金環日食における日射量の変化について
可視光線と紫外線の違い
岐阜県立加茂高等学校
自 然 科 学 部
はじめに
2、食面積と照度・紫外線強度の変化
2012 年 5 月 21 日 太 平 洋 側 の 広 範 囲 で 金 環 日 食 が 起 こ っ た 。 こ の
貴重な天文現象を観測し、日食の進行とともに日射がどのように変
化するかについて可視光線と紫外線について調べた。
日食が起こらない場合の照度や紫外線強度に対して、どの程度測
定値が減少したのかを次の式で求め、食面積の関係を調べた。
減少率%=
推定値-測定値
推定値
× 100
観測場所と日食の状況
(1)食面積と照度
金環日食となり食面積が
0.883 に な っ た 時 、 推 定 値 の
29.5 % ( 減 少 率 70.5 % ) ま
で 減 少 し た ( 図 6 )。 食 面
積が小さい時、照度はあま
り減少しない。
(2)食面積と紫外線強度
紫外線強度は最大食の面
積 0.883 に 対 し て 減 少 率 は
94.8 % に 達 し た ( 図 6 )。 食
面積と紫外線強度の間は比
例に近い関係が認められる。
観測場所
岐阜県立加茂高等学校
( 北 緯 35 ° 26' 54", 東 経 137 ° 2' 7")
食の始まり
6時18分25秒
金環日食の始まり 7時30分46秒
最大食
7時32分10秒
金環日食終わり
7時33分34秒
食の終わり
8時57分58秒
最大食分
0 . 9 4 5 ( 面 積 比 0.883)
6:19
食 分 0.008
6:45 食 分
0.364
6:52 食 分
0.457
7:32 食 分
0.945
7:51
食 分 0.742
8:24 食 分
0.365
8:48 食 分
100
y = 41.217x2 + 72.101x
R² = 0.9889
90
80
70
60
減
率
%
50
40
30
y = 56.186x2 + 28.308x
R² = 0.9748
20
10
0
0.0
0.2
0.4
食面積
0.6
0.8
照度減率
1.0
紫外線減率
図6 食面積と照度・紫外線強度
の減少率
0.105
3、食面積に対する照度と紫外線強度の変化の違い
図1
日食の進行の様子
加茂高校にて撮影
観測方法
太陽高度の変化に伴う測定器への太陽光の入射角度の変化を避け
るために、照度計と紫外線測定器を用いて、法線直射照度と法線直
射紫外線強度を測定した。
観測結果
照 度 は 食 の 前 は 12,000Lux で あ っ た が 、 金 環 日 食 時 に は 3,900Lux ま
で 減 少 ( 図 2 )。 肉 眼 で も 薄 暗 く 感 じ た 。 紫 外 線 強 度 は 食 の 前 は 1.72
m W/cm2 で あ っ た が 、金 環 日 食 時 は 0.25 m W/cm2 ま で 減 少( 図 3 )。
照度、紫外線強度とも食の前よりも食の後の方が測定値が大きい。
mW/cm
食 面 積 が 少 な い 時 、照 度 ・ 紫 外 線 強 度 と も に 減 少 率 は 大 き く な い 。
また、食面積に対して照度は減少率が小さく、紫外線強度は比例に
近い関係がある。これは可視光線と紫外線の性質の違いによるので
はないか。
(1)太陽光球面の周辺減光
太陽の光球面は中央が明るく、周辺部は
暗 い ( 周 辺 減 光 )( 図 7 )。 照 度 及 び 紫 外 線
を太陽像の中央と周辺でそれぞれ測定する
と、中央の方が明るいことが確認できた。
このことから、食面積が小さい時は、暗い
周辺部を隠すため、あまり照度や紫外線強
度は減少しないと考えられる。
図7
2
可視光線による太陽像
加茂高校にて撮影
(2)大気による散乱光
日食が生じていない地域の上
空で散乱した光が、届くのでは
な い か ( 図 8 )。 可 視 光 線 は 大
気による吸収が少ないため、遠
くまで届くが、紫外線は大気に
よる吸収を受けやすく、日食帯
まで届きにくい。このため、食
面積に対して照度は減少率が小
さくなる。
図2
日食時の照度の変化
図3
紫外線
可視光線
日食時の紫外線強度の変化
考察
1、照度・紫外線強度への太陽高度の影響
日食の前後の測定値を基に、日食が起こらない場合の照度と紫外
線強度を推定。大気は上空ほど希薄であるが、密度が地表と同じと
し て 厚 さ を 求 め る と 約 8km と な る 。こ れ は 地 球 の 大 き さ と 比 較 し て 、
非常に薄いためほぼ平坦な層と近似した。この大気層の厚さを 1 と
して、太陽高度から太陽光が大気中を通過する距離を求め、推定照
度 と 推 定 紫 外 線 強 度 の 関 係 を 求 め た ( 図 4 )。
L=
太陽
(3)月による回折
波長の長い光は障害物によって
回折を起こしやすい。可視光線は
大 気 層
波長が長いため、回折を起こして
吸収
日食帯
日食帯に届いている可能性が考え
ら れ る ( 図 9 )。 紫 外 線 は 波 長 が 図 8 大 気 に よ る 散 乱 と 吸 収
短く回折を起こしにくいため届き
にくいのではないか。
D
sin h
月
地球
太陽
図9
大気層
D
L
h
地表
図4
h:太陽高度
D:大気の厚さ
L:太陽光通過距離
大気層通過距離
太陽光が大気層を通過す
る距離が長くなると、照
度・紫外線強度とも小さ
くなる。特に紫外線は大
気によって散乱や吸収を
受けやすいため、大気層
を通過する距離が長くな
ると急激に弱くなる(図
5 )。
月による太陽光の回折
まとめ
・ 2012 年 5 月 21 日 の 金 環 日 食 で は 、 最 大 食 面 積 が 0.883 に 達 し 、 照
度 は 日 食 が な い 時 の 照 度 に 対 し て 約 30 % ま で 、 紫 外 線 は 約 5 % ま
で減少した。
・照度、紫外線強度は太陽高度によって変化する。大気層の通過距
離が長いと波長の短い紫外線の方が散乱や吸収を受ける。
・食面積と照度、紫外線強度の間には相関があるが、食面積に対し
て 減 少 率 は 小 さ い 。そ の 原 因 と し て 太 陽 の 周 辺 減 光 が 考 え ら れ る 。
・減少率が照度の方が小さく、紫外線強度が大きくなる原因として
可視光線と紫外線の性質の違いが影響していると推定される。
1,日食帯の周囲で散乱した可視光線は日食帯まで届くが、紫
外線は大気中で吸収されやすいため日食帯まで届きにくい。
2,波長の長い可視光線は月の縁で回折を起こし、日食帯に届
くが、波長の短い紫外線は回折を起こしにくく日食帯まで届
きにくい。
参考文献等
図 5 大 気 層 通 過 距 離 Lと 可 視 光 線 ( 照 度 )
紫外線(強度)の変化
・ 鈴 村 ほ か ( 2011) 曇 天 下 の 部 分 日 食 に お け る 日 照 及 び 気 温 変 化 の 測 定
三 重 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要 第 62 巻 自 然 科 学
・国立天文台暦計算室
・つるちゃんの日食ソフト
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