毎月レポート
ビジネスの情報
(2008年12月号)
ビジネスの情報
2008年12月号
■エンタメ市場。不況に強いのは、やっぱり新鮮な“ナマ(ライブ)”もの。
先行き不安なご時世の割りには、と言うべきか、それともそんなご時世だからこそ、と言うべきなのでしょうか、エ
ンタテイメント業界は意外に(?)元気です。特にライブの人気は、分野を超えて健闘しています。
「エンタテイメント白書2008」(ぴあ総合研究所)によると、07年に催された「音楽」「ステージ(演劇・お笑い・
歌舞伎・能・ミュージカルなど)」「映画」「スポーツ」の興行系に、「遊園地・テーマパーク」を加えた5分野につ
いて、公演回数・動員数・チケット販売額を分析。その結果、5分野全体では前年比0.2%減(1兆1,502億円)でしたが、
興行4分野について見ると前年比0.3%増(5,980億円)と、2000年の調査開始以来、最高となりました。
好調の立役者は「ステージ」と「スポーツ」で、「ステージ」は売り上げで6.9%増、動員数も5.1%増を記録しまし
た。とりわけ好調だったのがミュージカルです。大手の劇団四季や宝塚、東宝ミュージカルなどが安定して客を集め、
さらに「シルク・ドゥ・ソレイユ」などTV局が仕掛けた新しい形態のショーも成功し、従来のマニア層に加えてライト
ユーザー層の取り込みを実現したのが大きな要因になったようです。「スポーツ」は、野球が8.2%増、バレーボール
7.1%増、サッカーも0.2%増と好調で、14.5%と大きく落ち込んだ格闘技の不調を補ったかたちです。
一方で、「音楽」「映画」の市場規模は縮小傾向にあります。前年比2.9%減の「音楽」は、大物アーティストの公
演が減った他、夏のロックフェスティバルの開催が減ったことが影響。「映画」は、06年に過去最高となった邦画が07
年には12.3%も減少したことが響いたのか、全体で2.2%のマイナスでした。
「遊園地・テーマパーク」は二極化にいっそう拍車がかかり、「東京ディズニーリゾート」や「ユニバーサル・スタ
ジオ・ジャパン」の動員数が06年を上回ったのに対し、全体では動員数が前年比1.4%減と、地方の不振施設の閉鎖に
歯止めがかからない状態です。
今後はますます、非日常としてのナマの魅力が、いかにサイフのひもをゆるませるかが、ライブ・エンタメ市場のワ
ザの見せ所となるようです。
※参考:ぴあ総合研究所株式会社 http://www.pia.co.jp/souken/・日経MJ(日経流通新聞)
■「中学生本」で学ぶオトナ、急増中!
近頃、書店でよく見かけるのが「歴史」や「思想」「人生」など、お堅く難解そうなテーマをわかりやすく解説した
シリーズ本です。これらはいわゆる“中学生本”と呼ばれ、出版社側が“中学生向け”とアピールすることで、とっつ
きやすい印象を与え、結局は幅広い年代層の読者を獲得したというヒット商品です。
この分野の草分け的存在なのが、「理論社」の『よりみちパン!セ』シリーズです。性や死、美、愛国心といった重
めのテーマについて著名人が執筆しています。例えば、『バカなおとなにならない脳』(養老孟司)、『みんなのなや
み』(重松 清)、『生き抜くための数学』(新井紀子)、『失敗の愛国心』(鈴木邦男)などなど、既に37シリーズ
を刊行、30代を中心に幅広いオトナたちに読まれています。「河出書房新社」からは、「中学以上、大人まで」が
キャッチフレーズの『14歳の世渡り術』シリーズが好評です。映画監督の井筒和幸氏による『民族の壁どついたる!』、
元パンクバンドのボーカルで作家の雨宮処凛氏の『右翼と左翼はどうちがう?』、コラムニスト、辛酸なめ子氏の『女
子の国はいつも内戦』といった具合に、ユニークな執筆陣を売りに、07年から約16万部を発行しています。また、
「PHP研究所」も08年7月、「中学生から大人まで」と銘打った『心の友だち』シリーズを創刊しました。
こうした、“中学生の衣をまといながら、実はオトナ向けの本”に関して、扱う書店側にも変化が見られます。例え
ば、紀伊国屋書店本店では、これまで児童書のコーナーに並べていたのを、オトナの購入者が増えてきたのに対応して
社会科学やビジネス書のフロアに陳列し始めました。オトナたちにとっては、知りたい知識を平易な言葉で、かつ要点
をわかりやすく解き明かしてくれるこれらの本は、実にありがたい存在です。
はたして、じわじわと浸透してきた「中学生本」が、不況出版業界の救世主のひとつとなれるでしょうか!?
※参考:株式会社理論社 http://www.rironsha.co.jp/・河出書房新社 http://mag.kawade.co.jp/yowatari14/
PHP研究所 http://www.php/co/jp/・日経MJ(日経流通新聞)
■もう映画だけに頼らない! 低迷シネコン業界の生きる道とは?
いま、シネマコンプレックス(複合映画館)の経営に転機が訪れています。数は増えているものの、興行収入
(2,000億円前後)が頭打ち状態で、1スクリーン当たりの収入もこの10年で4割近くも落ち込みました。シネコン側で
は、そんな窮状を自力で打開しようと立ち上がりました。
その策の1つが、これまで配給作品を上映する場にすぎなかった受け身のシネコンが、独自に映画を作ってしまおう
という動きです。09年夏、公開予定の日米韓合作映画「はりまや橋」の製作に携わったのは、シネコン運営大手の
「ティ・ジョイ」でした。総出資額は6,000万円で、国内だけで5億円の興行収入を見込んでいます。
2つ目の策は、デジタル化による上映コンテンツの拡大です。映画以外の作品、例えば舞台やスポーツ、コンサート
などをシネコンで上映しようという試みが進行中です。松竹系のシネコンでは、歌舞伎の舞台を高性能デジタルカメラ
で撮影した「シネマ歌舞伎」が人気です。08年5月に上映した坂東玉三郎の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は、わず
か1カ月で3,000万円近い興行収入を記録しました。同様に「TOHOシネマズ」は、宝塚歌劇団の舞台上演に力を入れてお
り、07年12月には7カ所のシネコンで公演を同時中継し、多くのヅカ・ファンを集めました。
デジタル化によって実現するシネコンでの非映画コンテンツは、作品の買い付けコストが安く済むことや、作品に
よって自由な値付けが可能になり興行収入アップにも貢献します。例えば、「シネマ歌舞伎」の場合なら大人2,000円、
宝塚は4,000円と、映画料金の1,800円に縛られることなく設定できます。さらに、従来のフィルム上映の際に伴うシネ
コン側の諸々の手間も省かれ、人件費やフィルム輸送代など大幅に削減できます。とはいえ、現在デジタル化に対応で
きるスクリーンは全体のわずか3%ほど。なんといっても、1スクリーン当たり約1,000万円の投資負担が、普及の最大
のネックとなっています。デジタルデータを専用の映写機で上映することで、これまで家庭のTVでしか観たことのな
かった多彩な作品を、映画館の迫力あるスクリーンで楽しむことができる---これはまさに、映画流通を一変させる革
命的システムと言えます。
窮状を打開するために生まれた苦肉の策が、案外これからのシネコンの生きる道を適確に示唆しているのかもしれま
せん。
※参考:日経MJ(日経流通新聞)
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