は
u∗(x∗s , ys∗, t) = x˙∗s = ω ∗β ∗ sin(ξ) − ω ∗γ ∗ cos(ξ),
v ∗(x∗s , ys∗, t) = y˙s∗ = −bω ∗ cos(ξ),
となる。また y → ∞ で、流速場 (u, v) → (U, 0) の一様流
になるものとする。
また、x 方向には周期 2π/k ∗ の周期境界条件を課す。
Figure 2: (x∗, 0) と (x∗s , ys∗) の関係。
3.2
ナビエ・ストークス方程式
ここで考えるのは、ナビエ・ストークス方程式に従う流
体である。ナビエ・ストークス方程式は、
4.1
O(a∗k ∗) の解を求める
仮定より a∗k ∗, b∗k ∗ ≪ 1 なので、O(a∗k ∗) の微小量 ϵ を導
入して ψ = ψ (1) + ψ (2)+・
・
・,U = U (1) + U (2)+・
・
・と展開
する (ただし ψ (m) = O(ϵm)) 。 ψ を (2) に代入し、O(ϵ)
の項について、つり合いの式を考えると、
∂
(1)
Lψ ≡ R
∂ξ
(
2
2
このとき、U の R 依存性を示す、1 + F1 のグラフは Figure
3 となる。
2
1.8
)
1.6
∂ (1) ∂ (1)
∂ 4 (1)
ψ + 2ψ
+ 4ψ
2
∂ξ
∂η
∂ξ
∂ 4 (1) ∂ 4 (1)
+2 2 2 ψ + 4 ψ = 0.
∂ξ η
∂η
1.4
1.2
1
0
この式を ψ (1) となる条件で解くと、
ψ (1) = Re[A exp(−η + iξ) + B exp(−λη + iξ)] + U (1)η.
ただし、
λ=
√
b2
−λ
1
2
= Re[λ + |1 + λ| (
+
),
∗
2
∗
2
2
(1 + λ )
(λ + λ )
1
b2
],
= [1 +
4
F (R)
と簡単になる。ただし、
[
]1/2
1 + (1 + R2)1/2
F (R) =
2
結果
4
(4)
1 − iR,
2
4
6
8
10
Figure 3: レイノルズ数と速度 U の関係。
これによりレイノルズ数が大きくなると、U が小さくな
るということがわかった。平均速度 U は b2 に比例する。
これはレイノルズ数が R → 0(ストークス近似が成り立
つような時) でも成立する。
A, B は境界条件 (3.1 節) で決まる。O(ϵ) までの近似で
5
まとめ
k(λ + 1)(bλ + β − iγ)
−k(λ + 1)(b + β − iγ)
A=
, B=
, 微生物の遊泳の平均速度 U は、1 次の効果では生まれな
R
R
いが、2 次の効果まで含めると説明できるということが
という式を得、U (1) = 0 となる。尚、この A, B の表式に わかった。レイノルズ数が大きくなれば平均速度は遅く
対応する [1] の P29 の式には誤植があり、[1] では b = 1 と なるということがわかった。また、今回教科書として使
なっているが、これは間違いである。
用した [1] は誤植が多数あり、特に何度計算しても合わ
従って、O(ϵ) では一様流はなく、微生物は、平均的に ず、本の内容まで疑われた際に、参考文献として [3] を参
動かないということがわかる。
照した。結果あまりにも初歩的で、自分も本を信じてい
た式に誤植があり、本を疑うなら徹底的にやるべきだっ
4.2 O((a∗k ∗)2) の解を求める
たと痛感した。これからも計算は警戒強く念入りにやっ
ていきたい。
2
同様に O(ϵ ) の項は、
[
]
(1) ∂
(2)
(1) ∂
2 (1)
Lψ = R ψη
∇ ψ − ψξ
∇2ψ (1) .
(3) 参考文献
∂ξ
∂η
尚、この式に対応する [1] の P29 の式には誤植があり、R
の符号がマイナスになっているが、これは間違いであ
る。
2010 年度北海道大学理学部数学科卒業研究発表 (2011-01-26 – 2011-01-28)
[1] Stephen Childress, ’Mechanics of swimming and flying’
Cambridge Studies in Mathmatical
[2] 木田重雄 , 「なっとくする流体力学」, 講談社
[3] Tuck E.O.(1968) , ’A note on on the swimming problem’ , Journal Fluid Mechanics 31:305-308
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