騒音・振動・放射線
2014年4月21日
騒音・振動・放射線の基礎
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共通点は,どれも波であること
周波数または波長が非常に重要
相違点は媒体
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騒音は空気の波
振動は地面(固体または液体)の波
放射線のうち粒子線は原子や電子等の,電磁波は光の波
騒音=聞く人に不快感を与え,生活や活動の妨害
になる音
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人や文化によって異なる場合も
ある
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“静けさや,岩にしみいる蝉の
声” vs 蟋蟀の鳴き声を“noise”と
しか感じない(角田忠信説では,
日本人とポリネシア人だけが虫
の声を言語脳で聞いている)
ヘヴィ・メタルやパンクなど,嫌
いな人には明らかに騒音
一般的な騒音源は,工場,建設
現場,自動車,飛行機
公害苦情発生件数では大気汚
染に次いで第2位(総務省公害
苦情調査)
公害の種類別苦情発生件数
の推移(グラフ)
そもそも音とは?
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物理量としての音の強弱=音波エ
ネルギー(音の強さまたは音圧=
単位面積当たりの通過エネル
ギー)
音の感覚量=音の強さのレベルま
たは音圧レベル
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同じ音圧でも周波数により感度は
異なる。1,000 Hz(Hzはヘルツと読
み1秒間の振動数)より低い周波
数の音には鈍感
音波:音源が振動→空気に疎密が
生じる→波として伝播
波長(λ, m単位),周波数(f, s-1単
位),音速(c, 常温では約340 m/s)
の関係式: c=λf
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周波数が高い音を高音と感じる
聴覚器の構造
出典「ビジュアル生理学」
http://bunseiri.michikusa.jp/cyokaku.htm
蝸牛の構造
音の周波数とアブミ骨
から基底膜最大振幅点
までの距離の関係
(グラフ)
音の分類
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純音と騒音
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純音は正弦波
騒音は多くの場合波が乱れている
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純音でも音圧レベルが高ければ騒音になりうる
超音波
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ヒトの可聴域(通常,20~20,000 Hzと言われている)より周波数
が高い音 (cf. ハイパーソニック・エフェクト,骨導超音波)
年齢が高くなると周波数が高い音への感度が低下する
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cf.) モスキート音
超音波のうち,数MHz~数十MHzの周波数
は,生体組織の反射で生じるエコーを利用した
診断に使われる。胃,腸,肺には空気がある
ので使えない
モスキート音
発生装置
(写真)
http://www.compoundsecurity.co.uk/security-information/mosquito-devices
音の強さと感覚量
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音の強さと音圧
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音の強弱は振幅の2乗及び周波数の2乗に比例する。音の強さ(I,単位W/m2
=kg/s3)は進行方向に垂直な面を通過するエネルギー量,音圧(P,単位Pa=
N/m2=kg/ms2)は通過面への圧力。空気の固有音響抵抗をz(=ρ×音速:ρは空
気の密度で常温常圧では1.2kg/m3なので,z≒400kg/m2s)とすると,
I = P2/z ≒ P2/400
高山では空気の密度が小さいので,同じエネルギーなら音圧は小
感覚量
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感覚量は音の強さのレベル(sound intensity level=IL,単位はdB[デシベル])
ヒトの感覚は刺激の強さの対数に比例(Weber-Fechner-law)
ヒトの最小可聴値をI0(1kHzの純音で10-12W/m2)とし,
観測対象の音の強さをI(W/m2)として,音の強さのレベルIL(dB)は,
IL=10 log(I/I0) …… 10倍しているので「デシ」(d)が付く
≒ 20 log(P/2 × 10-5) ……この式では音圧レベル(SPL)という
周波数による感覚量の相違を示すグラフ=等感度曲線。1 kHzの音の音圧レ
ベルへの換算値が「音の大きさのレベル=音の感覚量」で,単位はphon(ホン)
騒音レベル
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聴感補正
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騒音は,通常,複数の周波数の音からなる複合音
騒音の強さは,周波数ごとの聴感の違いを考慮する必要
ヒトの聴感に類似した周波数応答性をもつ聴感補正回路が
騒音計に組み込まれている(Aが40 phon,Bが70 phon,Cが
85 phonの音についての等感度曲線による補正)。通常Aモー
ドで測定し,単位dB(A)で表す。
等価騒音レベル(Leq)
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音の強さのレベルや音圧レベルは瞬間の値だが,音は変動
するので,一定時間(10秒など)の測定値から,それと等しい
平均二乗音圧を与える連続定常音の騒音レベルである「等価
騒音レベル」(equivalent sound levelでLeqと表記)を計算する。
厳密には使用した聴感補正と測定時間も付記
積分騒音計はこの値を自動的に計算してくれる
騒音レベルの目安,周波数
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騒音レベルの目安(大沢・内海[編]環境衛生科学より改変)
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飛行機エンジン近くで120~130dB(A)
警笛を直近で110dB(A)
ガード下電車通過,救急車サイレン100dB(A)
大声独唱90dB(A)
車の多い街頭が70dB(A)
普通の会話60dB(A)
図書館内40dB(A)
郊外の深夜,ささやき声30dB(A)
置き時計の秒針の音を1mの距離で測ると20dB(A)
さまざまな音の周波数
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虫の鳴き声は,スズムシが4000~5000Hz,キリギリスが9500 Hz。カンタンは2000Hz
ヒトの話し声は1000Hz前後。アナログ電話は300~3,400Hzの音しか通さないので,多く
の虫の鳴き声は電話で伝わらない(ひかり電話100~7,000Hz,PHSは50~14,000Hz?)
救急車のサイレンは960Hzと770Hz
騒音の健康影響
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騒音による難聴
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NITTS (Noise Induced Temporary Threshold Shift)
NIPTS (Noise Induced Permanent Threshold Shift)=騒音性難聴=c5-dip
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90dB(A)に毎日8時間曝露すると3,000~4,000 Hzの音が捉え難くなる(一番聞こえにくくなる
のは5,000 Hz付近というデータもある)。c5はドイツ式音階で,日本式では5点ハ,国
際式(米式)ではC8と表記する。ピアノ鍵盤の最高音。
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騒音にかかわる環境基準
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騒音規制法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S43/S43HO098.html)
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都道府県知事の指定地域(住居が集合している地域,病院や学校の近く)における,特定
工場,特定作業現場,自動車騒音を規制
AA地域(療養施設や社会福祉施設が集合しているなど特に静穏を要する)では昼
間50dB以下,夜間は40dB以下。A(住専)及びB(住宅地)ではAA基準+5dB,C(商
業・工業地)ではAA基準+10dB。道路に面しているとAで昼間60,夜間55,BとCで
各+5。幹線道路沿いは昼間70dB以下,夜間65dB以下
航空機騒音は発着回数を加味し加重等価平均感覚騒音レベル(WECPNL)で規制
低周波騒音
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苦情が多いエアコン室外機は100Hz以下の鈍重な音
振動(vibration)
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振動数と振動の強さ
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振動測定装置
(写真)
局所振動と全身振動
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振動数:Hz単位。1秒間の振動回数
振動の強さ:振動加速度レベル(単位dB)
局所振動の健康障害:eg. レイノー病
全身振動の健康障害:eg. 悪心,嘔吐,胃腸障害,月経異常等
環境基準
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振動規制法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51HO064.html)により
,道路交通振動が規制されている(第1種区域で昼間65dB,夜間60dB
未満,第2種区域では各+5dB)
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測定は振動計または振動レベル計による
体感される振動周波数:0.1~500Hz
公害振動として問題になるのは60~80dBの強さが多い
地震の震度でいうと,70dBが震度2,震度6~7だと110~115dB相当
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放射線
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粒子線と電磁波を総称して放射線と呼ぶ
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粒子線はα線(ヘリウム原子核),β線(電子),炭素線等
電磁波は光子の波でX線,γ線,紫外線,可視光線,電波等
放射線には電離放射線と非電離放射線がある
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物質を通過する際に物質から電子を放出させる放射線を電離放
射線と呼び,X線,γ線,α線,β線等,一般に放射線という言葉で
想像されるのはこちら。電磁波は波長が短いほど生体影響が強い
紫外線より波長が長い電磁波は非電離放射線
波長の違いによる電磁波の種類と物理的性質
(図)
電離放射線の基礎知識
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放射能:物質が放射線を発する能力。単位ベクレル(Bq)
放射線の強さ:照射された物質1 kgに1 Jのエネルギーを発生させ
る吸収線量を1 Gy
吸収線量×生物学的効果比Q(α線20,β線,γ線,X線1)=生体
影響の評価に用いられる実効線量Sv
自然放射線曝露は場所により異なるが平均2.4 mSv/年
α線は空中での飛程が短いため,プルトニウムを摂取してしまっ
た場合などの内部被曝で問題になる
放射線防護の3原則=距離,時間,遮蔽
電離放射線の生体影響
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早発影響(早期影響):主に1 Svより高い実効線量で問題
晩発影響(後期影響):被爆者追跡データから,100mSvの曝露で発
がんリスクが有意に上昇。Chernobyl事故後の小児甲状腺がんはヨ
ウ素131の内部被曝で有意に上昇。それ以下では諸説あり。
電離放射線について補足資料(1)
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長崎・ヒバクシャ医療国際協
力会(編)『21世紀のヒバク
シャ』長崎新聞新書,小出裕
章『原発のウソ』扶桑社新書
放射線の種類と透過力
被爆の危険度の考え方
(LNT仮説等)
被爆コホート研究で被爆時年齢30歳
(男女平均)の人が,70歳に達したとき
の1 Gyあたりの部位別がん発生率の
過剰相対リスクと90%信頼区間
(図解)
電離放射線について補足資料(2)
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大沢・内海(編)『環境衛生科学』南江堂
α線とβ線の飛程
(エネルギー及び,空気中,水中,鉛中での飛程)
生活における放射線被曝の例
放射線量(Sv)ごとの,電離放射線による
急性障害のいろいろ
非電離放射線(1)
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紫外線 (UV=ultraviolet ray)
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波長10~400 nm。地表に到達する190~400 nmのUVを長波長か
ら順にUV-A(~320),UV-B(~280),UV-Cに分類
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290nmより短波長のUVは生体障害性が強いがオゾン層で吸収
皮膚や粘膜で吸収されるので障害は皮膚や目に現れる
UV-C:細胞障害性。250~280が強力で殺菌に利用される(水銀灯の主
波長は254nm。点灯下での作業禁止)。電気性眼炎
UV-B:殺菌効果はUV-Cより弱。微小血管拡張による紅斑形成作用
強。290~320nmのUV-BはプロビタミンDから皮膚でのビタミンD生成に必
要(ただし動物性食物から補給できる)
UV-A:メラニン形成による日焼け,光化学オキシダント生成,白内障(組
織浸透力が強く水晶体に達するため)に関与
地表に到達した紫外線は雪上では75%反射され曝露が増加
DNA上のチミン同士に結合を形成させチミンダイマーが発生,皮膚
がんハイリスク。チミンダイマー除去のためのSOS修復も突然変異
確率を上げる
非電離放射線(2)
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可視光線 (visible ray)
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赤外線 (infrared ray)
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波長約400~700 nmの電磁波。短波長側から紫,青,緑,黄,赤と感知される。
照度(lx)=光束(lm)/面積(m2)=光度(cd)/距離(m)の2乗
安全歩行は20lx,作業面は100lx以上必要
波長約700~1000 nmで,物質に吸収されて発熱させる熱線
表皮から1~1.4mmの皮下組織に到達。白内障リスク因子
電波=ラジオ波(radio wave)とマイクロ波(microwave)
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波長1000 nmは周波数約300 THz。
マイクロ波は波長がmm~mの範囲なので,300 GHz~300MHz
ラジオ波は波長がmより長いもの。300 MHzより周波数が低い
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数MHz~80MHz程度のラジオ波はMRIで利用。生体影響は少ないが高エネルギーだと
影響あり。SAR値(specific absorption rate; W/kg)で規制。
携帯電話/PHS(800MHz, 1.5 GHz, 1.9 GHz, 2 GHz)の局部SAR<2 W/kg
1 GHz前後の低周波電磁波でサルの行動変化は4 W/kgで1時間以内に起こるため,米
国のヒトに対する許容全身SARは0.4 W/kg(6分間)
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