公共経済学
24. 地方分権と政府間の役割分担
24.1 公共財と地方公共財
24.2 中央集権と地方分権
24.3 地方公共財と「足による投票」
24.4 一般定額補助金と特定定率補助金
24.5 日本の地方財政
24.1 公共財と地方公共財
非競合性と排除不可能性 ⇒ 公共財を特徴付け
非競合性=「追加的な個人がその財を消費 ⇒ 他の個人の消費水準が低下しない」
排除不可能性=「その財を消費しようとする個人を小さい費用で排除することが不可能」
純粋公共財=非競合性 + 排除不可能性
準公共財=非競合性 or 排除不可能性
公共財=純粋公共財 or 準公共財
地域的・空間的な観点に関する配慮は?
一般道路=純粋公共財?
高速道路=準公共財?
東京の住民が北海道にある道路から北海道の住民と同等の便益を得られる?
「(広義の)地方公共財」とはこのような特徴に着目して考えられた概念である。
ある財が「(広義の)地方公共財(local public goods)
」である。
⇔
① その財が非競合性と排除不可能性の両方(あるいは片方)の性質を持ち、
② ある個人がその財から受ける便益が、その個人の居住地とその財が供給される
場所との物理的な距離が近い場合の方が、大きい財である。
ある財が「(狭義の)地方公共財」である。
⇔
① ある個人がその地方公共財の供給される地方のどこに居住しても、その個人が
得られる便益の水準が同一であるが、
② 他の地域に居住するとその便益の水準が低下する財である。
ある財が「国際公共財(international public goods)
」である。
⇔
ある個人がその公共財が供給される国に居住していてもそれ以外の国に居住して
いても、その個人がその公共財から得られる便益が同一である公共財である。
国防・外交=その公共サービスから個人が得る便益はその居住地に依存しない。
道路(とくに一般道路)
・図書館・公園
=その公共サービスが供給される場所から、
個人の居住地が遠くにあるときよりも近くにあるときのほうが、
個人が得る便益が大きい。
公共財を「国家公共財(national public goods)
」と呼ぶこともある。
(問題 24-1)上に挙げた例以外の地方公共財、国家公共財、国際公共財の例を挙げなさい。
地方公共財= 初等教育、消防、警察、(生活)道路、(中小)河川管理
(国家)公共財= 裁判制度、気象衛星
国際公共財= 地球環境(熱帯雨林) 、ODA(政府開発援助)、WTO(国際貿易機関)
24.2 中央集権と地方分権
地方分権的=地方政府が中央政府から財政的に「自立」している程度が強い
中央集権的=地方政府が中央政府から財政的に「自立」している程度が弱い
財政連邦制(fiscal federalism)=分権的な財政制度
(問題 24-2)
「自立」について親と子の関係(支援ルール)を例にして検討する。具体的に
は、入学金・授業料は全て親が支払っており自宅から通学している大学生の例を
考えてみよう。
◆「①、②、③」と「④、⑤、⑥」をそれぞれ「自立」の程度が強い順に並べなさ
い。
◆「①、②、③」のグループと「④、⑤、⑥」のグループがとらえている「自立」
の程度には、どのような性質の違いがあるかを説明しなさい。
子供のアルバイト収入=ゼロ
① 親は生活費(昼食・服・本・旅行などの費用)として自由に使えるお小遣いを
毎月 6 万円渡しており、子供は本を毎月 1 万円購入している。
② 生活費として自由に使えるお小遣いを毎月 3 万円渡し、それとは別に本代は全
て親が負担するというルールのもとで、子供は本を毎月 3 万円購入している。
③ 生活費として自由に使えるお小遣いを毎月 5 万円渡し、それとは別に本代の半
額を親が負担するというルールのもとで、
子供は本を毎月 2 万円購入している。
親の意図を実現するための
親の支出額
①
②
③
0
3
1
自由に使えるお小遣いとし
ての親の支出額
6
3
5
子供の支出額合計
6
6
6
④ アルバイト収入と毎月のお小遣いの使い道は自由であり、そのお小遣いは「毎月 3
万円」というルールのもとで、子供には毎月 3 万円のアルバイト収入がある。
⑤ アルバイト収入と毎月のお小遣いの使い道は自由であり、そのお小遣いは「6 万円
からアルバイト収入を引いた金額」というルールのもとで、子供のアルバイト収入
は無い。
⑥ アルバイト収入と毎月のお小遣いの使い道は自由であり、そのお小遣いは「5 万円
からアルバイト収入の半分を引いた金額」というルールのもとで、子供には毎月 2
万円のアルバイト収入がある。
親からの仕送り額
④
⑤
⑥
3
6
4 (=5-1)
子供のアルバイト収入額
3
0
2
子供の収入の合計額
6
6
6
財政制度に関する地方分権(あるいは中央集権)の程度の歳出と歳入の両面からの特徴付
中央集権度(centralization ratio)=中央政府の歳出/政府の歳出
中央集権的=中央集権度が大 or「中央政府の歳入/政府の歳入」が大
地方分権度が大きい=中央集権度が小さい
24.3 地方公共財と「足による投票」
国家公共財=地方政府が供給することは困難
地方公共財=地方政府が分権的に供給することは可能
(問題 23-3)国家公共財を地方政府が供給することの困難性について説明しなさい。
スピルオーバー効果
フリーライダー問題
ある地方公共財のスピルオーバー効果
=その地方公共財の供給される地方以外の地域に
居住するときにその地方公共財から得られる便益。
ティボー(Tiebout)
移住コストが小 ⇒「足による投票」⇒ 効率的な地方公共財の供給
居住地選択が自由
⇒
「地方政府=企業 &
住民=顧客」
居住地選択が自由 & 全国に多くの地方政府が存在
⇒
「地方公共財の中身と水準、地方税の税目と税率」を設定する競争
⇒
「足による投票」
⇒
地方政府間の競争
⇒
地方公共財の効率的な供給
(問題 24-4)住民が地方政府に対して選好を顕示する方法としては、
「選挙における
投票」
、
「声による投票」
、
「足による投票」などがある。これら 3 種類の投
票の地方政府の政策決定に与える影響の相違について説明しなさい。
Vote=(普通の)投票
個人的な意思表明
Voice=声(による圧力)、批判、抗議
Exit=退出、移住
個別的な意思表明
集団的な意思表明(業界団体、労働組合)
(問題 24-5)地方政府が地域内での所得再分配を実施することの困難性?
ある地域が他地域より大きな所得再分配政策
低所得者= その地域に移住
高所得者= 他地域に移住
その地域は低所得者のみが居住
(問題 24-6)地方政府が高速道路を自立的に整備することの問題点?
他地域に及ぼす効果(スピルオーバー効果)の便益を考慮しない。
高速道路= 過小供給
24.4 一般定額補助金と特定定率補助金
中央政府による地方政府への補助金の効果?
一般定額補助金(unconditional lump-sum grants)
=使途の制限は無く、地方政府が自由にその使途を決定できる補助金
特定定率補助金(conditional matching grants)
=その使途は指定されており自由に決定することはできない補助金
地方交付税 = 一般定額補助金(一般財源)
国庫補助金 = 特定定率補助金(特定財源)
地方公共財 G に対する特定定率補助金の効率性の観点からの問題点について、
一般定額補助金と比較することで検討する。
簡単化のため地域の住民は 1 人であり、地方税は一括税 T であるとする。
<一般定額補助金も特定定率補助金も存在しないケース>
ある地域の私的財の生産量を y 、消費量を x とおき、私的財の価格を1に標準
化すればその地域の「住民の予算制約式」は
x  y T
(24-1)
である。
また、補助金が給付される前の「地方政府の予算制約式」は
PG  T
(24-2)
である。なお、 P は公共財の価格である( P 単位の私的財を 1 単位の公共財に
変換できる)
。
したがって、(24-1)と(24-2)より、
PG  x  y
であり、これを「地域の予算制約式」と呼ぶことにする。
(24-3)
<一般定額補助金だけが存在するケース>
一般定額補助金 L のもとでの「地方政府の予算制約式」は
PG  T  L
(24-4)
だから、(24-1)と(24-4)より
PG  x  y  L
(24-5)
であり、これを「一般定額補助金のもとでの地域の予算制約式」と呼ぶことにする。
x  y T
(24-1)
<特定定率補助金だけが存在するケース>
補助率 m の特定定率補助金のもとでの地方政府の予算制約式は
(1  m) PG  T
(24-6)
だから、(24-1)と(24-6)より
(1  m) PG  x  y
(24-7)
であり、これを「特定定率補助金のもとでの地域の予算制約式」と呼ぶことにする。
ひもつき補助金
x  y T
(24-1)
PG  x  y
(24-3)
:一般定額補助金も特定定率補助金も存在しないケース
PG  x  y  L
(24-5)
:一般定額補助金が存在するケース
(1  m) PG  x  y
(24-7)
:特定定率補助金が存在するケース
(問題 24-7)地方公共財に対する特定定率補助金の効率性の観点からの問題点について、
一般定額補助金と比較することで検討しなさい。
x
PG  x  y  L
yL
L 一般定額補助金の下での補助金額
y
x**
PG  x  y
厚生損失
m PG* 特定定率補助金の下での補助金額
x*
(1  m) PG  x  y
P
G
**
G*
(1  m) P
G
*
*
*
特定定率補助金の下での補助金額= PG  (1  m) PG  m PG
24.5 日本の地方財政
地方公共団体の財源
=地方税(約 35%)+地方交付税(約 20%)+国庫支出金(約 15%)
+地方債(約 15%)+その他(15%)
地方財政計画における歳入・歳出
<地方税>
道府県税=個人道府県民税、法人道府県民税、法人事業税、地方消費税、自動車税など
市町村税=個人市町村民税、法人市町村民税、固定資産税、都市計画税など
<地方交付税> =国が地方公共団体の財源の偏在を調整 (地方財政調整)
● 個別地方公共団体について
地方交付税=普通交付税+特別交付税
普通交付税=max(財源不足額,0)
財政力指数=基準財政収入額/基準財政需要額
財源不足額=基準財政需要-基準財政収入額
財源不足額<0 ⇒ 不交付団体 (東京都など)
【基準財政需要】
(ある行政項目の)基準財政需要=(その行政項目の)測定単位×単位費用×補正係数
(例)
「道路橋りょう費」と「小学校費」の測定単位と単位費用
行政項目(2006 年度)
単位=円, 1000 ㎡, km, 人
道路橋りょう費
小学校費
経常経費
投資的経費
道府県
測定単位
単位費用
174,000
道路の面積
2,790,000
道路の延長
6,783,000
教職員数
経常経費
投資的経費
市町村
測定単位
単位費用
92,800
道路の面積
299,000
道路の延長
41,700
児童数
907,000
学級数
7,692,000
学校数
668,000
学級数
補正係数=種別補正、段階補正、密度補正、寒冷補正、数値急増補正、合併補正など
基準財政需要額=各行政項目の基準財政需要額の和
<小学校>
教える内容 ⇒ 国、
教員採用 ⇒ 都道府県、
学校の建設 ⇒ 市町村
【基準財政収入】
基準財政収入額=標準(的な地方)税収入×75%+地方譲与税
標準税収入=法定普通税(住民税など)+税交付金(地方消費税交付金など)+・・・
+所得譲与税 (←「三位一体改革」にともなう暫定措置)
地方譲与税=地方道路譲与税+自動車重量譲与税+・・・
(問題 24-8)基準財政需要額が 110 億で地方譲与税が 10 億円であるとする。標準税収入
が 100 億円のときと 120 億円のときの、基準財政収入額と普通交付税を求めなさ
い。
普通交付税=max(財源不足額,0)
財源不足額=基準財政需要-基準財政収入額
標準税収入
基準財政収入
財源不足額
普通交付税
100
75+10=85
25
25
120
90+10=100
10
10
+20
-15
標準財政規模=標準税収入額+地方譲与税+普通交付税(+交通安全対策特別交付金)
財政赤字/標準財政規模>20%(市町村) ⇒ 財政再建団体 (赤池町、夕張市)
● 国全体について
地方交付税総額=32%×(所得税+酒税)+35.8%×法人税+29.5%×消費税+25%×たばこ税 財源
交付税特別会計借入金等=各地方公共団体の普通交付税の合算額/94%-地方交付税総額
各地方公共団体の普通交付税の合算額=94%×(地方交付税総額+交付税特別会計借入金)
各地方公共団体の特別交付税の合算額=6%×(地方交付税総額+交付税特別会計借入金等)
(注)平成 15 年度以降:
「借入金」⇒「一般会計からの特例加算」&「臨時財政対策債」
<国庫支出金>
=国庫補助金(公共事業など)+国庫負担金(生活保護費など)+国庫委託金(国政選挙など)
+地方道路整備臨時交付金(→地方活力基盤創造交付金(仮称))
単独事業 vs 補助事業
<国から地方へのおカネの流れ>
国の一般会計
地方自治体
収入
支出
収入
地
方
交
付
税
総
額
地
方
税
等
税
収
等
国
債
費
国
他
債
の
発
行
支
出
一部
交付税及び譲与税
配布金特別会計
一般会計
から繰入
借金
地
方
交
付
税
国
庫
支
出
金
地
方
交
付
税
地
方
債
支出
支
出
23.1 公共財と地方公共財
23.2 中央集権と地方分権
23.3 地方公共財と「足による投票」
23.4 一般定額補助金と特定定率補助金
23.5 日本の地方財政
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