原子力発電所のない未来設計のための
ドイツ視察報告
2012/01/22~27
『脱原発の道~3・11後の世界とドイツの選択~』ツアーに参加して
2012/03/21
(株)エコロジア 代表
Ver.1.0
林 彰一
2012/03/21
イラスト: さよなら原発! 3.11鹿児島集会実行委員会ポスターより
http://goodbyeparade0311.blog.fc2.com/
INDEX
1.『脱原発の道~3・11後の世界とドイツの選択~』 訪問地の一覧
P2
2.訪問地・内容・面会者の一覧
P3
3. 報告のまとめ “学んだこと、日本の課題”
P4
4. バーデン=ヴュルテンベルク州にみる 勢いづく再生可能エネルギー
P5
バーデン=ヴュルテンベルク州環境大臣インタビュー
バーデン・ヴュルテンベルク州 ネッカー・オーデンヴァルト郡
バーデン・ヴュルテンベルク州テュービンゲン市
モスバッハ都市事業公社
チュービンゲン都市事業公社
ソーラーコンプレックス社 「バイオエネルギー村」
ネッカー・オーデンヴァルト郡 エネルギー庁(EAN)
社団法人 メドロポリタンゾル・ラインネッカー 「再生可能エネルギー技術動向」
まとめ
5. 苦闘する原発廃炉と放射性廃棄物処分問題
基礎知識編
ドイツの原子力発電所 所在地/一覧/ドイツの放射性廃棄物処分 基本政策/
ドイツの原子力関連施設と連邦放射線防護庁の所在地
廃炉になったオブリヒハイム原発
連邦放射線防護庁(BFS) INFO KONRAD
コンラート最終貯蔵場 見学
ゴアレーベン試掘場 見学
ゴアレーベンの反対運動/過去の闇の解明 連邦議会 ゴアレーベン調査委員会
まとめ
6. 困難な課題に立ち向かう ドイツ流「民主主義」
基礎知識編 連邦共和国制(連邦と州の関係)/ドイツの自治 行政構造と補完性原理
ドイツ緑の党 政治家へのインタビューⅠ~Ⅲ
最終処分地選定へのチャレンジ
まとめ
ecolosia
P6
P9
P10
P11
P16
P23
P32
P33
P36
P37
P38
P42
P43
P47
P51
P54
P58
P59
P60
P62
P67
P68
1
1. 『脱原発の道~3・11後の世界とドイツの選択~』訪問地の一覧
1月26日(木)午前:
連邦放射線防護庁ゴアレーベン坑
道(深層)視察
午後: マルティーナ・ラマース氏
(同盟90/緑の党 郡議会議員)と
懇親会
1月25日(水)午前・午後
ザルツギッター市
INFOコンラート(情報館)連邦放射線
防護庁訪問。
コンラート坑道(深層)視察
1月23日(月)午前
同盟90/緑の党 郡支部、社団法人
S.U.N. 活動同盟オブリヒハイム・放
射性廃棄物、モスバッハ都市事業
公社、バイオガスプラント、 コジェ
ネ・モジュール、EAN(エネルギー
庁)の活動状況視察
1月23日(月)午後
(社)メトロポルゾラ・ラインネッカーよ
り再生可能エネルギーの技術動向、
ソーラーコンプレックス社より「バイオ
エネルギー村Mauenheimへの道」の
レクチャー
1月26日(木)夜:
連邦議会議員ジルビア・コッティング
=ウール氏(同盟90/緑の党)と会食
1月24日(火)午後
シュトゥットガルト市
バーデン・ヴュルテンベルグ州環境
大臣フランツ・ウンターシュテラー氏
(同盟90/緑の党)を表敬訪問。
1月24日(火)午前
チュービンゲン市長ボリス・パルマー
氏(同盟90/緑の党)を表敬訪問。
チュービンゲン事業公社訪問。
コジェネ・モジュール視察
旅行企画: (株)マイチケット
ecolosia
2
2. 訪問地・内容・面会者の一覧
■バーデン・ヴュルテンベルク州ネッカー・オーデンヴァルト郡モスバッハ市
クリスティーネ・デンツ
同盟90/緑の党 郡支部長、社団法人S.U.N. 会長
ズィモーネ・ハイツ
郡議会議長、同盟90/緑の党郡議員団長、オブリヒハイム市民団体
ゲルトルート・パタン
活動同盟オブリヒハイム・放射性廃棄物
ウーヴェ・リストル
EAN(エネルギー庁)所長
ダニエル・バナッシュ
社団法人メトロポル・ゾラ ラインネッカー マネージャー
ヴィリー・エゲンベルガー
ロアバッハの農家、バイオガスプラント経営者
ユルゲン・ヤクシ
モスバッハ都市事業公社 社長
■バーデン・ヴュルテンベルク州イメディンゲン町マウエンハイム地区
ベーネ・ミュラー
solarcomplex社 CEO
■バーデン・ヴュルテンベルク州テュービンゲン郡テュービンゲン市
ボリス・パルマー
チュービンゲン市長、同盟90/緑の党
コーネリア・ゼレニ
チュービンゲン事業公社 広報部長
ペーター・カイザー
チュービンゲン事業公社 技術部長
■バーデン・ヴュルテンベルク州シュトゥットガルト市
フランツ・ウンターシュテラー
バーデン・ヴュルテンベルグ州環境大臣、同盟90/緑の党
■ニーダーザクセン州ザルツギッター市
アートゥア・ユンカート
連邦放射線防護庁
ヨハネス・シュナイダー DBE社
■ニーダーザクセン州リューヒョウ・ダンネンベルク郡ゴアレーベン
マルクス・ニッチュ
連邦放射線防護庁
クリスティアン・イスリンガー
DBE社
マルティーナ・ラマース
同盟90/緑の党郡支部長、リューヒョウ郡、市、町議会議員
■ベルリン市
ジルビア・コッティング=ウール
連邦議会議員 同盟90/緑の党バーデン・ビュルテンベルク州支部長
ecolosia
3
3. 報告のまとめ
学んだこと
①
地元住民同士の話し合いが密に行われている自治意識の高さ
②
不利益を受けそうな関係者を初めから入れた科学的合理的で民主的な意思決定プロセス
③
エネルギーシフトは「エネルギー自治」として加速度的に普及中という現実
④
つまり、脱原発を裏付けるエネルギー代替が可能だということ
⑤
今あるもの、持っているものの活用と無駄を探し排除していく考え方
⑥
理想主義だけに傾倒せず、経済合理性(金銭的に得になる)を計算し実証・説得している姿勢
⑦
ライフライン全般の都市事業公社、住民を啓蒙するエネルギーコンサルタントを市町村レベルで効果的に運営していること
⑧
上記を強力に後押しする「再生可能エネルギー法」の政策的有効性
⑨
原子力産業による情報隠蔽、政界工作は日本特有のものではなく、ドイツでもあったこと
⑩
緑の党が市民運動と連帯して粘り強く活動継続し、政府と戦い変化を生み出したこと
⑪
一方で放射性廃棄物処理問題は、適地選定と処分方法に膨大なリソースが必要で、ドイツでさえ未解決で苦闘していると
いう現実。だからこそこれ以上原発運転で増やしてはいけないという主張
日本の課題
①
歴史や民族的特性に育まれて来たドイツ流の民主主義や国家体制と日本の主権在官、お任せ民主主義意識とのギャップ
を乗り越えること
②
小さな地域のつながり、コミュニティーの力のボトムアップ
③
日本の良さ(思いやり、モッタイナイなどの価値観)、既に我々が持っているもの(インフラなど)の探求と活用
ecolosia
4
4. バーデン・ヴュルテンベルク州にみる
勢いづく再生可能エネルギー
ecolosia
5
バーデン・ヴュルテンベルク州環境大臣インタビュー (1)
ヨーロッパでもっとも重要な産業地帯のひとつ。自動車メーカーのメルセデスベンツ、ポルシェ、ダイムラークライスラーが本社を
置き、アウディも生産拠点をもつ。またテクノロジー・情報産業のボッシュ、SAP等、一流企業も本社を構えている。
バーデン・
ヴュルテン
ベルク州
環境省大臣
同盟90/緑の党
フランツ・ウンターシュテラー氏
“発電の約50%を原子力発電で賄ってきました。
近年まで5ヶ所ありましたが、数年前に1ヶ所が
廃炉。昨年の連邦政府の決断によって2ヶ所が
停止。現在稼働しているのは2ヶ所。その1つは
2019年に廃炉、もう1つは2022年に廃炉される
ドイツで最後の原発。
これは短期間に4500MWの電力が供給されなく
なることを意味します。
BW州*の最終エネルギー消費に占める再生可能
エネルギー(2010) 302TWh
再生可能エネルギー
10.9%
太陽光発電
水力
バイオマス
非再生可能
エネルギー
代替するエネルギーを作り上げなければなりません。
2020年の目標として、再生可能エネルギーの割合を
今の17%から38%へ引き上げていきたいですが、そのために風力、太陽光発電をこれからも
拡大していく方針です。”
BW州 再生可能エネルギーの貢献度
ドイツ連邦共和国
シュトゥットガルト市
バーデン・
ヴュルテンベルク州
再生可能エネルギーの一番の動機
付けは再生可能エネルギー法です。
再生可能エネルギーの種類とその
発電1単位毎の対価が法律で定め
られ、それによって投資家のバイオ
マスや太陽光などへの投資が動機
づけられました。具体的な数字でい
えば、再生可能エネルギー法施行
の結果、1998年の全国の再生可能
エネルギーの割合が4.3%に過ぎな
かったのが、いまでは20%にもなって
います。
*BW州 =バーデン・ビュルテンベルク州
ecolosia
電力の
シェア
熱供給の
シェア
最終エネルギー消費
のシェア
http://www.um.baden-wuerttemberg.de/servlet/is/60121/
6
バーデン・ヴュルテンベルク州環境大臣インタビュー (2)
太陽光発電
風力発電
バイオマス
水力発電
有機廃棄物
発電
水力発電
バイオマス
BW州 再生可能エネルギーによる年間発電推移
太陽光発電
風力発電
BW州 再生可能エネルギー発電の内訳(2010)
“現状では、十分な量の再生可能エネルギーがなく、特に風力は現在1%未満ですが、毎年100基の大型風力発電
機設置で2020年には10%に上げる計画です。太陽光発電については、現在12万ヶ所に設置されています。この1年
で1000MW拡張しました。今後も毎年6~700MWづつ拡大し、2020年までに太陽光発電だけで13%まで引き上げてい
く方針です。
発電だけではなく、給熱のインフラも拡張します。例えば、法律では、住宅を新築する場合は、熱需要の20%を再生
可能エネルギーで賄う設計でなければなりません。また、暖房装置を交換する際には、熱需要の最低10%を再生可
能エネルギーで確保することが義務づけられています。これからその法律の拡張として、当州では、非住宅にも同じ
法律を拡大適用しようとしています。また数字を段階的に15%、20%と上げていくことが予定です。
もう一つの重点はエネルギー有効利用です。つまり住宅オーナーの自主的なエネルギーリフォームを政府側で支援
します。州立銀行と協力して、無利子のローンを住宅のエネルギーリフォームに提供するのもひとつです。そのために
250万ユーロの資金を無利息化のために提供しているのですが、それで5億ユーロのローン総額になります。”
http://bit.ly/FPrU58
ecolosia
7
バーデン・ヴュルテンベルク州環境大臣インタビュー (3)
Q. 一大産業地域だとのことですが、エネルギーシフトしていく過程で何らかの産業界の抵抗があったはずですが?
A. なかったですね。
定期的に産業界の代表者と対談をしています。産業界の意見としては、供給電力の量の安定性が確保できること、
価格面もあるレベルを超えないようにというのが一番重要なポイントです。
産業の保護育成策も講じられています。。再生エネルギー法によって電力事業者が高額に買い取るように法律で義
務づけられていますが、それは消費者の料金に転嫁され、1kwhあたり3.5セントが含まれています。電力を沢山使用
する産業には特例があり、それを支払わなくていいようになっています。それは国際的競争力を維持するためです。
今では再生可能エネルギーの分野で活躍している大手企業がいくつもあり、その分野の製品を世界中に輸出して、
それによる売上げも伸びています。それに伴う雇用創出が全国で約37万人にも及んでいます。日本の経団連に相当
する業界の代表者達にも認識の変化がすでに始まっている気がします。
特に当州では、再生可能エネルギー技術業界
に様々な雇用が生まれてきています。
ドイツでもっとも重要な研究機関も当州に拠点を
置いています。
ドイツ太陽光・水力発電研究所がここシュッツト
ガルトにありますし、フラウンホーファー研究所も
この分野の研究者1200人をフライブルクに抱え
ています。
このようなケースは沢山あり、ドイツの再生可能
エネルギー研究の最重要拠点は当州です。
ドイツにおける再生可能エネルギー関連産業の雇用創出数トレンド
ecolosia
8
バーデン・ヴュルテンベルク州 ネッカー・オーデンヴァルト郡
ネッカー=オーデンヴァルト郡(Necker-Oodewald-Chrais)は、ドイツ連邦共和国バーデン・ヴュルテンベルク州35郡の1つ。
ライン=ネッカー広域連合、カールスルーエ行政管区のライン=ネッカー地域連合に属す。郡庁所在地はモスバッハ。主要事業
者は、ネッカーツィンメルンのドイツ連邦軍、ヨハネス・アンシュタルテンおよびハネウェル社。多くの学校も、郡全体の重要な職場
群となっている。モスバッハは、ネッカーズルムのアウディへの郊外通勤者が住む住宅地。
●総発電量の35%が再生可能エネルギー
郡人口 147,006人/モスバッハ市人口 24,490人
郡内に3つの都市事業公社
小型太陽光発電装置 5000(住宅10軒に1軒)
風力発電所
22カ所
水力発電所
大型2カ所(小型の水力発電所もある)
電力供給のための送電線も所有
ドイツ連邦共和国
同盟90/緑の党 郡支部長、
社団法人S.U.N. 会長
クリスティーネ・デンツ氏
バーデン・
ヴュルテンベルク州
ネッカー・オーデンヴァルト郡
●モスバッハ市
ecolosia
“脱原発とエネルギーシフトにはお金が掛かりすぎる
という人がいますが、まちがいです。
再生可能エネルギー法によって、ドイツ全土では
36.7万人の雇用が生まれました。
再生可能エネルギー発電の付加価値とは、お金が
域外に逃げるのではなく、地元に落ちることです。
発電する人がそれによって収入を得、銀行は新しい
取引先ができ、エンジニア達が地元に仕事ができ、
これまで石油やガスの購入に使い流出していたお金
が、地域のなかで循環することになります。”
9
バーデン・ヴュルテンベルク州テュービンゲン市
大学都市チュービンゲンは非常に学歴が髙いコミュニティ。ギムナジウム(大学進学のための学校)進学率は、ドイツ全国平均
は30%未満だが、チュービンゲンは70%。それが市民参加の高さの重要な要素のひとつとなっている。
ドイツ連邦共和国
100%市が保有するチュービンゲン都市事業公社だけでも再生可能
エネルギーへの投資額は数億ユーロ。風力、水力、太陽光発電等
に投資。バルマー市長以前のこの分野への大規模投資は遥か昔の
1915年に行った水力発電所が最後。
チュービンゲンは全国のどの都市よりも自動車交通が少ない。
自転車インフラへの投資は、バルマー市長就任前の約10倍。
また市が行うエネルギー利用への投資も3倍で、公共の建物や市営
住宅2000軒も対象。
テュービンゲン市長
同盟90/緑の党
ボリス・パルマー氏
テュービンゲン市
「対策は1つにこだわらず、無数にあるものの組み合わせ」
基本情報
面積
108.12 km2
人口
88,358人(2010年)
うち学生数 25,000人
人口密度
817人 /km2
ecolosia
<市民参加の一例>
“4年前には、都市事業公社のエコ電力契約者は約800人でしたが、今では9000人になって
います。温暖化防止対策に積極的に参加しようとしたひとが8000人ということです。約100年
前の水力発電所建設以来、チュービンゲン市は何もしてこなかったのですが、新たに水力
発電所を作ろうと決心しました。そのトリガーとして「エコ電力の契約件数が一定のレベルに
達したならば発電所を作ります」という条件を市民に提示しました。その条件はクリアされ、
新しい水力発電所は実際に建設され、現在稼働しています。その条件を満たすために参加
した人びとは、「自分が参加したから水力発電所が出来たんだ」と他の人に自慢話ができる
ので、広がったのです。”
10
モスバッハ都市事業公社 概要
・重点目標: 再生可能エネルギーの発電利用を拡大させていくこと
・モスバッハ市が設立し、所有。郡内3事業公社のなかで、最大の電力会社
・従業員
40名
・売上高
6000万ユーロ
・電力事業 モスバッハと隣接する2つの自治体へ電力供給。
契約者4万人、年間1億3000万Kwhを販売
太陽光発電施設 8カ所
小型水力発電
1カ所
風力については、北ドイツにおけるオフショア事業の株式を保有し、2MWhを契約
購入。モスバッハ近郊に風力発電所計画中。
バイオガスプラント (農家エゲンベルガー氏と共同経営)
コジェネモジュール1カ所(700世帯) 。郡立病院の冷暖房用にさらに1施設建設予定
・水道、ガス、熱、街灯事業 モスバッハと5つの自治体/ 2つの地域
熱供給網/プール2カ所/立体駐車場4カ所
モスバッハ都市事業公社
社長
ユルゲン・ヤクシ氏
電力ラベル
SWM社
再生可能エネルギー源
原子力
化石燃料
CO2排出量
放射性廃棄物
ecolosia
100パーセント
0パーセント
0パーセント
0グラム/キロワット時
0グラム/キロワット時
ドイツ
(出典:VDEW)
11パーセント
29パーセント
60パーセント
514グラム/キロワット時
0.0008グラム/キロワット時
http://www.swm-online.de/index.php?id=38
11
モスバッハ事業公社のバイオガス・コジェネレーション(熱電併給)
モスバッハ・ロアバッハ空港
バイオガスプラント
(エゲンベルガー家)
コジェネプラント
700世帯に供給
ヴァルトシュタット地区
オブリヒハイム原発
(廃炉)
モスバッハ市内
ecolosia
12
バイオガスプラント見学(1)
左:モスバッハ・ロアバッハ空港の程近く 中:まわりは広大な農地
(バイオガス製造、出荷工程)
右: 経営者の農家エゲンベルガー氏
1.畑で牧草、トウモロコシを栽培、収穫。
牧草は4月末、6月、9月の年3回収穫、6月以降トウモロコシを年1回収穫。
(食糧になるトウモロコシを避けるため、バイオガス専用のハンガリー産の草丈
2.5mになる特別な草を栽培開始)
2.3カ所の保管所をローテーションしながら年間を通じて貯蔵。貯蔵量約9000㎥。
年間消費量6000㎥。差分は天候不良による収穫減のための予備。
3.貯蔵による発酵期間 6週間
4.赤いタンクにトウモロコシ+牧草混合物を毎日1回18tを投入。
別途貯蔵してある糞尿9㎥(8時間置きに3㎥)を加え、地下第一発酵タンクへ
750kg/h移送し攪拌。第一発酵タンクに加えた同量分が、自動的に第二発酵
タンクへ移送。第二タンクからも同量の残渣が地上の保管タンクへと順次移送。
地下タンクの容量は1600㎥。50度まで加熱し発酵を促進。
上段: 牧草保管所
中段: 牧草、トウモロコシの混合原料
下段: 混合投入用タンク
ecolosia
13
バイオガスプラント見学(2)
コンプレッサーステーション
(バイオガス製造、出荷工程)
ガス精製工程を説明する都市事業公社職員
プラント設備図
5.地下第一、第二発酵タンクでメタンガス発生。パイプライン経由でコンプレッサーステーションへ移送
6.ステーション内に150㎥の貯蔵タンク。
配管を経由し、品質処理(冷却、活性炭による除湿、不純物除去フィルター)。生成メタンの組成量は50%
7.コンプレッサで最大10倍圧縮し、パイプラインで2.3km先のヴァルトシュタット
の都市事業公社のコジェネ・モジュールへバイオガスを送る。
ガスは都市事業公社に全量買い上げられる。
8.ガス発生後の残渣は保管後、肥料として畑に戻される。天候不順で引き取り
が滞る時のために、保管タンクは6ヶ月長期保管可能。新しい保管タンクを
バイオガス供給
2011年に増設。
2.3km
ヴァルトシュタットへの距離
ecolosia
品質処理工程の機器
輸送管
残渣保管タンク
14
コジェネレーションプラント見学
プラント建屋
(屋根に太陽光発電パネル設置)
コジェネモジュール
(12気筒)
(バイオガス熱電併給)
コジェネモジュール設備系統図
【プラント概要】
地域700世帯にエネルギー供給
12気筒エンジン
発電 300万 Kwh/年 →400万へ増産
バイオガス供給
2.3km
発熱 330万 Kwh/年
バイオガスがなくなった場合、
バックアップとして天然ガスを利用。
さらに2台のタービンで発電・発熱可能。
発電する際に発生した熱を、熱交換機で取り込み、110℃の
地域熱供給網
熱水を地域熱供給網を通じて各家庭に供給する。
蓄熱タンク
(需要がない時に水に蓄熱)
ecolosia
15
チュービンゲン都市事業公社 概要
本社屋上に設置された太陽光発電パネル
チュービンゲン都市事業公社(swt)敷地全貌
単位
ecolosia
固定資産
千ユーロ
総資産
千ユーロ
資本金
千ユーロ
売上高
千ユーロ
従業員数
人
事業領域
•電力
•ガス
•水道
•プール・スパ
•公共交通
•駐車場
•通信
• エネルギーコンサルタント
16
チュービンゲン都市事業公社 電力部門
チュービンゲン総人口8万人に対して、swtだけでエコ電力の契約者1万人。古い非効率な暖房具買換え時にエコ電力
契約すると器具代大幅割引キャンペーンやエネルギーコンサルティング、環境意識啓蒙で顧客増加。
地区の電力需要の30%を自給(swtが発電)。今後5年間で風力を中心に500万ユーロを投資する計画。
2011年
速報値
発電能力
発電
百万キロワット時
コジェネレーション
水力発電
風力発電
太陽光発電
貯水池タービン
95.5
10.0
0.15
0.45
電力ラベル(2010)
原子力発電
送電線網
チュービンゲン
接続点数
ドイツ連邦
化石燃料
再生可能
エネルギー
配電量
一般住宅
特別契約顧客
販売代理店
ecolosia
17
地域熱供給網の整備状況とコジェネレーション プラント
住宅への引き込み
新規配管工事の様子
廃熱を熱交換器で取り込み、圧力をかけて110℃
の熱水にする。住宅側に減圧・減温装置がある。
チュービンゲンにおける地域熱供給網の整備は1914年に始まる古い
歴史。この供給網にはじめてコジェネレーションによる熱配給が開始
されたのは1984年のこと。現在上図の6つのエリアに熱供給網があり、
そのうち5エリアに6基のコジェネモジュールが接続されている。
“地域熱供給網というインフラが
あったから、大規模なコジェネ
プラントの建設が可能だった。”
swt社の6基の
コジェネモジュール諸元表
ecolosia
チュービンゲン都市事業
公社 発電部長
ペーター・カイザー氏
18
コジェネレーションプラント見学
チュービンゲン都市事業公社 敷地内
1F 発電タービン
ecolosia
2F 熱交換器
蓄熱タンク
19
コジェネレーションの優位性
石炭火力とのエネルギー有効率比較
コジェネレーションの投入エネルギーを100とした場合
エネルギー有効率
エネルギー投入量
55%
157%
87%
100%
石炭発電・発熱
コジェネレーション
36%
100%
発電
100%
64%
57%
発熱
51%
暖房
6%
エネルギー損失
ecolosia
電気
70%
13%
20
欧州諸国の総発電量におけるコジェネ比
2006年 欧州統計局
チュービンゲン都市事業公社
ecolosia
ドイツ
オランダ
デンマーク
フィンランド
ラトビア
ドイツ
21
環境負荷軽減に対する貢献
コジェネ利用によるCO2 削減 約12%
2007年総発電量を全量、域外電力で賄った
と仮定した場合の二酸化炭素排出量と比較
試算。
環境貢献の啓蒙教材例
気候変動と原発事故リスクをビジュアルに訴求
し、再生可能エネルギーへのエネルギーシフト
への消費者理解を促進する
ecolosia
22
ソーラーコンプレックス社概要
solarcomplex社 CEO
ベーネ・ミュラー氏
“当社は市民企業です。個人のほかに地方の家族経営企業や中小規模の企業が株主として数多く参加しています。例えば
暖房設置業者、太陽光発電部品会社、木質ペレット製造会社、それに都市事業公社も5社加わっています。”
solarcomplex社概要
設立:2000年
本社:コンスタンツ郡ジンゲン
資本金:
約600万ユーロ
株主数:
700
従業員数: 約25名
売上高:
1300万€(2011)
利益:
40万€
電力生産:25百万kWh
発熱:25百万kWh
ecolosia
2030年までの地域エネルギー政策目標:
人口約6万人のボーデン湖地方の熱、電力の
自給 (現状約10%)
ビジネスモデル: 「バイオエネルギー村」
•太陽エネルギー/太陽光発電や太陽熱
•風力発電
•水力
•バイオガス/コジェネレーション
•木材ペレット、木材チップ
•地域熱供給網
ボーデン湖
23
バイオエネルギー村の開発
“バイオエネルギー村”の概念
基本的な発電・発熱をバイオガスで行い、お金もエネルギーも域内循環型になる村のこと
ソーラーコンプレックス社によるバイオエネルギー村一覧
自治体は熱も電力も自給できる。
例えば電力の場合は、ベースロード電力を
バイオガスで発電し、ピーク時の不足分を
太陽光発電で補うというはその一例。
また熱の場合も、バイオガスプラントで基本
的な熱量を確保して、冬場のピーク時に足
りない分を木質ペレットの燃焼によって補う
ことで自給実現が可能。
開始年
運用中
計画中
緑色は、バイオガス+コジェネレーションによる排熱利用
他自治体へ実証済み成功事例のコピー
ecolosia
バイオエネルギー村:
ドイツ初のものはニーダーザクセン州のユー
インゲン。バーデン・ビュルテンベルク州に
は12カ所あり、ドイツ一密度が高い州。
そのうちソーラーコンプレックス社によるもの
が7ヶ所で、全国No.1の開発実績。
マウエンハイムはバーデン・ビュルテンベル
ク州で初のバイオエネルギー村。
エネルギー自給エリアを広げていく
24
マウエンハイム・バイオエネルギー村
バーデン・ヴュルテンベルグ州
で最初のバイオエネルギー村
マウエンハイム の看板
総延長4km地域熱供給網
バイオガスプラント/太陽光発電
所在地: バーデン・ヴュルテンベルク州
イメディンゲン町マウエンハイム地区
全100世帯、人口430人
発熱プラント、熱供給網と建物内の接続ユニットなど必要な
インフラ投資はソーラーコンプレックス社。
総投資額170万ユーロ。4分の3は銀行融資、残りの4分の1
は市民株主による投資。
ecolosia
25
マウエンハイム・バイオエネルギー村
牧草などバイオガス資材投入
バイオガスプラント外観
宅内機器 HAST (減圧、減熱)
ecolosia
プラントからの配管
道路掘削配管工事
宅内への引き込み口
26
バイオエネルギー村のビジネスモデル
マウエンハイム
暖房(熱需給)でみたエネルギー経済収支
<以前>
石油30万リットル
燃料油の補給
熱用の石油代金
20万ユーロ
6000ユーロ
50万kWhの電力
熱用の電力代金
10万ユーロ
マウエンハイム
<現在>
木質チップ発熱所
熱供給 5万ユーロ
林業
22万ユーロ
バイオガス工場
コジェネプラント
農業
ecolosia
電力供給 400万kWh
熱供給
15万ユーロ
<現在>
域内の建物カバー率70%、熱自給率は90%。そのうちの4/3がバイオ
ガスプラント、残りが木材チップ発熱所による。バイオガスプラントの発
熱だけで、ちょうど石油30万リットル分。結果、以前の仕組みでは域外
に流出していたはずの30万ユーロの石油代金が域内循環。
さらに、バイオガスプラントのコジェネモジュールによる発電430kW、
太陽光発電250kWの発電能力により、発電量は地区の需要の9倍。
つまり8倍分が外販でき、電力は自給率100%をはるかに超過。
バイオガスプラントでの発電外販分だけで年400万kWh=60万ユーロ
の収益が流入。
木質チップ
2万ユーロ
建物
<2006年以前>
マウエンハイムの暖房用石油消費量は30万リットル/年。
約20万ユーロ(2012年現在の石油価格では30万ユーロ)に相当。
20年間累計では2000万ユーロ(年率10%の価格上昇想定)。
さらに不足分を電力50万kWh(10万ユーロ)購入で補い、域外へ合計
30万ユーロ/年のお金が流出していた。
電力販売代金
60万ユーロ
バイオガスプラントをさらに拡大する計画は今のところない。
太陽光発電パネルを設置する余地もまだまだあり、かつ風力発電の
適地もあるが1基もない。よって、開発によって20倍の発電供給も可能。
今後、大都市の需要にも対応できるように田舎で大量に発電していく
ことを視野に入れている。
27
ドイツにおけるバイオガス利用統計
原発2.5カ所を廃炉できる発電量
(ヶ所)
施設数(左軸)
発電(右軸)
バイオガスプラント 7,000カ所
風力発電機
25,000カ所
太陽光発電 1,000,000カ所
バーデン・ビュルテンベルク州のバイオガスプラント数は約700ヶ所、そのほとんどに
熱利用設備は付いていない。コンスタンツ郡は現在30カ所、8000万kWh発電。
郡の全発電量の5%、個人世帯のエネルギー需要の約4分の1。
ecolosia
28
ドイツにおけるエネルギー需給
人口500人の町をモデルにした熱(暖房)需要と
250kWバイオガスプラントによる熱供給の月別トレンド
バイオガスプラントからの熱供給量
年間を通じて平坦
熱需要
冬には供給が不足し、夏には余剰が発生。同社は不足分を木材チップ燃焼で補う
ecolosia
29
ミューラー氏による
バイオエネルギー村の哲学
プラントで発生する熱の放出による無駄はどうしても避けられませんが、
放熱先を地域熱供給網の管路に向けることで無駄を削減することができ
ます。熱供給の管路をできるかぎり地表が舗装されていないような場所を
選んで掘り、配管していきます。ただ中心街では、舗装部をいちいち掘り
返す必要が出てくるということが地域の政策上難しい部分です。
ただ、考えてみると2、3世代前に同様の問題を克服したから各家庭に
水道などが整備されているわけです。電力についても同じです。手間が
かかるかではなく、必要なのかどうかを検討すべきなのです。
我々は再生可能エネルギーである熱も必要だと確信しています。これから石油資源は利用できなくなる
ため、そうしてゆくしかないのです。ですから、手間をかけても地域熱供給網の配管をすることは必要なこ
とだと確信しています。
地域熱供給網には、バイオガスからだけでなく、太陽光による発熱、地熱、どの種類の再生可能エネル
ギー由来の熱でも利用できます。また燃料電池からのエネルギーを利用することも有効ですし、今後風力
発電ができて余剰分が発生した際にも、利用可能です。地域熱供給網は、単に熱を配給するだけのもの
です。電力網に原子力、太陽光、風力、水力、どの由来の電力も流せることと同じです。
供給網というインフラが存在するということが重要なことなのです。
ecolosia
30
バイオエネルギー村拡大の方法論
累積すると巨額になる費用
年間一人あたりのエネルギー費用 2,650ユーロ
コンスタンツ地区の人口 約265,000人
地区全体の年間エネルギーコスト: 約7億ユーロ
そのうち半分が流出すると、約3.5億ユーロ
“当社では、環境に配慮する理想面だけではなく、経済面のメリットを訴えて代替エネルギー
促進を図るのが正しい戦略だと確信しています。
少し残念な話ながら、理想の話だけではどの人にも通じるものではありませんので、経済面
の話で説得力を持たせる必要があるのです。結論として、コミュニティ全体でエネルギーの
利用方式が間違っていることにより域外に流出している購買力がどの位かを計算し、それを
説得力のある話に活用しなければなりません。“
ecolosia
31
ネッカー・オーデンヴァルト郡 エネルギー庁(ean)
設立:
所在地:
株主:
専業者:
目的:
2007年、非営利会社として商業登記 2010年
ネッカー・オーデンヴァルト郡ブーヘン市
ネッカー・オーデンヴァルト郡100%
所長1名のみ (協力者ネットワーク作り、支援)
市民のためのエネルギー効率、省エネ、再生可能
エネルギーと資金のための情報ハブ
主な活動:
1. エネルギー問題に関する基本的なアドバイス
2. 資金調達のアドバイス
3. 広報
4. 一般消費者および専門家のための研修
5. イベント
顧問委員会
BW州建築家組合NOK
モスバッハ都市事業公社
ブーヘン都市事業公社
ヴァルデュルン都市事業公社
ラインネッカー商工会議所
NOK商業組合
自然環境保護団体(BUND)
BW州エネルギーカンパニー
社団法人S.U.N.
EAN(エネルギー庁)
所長
ウーヴェ・リストル氏
助言対象
市民
地域コミュニティ
産業界、商業団体
諸団体、クラブ
相談会
イベント
セミナー
エネルギーコンサルタント
職人
建築家、エンジニア
専門家ネットワーク
BW建築家、技術者委員会
専門営業会社
住宅関係者
住宅オーナー、借家人連合
エネルギー供給者
農業、林業関係団体
環境保護団体
地方自治体
NOK経済開発機構(WiNO)
ブーヘンゴミ処理場(AWK)
*バーデン・ビュルテンベルク州にはエネルギー庁が全部で30ある。
ecolosia
32
社団法人 メトロポルゾラ・ラインネッカー
「再生可能エネルギー技術動向」(1)
設立: 2006年5月 所在地: バーデン・ビュルテンベルク州マンハイム独立市
自然エネ促進、エネ効率向上、反原発/石炭火力を同時進行させ、100%再生可能エネルギー
による自給を目指す会員数千人(法人含む)、個人250人の非営利ネットワーク組織。
ライン·ネッカー広域連合地域を中心とした内部ネットワークの活動、専門家交流、イベント、広報
活動、カウンセリング、資金調達支援などが主な活動。
ラインネッカー広域連合
バーデン・ヴュルテンベルク州、ラインラント=プファル
ツ州、ヘッセン州の3州にまたがる人口密集地域。
6つの郡からなり、人口537,625人(2010年12月末)。
この3州はドイツでもっとも保守的と言われている地域。
(社)メトロゾラ・ラインネッカー
マネージャー
ダニエル・バナッシュ氏
故ヘルマン・シェア連邦議会議員と協力し、
ロビー活動用に作成された地域の取組み
状況を総覧したカタログ。初版は7年前。
2000年の再生可能エネルギー法について
これにより再生可能エネルギー生産が促進され、
6~7年前、ドイツ中がバイオブームとなる。
その後、ドイツに必要な面積がないことが判明し、
沈静化。
再生可能エネルギーの生産促進の法律は出来た
が、次は使い方についての法制化が必要。
http://www.bund-bin.de/projekte/anzeige.phtml?id=3023
ecolosia
33
社団法人 メトロポルゾラ・ラインネッカー
「再生可能エネルギー技術動向」(2)
夏の太陽光発電余剰分
の冬へのシフトが課題
ドイツ国民のエネルギー消費
と再生可能エネルギー
石油換算3,000リットル/人・年=30,000kWh/人・年
エネルギー輸入コスト 1000ユーロ/人・年
1人のエネルギー需要をまかなうのに必要な面積
バイオマス 150,000㎡
太陽PV
600㎡
太陽光発電
風力
2㎡
国土面積から計算すると
バイオマスだけでは8500人。 この1年でPVが30~40%も
コストダウン。さらなるダウン
太陽光だと100%OK
ドイツの
電力需要
3分の1が個人の暖房。
だから蓄熱設備(供給
余剰時に利用)
が必要
ecolosia
があれば壁面にも貼れ、
十分な発電量確保
できる
・バッテリーへの蓄電
・太陽光発電→水素→メタンガス化
・揚水 (効率 1:5万=揚水:メタン)
メタン化は既存設備を使え、
発電・発熱が一式で
可能なメリットがあり、
大変有望。
蓄エネ(メタン)
・シュトゥットガルトに実験施設
風力発電
再生可能エネルギー電源
に占める割合
ザクセン州50%
BW州 1%
UB-再生可能エネルギー大手
Audi-6Mwh実験所
燃料電池はドイツではあまり
実用化されていない。
水素派もメタン派も
どちらもいる
34
社団法人 メトロポルゾラ・ラインネッカー
「再生可能エネルギー技術動向」(3)
ダニエル・バナッシュ氏のキー・メッセージ
“新しいエネルギーシステムはいづれにせよ必要。
他に選択肢はない。
再生可能エネルギー100%に向けての短期的
課題は蓄エネルギー対策。
中期的にはメタン化システムの構築。
再生可能エネルギー電力の欠点としてよく言われる
「供給変動」の吸収方法はさまざまな方法がある。
投資開始初期は困難に見えるものだ。
努力していけば劇的に改善する。携帯電話の
普及が良い例だ。”
ecolosia
35
バーデン=ヴュルテンベルク州 勢いづく再生可能エネルギー
まとめ
1.
エネルギーシフトは「エネルギー自治」として加速度的に普及中という「現実」

電力消費にしめる再生可能エネルギー発電の比率
ドイツ全土で20%、ネッカー・オーデンヴァルト郡は35%、チュービンゲン市は30%

2.
3.
4.
モスバッハ事業公社管内では、原発電源ゼロ。
理想主義だけに傾倒せず、経済合理性(儲かるか)を計算し実証・説得している「姿勢」

ソーラーコンプレックス社の「バイオエネルギー村」プロジェクト

域内のエネルギー・マネー収支の把握と、域内活性化(地域循環型経済)指向
あるもの、持っているものの活用と無駄を探し排除していく徹底した「考え方」

地域熱供給網と発電所の廃熱の組み合わせ

循環型バイオガス発電・発熱

余剰電力の蓄エネルギー技術開発(メタン化システムへの挑戦)
ライフライン全般を担当する都市事業公社、住民を啓蒙するエネルギーコンサルタントを市町村レベルで
効果的に運営している「実践的な工夫」

モスバッハ都市事業公社、チュービンゲン都市事業公社

ネッカー・オーデンヴァルト郡エネルギー庁、(社)メトロポルゾラ・ラインネッカー、(社)S.U.N.
5.
上記を強力に後押してきた「再生可能エネルギー法」の「政策的有効性」
6.
再生可能エネルギーによる加速度的エネルギーシフトが脱原発を「裏付け」ていること
ecolosia
36
5. 苦闘の歴史
原発廃炉と放射性廃棄物処分問題
ecolosia
37
基礎知識編
ドイツの原子力発電所 所在地
運転中 9基
停止
8基
廃炉 16基
ecolosia
38
基礎知識編
ドイツの原子力発電所 一覧
運転中 9基
廃炉、停止 24基
ecolosia
39
基礎知識編
ドイツの放射性廃棄物処分 基本政策
2008年末には、ドイツの低発熱放射性廃棄物総量9万4000㎥分が中間貯蔵施設、連邦政府集積所に保管されている。
放射性廃棄物処分はドイツにおいては連邦政府の責任と定め、例えば経費削減や利益追求などといった経済視点か
ら運営されてはならないとされている。安全性が最優先され、放射性廃棄物貯蔵場の選定や運営業務は放射線防護
庁に委託されている。
ドイツの廃棄物管理政策は国家責任という原則に基づいている。ドイツで生成された放射性廃棄物は他国へ輸出して
はならないし、また他国のいかなるそれも輸入してはならないとしている。廃棄物から生じるリスクに関し、安全な貯蔵と
監視が求められている。それゆえ、連邦放射線防護庁は放射性廃棄物の封じ込めシステム、生態圏からの隔離のため
の安全策について、多数の専門家の意見を共有することとしている。
ドイツにおける放射性廃棄物は、処分地の設計上、以下の2つの大分し、管理される。
• 低発熱性放射性廃棄物
(低・中レベル放射性廃棄物。防護服、洗浄用消耗品等)
• 高発熱性放射性廃棄物
(高・中レベル放射性廃棄物。使⽤済燃料の再処理から
生じるガラス固化体及び使⽤済燃料など)
また、最終処分方法は地層処分である。
使用済み燃料は、原子力発電所の各サイト内の貯蔵施設に
おいて中間貯蔵されているほか、ゴアレーベン、アーハウス、
ノルト(グライフスバルト)の集中中間貯蔵施設でも貯蔵。
また、フランスや英国に委託した再処理後に返還された
高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体は、ゴアレーベン
の集中中間貯蔵施設で貯蔵されている。
http://bit.ly/xSKlEj
ecolosia
40
基礎知識編
ドイツの原子力関連施設と連邦放射線防護庁の所在地
ザルツギッター
ベルリン
職員総数:756名
フライブルグ
ecolosia
ミュンヘン
41
オブリヒハイム原発の廃炉 ~市民活動家のインタビュー
“この原発は37年前に作られ非常に古い。安全上の問題がおきて、
深刻な事故が起こるのではないかと常に心配してます。
ドイツでまだ廃炉になっていない他の原発も、建設から20年以上も
経ってます。運転中の原発だけではなく、廃炉した原発にも事故
は起こりえるから、原発自体が危ないという認識です。
これから2022年の全廃炉まであと10年ですが、安全上、もっと前
倒しするべきだと思います。
活動同盟オブリヒハイム・放射性廃棄物
ゲルトルート・パタン氏(写真左)
しかも廃棄物の問題は未解決のままです。実際、最終処分地はま
だ一カ所も出来ていません。ドイツには廃炉になったものを含めて
原発は19カ所ありますが、10基がまだ稼働中。廃炉になったのは
2カ所で、ひとつは北ドイツで、もう一カ所がここオブリヒハイム。
原発を解体し、核燃料やゴミを徐々に処分していくことになりますが、内部が酷く放射能で汚染されている
ため、その作業も大変です。機器、壁、配管等全て、コンテナに入れて放射性廃棄物として処分。これら
のものは高レベルではなく、低・中レベルですが、最終処分はブラウンシュバイク地方のコンラート坑道地
層処分地に決まりました。処分施設の建設が完成し、実際に処分が始まるまで10年はかかります。一方、
高レベル放射性廃棄物の処分地はまだ決まってもいません。
処分地が決まり稼働が始まるまで、高レベルも低・中レベルも廃棄物は原発のある場所でそのまま保管し
続けます。オブリヒハイムの場合、保管は2つの建物ですが、全く耐震仕様になってません。航空機の墜落
にも全く対策されていない。そうした事態が起こった際には、地域が広く汚染されます。また解体の際に、
放射能の問題がないとされる一部の廃材(溶解した金属など)は再利用が可能とされてます。低レベルの
基準未満であれば、例えば普通に鉄くずとして扱われて流通しますが、微量とはいえ汚染につながる懸
念があります。従って、我々市民団体の活動には、今ある安全基準を高めようというものもあります。”
Q ドイツの脱原発政策は、最終処分場がない為、行き詰まるのではないかと言われてますが?
A 最終処分場がないからこそ、これ以上放射性廃棄物を作り出さないことです。処分問題は賛
成派も反対派もみんなの問題としてきちんと考えなければなりません。課題は、今ある放射性
廃棄物をできるだけ安全に保管すること。それは最低でも100万年の保管期間を想定し、その
候補地がどこにあるのかを検討していかなければなりません。
各国は放射性廃棄物を輸出せず、自国内に適切な最終処分地を見つけて保管すべきです。
ecolosia
オブリハイム原子力発電所
Kernkraftwerk Obrigheim (KWO)
所在地:バーデン・ビュルテンベルク州
ネッカー・オーデンヴァルト郡
オブリヒハイム
(モスバッハより西北西4.5km)
所有者:EnBW社(電力会社)
総出力354MW 加圧水型
1968年9月22日 初の臨界達成
1969年3月31日 商業運転開始
2005年5月11日 運転終了
現在廃炉解体中。
廃炉費用は電力会社全額自社負担で、
6億ユーロ。バーデン・ビュルテンベルク州
の5基全部で600億ユーロ。
オブリヒハイム原発
モスバッハ
2万4500人が暮らす郡庁所在地の
モスバッハに4.5kmしか離れていない
42
連邦放射線防護庁(BfS) Info Konrad
インフォ・コンラート (Bfsのコンラート広報センター)
所在地: ニーダーザクセン州ザルツギッター市
本視察のガイド
写真左: 連邦放射線防護庁インフォ・コンラート所長 アートゥア・ユンカート氏
右: DBE社(処分場建設・運営会社) 地質学者 ヨハネス・シュナイダー氏
連邦放射線防護庁の組織的位置づけ
連邦環境省
方針・規制
執行責任
インフォ・コンラートの外観
ブラウンシュバイク市
ザルツギッター市
インフォ・コンラート
コンラート
最終処分場
ecolosia
連邦放射線防護庁
(BfS)
現場担当外注先
43
ドイツの放射性廃棄物処分場(試掘地含む)
ゴアレーベン
モースレーベン
コンラート
アッセ
放射性廃棄物の中間貯蔵は
各原発、研究施設内にて
モースレーベン: 旧東独が建設した最終処分地。地下500mの岩塩ドーム
地層処分で、低・中レベル放射性廃棄物36,800㎥と密封線源ドラム缶6,600
個が保管されている。旧西ドイツ国境近くの立地であり、東西冷戦時代の政治
的な意図があったといわれる。2001年に閉鎖決定し、現在、計画についての
公聴会が終了、検討が進められている。
アッセ: 1967-1978まで使用された連邦政府管轄の岩塩地層試験処分地。
地下水流入により杜撰な管理実態と不適地であることが近年判明。連邦議会
の調査委員会が精査中。12万6,000個の低・中レベル放射性廃棄物ドラム缶
の安全回収法を検討中。P56に詳述参照。
コンラート: 2008年に法的に20年越しで決着し、原子力法の下で初の低・
中レベル放射性廃棄物最終処分場。旧鉄鉱鉱山で岩塩ではない。設備建設
中で、早ければ2020年にも第一貯蔵区操業開始。認可された最終的な収容
スペースは30.3万㎥、廃棄物コンテナ5万個を受け入れる計画。
ゴアレーベン: 旧西独時代1970年代後半に高レベル放射性廃棄物最終
処分地として選定された。旧東独国境に近く、モースレーベンの報復とも言わ
れる。深度850m岩塩層への石油や地下水浸潤の疑いも提起され、選定の政
治的・科学的妥当性をめぐり反対運動が激化し、2011年11月にレトゲン連邦
環境相が同地最終処分場計画の白紙化を発表。ドイツ全土を再探査対象と
し、同地も適地再検証のための試掘調査を継続中。
ecolosia
44
既設処分場の外観・保管状態
モースレーベン
ecolosia
アッセ
45
コンラート最終貯蔵場 建設計画
搬入から最終貯蔵まで
貯蔵用コンテナ(タイプ1)
長さ=1600mm
幅 =1700mm
高さ=1450mm
容積=3.9㎥
第二立坑
年間10,000㎥の入庫予定。週あたり
鉄道車輌20台、トラック10台の量
貯蔵トンネル
第一貯蔵区 126,000㎥ 2020年供用開始予定
第二貯蔵区 155,000㎥ 満杯になるのが2055年
コンラートの認可最大貯蔵容量303,000㎥
鉄道輸送80%
トラック輸送20%
ecolosia
貯蔵トンネル
長さ = 800m
幅 = 7m
高さ = 6m
46
コンラート最終貯蔵場 見学(1)
旧鉱山跡地 第一立坑
コンラートの位置
完成予想図
コンラートは現在建設中の低発熱放射性廃棄物(低・中レベル)
最終貯蔵場。まだ廃棄物の保管はされていない。
厚さ400mの粘土層が地下水流入を防ぎ、鉄鉱床の存在が放射性廃棄
物の封じ込めに有効という科学的知見が当地選定の根拠。
第一立坑(旧鉱山)
第二立坑(新設搬入口)
第二立坑
赤色が建設中の貯蔵予定地
他の色は、既存坑道
厚さ3~400mの粘土層
鉄鉱床
地層断面図(東西)
ecolosia
47
コンラート最終貯蔵場 見学(2)
第一立坑(旧鉱山)
第二立坑(新設搬入口)
貯蔵区画の地層が地表に露出する
のは通常100万年後とみられている。
最悪のケースで30万年後。その場合
でも低レベル放射性廃棄物の線量
は自然放射線レベルまで落ちるので
安全と考えられている。
1000m降下
ecolosia
48
コンラート最終貯蔵場 見学(3)
ecolosia
49
コンラート最終貯蔵場 見学(4)
構内に見つけた小さな祠
無事故祈願
毎分14000㎥の空気を地表から取り込み酸素を供給する
ダクトと坑道をブロック化し気流を制御する開閉ゲート。
気温26~30℃。
ecolosia
右手に逃げれば非常口まで2.6km
50
ゴアレーベン試掘場 見学(1)
所在地:ニーダーザクセン州リューヒョウ・ダンネンベルク郡ゴアレーベン
ゴアレーベンには現在2つのサイトがある。連邦放射線防護庁管轄の試掘場とBLG社が運営
する使用済燃料と放射性廃棄物の中間貯蔵施設である。今回の見学は前者のみである。
坑道規模は鉱山として稼働していたコンラートと違い、研究目的であるため小規模。
1973年以来の総コストは16億ユーロ。本年度予算は7300万ユーロ(調査のみで建設工事なし)
当初計画は100万㎥貯蔵規模で、総工費は試掘調査費、建設費併せて34億ユーロであった。
仮に当地に再決定すれば、ドイツの全ての高発熱性放射性廃棄物3万㎥を貯蔵することになる。
連邦放射線防護庁
マルクス・ニッチュ氏
DBE社 地質学者・広報
クリスティアン・イスリンガー氏
ecolosia
51
ゴアレーベン試掘場 見学(2)
ecolosia
52
ゴアレーベン試掘場 見学(3)
DBE社 地質学者 クリスティアン・イスリンガー氏による試掘調査解説
上の岩塩層と下の層の相対流動速度
(ずれ)を計測する測定器具。他にも地
質工学上の各種測定を組み合わせて、
全体の地層構造、空洞部のマップを詳
細に作り上げる。
石油の染みだしが見られる部分。
処分地として不適ではないかということ
で、35ヶ所に6mの穴を開け、統計学上
の分布を調査。36mの穴も数カ所ある。
他に10ヶ所で超音波、レーザー測定法
などで2年間の常時監視を行ってきた。
上は、当試掘場の地層図。地下250m~3400m、長さ14km、幅4km。容積40k㎥の巨大岩塩ドーム。当地は2億5000万年前には海だった場所。
岩塩が石油のバブルのように海に浮き上がり、長い時間の経過とともに、次第に巨大なキノコ型の形状に成長したもの。
中心部ほど古い岩塩層で純度が高く、均質である。深度約1000m部分は約6000万年前から変化していないと考えられている。
意外にも岩塩は流体。古いほど流動性が高く、年間数センチも流動するが、新しい層は年間で最大1、2ミリ。古い岩塩層に地層処分すること
で、放射性廃棄物が流動する岩塩の収縮で閉じ込められ、自然密封されていくという効果が期待されている。
流動方向は上。100万年につき2~30m上昇する、岩塩ドームの上方からその分だけ水に浸食され溶解するが、極めて時間がかかる緩慢な
速度で問題ないと考えられている。
岩塩ドームのウィークポイントは、水溶性であること、熱伝導性が髙いこと。よって地下水の流入や、高発熱放射性廃棄物保管との相性、地層
中の石油の含有については、慎重に調査・検討されなければならない。
上図の、新しい方の岩塩層に縦方向に走っている濃い緑色の層が、硫酸カルシウムの地層。これは水の通り道になりえるということで、詳細
な調査を行っている。同地層は途中で折れ曲がり、分断されていて導通していないため問題ないであろうというのが現時点での見解。
現時点では、ゴアレーベンが高発熱放射性廃棄物の最終処分の適地かどうかは分からない。
ecolosia
53
ゴアレーベンの反対運動(1)
連邦放射線防護庁 マルクス・ニッチュ氏による解説
http://www.bfs.de/media/Endlagervergeich/_Endlager.html
連邦放射線防護庁
マルクス・ニッチュ氏
“当地は社会・政治界で非常に激しく議論中のところです。議論はすでに30年間続いています。
ここは高レベル放射性廃棄物の最終処分地として、70年代に行われた設定手続きの結果、選ばれま
した。しかし、選定手続きに不透明な点が多く、ジルビア議員が委員会で調査しているところです。
1970年代に、原発を持つ電力会社に放射性廃棄物の適正処理証明の提示義務が課せられるように
なりました。処分がうまくできないと原発を止めさせられるために、原発反対運動と処分地反対運動と
は自然につながりました。デモや反対運動によって適地としての決定を覆せれば、原発の新設許可も
下りないことになっていたので、激しい反対運動になりました。
選定手続きには大きな問題点が2つありました。ひとつめは、いくつかの候補地から選んだのではなく、
ゴアレーベンだけを検討したということです。他と比較してどうかという説明ができなかったのです。まだ科学的な検討の
ない段階で、すでにここが適地だという偏見を持っていたという2つ目の問題につながります。もともとは燃料の生産や再
処理なども一緒に行う大規模な計画だったのですが、実際に残ったのは中間貯蔵場と試掘場だけです。
ここでは反原発派か推進派かは関係なく、今ある放射性廃棄物をどうするのかが問題です。一般市民が閉め出されて
いたので、内部がどういうものか全く知られず、疑われたのです。政治、社会上の論争は30年以上続いてきましたが、
悲しいことですが、福島第一原発事故が行き詰まりになっていた戦いを解決することにつながりました。ドイツ社会の共
通認識として、脱原発をしながら、放射性廃棄物の問題にも初めて取り組めるようになりました。”
ecolosia
54
ゴアレーベンの反対運動(2)
リューヒョウ・ダンネンブルク郡議会議員
同盟90/緑の党 郡支部長 マルティーナ・ラマース氏による解説
“ゴアレーベンはあくまでも冷戦時代の政策的な基準で政府が選んだところです。その適地というのが、
冷戦時代に、もし何か事故とかがあったとき、放射能が、なるべく自国の西にいくのではなく、東の方に
流れ、敵の方に害を与えるようにと、ここは東に囲まれた土地だから、東の方の被害が大きくなるという
戦略でした。敵に被害を与えるのは仕方なく、自分の被害を減らすそうということです。
リューヒョウ・ダン
ネンブルク郡
議会議員
同盟90/緑の党
郡支部長
マルティーナ・
ラマース氏
ゴアレーベンは候補地にはなりえません。科学上の結果としては、適地の可能性は否定されています。
ガスの気泡のうえで放射性廃棄物を保管することになるため、ありえないことです。
やっぱり原発が多く、原子力を一番利用している地方がその責任をとって、
最終処分地もその地方を中心につくるべきだというのが、こちらの意見です。
ゴアレーベンを、外から決めつけて、ここが処分地になるんだよという、これ
までのやり方はいけないと思います。
ゴアレーベンの人口は2500人くらいです。ゴアレーベンとガートの2つの自治体は、これらの
施設建設に賛成しています。請負契約を結び、沢山資金を受けているから賛成ということ
になって、この2つの自治体は大変お金持ちになってきました。我々はこれらの資金を全面
的に否定しています。
ゴアレーベンで働いている人もここに住んでいますから。キリスト教民主同盟を選んだ人は
賛成に回っていて、合計するとだいたい賛成派は3割、反対派は7割です。
旧東西ドイツ
国境線
ゴアレーベン
こちらの反対運動で採用している、非暴力不服従という形の反対運動は、道路に座りこむ
とか法律に違反した行動ですが、自分で責任をとるというやり方です。11月に通行できない
ように道路で寝るとか、座り込むとかも娘とやっていました。皆さんからの投票支持もいただいて、そういうことを期待され
ているのです。それに応えたい気持ちもあります。”
緑の党リューヒョウ・ダンネンベルク郡支部長、郡議会、市議会、町議会議員。市では得票率トップ。郡立脱原発委員会委員長
で郡民団体会員歴も30年、さらに教師であり、4人の子持ちのマルチで活躍する45歳の運動家。きっかけは10歳の修学旅行で、
ここが廃棄物再処理場となることを教師から聞かされて、自らの意志で大人に混じって反対運動に加わり始めたことだという。
ecolosia
55
過去の闇の解明
連邦議会 ゴアレーベン調査委員会
【アッセにおける問題】
連邦議会議員
同盟90/緑の党
バーデン・ビュルテン
ベルク州支部長兼務
ジルビア・
コッテング=
ウール氏
“ドイツ原子力法では、原発を運転する会社の経営者に、放射性廃棄物をどう処分しているのか証明しなけれ
ばならない義務を課しています。それは70年代末に、市民の圧力を受けて法律化されたものです。連邦政府
は、アッセという昔の鉱山を買い取って、ここを放射性廃棄物処分研究の為の試掘所にするという公式な方針
を打ち出しました。そしてその研究用に、電力会社から放射性廃棄物を引き取りましょうという話になりました。
放射性廃棄物は、基本的に低レベルと高レベルの2種類ですね。高レベルのものは非常に危険度が高いので
すが、量はわりと少ないですね。普通の原発では核燃料棒だけです。それ以外はすべて低レベルになります。
総量では95%が低レベルになりますが、その廃棄物が大量に発生して処理に困りました。1978年ごろ、アッセに
12万6000個の低レベル廃棄物のドラム缶が搬入されました。それらが処分できなければ電力会社が困るため、
政界が彼らを助けて、それを貰いましょうということになりました。政府の言い分は、「12万6000個のドラム缶は、
研究に必要なものだから問題ない」というもので、研究省の管轄にしました。そうすることによって、アッセを法律
上は、原子力法も放射線防護法も適用されない、ただの鉱山法の適用のみという場所にしてしまいました。
鉱山法はとても古い法律で、戦時中に作られたものです。市民の参画をうたったり、責任を問ったり、情報公開
を求める権利などの規定はそのなかには全く含まれていないものです。一部の研究者の言い分として、アッセ
というところは何十万年でも安全な場所だと言い張っていましたが、検証手続きは一切ありませんでした。
そうしているうちに、20年間が経過して、水が内部に流入してしまいました。我々は2007年にこの問題を議会に持ち込みました。
環境省管轄にし、原子力法の適用地とすべきだと主張したのですが、政府はそれを拒否し、すべて正常ですと言い張っていま
した。その一年後、アッセ処分地で汚染された放射性のアルカリ物質が発見されました。政府側は「なぜそんなものがあるのか
不思議だ。外来のものなのか分からない」などと回答し、誤魔化していたのです。でも結局その一件で連邦環境省の管轄下にす
ることが早く決まり、原子力法をアッセに適用することになりました。現在では、連邦放射線防護庁がアッセの管理責任を引き受
けています。防護庁の長官は緑の党の党員です。政府は常にその人事を翻そうと狙っていますが、まだうまくいっていません。
長官は、アッセの坑道に水が流れ込んで放射性廃棄物に接触し、放射性のアルカリ物質が生成されることに対して、どんな対策
ができるかという検討を研究者に依頼しました。それが地下水の中に流れ込み、近隣の飲み水にも混入してしまうからです。
専門家に評価書を作成してもらった結果、放射性廃棄物のごみをそこから撤去すべきということになりました。それを巡って、今、
激しく議論が戦わされている最中です。岩塩ドームの空洞部には外圧がかっており、廃棄物を持ち出すのに、ここが崩壊する時
間的猶予が十分あるのか検討しています。間に合わないかもしれないという意見もありますが、緑の党として、そして長官として
は、放射性廃棄物はやはりアッセから搬出すべきだという見解です。”
ecolosia
56
連邦放射線防護庁による
放射性廃棄物処分量の基礎算定
原子力関連業界
4.5%
2080年までの放射性廃棄物の総容量の予測
(2022年全原発完全停止が計算の前提)
合計
公共部門
連邦政府管轄
研究機関等
37%
エネルギー産業界
収集
エネルギー産業界
産業界
2080年予測
放射性廃棄物の発生元
合計
公共部門
原子力発電所
55%
収集 3.5%
医療用<0.5%
産業界
収集
最終処分地
コンラート
単位: ㎥
低発熱放射性廃棄物
(低・中レベル)
高発熱放射性廃棄物
(高・中レベル)
最終処分地
?
放射線量(危険度)
http://www.bfs.de/de/bfs/wir/leitbild.html
ecolosia
57
苦闘する原発廃炉と放射性廃棄物処分問題
まとめ
1.
メルケル政権は2011年6月、2022年までにドイツの全原発の順次停止、廃炉を決定(脱原発への回帰)
2.
東西冷戦時代の核戦争への恐怖、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島第一原発事故という三度の事故が与えた
ドイツ市民への深い心理的影響が根底に存在し、同盟90/緑の党の政治活動の歴史に根ざしている
3.
廃炉後の解体、中間貯蔵時の安全の確保が当面の課題。市民側は、廃棄物量とリスクを減らすため、2022年より
前倒しの廃炉を要求
4.
廃炉費用は、オブリヒハイム原発1基の例では6億ユーロ。バーデン・ビュルテンベルク州の5基全部で600億ユーロ。
政府支援、税金投入はないが、事業者が料金中に転嫁してきた廃炉コストを消費者が実質負担。
5.
ドイツは地層処分を選択。責任は連邦政府と定め、自国で出した放射性廃棄物は自国で処分するという基本方針
6.
放射性廃棄物は、処分地の地層への影響を考慮し、低発熱性と高発熱性に分類
7.
廃炉後2080年までに発生する累積廃棄物容量は、低発熱性28万㎥、高発熱2.9万㎥と計算。
容積比は低発熱性:高発熱性=9:1 だが、放射線量は低発熱性:高発熱性=0.01 : 99.9
8.
低発熱性は、コンラート 1ヶ所の集中地層処分で最終決定
9.
高発熱性のほうは未定。過去決定していたゴアレーベンを白紙化し、試掘調査継続とともに、他の候補地の選定、
調査に着手する方針
10. 最終処分地の稼働開始までは、放射性廃棄物は、各原発敷地内または2ヶ所の集中中間貯蔵施設で保管される
11. 反対運動が激化したのは、原発、放射性物質そのものの危険性に加え、過去の政府の不透明で隠された決定プロ
セスも一因。またドイツでも過去、アッセでの処分などを巡り、原子力産業界と政府の不純な関係があった。
12. こうした政府・行政の過去への反省の結果、対話、熟議型の問題解決を図ろうという機運となっている。情報公開
が進み、連邦放射線防護庁の職員にも率直さが感じられる。福島原発事故が契機になり、脱原発を再確認できた
ドイツでは、市民側も推進派、反対派を問わず、最終処分地問題は社会共通の問題という認識が確立されてきた
ecolosia
58
6. 困難な課題に立ち向かう
ドイツ流「民主主義」
ecolosia
59
基礎知識編
連邦共和国制(連邦と州の関係)
ドイツ連邦共和国は連邦制国家であり、連邦も、16の連邦州も、
それぞれ独立した権限を有する。外交政策、ヨーロッパ政策、防衛、
司法、労働、社会福祉、 租税、保健の各分野は連邦が管轄し、国
内の治安、学校、大学、行政、および市町村の各分野は州の管轄
である。
連邦の管轄は主として立法に限定され、連邦各州は連邦参議院
を通じて代表を送り、連邦の立法過程に参加する。これに対して、
州の行政は、州の法律のみならず、連邦の法律をも実行する任務
を有する。
連邦と州でこのように任務を分担する根拠は、ドイツの歴史にあ
る。すなわち、国民国家としてのドイツは、1871年に多数の独立国
が連合して成立したものであり、したがってこれ以上大きな中央集
権的な国家行政は必要がないのである。
16州のうち3州は都市州として特別な位置を占め、州の領域はそ
れぞれ大都市の ベルリン、ブレーメン、ハンブルクに限定されてい
る。その他のいわゆる広域州は、多数の市町村からなっている。
事例:連邦放射線防護庁インフォ・コンラート所長 アートゥア・ユンカート氏の解説
環境省は首都ベルリンにありますが、それより下の庁は地方に広がっています。我々
防護庁はザルツギッター、連邦環境庁はマルデブルグ、連邦自然保護庁はボンにあり、
ばらばらに分散しています。人口が10万人を超えた都市には、連邦の庁や同じレベル
の官公庁が必ずといっていいほどあります。それだけ分散しています。フランスも日本
と似ています。この方式はヨーロッパということではなく、ドイツだからです。
http://www.tatsachen-ueber-deutschland.de/jp/political-system.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84
ecolosia
60
基礎知識編
ドイツの自治 行政構造と補完性原理
補完性原理(ほかんせいげんり)とは、決定や自治などをできるかぎり小さい単位でおこない、できないことのみをより大きな単位
の団体で補完していくという概念。補完性原則、あるいは、英語からサブシディアリティともいう。
補完性の原則は、ヨーロッパ共同体と加盟各国との関係の原理として採用
されたことで注目を集めている。( EU条約第5条第1項第1文および第2項)
これは、政治や文化における民主主義には近代国家は大きすぎ、
グローバル経済においては近代国家は小さすぎるために起こった。
しかし、EUが補完性原理を採用したより直接な契機は、デンマーク
がマーストリヒト条約批准を国民投票でこれを否決したことである
と言われている。ECが小国の権利を奪い取ろうと考えていない
ことをデンマーク国民に納得してもらうために行ったキャンペーン
行政管区
が補完性原理だったのである。
連邦
連邦州
郡
補完性原理というのは、基本的には個人や小規模グループ
のできないことだけを政府がカバーするという考え方である。
この考えの基本には「個人の尊厳」があり、国家や政府
が個人に奉仕するという考え方がある。補完性原理は
個人および個人からなる小グループ(家族、教会、ボラン
ティアグループ)のイニシアティブを重視する。
都市州
市町村連合
独立市
市町村
http://ja.wikipedia.org/wiki/補完性原理
ecolosia
61
ドイツ緑の党 政治家へのインタビュー Ⅰ
連邦議会議員 ジルビア・コッテング=ウール氏 (1)
同盟90/緑の党 バーデン・ビュルテンベルク州支部長
-東日本大震災、福島第一原発事故後の5月以来、三度来日、被災地を訪問されてのご感想は。
かなり幅広い印象がありました。最初は、ショック状態でした。一般市民の多くが何事もなく、福島の
事故に対応して、普通に生活し続けているというのにびっくりしました。責任者とのお話でも、対応し
ないといった人もいましたし、我々じゃなく、上の責任だと言い張った人も多かったですね。
連邦議会議員
同盟90/緑の党
バーデン・ビュルテン
ベルク州支部長
ジルビア・
コッテング=
ウール氏
それはドイツでは違うなと思ったのです。それは皆さん今回お分りになったと思います。政治・行政の
やり方にしてもドイツでは原理があって、まず、権力は下のほうにあるべきで、自分ではうまく処理で
きない分だけの権力を上に移譲して、またそのうえのレベルが出来上がるという考え方です。できる
だけ権力を下のレベルでまわすべきだという考えで、ある程度実現できています。
日本ではそういうものがなくて、それを変えるなら市民社会から始めるしかないと思いました。
そのなかで、緑の運動、反原発運動で多くの日本人が頑張ってくださっているのを見て感心しました。
日本では、ドイツでよりはるかに動き出すのに勇気が必要だからです。日本では政府と違うことが良
いと主張するのが大変だということがわかりましたし、ドイツではデモをやろうというのは簡単なことで
すが、日本ではまだそれに否定的な意見があるというのもわかりました。
日本は、非常に社会の躾がよいというのは、良い意味で評価しています。ドイツでは反面で暴力的と
か物的破壊が激しいというのもあります。それは日本には全くないようでした。ドイツの反面も忘れな
いようにしてください。社会の大多数と違う決断をして、それに沿って行動するハードルが日本では
かなり高い印象がありました。(中略)
市民社会について、前回の来日からいろいろ考え、いろいろ記事を読んで、日本ではこれから広
がっていくのではないかと感じがしています。
ecolosia
62
ドイツ緑の党 政治家へのインタビュー Ⅰ
連邦議会議員 ジルビア・コッテング=ウール氏 (2)
同盟90/緑の党 バーデン・ビュルテンベルク州支部長
-メルケル首相が、福島の事故のあとにすぐ、原発問題倫理委員会を招集して、原発の倫理的な
問題を問わなければならないという決断をしたのは、メルケル首相あるいはその政権自身から出て
くるものなのか、それとも緑の党がプレッシャーを与えた結果なのでしょうか。
連邦議会議員
同盟90/緑の党
バーデン・ビュルテン
ベルク州支部長
ジルビア・
コッテング=
ウール氏
ecolosia
それはメルケルさんです。私と同じ党ではないですが、賢い人だと思います。彼女は物理学者です。
反射的な反応が2つありました。
ひとつはまず、ショック。日本のような最高レベルで技術を制御できる国でこのようなことがどうやって
起こりうるのかいうショックでした。日本のような国で起こりうる問題であれば、ドイツでは起こり得ない
ともう主張できなくなった。原子力の安全に対する信頼度が本当に急に変わったと思います。しかし、
メルケルさん以外のキリスト教民主同盟の党員ではそうでもなかった人が多くいました。メルケルさん
が特別に賢かったのです。他の党員は、福島という所は遠い所で、チェルノブイリより遠く、自分とは
関係ないと主張していました。
2つめの反応としては、キリスト教民主同盟がこれからの選挙で落ちないためには、これから根本的
にエネルギー政策を変えなければならないことを理解したことです。メルケル政権は、福島原発事故
の半年前に、我々野党が激しく反対していたのに、原子炉の稼働期間を延長したばかりで、事故は
ドイツの国全体がまだ落ち着いていない頃でした。バーデン・ヴュルテンブルク州の選挙でキリスト教
民主同盟の支持が失われることは覚悟していました。それ以外の選挙区では落ちないよう頑張ろう
としたと思います。
あとひとつ。これからエネルギー政策を変えますというメルケルさんの決議は、キリスト教民主同盟に
とっては非常に革命的なものでした。それには、判断に対しての根拠づけが必要でした。倫理委員
会に委任すれば根拠がだせることがわかったので、そういう委員会を作ったわけです。倫理上、問題
があることが明らかで、原発は倫理上使えないという回答になりますから、そのために作られた委員
会だと思います。それは普通にやればよかったのです。エネルギー政策を根本的に変えるということ
は、すでに決まっていることでした。この委員会はむしろ自党を説得するためのものでした。
63
ドイツ緑の党 政治家へのインタビュー Ⅰ
連邦議会議員 ジルビア・コッテング=ウール氏 (3)
同盟90/緑の党 バーデン・ビュルテンベルク州支部長
-電力会社と政府は今年の夏、また電力が足らなくなってしまうということが危惧されるということを
宣伝しています。だから、原発は必要だという話になってしまいます。
連邦議会議員
同盟90/緑の党
バーデン・ビュルテン
ベルク州支部長
ジルビア・
コッテング=
ウール氏
それは宣伝にすぎないです。ドイツでも同じように、10年後には完全廃炉になりますが、それに対して、
「冬には電力が足りなくなる、停電になる、電力網もダメになり大変な事態になる」と、ずっと警告をば
らまいていました。冬になっても何も起こらないだけですが、「いやぁ、でも次に夏になったら大変で
すよ」とそれが続きます。常に人を怖がらせて操る策略です。
-第二次世界大戦下でのナチスのホロコースト、東ドイツのシュタージ等、悪いところ、嫌なところに
もちゃんと向き合ってきたドイツの姿勢を、日本も今こそ学ばなければならないと思います。
目を逸らさず、そのところを直視するのは心が痛いときがあります。私は戦後に育った世代ですが、
その世代として、ちゃんと問題を見るのが痛い経験をしてきました。戦後育った子供達には、ドイツに
生まれたということは自慢ではなく、逆に恥ずかしいことで、ドイツ人ということにプライドを持てません
でした。ドイツ人として誇りをもっていると私が初めて発言したのは、日本を訪問し、エネルギーシフト
の話をした時です。ドイツ人には、世界中に対して、これは実現出来るのだと見せる使命が与えられ
ているという誇りです。それでもそれを公言するのは、個人的には難しかったです。それは過去の罪
が非常に重いからです。
-日本は地震国で危険が切迫しており、脱原発に時間をかけていていいのかと危惧しています。
ドイツの道を歩んだのでは間に合わないですね。日本は緊急に市民が運動を組んで進んでいかな
ければならないでしょう。ドイツの脱原発は、ドイツの反原発と緑の党の歴史と深く関わる話です。
福島の事故後、早く決められたというのも、このような脱原発は以前に一度決まっていたからです。
ただ、それに戻しただけです。日本は、急加速、ロケットのように急上昇しなければいけませんね。
NGOから緑の党、本当に同盟を作ってください。ドイツから持って帰ることができるのは、脱原発と
エネルギー・シフトは実現できるんだという事実です。それをお土産にして日本に帰ってください。
ecolosia
64
ドイツ緑の党 政治家へのインタビュー Ⅱ
テュービンゲン市長 ボリス・パルマー氏
緑の党から初めての市長ですが、いま5年目です。当選時の投票率はおよそ50%、得票率は50.4%でした。
-市民投票はよく行われるのですか。1回あたりどのくらい予算がかかるのですか。
テュービンゲン市長
同盟90/緑の党
1回の市民投票には10万ユーロかかります。人口一人あたり1ユーロくらいです。
最近ではシュトゥットガルト市の駅についての市民投票がありました。チュービンゲン市では1993年が最後の市
民投票でした。それでは少なすぎだと私は思っていますが、それは法律が厳しいからです。
ボリス・パルマー氏
-市長が替わるだけでは物事は変わらなくて、議会の承認も必要で、大きく変わるときは、議員の反対や他に
も市役所の職員、行政の人びとの反対もいろいろとあると思うのですが。
非常に興味深い質問です。日本とドイツの文化は違うのに、ドイツ国内からも全く同じ質問を受けるからです。
つまり市議会と行政について想像するものが同じだということですね。ですから、その回答も日本で参考になる
と思います。行政の分野においては、職員は非常に忠実なものです。緑の市長になっても言われたことはやっ
てくれるということです。何をしようとしているのかを説明し、理解してもらえれば、それに従って忠実に業務をし
てもらえます。全く問題なったケースはゼロです。市議会の方は違います。それは党に依存するものだからです。
10年前でしたら実現できなかったであろうプロジェクトもあります。当時は緑の党は議席の2割しか占めていな
かったからですが、今では35%を占めています。全体の議席は40席で35%は14席です。キリスト民主党が8席で、
社民が7席です。それ以外は3席以下です。私も市長として1票の投票権があります。つまり40席+1席です。
市長としては、党にこだわった政策を行うのではなく、全ての党を計画に入れて、他党の参加も歓迎して行うこ
とです。経験上、市長の提案に対して、緑以外の党でも、反対というより賛成する場合が圧倒的に多いです。
また、連邦の首相も、環境相も脱原発、温暖化防止対策を謳っていますので、それも支えになっています。キリ
スト教民主同盟の議員が、自分のところの党首が私と同じ政策の必要性を訴えているのに、それに反対するの
はやりにくいことです。温暖化防止対策に対する反動はまだありますが、隠れたものになっています。緑の解決
策では、党派を問わず、社会で主流になっていますから、これらは市議会では必ず可決されます。
ecolosia
65
ドイツ緑の党 政治家へのインタビュー Ⅲ
バーデン・ビュルテンベルク州環境大臣 フランツ・ウンターシュテラー氏
リューヒョウ・ダンネンブルク郡議会議員 マルティナ・ラマース氏
-基本的なことなんですが、連邦政府と州政府、市という行政単位でどういう役割分担をしているのか、どう
いう上下関係があるのか知りたいのですが。
上下関係というよりも分担です。再生エネルギー法は連邦です。連邦政府で法制化してもよいのに作られて
いない分野で、州政府が独自に立法化するものもあります。熱の利用についてなど、連邦はまだ法制化して
いないのですが、当州が唯一独自に作りました。その下の自治体のレベルでも同様な可能性があります。
バーデン・ヴュルテン
ベルク州 環境省大臣 連邦のレベルでは、各州の環境大臣と連邦環境大臣が年に2日間集合して、重要なプロジェクトなどの話し
同盟90/緑の党
合いをします。
フランツ・
ウンターシュテラー氏
-市民運動が成功するための要因は何でしょうか。
リューヒョウ・ダン
ネンブルク郡
議会議員
同盟90/緑の党
郡支部長
マルティーナ・
ラマース氏
ecolosia
一番重要なのは、いい人脈ネットワークです。また情報提供、デモ、何回でも重要な拠点でプラカードを持っ
て、情報、メッセージを示すこと。それから、全ての行政機関に立候補して、そのなかに入り込んで内部から
変えるということもすごく重要です。さらに言えば、協力相手を他の組織から探すことです。自然保護団体など、
そういうところも相手になっています。これらを始めた頃は非常に危ないことでした。すべて反対の掲示は違
法で、かなりの少数派でした。しかし、頑張って折れないことです。インターネットやマスコミによって、市民に
全世界の人達に伝えたいことを伝えるように、昔より集団も多様化してきました。キャンペーンを開催すること
です。 メディアを巻き込むには、マスコミの代表者を招待して、コーヒーいかがですかとか、一緒にお話しま
しょうとか、呼んで、自分の意見を紹介して、こういう事実なんだと説明することです。その結果、だいたいは、
この党はこの編集者でとなります。いまは党の人が編集員になって、私が記事を書いて、そのまま載せても
らっています。例えば今日も新しい法案について記事を書く予定で、そのまま新聞にのる予定だと分かってい
るくらいです。ここの新聞は地方新聞なのに、戦略上重要な郡だからベルリンの政治家達も読んでいます。
66
最終処分地選定へのチャレンジ
反対運動“Not in my backyard(NIMBY)*” の克服法
“選定手続きとして、たとえばスイスと同じ方式で、まずその選定手順、(科学的)基準をはじめに定めたうえで開始
するという流れにするべきだと思います。そういう選定手続きによって、最適地が選ばれることになります。最初に決
めた基準にもとづいて、各候補地を評価して、市民参加のうえで、一番適地と思われる拠点を選ぶべきだと思いま
す。例えば事前に適地と思われる上位2ヶ所を選んで、それぞれ試掘地を作り、詳細に研究していくことです。”
(マルティーナ・ラマース氏)
“市民参画、透明性を選定手続きの早い段階から入れます。つまり、選定手続きを住民達と行うわけです。各候補
地の人びとがどういった条件が満たされれば納得するか、どういう条件なら許さないか、それを住民達と交渉して、
比較検討のひとつの条件にします。例えば、住民達が3世代にわたって、1人当たり月1000ユーロの補償金をくださ
いと条件を出すのも自由です。社会が犠牲になる人達に対する評価もなにかの形で表すべきです。つまり最終処
分地の犠牲を受け入れる住民達を英雄視したり、尊敬し評価しなければなりません。ただし、最終的な決定要因は
受け入れられるかどうかではなく、科学的な評価です。その手続きの枠内で、条件を満たしているのにそこの住民
が絶対に受け入れないということはできません。ただ、決定するまでの段階で、住民達の知識、判断、根拠となる情
報も手続きの枠内で提示してもらえれば、それらは考慮されます。つまり段階的に選定は進んでいくわけです。6か
所くらい候補地がある段階で、対象の自治体がそれぞれ専門家グループに外注したり、討論し、知識、情報を集め
て、本当にどこが一番適地かというディスカッションに参加できます。自分のところが適地でないという主張であれば、
その根拠を出せいうことになります。そのための必要資金もまた連邦のほうから出します。
私の連立政権との大きな交渉実績に、バーデン・ヴュルテンベルク州が最終処分地の選定に積極的に取り組むこと
という条項を組み入れたことが挙げられます。廃棄物を排出した同州がその最終処分地を選定しなければならない
とすることです。30年前はニーダー・ザクセン州だけがそういう選定手続きを踏んだのに、ほかの州は嫌がり取り組
んできませんでした。現在、選定手続きとしてそれをどう実現すべきか、どういう基準にすべきか議論中です。”
(ジルビア・コッテング=ウール氏)
複数の
処分適地の 市民参加で 科学的条件
適地候補地
科学的 選定手続きの による適地
選定と根拠
条件設定 プロセス決定
探索
の開示
候補地
住民の
参画
反論・反証
の受付
受け入れ
条件の
提出
オープンな
比較検討
処分地
決定
* NIMBYとは、必要な施設だと総論賛成だが、私の庭先に作るのは嫌という態度のこと。住民エゴと批判される場合もあるもの。
ecolosia
67
困難な課題に立ち向かうためのドイツ流「民主主義」
まとめ
① 地元住民同士の話し合いが密に行われている自治意識の高さが見られる。
州が国家であり、ドイツは16の国家が集まった連邦である。
日本の中央集権とは異なる、「補完性原理」と呼ばれる地域コミュニティ主体の意志決定、行政執行
の形が文化として浸透、徹底している。
頻繁ではないものの住民投票の制度が使われており、1人あたり約1ユーロ程度のコストだと即答できる
ほどで、民主主義の必要経費という認識を持たれている。
② メルケル政権の脱原発は、メルケル首相の卓越したリーダーシップに負うところが大きいが、初めての脱原
発政策ではなく、正確には脱原発回帰である。自党である政権与党のキリスト教民主・社会同盟の説得の
ために、倫理委員会を立ち上げるなどの手腕を発揮し、世論を味方につけることが出来た。
③ バルマー市長の説明からは、行政機構(役所)と政治との関係は、日本の特に大都市や国のレベルのもの
とは明らかな違いが感じられる。議会は、政党同士の政策論争なので、議席に左右されるところは日本と
同じ。
④ 過去に不都合や問題が起こったのは、ドイツも日本も同じ。市民がそれを見過ごさず、根気強い抗議活動
や監視を行うことで、腐敗体制が長続きしないようにしている。
⑤ 非常に困難な放射性廃棄物最終処分場問題では、不利益を受けそうな関係者を計画の早期段階で巻き
込む、科学的合理的で民主的な意思決定プロセスを構築しようとしている。
ecolosia
68
ドイツ視察報告 了
ecolosia
69
ダウンロード

ドイツ視察報告