人間の脳とコンピュータはどこが
違うか
明星大学
大塚寛治
参考資料:
岩田誠、脳のしくみ、1998、ナツメ社
脳とコンピュータを比較して見ると、
信号を伝達する回路が違う。これが全く異なった仕
組みになっている。
並行に信号を群情報(意味情報)として伝達できるネットワークを
持つ脳と
逐次伝達(人間にとって無意味情報)しかできないコンピュータの
電子回路。
もう一つ
判断回路が記憶素子を兼ねる脳と
判断回路と記憶素子が別々なコンピュータ。
ネットワークの形成そのものが記憶となる脳と
判断回路と記憶素子が離れてつながって、伝達が遅れる
コンピュータ。
脳の素子;ニューロンとニューロン間の結合の神経(軸索)
ニューロンは興奮するか静寂かの2値
コンピュータの素子;ゲート
AND
入力信号
OR
出力信号
ゲートは0か1かの2値
枝分かれはせいぜい2~5本
脳もコンピュータも基本素子は0か1かの2値で制御している
脳とコンピュータ要素の比較
脳
(ニューロン)
コンピュータ
(ゲート)
素子数 素子スイ 計算処 画像処理 素子枝分かれ
チイング 理速度
速度
数
速度
1×1010
数 ms
数 ms
数 ms 1万~10 万本
107
数百 ps
数 ns
十数 ns
信号は両者ともに2進数
2~5 本
脳の思考の仕組み
圧倒的ネットワークの結合で画像の平行移動ができる。
記憶されている
抽象画像と重ね合わせる。
違う・正しいの判断
一瞬に可能。
網膜
神経束
視床覚
画像・音声など意味塊情報の一瞬の解読の威力
前頭連合野
後頭連合野(認識野)
記憶されている
抽象画像と重ね合わせる
違う・正しいの判断
一瞬に可能
過去の経験からの好き嫌いなどの連想
視床覚
右の情報からの
概念・哲学・創造性の醸成
比較の際、
似て非なるものから連想
瞬時の入力意味情報と記憶にある意味情報の比較
=スーパーインポーズ
これはすごい能力を発揮する。
比較の過程で類似の意味情報を検索することで連想が
生まれる。
抽象的連想であるため、入力情報と関連付けて新しい
意味を持たせる→想像力が生まれる。
抽象的概念(ネットワークの構築)が生まれる→哲学を
生む。
このすばらしい機能は基本素子ニューロンのお陰ではな
く、ニューロンをつなげるネットワークによるものである。
網膜細胞→1億画素子
170°
5°
画像圧縮・選択
神経束→百万束
音
関心音の選別
目の情報処理→1億ニューロン
耳の情報処理→4億ニューロン
感覚から脳への情報の伝わり方
→私の顔といった塊情報が神経細胞を通って平行移動する。
数万ビットから百万ビット塊が1つのメモリ番地に収まる。
1
2
3
4
5
6
神経束
メモリボックス
一方、コンピュータは
1つのアルファベットまたは数字に割り付けるビット数
=8ビット(8b)=1バイト(1B)
例えば、“a”は 01100001
コンピュータはバイト当たりの番地が必要
記憶とはこのシナプスの結合
ができたときである=ネット
ワークの完成。
何度も復習をすることで、シナ
プスの結合が強くなり、忘れな
いものとなる。
コンピュータ動作:
携帯電話を始めとし、あらゆるディジタル情報処理の基本
論理計算部(ALU)とメモリ
Memory
ALU
クロックタイミングに追いつかない遅い転送
主メモリ
一時貯蔵庫
キャッシュメモリ
順番待ち貯蔵庫
レジスタ
ALU
クロックタイミングと同じ高速転送
→CPUチップ
1つのデータに
3つのアドレスが必要となる
番地
ある32bitデータ
00
01
02
03
10
11
12
13
20
21
22
23
30
31
32
33
17
本当のデータに付属して
番地のデータもつけて送る
44
55
66
77
88
番地や順番のデータの
方が大きくなる
99
aa
bb
アドレッシング
cc
dd
ee
ff
意味のないごく小さな塊の膨大なデータを番地付けをする。
人間の感覚から脳へ伝わる情報速度=20Mb/s
データ圧縮1/20として脳へ伝わる情報量=400Mb/s=32MB/s
対比
コンピュータ心臓部へのデータ入力情報速度=1.6GB/s
本当のデータ/データの順番と番地付けデータ=1/3
→実効速度533MB/s
それでも人間の13倍のデータ量?
何人いますか?
人間は顔という塊情報で認識
→効率のよいデータ抽出
コンピュータはしらみつぶしスキャン
データ量
→両者に3桁から5桁以上の差が出る。
信号伝送とその方式に対する脳とコンピュータ比較の結論
1.
2.
効果的な並列(意味グループ)伝送をする脳と
高速であるが効率の悪い伝送方式でシリアル伝送であるコンピュータ。
メモリ素子と論理素子の機能を兼ねるニューロンとネットワーク
コンピュータのもう一つの弱点:CPUとメモリが離れて伝達が遅れる。
コンピュータの性能向上の道:
CPUとメモリバンド幅をひたすら向上させること。
これをいくら行っても
計算処理はすばらしいが哲学や想像力は生まれない。
コンピュータは何時までも人間の「しもべ」でしかない!
これはフランケンシュタインを作らないすばらしい出来事である。
当面のコンピュータの目標
知的で人間にやさしいコンピュータ
携帯電話の同時通訳機能で多種言語による
深遠なコミュニケーションを伴ったミーティング
お母さん、お父さんと
子供
明星大学
大塚寛治
参考文献:
高木貞敬、子育ての大脳生理学、1986、朝日選書
松村道一、脳科学への招待、2002、サイエンス社
松本元、脳とはどんなコンピュータか、応用物理、第68巻、第8号、pp890-902、1999
人間の脳はすばらしい!!
コンピュータにはまねできない!!
すばらしい脳がどのように出来上がるのかを見ましょう。
人間以外の哺乳動物は生まれたときから立ち上がり、
お母さんのおっぱいを探して吸いにいけます。
すごい能力と思いませんか?
人間の赤ん坊は生まれたときは泣くことしか能力があり
ません。
これを脳から見ると、超未熟児で生まれたわけです。
これがダーウィンの提唱した進化論の行く着き先とい
えます。
なぜでしょうか???
お母さんやお父さんが、赤ん坊に教育するチャンスを
作ったのです。これが人間の人間らしい進化です。
脳の基本素子であるニューロンは生まれたときから大人
並みの150億ニューロンあります。
ところが生まれたときの脳の重さは400グラムぐらいで、
10歳で1200グラムになります。何が増えたのでしょう
か??
次の絵を見てください。
黒い点がニューロンです。それをつなぐ神経細胞(軸索
と枝状突起)がどんどん増えていることがわかります。
一目瞭然ですね。
非常に重要な概念:
このネットワークは経験によって生まれた記憶の歴史です。
記憶が刷り込まれた=インプリンティングと言います。
新生児
生後1ヶ月
生後3ヶ月
生後6ヶ月
生後15ヶ月
生後24ヶ月
「三つ子の魂百までも」ということわざがありますね。
脳の中の神経ネットワークが形成される時期が3歳までで
70%、5歳でほぼ完成するといわれています。
5歳でネットワークが完成するとは驚きですね!
さらに驚きは、
その後一生涯、そのネットワークは変わらないのです。
支離滅裂にあらゆる情報を何でも取り込みます。
おいしい、まずい、暑い、寒い、気持ちがよい、気持ちが悪
い、痛いなど、楽しい感触とつらい感触、気持ちを抑える
(我慢する)があり、つらい感触や我慢は、お母さんが愛情
をもって最後に取り除いたりほめたりします。
前頁最後の赤字の言葉:
これは本当に重要なことです。
ネットワークに「つらいや我慢」を取り除くとき、愛情が刷り
込まれます。これをインプリントラブと言います。
その後はどのようになるのでしょうか?
環境や教育でネットワークの接点が強力につながったり
弱くつながったりして修正を加えます。
支離滅裂なネットワークの要不要を整理して論理的な人
間に仕上がります。
しかし最初のネットワークはそのままです。私は英語のrと
lの発音の区別ができません。この時期に刷り込まれたら、
全く苦労しないで区別できるようになっていたでしょう。
シナップス結合部分
たくさんの結合部分があり、繰
り返しでこの結合部分が多くな
り強力な記憶となる。
インプリントより後でネットワークをシナップス結合の強弱
で修正することの難しさがわかったと思います。
もし愛情が足りないときは、何時までもお母さんの愛情に
飢えて、マザーコンプレックスになります。必然的に独立
心が少なくなりますね。
インプリントラブこそ独立心と向上心、何事にも立ち向か
える勇気を持つ元になります。
愛情だけではだめなこともわかりました。「いろいろなつら
い感触を十分与え、最後に愛情で解決する」、「楽しい感
触も十分与える」が本当に重要なことです。
生まれたときから5歳までの間に2次的本能をお母さんや
お父さんが作り上げる、
言い換えると、
脳のネットワークに埋め込むことが出来るのです。お母さ
んやお父さんがしっかりしないとよい子は育たないのです。
学校の教育は論理の形成とその論理のもとづく人格の形
成となるだけで、性格の形成は両親が責任を持って行う
必要があります。
若い人がよく言う、「キャラ」ですね。もちろん遺伝的キャ
ラもありますが・・・。
恋人が出来、愛が生まれ結婚しますね。
この愛をコンシャスラブ(意識愛)といいます。意識しないと
生まれない愛で、消え行くことを防止するため、欧米では
常に「愛しています」と毎日口で言う必要があるのはこのた
めです。
絶対に消えない5歳までの経験と、さび付くと使えないその
後の記憶とははっきりと区分されるべきものと思います。
余談:
脳には抑制ニューロンと興奮ニューロンがあります。男女ともに同
数あります。シナップスの結合場所が女性はニューロンの近くに多
く、男性はニューロンから少し離れているものが多く存在します。
ニューロンが興奮するか静寂かは入力の総合が50%エネルギを
超えるかそうでないかで決まりますが、情報到達時間が大きく左右
します。総合情報が集まるまでに余分な判断が入ります。女性の
方が熱しやすくさめやすい性格を一般論として持っているのはその
ためです。情報到達時間もいろいろ訓練しだいだそうです。
余談2
ネットワークが形成するときの0歳~5歳から12歳までは丸暗記
に時期と言われています。
なんでも批判なく、感性で丸暗記します。5歳から12歳まではシ
ナップスのつながりの強弱を形成しているときですが、これによる
論理の形成がまだ十分に行えないため、批判なく丸暗記できる
のです。
丸暗記に必要な入力は、繰り返しが4回から7回で時間分散が効
率がよいといわれています。不定期に1ヶ月程度でこれを繰り返
すのがよいと思われます。
同じ単語を辞書で何回も引くと自然と覚えて行きます。英語の小
説を一気読みして短時間に何回も引くより、毎日数ページ読み続
け、日を空けて繰り返し辞書を参照することの方が覚えることに
なります。
余談3
最後に重要なこと、
記憶があっても記憶ニューロンに情報が蓄えられるだけで、使え
ないのです。
単語を知っていても、会話の中で自然に出てきますか?
一度自らそれを使う努力をしないと出てこないのです。すなわち、
出力するためのシナップスチャネルがほとんどないか弱弱しいの
です。自らの意思で使うとき、初めて出力チャネルができます。
脳はプログラム自動形成コンピュータと呼ばれています。自らの
意思で行動を起こしたときのみに新しいプログラム(シナップス
チャネル)ができるのです。
頭で考えただけで自転車が乗れるようになりますか?実際に乗
る練習こそが重要です。聴講だけではだめ!演習すること!!
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人間の脳とコンピュータはどこが違うか