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被災地における廃校の意味の変化と、それに伴う地域への影響
に関する研究
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A Study on the Effection to the Areas Associated with the
Change of Abolished Schools Meaning in Disaster-Affected
Areas.
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被災地における廃校の発生数の推移を図(1)に示す。1970
年付近と2011年後に廃校発生数が大きいことがわかる。ま
た、2011年前の廃校が政策や社会現象等のある程度予想出来
る内容により出来ているのみ対し、2011年後の廃校の多くは
東日本大震災の影響を強く受けて発生していることが予想で
きる。今後、被災地では予期せず出来た廃校というスペース
をどのように扱うかが問題になることが予想できる。 !
時空間デザインプログラム
11-11629 佐野恵佑 Keisuke Sano
指導教員 真野洋介 Adviser Yosuke Mano
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第1章 はじめに 1-1.背景と目的 近年、少子化や都市への人口流出などにより全国的に多く
の廃校が発生している。特に地方での廃校が増加している。 その状況の中で、2011年3月に発生した東日本大震災は、
地震や津波によって東北地方沿岸部に大きな被害をもたらし
た。被災地では、コミュニティの衰弱や、住宅不足、産業の
衰退など様々な課題が、震災以前から挙がっていたか、被災
によって廃校跡地や建物活用の課題や、学校移転・統合など
の問題が一斉に顕在化した。 一方で、これらの課題に対応すべく、まとまったスペース
を持ち、住民からの思い入れもある学校や廃校が、避難所に
使用されたり、校庭に仮設住宅が建つなどして利用された。
また、震災の被害、またそれによる児童数の減少によって新
たな廃校が発生していく中、避難所や仮設住宅などとは別の
課題が意識されることにより、それぞれの地域での課題に向
き合った形で活用される廃校が出てきている。 そこで本研究では、被災地における震災が契機となり、
活用され始めた廃校の変容過程地域への影響を分析し廃校
が再び活用されることの意味を考察し、地域における廃校
の役割についての示唆を得ることを目的とする。 1-2.研究の位置付け 廃校の活用について書かれた論文として、地域のコミュニ
ティや活用後の住民の反応に着目した研究(※1)は見られる
が、被災地としての地域特性に注目したものはない。また、
震災後の地域再生の論文としては、震災後にできたコミュニ
ティスペースに関連した論文(※2)などが挙げられるが、廃
校の意味の変化から地域の再生を見た論文はない。 1-3.用語の定義 研究の用語を表(1)に示したように定める。 1-4.研究の構成と方法 第2章で東北三県沿岸部の廃校の一覧、その発生数から廃
校の流れをみる。次に第3章で被災地における廃校活用を整
理し、その傾向を見る。第4章で対象廃校活用施設を設定
し、ヒアリング調査等からその施設が地域に対してどのよう
な影響を与えたのかを示し、第5章でまとめを行う。それぞ
れの章で参考にした資料は表(2)に示す。 第3章 震災後の廃校活用事例の実態 この章では、東北三県沿岸部において活用された廃校を震
災前後に分けてその傾向を整理し、廃校活用の流れを見るこ
とを目的とする。震災前後の廃校活用を図(2)に示す。 3-1.震災前の廃校活用の実態 日本全体の廃校活用率の比べると、震災前の開校活用は、
進んでいなかった。また、活用用途の傾向を見ると、公民館
や生涯学習施設等、その地域内のためだけの用途が多く、体
験施設等の外との交流を目的と知るような用途は少ないこと
がわかる。 3-2.震災後の廃校活用の実態 震災直後、建物被害や避難者に対応するため、多くの廃校
はスペースとして避難所、仮設住宅に使用された。その後、
町が機能を取り戻す過程で、廃校を使用する例が出てくる。
それらは、地域の活性化や、ボランティアの宿泊所等の使用
目的をもって廃校活用を行っている。その中で、復興のため
の一時的な使用でなく、持続的に活用されている廃校活用施
設があり、震災が原因で活用されたものは3校ある。 3-3.小結 震災後、被災地では地震や津波により、人的な被害だけで
なく、大きな建物被害が起こった。また、危険区域から避難
して来た人の住む場所等が必要になり、避難所、仮設住宅が
立てられる。その後、住宅としてのスペースだけではない利
用法で廃校は活用され始める。そのような廃校は、被災地に
必要な機能を支援したり、住民を元気づけるような活用のさ
れ方をしている。また、人が住む為のスペース以外の活用の
され方をしている中で、一時的ではなく、持続性におもきを
置いて地域の為に活動し続ける廃校活用施設も出てき始めて
いる。また、そのような廃校活用施設は、持続的に地域と係
ることで、より地域特有の問題に取り組んでいることが予想
される。 !
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第2章 被災地における廃校の状況 本章では、被災地における廃校数の変動、その廃校がそ
の後どうなったのかなどについて整理し、現在の被災地の
廃校の状況を明らかにする。その後、年毎の廃校発生数を
示し、この三県沿岸部市町村でどのように廃校が発生した
のかを児童数、時代背景からその要因をみる。 三県沿岸部の年別廃校数と、時代背景、三県児童数の変
化を図(1)に示す。 2-1.被災地における廃校一覧 三県沿岸部における廃校数は図(1)のようになっている。 2-2.被災地における廃校発生数 第4章 対象地と廃校活用の関係 この章では、震災後に活用された廃校について、その廃校
が活用されたことによって、その意味の変化が地域にどのよ
うな影響を与えたのかを明らかにする。対象地としては、32.で述べた、震災がきっかけで活用され、持続的な活用を行っ
ている3つの施設を対象とし、施設の概要、運営団体活動の
概要、展開を図(3)に示す。 !
4-1.南三陸町 「南三陸yes工房」は震災後、町に喪失感がただよう中、
働く場所として避難所以外の居場所を作ろうとする活動が元
となっておこった。活動を通して、避難所の女性から、地域
住民、Uターン者と地域に多くの雇用を生んでいる。事業化
していくにつれ、地域外から入ってくる人はボランティアか
ら企業見学等に変わっているが、常に人が南三陸町に入って
くるきっかけとなっている。住民が主体となって始めた活動
であり、地域の様々な団体との繋がりが強い。また、地域の
資源を使った産業を行っており、新しい南三陸町の魅力づく
りも行っている。 4-2.陸前高田市 「二又復興交流センター」は一時的なボランティアの宿泊
所が前身であり、震災後、より顕著になった陸前高田市の宿
泊所不足を解消する為に出来た。校庭や昼間の空き教室を、
地域住民及び近くの避難所の人に開放し、宿泊者も交えた新
しいコミュニティの創出の場になっている。指定管理者であ
[email protected]PO団体の
集まり「まちづくりプラットフォーム」の団体達と協力し、
この施設を拠点とした観光ツアーをつくりだし、陸前高田市
に大きな交流人口の増加をもたらすことを目指している。 4-3.石巻市 「MORIUMIUS」は石巻市雄勝地区において、子供達の農漁
業体験複合施設となることで、一次産業の振興と地域外との
交流のハブを目指す。団体として施設改修前から雄勝に関わ
り続け、住民とコミュニケーションを重ねながら、人のネッ
トワークで様々な人を地域外から呼び寄せ、活動をしてお
り、地域に雇用や産業への価値づけを行っている。施設改修
中の現在(2015.2)もボランティア、企業研修、クラウドファ
ンディングなどで多くの人が雄勝を知り、関わりを持つきっ
かけになっている。 4-4.小結 3つの廃校活用の共通点として、地域住民と震災後の外か
ら入って来た人との繋がりが活動のきっかけになっている。
また、震災によって大きくなった震災前からの地域の問題に
取り組んでいること、地域外の人や団体との交流を生み出
し、外から人が入ってくる仕組みを作ろうとしていることが
挙げられる。 震災後、大勢のボランティア等が地域にはいってくること
により、多くの支援や関係の中で廃校活用が行われたことが
わかる。そのような活用は住民の地域に対する思いを反映し
ており、その結果、その地域が抱えた大きな問題に取り組む
ような活用になっていることがわかった。 また、ヒアリングから、そのような活動を廃校で行う事
は、運営者にとっての住民の思いや記憶を背負って活動する
ことによる責任感、建物が残っていることによる地域住民へ
の勇気づけ、学校転用による安心感や話題性から地域外の人
が入ってきやすく、人を呼び込みやすいなどの影響があるこ
とが予想出きた。また、かつて地域内での交流の場であった
廃校を再び交流の基点にすることによる地域振興の象徴性も
もっていると考えられる。 !
第5章 まとめ 第2章で被災地において、時代背景の中で増加しつつあった
廃校だが、震災の影響で予期しない増加がおこったことを確
認した。また、第3章、4章から、被災地において、廃校活用
は地域内対象のものから、震災直後の臨時のスペース、その
後地域外との交流の場と、時代によってその地域内での役割
を変化させていることを確認した。 震災後という時代において廃校は地域外との関わりを持つ
ことで活用され、その繋がりが動力となって、雇用や交流人
口の減少、一次産業の衰退など、その地域のもつ問題に取り
組んでいることがわかった。 !
注釈・参考文献 ※1岡崎 渉平・坂口 大洋・齋藤 佑太「震災復興過程の福島県中山間地域における集落再
生の実践的研究その1 : 福島県川俣町を事例として」,日本建築学会学術講演梗概
集,N0.6013,pp25-26,2013 ※2石川怜也「コミュニティ・スペースの展開からみる地方都市の新たな地域構造〜東日本
大震災被災地を対象として〜」東京工業大学修士論文,2013 ・各市町村HP
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被災地における廃校の意味の変化と