シミュレーション論Ⅰ
第9回
様々なシミュレーション:販売と在庫管理
在庫管理
なぜ在庫管理が必要か?
– 在庫が少なすぎる→受注に応じられずに利益を失う
– 在庫が多すぎる→保管費用などがかさんで損失となる
1400
1200
1000
800
600
出庫量
在庫量
400
発注量
200
-200
-400
40
38
36
34
32
30
28
26
24
22
20
18
16
14
12
8
10
6
4
0
2

在庫管理:原材料や商品の在庫量を適正に保つように計
画・管理すること。
0

在庫管理の方式

定期定量方式:一定の期間ごとに一定の発注量で商品を
仕入れる方式。
需要が常に一定であれば定期定量方式が合理的だが、
実際には需要は一定でないことがほとんど
↓
発注時期または発注量のどちらかを固定


定期発注方式:発注時期を固定
定量発注方式:発注量を固定(発注点方式)
在庫管理の基本モデル


商品の需要が一定として、定期定量方式の最も単純な場合を考える。
– 発注は在庫が0になったときにおこなう
– 発注と同時に商品が納入される
モデル化に使用する記号は以下のとおりとする。
R :商品の年間需要量
Q :1回あたりの発注量
C0 :1回あたりの発注費用
C1 :商品1単位あたりの年間保管費用
C :総在庫費用(=年間発注費用+年間保管費用)
在庫管理の基本モデル(2)

年間の平均在庫量は Q/2 となるから、年間の総在庫費用
は以下のようになる。
C0 R C1Q
C

Q
2
発注費用

保管費用
在庫にかかる費用を最小にするにはどうすればいいか?
Cを最小にする発注量Q*を上式から決定すればよい
経済的発注量を求める


総在庫費用を最小にする最適な発注量のことを経済的発
注量(Economic Order Quantity: EOQ)という。
経済的発注量Q*は、総在庫費用CをQで微分して
dC/dQ=0 とすることで求められる。
Q* 

2C0 R
C1
上式はEOQ公式、またはハリスの経済的ロット公式、もし
くはウィルソンのロット公式と呼ばれる。
EOQ公式を導出する


問:総在庫費用の式を微分して0とおき、EOQ公式を導出
せよ。
参考:1/Q=Q-1
総在庫費用
総在庫費用の微分
最適発注量(EOQ公式)
C0 R C1Q
C

Q
2
dC
?0
dQ
Q* 
2C0 R
C1
最適発注量を求める
問:ある商品の年間総需要Rが5,000台、1回あたりの発注
費用C0が16,000円、商品1単位あたりの年間保管費用C1
が4,000円のとき、最適発注量Q*とそのときの総在庫費
用C*を求めよ。
最適発注量
総在庫費用
Q* 
2C0 R
C1
C0 R C1Q
C

Q
2
解答
最適発注量
2C0 R
2 16000 5000
Q* 

 200 (台)
C1
4000
総在庫費用
C0 R C1Q 16000 50 4000 200
C



 800000 (円)
Q
2
200
2
その他の在庫モデル





実際の在庫管理においては、需要は一定ではなく変
動する。
発注してからすぐに納入されるわけではなく、リードタ
イムと呼ばれる調達期間がかかる。
品切れをおこした場合には品切れ損失が起こる。
通常、品切れに対応するために需要の変動を考慮し
た余分の在庫=安全在庫を持っておく。
上記の詳しいことについてはオペレーションズ・リサー
チ等の書籍を参照のこと。
新聞売り子問題





在庫管理の問題と本質的に同じ問題として、新聞を仕入れ
て販売するモデル(新聞売り子問題)がある。
1部 c 円で仕入れた新聞を a 円で売る。
客は1日平均 m 人やってくるが、毎日の客数 x は変動する。
売れ残りが発生すると仕入分の損失となり、品切れを起こ
すとその分の利益を逃すことになる。
新聞売り子が得る利益を最大にする1日の最適発注部数を
求める。
新聞売り子問題

1日あたりの仕入部数を y とすると、x 人の客が来たとき
の利益 f (x,y) は
 xa  yc ( x  yのとき )
f ( x, y )  
 y (a  c) ( x  yのとき )
となる。日々の客数の確率分布が分かっていれば、期待
利益と最適発注部数を計算で求めることもできる。
参考:ポアソン分布

離散的な自然現象が発生する確率は、ポアソン分布とい
う確率分布に従うことが多いことが知られている



ポアソン分布:
e 
P( N  k ) 
k!
k
ここで P(N=k) は単位時間に平均でλ回発生する事象が
ちょうど k 回発生する確率
参考:ポアソン分布(2)

例:平均10のポアソン分布のグラフ
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
参考:ポアソン分布(3)










ポアソン分布に従う事象の例: (Wikipediaより引用)
1時間に特定の交差点を通過する車両の台数。
1mlの希釈された水試料中に含まれる特定の細菌の数(細菌数検査
における最確法)。
1ページの文章を入力するとき、綴りを間違える回数。
1日に受け取る電子メールの件数。
1分間のWebサーバへのアクセス数。
例えば、1時間あたりのウィキペディアの最近更新したページの編集
数もおおよそポアソン分布。
1マイルあたりのある通り沿いのレストランの軒数。
1ヘクタールあたりのエゾマツの本数。
1立方光年あたりの恒星の個数。
モンテカルロ法による新聞売り子問題のシミュレーション





乱数を用いて日々の客数を生成し、最適な発注部数を調
べるシミュレーションをおこなう。
仕入れ価格
販売価格
c = 80
a = 120
日々の客数 x が平均10人で、ポアソン分布に従うものと
して乱数表(ポアソン乱数表)を作り、客数を決定する。
仕入量 y を8部、10部、12部として、最も利益の高い仕入
量をシミュレーションにより調べてみよう。
シミュレーションの手順



ポアソン分布に従う乱数列(乱数表)から乱数を記入する。
乱数値をその日の客数として、仕入部数が8、10、12のとき
の利益を記入する。
10日分のシミュレーションをおこない、最も利益の高かった
仕入部数を調べる。
仕入れ価格
販売価格
1日の客数
仕入量
c = 80
a = 120
x (乱数表から決定)
y (8部、10部、12部)
1日の利益
 xa  yc ( x  yのとき )
f ( x, y )  
 y (a  c) ( x  yのとき )
シミュレーションの記入例
仕入れ価格
販売価格
1日の客数
仕入量
c = 80
a = 120
x (乱数表から決定)
y (8部、10部、12部)
利益
 xa  yc ( x  yのとき )
f ( x, y )  
 y (a  c) ( x  yのとき )
日数
乱数
利益(8部仕入)
利益(10部仕入)
利益(12部仕入)
1
8
320
160
0
2
9
320
280
480
3
6
80
-80
-240
4
13
320
400
480
5
6
7
8
9
10
総利益
第9回のレポート



新聞売り子問題のシミュレーションをおこない、最も利益
の高かった発注部数を調べて記入せよ。
ポイント:ポアソン乱数表を用いて10日分のシミュレーショ
ンをおこない、仕入部数(8、10、12)ごとに総売り上げを
計算する→最も高かったものを記入。
次回はノートパソコンを使用します。
しっかり充電したうえで持参してください(ノートPCをお持ちでない場合
はなくても構いません)
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