スペイン語通時音韻論
第4部
スペイン語通時音韻論
140.
140
スペイン語は、それが話されている地理的・人的な領域の相次ぐ
拡大によって形成されてきた。スペイン語が他の言葉から区別され
るあらゆる特徴は、方言的に同じ地域(rincón)でできたのでもなく、
また同一世代の間に広がったのでもない。われわれがこれから研究
する体系的変化は、第一の原因として次のような根本的事実があ
る:つまり異言語グループ訳注間の言語的可能性に対するその言語の
適応性と、言語を与える者(los dadores de la lengua)とそれを採用する
者(adoptadores)との妥協によるものである、というのがそれである。
スペイン語の起源は、土着していた民族共同体であるエブロ河の
上流のCantabria(カンタブリヤ)地域の端(西ゴート族の首都・トレ
ドのようなローマ文化の中央部より離れた)に住んでいた住民によ
って、上手に(良し悪しはあれ)学ばれたラテン語である。レコン
キスタ(再征服)の時代の政治的、文化的状況の変化にともなって、
この田舎風の言葉は、拡張してゆく地方のことばの特徴を採用する
ことなく、より洗練された地帯に広がるようになったのである。そ
して種々の段階を経ながら、地理的広がりや社会的権威を得るよう
になった。この言語の拡大に際しては、ある様式を捨てることによ
って拡張していったのである。この所謂《方言的複合体:complejo
dialectal》と称されるこのプロセスによって1、16,17世紀には本質的
に、今日のような言語状態に至ったのである。
訳注
1
alolingües=alo- + lingua (種々の+言語)
V.Garcia de Diego. El castellano como complejo dialectal y sus dialectos internos.
RFE.341(1950) p.107-124
1
スペイン語通時音韻論
われわれは、この変化の過程を一歩一歩たどることはできない。
それで、お互いに比較し、また種々の共時的側面を検討することで
満足し、その変化の条件とその結果を探求しながら、実際に生起し
た変化を観察することになる。それでラテン語の音素的状況や、い
わゆる西方《俗ラテン語》の音素状況、次にイベリア半島内での一
般的ロマンス語、または《前ロマンス語》(prerromance)と呼ばれる
ものを研究する。そのあとで、初期のカンタブリヤ地方のカスティ
リア語の特有性は(これらイスパニアの一般的状況によって存続し
たり、また抑圧されながら)Alfonso(アルフォンソ)カスティリア語
やトレドの言葉と競合し、最後に2つの規範、旧カスティリア語と
トレド・カスティリア語の規範の闘い(16世紀)を経て、現代のカ
ステリア語やその変種(方言・お国ことば)が形成された。
さてここでは、音声的体系の全(音声的・音素的)単位は、相互に条
件付けられ、また関連し合っているのであるが、研究を明確にする
ために、母音に関するものと子音に関するものと2つに分けて検討
することにする。
141.
ラテン語の母音体系
古典ラテン語の母音の体系は次の3つの弁別的特徴によって形成さ
れている:
1)口腔の間隔の違い、これを3つの間隔の段階で対立させる:
間隔が最大のもの:間隔が中位のもの:間隔が最小のもの
2)唇と舌の位置による違い:
これは前母音(硬口蓋)、聴覚的に高音調(agudo)と
後母音(軟口蓋)、聴覚的に低音調(grave)を対立させる。
3)音量の違い。
2
スペイン語通時音韻論
これは、長母音と短母音を対立させる。例えば、
m!"lum/m#$lum、l%"uo/l%$uo、l&"ber/l&$ber、n'"ta/n'$ta。
これは三角形の体系ということになる。間隔の一番大きな母音に関
して言えば、低音調/高音調の対立は弁別的ではない。
それで、次の図式のようになる:
ŭ
($
ĭ
ŏ
ě !)
ī
ō
ē
!$
これらの音素の他に、長い音量をもつ3つの二重母音、ae, oe, auが
ある。2
口語では、われわれにとって興味のある出発点は、書かれたラテ
ン語が示している体系は、基本的に変化していたということである。
2
ここでは、これらが同じでない音の長母音として、または変化する間隔とし
て扱うべきか。それで単一の音素的価値をもつか、または短音素の2つの
tautosilabicasの単なる結合として取扱うべきかという問題については論議しな
いことにする。2つの音素の結合であるとの説については、S.Mariner Bigorra、
Valor fonemático de los diptongos del latín clásico, Helmántica. 25.(Salamanca. 1957)
p.17-30.またここでは、ラテン語の母音量は弁別的特徴か、または音素的、機能
的記述のためにこれを同じ2つの音素のtautosilábicaの結合したもの、つまり、
二重短母音として、長母音を考えるべきか否かについての問題にも立ち入らな
ă +ă ラ テ ン 語 の 体 系 に つ い て の よ り 詳 細 な 記 述 は 、 W.
い こ と に す る 。: ā=
Brandenstein、Kurze Phonologie des lateinischen、 <Beilage> a.F.Alheim, Geschichite
der lat. Sprache, Frankfurt, M.1951 p.481-498. この書の理論的基礎は若干時代遅れ
となっているかも知れない。
J. Horecký “Fonologia Latinčiny, Bratislava. 1949, フランス語の要約付き、p.109120(著者が単音素であると思う二重母音については、116頁を参照).他に
H.Lübtke, Die strukturelle Entwicklung des romanischen Vacalismus, Bonn. 1956. P51.
以下. H. Weinrich, Phonologische Studien zur romanischen Sprachgeshichite、Münster,
1958. P.12.以下. A.A.Hill. op.cit. p.441. 以下. 更にS. Mariner, Fonemática latina(M.
Bassols, Fonética latina, Madrid, 1962)を参照。
3
スペイン語通時音韻論
母音の音量は、非音韻化され、そしてその代わりに、ほとんど全て
のロマンス語は、今日では一般に、音質(timbre)の質的ちがいを示し
ている。一方、おそらくギリシャ語の教養語の影響のあるアクセン
トは3、強調音(los intentivos)に対するトーン要素の支配(predominio)
によって特徴付けられる。そしてこれはすべての場合、有意義な特
性(pertinencia)を欠いている3*、それで、その単語でのアクセント位
置は、音節的音量に依存していた(母音の音量と音素の結合によっ
て条件付けられていた)。そして音量を欠いた時、そのは音韻的価
値を獲得した。そしてまず最初に強調アクセント(acento intensivo)に
移った。(これは疑いもなく、既に一般(popular)の発音で用いられて
いた)。そしてこれは教養のある人の洗練された耳には、鈍重にま
た野卑に響いた。
これらの田舎風の言い回しの勢力拡張と、別の言語の話し手に対す
るラテン語の拡大に帰せられるこの2つの現象、母音音量の非音韻
化、アクセントの音韻化は4、ロマンス語の母音体系を生み出す条件
であった。
142.
俗母音組織(vocalismo vulgar)
これらの変化の構造的解釈は、すでに試みられ、ある学者は次の
ように提案する5(5)。音量的ちがいは、あるラテン語の文法家示し
3
Kent “The Sounds of Latin” Baltimore, 1945 §66.I
Mariner, Fonem, §330,で Phrase 中でのアクセントの対立を指摘している:
fér mé/férme, ádmone bis/admonébis.
4
A. Meillet “Esquiss d’une histoire de la langue latine”, Paris, 1948. P.129,241
3*
G. Devoto. "Storia della lingua di Roma" Bologna, 1944, p.148,286,287
H.Lausberg "Romanische Sprachwissenschaft " 1.(1956) p.95-96
L’ Novák, De la phonologie historique romane. La quantité et l’accent, in
Charisteria G. Mathesio…oblata, Praga, 1932, p.45-47. Novák のアイディアの内の
5
4
スペイン語通時音韻論
て い る よ う に 6(6) 、 話 に お い て は 、 音 質 に 随 伴 的 音 色 (matices
concomitantes de timbre)を与えていた。普通、長母音はそれに対応す
る短母音よりも閉じていた。それで、母音の10個の音素[(*$, '$*, !$, %$*, &$!]
と[(+,, '+,, !+, %+,, &+,]として実現されていた。これとともに、3つの二重母
音は単母音として実現されはじめる。ae[%$,,], oe[%$*], au['"!]7(7)。aeの
単母音化が一般化された時、長母音であることによって前の/%"/! と、
より狭いことによって/%#$/より区別される/%"/$ が音素として現れる。そ
れで、音質(timbre)のちがいは、有意味なもの(pertinente)となり、弁
別的指標(marca distintiva)としての音質を排除することによって、体
系の再組織化8(8)への第一歩となる。
これによって、西方の俗ラテン語(9)に言及する際に9 、次の体系
的結果が得られることになる。
($*
&$*
(+,
'$*
%$*
%$,(<ae) '+,
!$
&+,
%+,
!+
幾つかは、A. G. Haudricourt-A. G. Juilland, Essai pour une histoire structurale du
phonétisme français, Paris, 1949 で発展せられている、また Lüdtke, op.cit., p.56 以
下、p.122 以下。
6
Sergio は次のように書いている:《Uocales sund quinque: hae non omnes uarios
habent sonos, sed tantum duae, e et o 》, また彼は次のように説明している;《e
cuando producitur uicinum est ad sonum i litterae ut mēta, quando autem correptum
uicinum est ad sonum diphthongi, ut ĕquus》A. C. Juret, Manuel de phonétique latine,
Paris, 1921, p.14-15 の引用による。
7
Pompeya で3世紀に、ae >%"$という変化あり(Devoto, op.cit., p.207-208, 及び V.
Väänänen, Le latin des Inscriptions pompéinnes,Helsinki, 1937)。 oe >%"$ という単音
化は、音声体系を動揺させることはなかった。二重母音 au はラテン語とか俗
語では単音化していたが(参照:Festo 《orata…a colore auri, quod rustici orum
decebant》、Juret, op.cit.p.24; Devoto, op. cit. p.233)、ロマンス語の時期までの長
い期間存続していた。ae の単音化の先行性については、Lütdke, op. cit. p.54 以
下の理由を参照。更に Väänänen, Intr. au latin vulgaire, Paris, 1963 を参照。
8
Novák, loc.cit.また Haudricourt-Juilland, op. cit. p. 23 以下、また Lütdke, op. cit.
p.56 以下
9
Haudricout-Juilland の説明、op.cit., o,23 以下。
5
スペイン語通時音韻論
そしてすぐ新しい音素/%"$/(<ae)が/%&$/の長音の相関となる時に、古い
/%"!/はそれと音質が似ている/'#$/音素と短音の対抗音(contrapartida)を有
する。そしてそれは間隔の程度を広げて、長母音の/("!/と平行して、/)#$/
の短音の対立物を持つ、それはまた程度を広げる。
($
&$
'*$/(+,
%$*/&+,
'+, %$, /%+,
!$ /!+
音量的区別を失う時!$ /!+ , %$, /%+,, %$*/&+,, '*$/(+,, のペアーは合一化し、西方の
母音体系は次のようになる。
('">)
u(<)")
i
'!(<(", )#)
(%",'#>) %!
(%#,ae>) %$
',(<(#)
a
古典ラテン語の3つの間隔の代りに、4つの間隔の程度で区別され
る。この体系内では音量はすでに有意義なもの(pertinente)ではない。
アクセントの音素化、つまり音節的音量に対するその独立性は、音
量的違いを失うことによる結果であった。Lüdtke(op.cit.p.122sigs)は、
母音の音質がp&+lumとp&$lumとを区別するのに役立たななくなった時、
cec&+di-cec&$diのペアーはアクセントの位置によってだけ区別されるよ
うになったとしている。つまりcécidi-cecídi。これによってアクセン
トは、自由であり、それゆえ音韻的であった。その上アクセントの
突出(prominencia)によって強音節は弱音節に対して、実現されるよ
うになった。語中の-a- これらはすべて短音とし一般に弱音にした
(debilitadas)。このような弱音化によって4つの間隔の段階を区別す
るのが困難になった。そしてその結果、特に($/(!と %$/%!は 、弱位置で
合一化(confluencia)を作った。このような縮小に対する部分的例外は、
語末母音であった。これらはあるロマンス語では、それらが(語末音
が)文法的記号(例えば単数と複数を-e/-i、男性と中性で-u/o:他で区
6
スペイン語通時音韻論
別する)である限り、それに付いている(付属している)弁別的価値
によってよく区別されて存在した。
他に、母音の音量を失ったことをaeの単母音化に帰せしめることは
バランスを欠いているように(desproporcionada)見える、なぜなら、
ae>%"$ の 過程(paso)は、そのような根本的変形には重要性のない動機
である。それでWeinrich(10)は10、説得力のある、そして母音の音量
と子音の音量とを関連付けて説明している。
ラテン語には両音量(母、子音の音量)の可能な結合が4つあった。
1.短母音+短子音 (r'+ta)
2.短母音+長子音 (g(+tta)
3.長母音+短子音 (s'+lus)
4.長母音+長子音 (st%$lla)
ラテン語の古い時代より、ロマンス語の初期(principios)まで、音
量タイプのうちの1つは他のものに依存するという、ゆっくりした、
そして確実な過程が観察される。
長母音+長子音という結合が、まず閉鎖音の場合に最後に後期ラテ
ン語では自鳴音において排除された。母音の音量または子音音量を
縮小して、*m&$tto>m&+tto、一方m&$ssit>m&$sit、st%$lla>esp.estrella,仏 étoite
(これには*st%$laが仮定される)。1, 2世紀にこの結合は、最初の3つ
のタイプに縮小した。一方単子音の前では長母音または短母音とし
て表われ、2重子音(geminadas)の前では、短子音だけが用いられた。
この過程の2段階目には、短音量の結合が消える。もし2重子音の
まえなら短母音だけが許された。短子音の前では長母音が一般化し
10
H. Weinrich, op. cit. p.12-42. また Haudricourt-Juilland, op.cit.,p.34 以下。母音
の音量と子音の音量の関係について述べている、しかし俗語の母音体系の形成
に際しての重要性については注視していない。次を参照:L. Michelena, Romántico
y circunrománico, in Archivum 14 (1964), また C. Blaylock, The Monophthongization
of lat. Æ in Spanish, in Rom. Phil.18 (1964), p.16-26.
7
スペイン語通時音韻論
た。そしてg(+laはg("$la(古い/($/とはより広いた音質によって区別さ
れる("$タイプを有する)となる。それで、ただ中間の2つの結合が残
った。
1.長母音+短子音(s'$lus)
2.短母音+長子音(b(+cca)
このような状況では、母音の音量は次の子音(長音か短音)によっ
て自動的に決定さえれていたのか、または子音の音量は前の母音(長
音か短音)によって自動的に決められているのだろうか。つまり一
方が他方に依存していたならば、この音量のどちらかが音韻的価値
をもっていたのであろう。
ラテン語の最後の時期に大衆がエリートグループを圧した時、また
社会的に劣った口語の様式(modalidades)が勝利した時、それによっ
て情緒的タイプ(tipo expresivo)の子音の二重化の伝統としての現象が
ふえた。
cat(+lus → catellus
b(+cca → b($$ca
c&+ppus → c&$pus
c(+ppa
→ c($pa 等々
La geminación expresivaは、母音を短音に縮小するのを強制した。こ
lo significativo(有意義なもの)が、
のような場合、
二重音化(geminación)
であるなら、後期ラテン語の支配的であったものは、この2つの音
量のうちで子音の音量であったようだと結論付けられるであろう。
そして、それゆえ音韻的有効性(pertinencia)をもっていたものであろ
う。それで母音的音量は単なる機械的な結果であった(これはイタ
リア語などで、そのまま引き継がれている、イタリア語では子音の
音量または二重子音(geminación)は存続している、fato[*"] に対して
fatto[*#])母音の音量の非音韻化によって、音声学的に長母音と短母
8
スペイン語通時音韻論
音はなくなったが、このような違いは有意義ではなくなった。そし
てラテン語の体系は、子音的文脈によって長母音または短母音とし
て実現され5つの母音になった。たとえばサルディニア語(sardo)で
。
は、各長母音とその対応する短母音は混同した(&$, &+>i: %$, %+>e 他)
しかしながら長音と短音の溶解(fusion)はロマンス語の大部分の地域
で作られたのではない。
その音量が有意義さ(pertinente)を失った時、つまり古典ラテン語の
母音の各音が2つの変種(variante)を示した時に、
1.($
($ ($
2. (+ (+ (+
'$
3. '$
'+ '$
4. '+ etc
'+
これらの区別を保存しようとする傾向の反作用(反応)が作られた。
1と2または3と4の変種が混同するのを避けるために、2と4の
変種は各々[)$]と[($]というように開音になった。
($* ($,
'$*
'$,
1.($
3. '$
4. '+ etc
2. (+ (+,
'+ *
(+ * ',+
その結果:5段階の間隔の体系となる。その体系ではお互いの確実
性の枠(el margen de suguridad)はたいへん小さかった。
(*
-*
(,
-,
'* %*
', %,
a
それで古典語の音量の対立、u/
ŭ, o/ǒ 等々は、間隔の段階である音量
的対立(oposiciones cualitativas)と交替した。(*/(,, '*/',11
11
Lausberg, Rom. Sprachwissenschaft, I. p.96 (§156)によると、短音の開音化
(abertura de las breves)は、多分、オスコ・ウンビリア語(osco-umbrio)の基層の影
9
スペイン語通時音韻論
しかしこのような間隔の段階を保持するのは困難であった。それで
あるものは合流(混同)した。最も一般的な混同は(,='*, -,=%!であっ
た。これによっていわゆる西方俗ラテン語の体系が作られた。
u
i
'* %*
%,
', a
143.
イスパノ-ロマンス語の体系
この母音の俗語体系は、イスパニアではかなりよく保存されている。
つまり6つの音素は半島のロマンス語ではある方法で区別され保存
されている。
カタラン語、ポルトガル語は、6つの音素は音区別する価値を伴
うもの(con valor diacrítico)として存続している12(12)。しかしカス
テリヤ語の現在の地域、つまりそこでレオン方言、アラゴン、カス
テリア、モサラベのいくつかの変種ができた地区では言連鎖(話デ
ィスコース)では、ラテン語の母音の結果としての6つの母音は、
区別されて存続しているが、体系の単位の数は縮小された。間隔の
5つの段階の代りに、スペイン語では音素/%$, ($/を排除した結果とし
て3つの段階を区別しているだけである。
響による。
12
カタルーニャ語の体系については、著者の著書 El sistema fonemático del
catalán, in Archivum, III (1953), p.135-146, Univ. de Oviedo, 及び、La constitución del
vocalismo catalán, en Homenaje a Dámaso Alonso, I, p.35-49. ポルトガル語につい
ては、Helger Sten, Les particularités de la langue portugaise, Copenhague, 1944, 及
び特に H. Lütke op. cit. p.196 以下、また Fonemática portuguesa: II, Vocalismo, en
Boletim de Filologia, 14(Lisboa, 1953), p.197-217,等を参照。ラテン語の/e, o/ は閉
音としてまた、あらゆる/e o/はカタルーニャ語、ポルトガル語で開音として保
持されたと、いわんとしているのではなく、これらの言語での現状の体系は開
度(abertura)に2つの中間的な音声が保持されているとするのである。また次の
著書を参照:Historia y estructura en los sistemas vocálicos hispanos, Estudis
Romànics で刊行印刷中。.
10
スペイン語通時音韻論
この/%$, ($/は、二重母音化による結果としてその実現体は、/ie,ue/と
いう結合と同じ物になる13。(13) この二重母音化は話者の中での
/%$, ($/と、それに最も近い音/%!, (! /と混同するのを防ごうとする欲求を
想定します。つまりラテン語の最後の時代に与えられていた区別を
しようとする意図でありる14。これを単純に強音の母音の伸張のせ
いにすることはできない、するとその時すべての強音の母音は二重
母音 になっ ていた であろ う。なぜ 伸張(alargamiento)は 、/%$, ($/ の
bimatizaciónだけを作り、他の音素の伸張を作らなかったのであろう
か。スペイン語の場合、二重母音化の原因として強音の伸張を退け、
他の動機のうちにその起源を探すべきであろう。15
13
本書の著者の書、Quelques précisions sur la diphtongaison espagnole, in Omagiu
Lui I. Iordan, Bucarest, 1958, p.1-4 に基づいた。
Weinrich, op.cit. p.40 で述べられている。/%$, ($/の二重母音化の時期について
は、G. Straka, Observations sur la chronologie et les dates de quelques modifications
phonétiques en roman et en français prélittéraire, in Revue des langues romanes, 71
(1953) p.247-307、特に p.268-269 を参照:《La diphtongaison de ò a pu se produire
…vers de début du IVe siègle, tandis que celle de è doit remonter encore plus haut dans
le passé, sans doute jusqu’au milieu du IIIe siècle.》
15
Schürr の見解はよく知られている:(La diphtongaison romane, in Revue de Ling.
Rom. 20, 1956, p.107-1144, p.161-245, スペイン語については、201-25 を参照)。
14
/%$, ($ /の二重母音化と、フランス語などの自由音節(silaba libre)にある他の母音
の二重母音化とを画然と区別しなければならない、ということには同意する。
しかし/%$, ($ /の二重母音は語末または yod の inflexion を起源としてできたとの
見解には同意できない。別のケースの場合に、そのようになっているとしても、
それにこのような見方を適用することはできない、少なくともスペイン語にお
いてこれを適用することはできない。スペイン語では、yod の前で二重母音は
存在しないので、この考え方を受け入れることは出来ない。Romania では少な
くとも当初から、/ %$, ($ /を二重母音化した実現体が存在していたとできるであ
ろう、これについて、Weinrich, op.cit. p.40 で伸張(alargamiento)の場合(つまり、
単子音の前で)、また全ての位置での変化を考察していることである。スペイ
ン語の場合には、母音の音量に関する全ての母音の nivelacion(標準化)は、大変
の早い時期にあったようである、それで二重母音化は、libre、trabada という2
つの音節で起源的に現れたのであろう。これについて、次を参照:D. Alonso,
Diptongación castellana y diptongación románica, p.23-45, これは ELH, I, Madrid,
1962 の補遺(suplimento)として出版されている。また、A. B. Badia, Nuevas
11
スペイン語通時音韻論
より遅く二重母音化を発達させた方言地区では、その母音体系が(現
在のバスク語のように)ただ3つの間隔の段階を区別しており、母
音の音量を無視していた言語が話されていないと仮定することがで
きる。
ラテン語の音量的体系との最初の接触で土着民は長音とそれに対
応する短音を一致させていた(バスク語に入っているラテン語の語
彙において起っているように)
。16
口語ラテン語が4段階の間隔をもつ音質的体系(sistema cualitivo)と
して一般化されると、土着民はそのラテン語の中間に2つの音を彼
らの唯一つの段階の音と同じにしてしまった。しかし恒常的ローマ
化や多少十分なローマ化の数世紀後にę/ẹとo$/ọ の相違に気づくよう
になった。しかし彼らはこれを正確に再製できなかったが。
ラテン語の体系を支配し、弁別的なものを再製しようとした2言語
併用者は、2つのペアーになった音素を特別に注意深く調音するよ
うになった。このような意識的な努力は/%$, ($ /の調音を強調した。器
官は土着の唯一の母音/e,o/の位置を採用していた、そしてすぐに
/%!, (!/に関する区別を達成しようと努力して、その位置を矯正し、そ
れによって母音は、その呼気の間(en el curso de su emisión)変化す
る間隔となった。多分ラテン語のモデルは、この間隔の変異を知っ
ていたということを示した、しかし多分これは自由音節においてだ
けであったろう。
それで土着民は、/%$, ($/の実現体をbimatizaciónなしか、またはそれ
を伴っているかで交替していると聞いていたであろう。多分カステ
precisiones sobre la diptongación español, in RLiR 26 (1962), p.1-12.
16
現在バスク語を話している人の祖先と、カスティリア語を作りだした別のイ
ベリア半島の先住民に対して、ラテン語が浸透する時の状況は同じであった、
ということはない。バスク語にたいするラテン語の当初の浸透は、すぐに中断
されたが、/ĭ/と/ē/がまだ異なった音であった時期の古語の段階を保持している。
12
スペイン語通時音韻論
リア語が広がるにつれて土着民は前に存在していた二重母音化した
実現体で真似した、しかしこの二重母音のこの変化を続けてやった
という事実は、イスパニア語の特有の動機(motivo)-a- のゆえで
あり、俗ラテン語のすべての変異に一般的な動機のゆえではないの
である。
/%$, ($ /のこの不完全な模倣は、まず原理的にはラテン語を知っている
話者にとって、母音の音声的分裂としてよく知覚されなかったであ
ろう。そしてそれゆえ、それはその実現体における動揺であり変種
体である。後の世代西方の政治的分割化がラテンの植民地人の
nivelador の 影 響 の llegado を 妨 げ た 時 、 /%$, ($/ の 始 め の 強 調 的
bimatizacionは自由に、その変化をとげていった。母音の極端(複数)
間のより大きな多様化とそのうちの各々の音質の安定。
カステリア語(その隣接ロマンス語の間で)他の場合と同じく、そ
の要素を他の母音/i,u,e/と同一視し、/%$, ($/の非音韻化の仮定を実現さ
せ、二重母音を安定(固定)させた最初のロマンス語である。
144.
/%,, '$ /より/ie, ue/まで変えた音声過程は長い間議論された。M.Pidalは
この問題の状況を要約している17。(17) そして最初から二重母音の
最初の要素(i, u)にアクセントがあったとする人に対して、彼はこの
ような二重母音は必然的にcrecientesであったと考える。このアクセ
ントにより、もっとも開いている母音eにおかれた(アクセントが)
。
ó'$>úo>úe>wéやé%,>íe>jéという発展に対してM.Pidalは次の様に設定
する。'*'.,>wó>wá>wéと%*%+$>jé>já、しかし最も旧い時期でのアクセン
トの動揺を許していた。(p.124)
17
R. Menéndez Pidal, Orígenes del español3, Madrid, 1950, p.110 以下、(§22 以下)
13
スペイン語通時音韻論
彼はacentuacion decrecienteを排する。<なぜなら、この閉じた音素
はもっと開いた母音の自然的代表物や連続物ではないからである>
(p.111)
この理由づけた説得力のあるものとは見えない。というのは一面
開音より来た閉母音の例があり、またそれゆえその<自然的連続物
>(カタラン語/%! /←ラテン語の/e/より来た):また一方二重母音の
2つの要素が同じ母音より来たならば、なぜアクセントがあると考
えられる音が弱音であると考えられる音よりもより母音の自然的連
続物であるげきかわからない。
《生理学的傾向は、より開いた要素にアクセントを置く傾向にあ
る》ということは確かである。しかしアクセントの変化を証拠とし
ている例では、fué, bául, réina等々においては、話しの早いことによ
って二重母音が母音のhiatusに分解することを取扱い、一方/%$, ($/の
二重母音化は他の事柄である。つまりアクセントのある要素が、そ
の間隔に関して分裂するのである。一方、もし第二の要素が母音の
自然的連続物なら、なにゆえ、初期の色々に変化する綴字(grafia)
に反映されているように、その時<本源的弛緩>や<音質の変化>
を示しているのか。現実はM. Pidalの他の確信の内に見出される。
1)二重母音は《調音的強調よりきたのであり、器官の怠慢の故は
ない》(p.124,nota2)
2)《アクセントよりも間隔または音質について話したほうがよいぜ
なら二重母音のこの要素、あの要素が排他的にアクセント
を伴っていたというのは、適当ではない》)p.126)
これによって、アクセントの問題には手を付けない。
3)《その初期の時期に、音素の本質的内部調音的変異性を受入れ、
それを理解すべきである》
すでにわれわれは、1と3については、それとなく仄めかしてきた。
14
スペイン語通時音韻論
2と4に関しては、アストリア方言の最も旧い地域では今日二重母
音化の初期の状態を保存している。
[pwórta] [pwörta][pwérta][púorta][púörta] [púerta]等々は共存している
変種であり、これを外部の方言学者は、しばしばアクセントの置く
場所を動揺させて18、ある時は二重母音としてまたはhiatusになって
いる母音として認めている。
スペクトログラフのような器機を使って、この変種は呼気の強さの
分布ではなく、各要素の固有の音質の相対的持続であることが見ら
れる。さて、それらの要素を正確に記述するために方言学者の困難
さに反映されている二重母音のこの動揺は、カステリア語の初期の
状態をもまた性格づけていたであろう。
これによって、timpo, cilo, pusto, pudetのような不完全な19、また見
慣れない綴字またはcelo, corpoのような明らかにラテン語の綴字は
第二の要素のo, e, aの間の変異性(20)が生まれている。この初期の段
階(即ち、多少変わり易い[i/])は、種々の現象を説明するであり
ましょう。
1つは、語尾-iello(同じような場合)が-illo(21)に縮小するというカ
ステリア語(5世紀のテキストに既に現れる)(22)の初期の現象であ
ります。もしこの前の段階が明らかに異なった、そして強音の/e/を
もつ-iélloであったなら、アクセントのある母音の消失(23) はおどろ
18
Cf., 例えば、Rogríguez-Castellano, Aspectos del bable occidental, Oviedo, 1954,
p.69 以下。また参照:P. Menzerath, Der Diphthong, Bonn-Berlin, 1941, p.38-39, casos
analogos en que las condiciones del sistema propio del investigador obligan a este a
interpretar como hiato lo que los indigenas consideran diptongo.
19
このような綴字を見ると、i, u にはアクセントがあったように思える
(insistimos en que es indiferente: la intensidad de la silaba abarca las dos vocales);
Menéndez Pidal(p. 46-47)は, このことに言及して、二重母音を転記するに際して
の書記の未熟さによって、《目立つ要素、またよりエネルギッシュに調音され
る音 u》または i を固定させた、としている。エネルギーが調音保持時間とい
うことであれば、そのようであったろう。
15
スペイン語通時音韻論
くべきことでありましょう、一方[i/]より出発しているなら縮小は
よく理解できます。(24) それで第二の要素は(変わり易い音質であ
る)その文脈の硬口蓋的性格によって同化されていたでありましょ
う。他の例は、色々な起源の他の二重母音の/ue/への牽引(atraccion)
であろう:agoiro>agüero: Zalduondo>Zalduendo, fóe>fué.この牽引は
/ue/への変化において、もし/($/が[ói, óe, ui]等々のように変種をもっ
ていないとするなら説明は容易ではないであろう。
145.
音韻論的に,/%$, ($/は二重母音として実現されているが長い間音素的単
位として機能していた。ただあるものは音声的環境、他のものは話
のテンポ(tempo elocutivo)によって、また別のものは社会的媒介
(medio social)によって条件付けられている実現体の全ての変種は、
規範として唯一となりはじめた時、そして二重母音の要素を他の音
素と同一視する時、体系は音素/%$, ($ /を失うのである。しかしながら
それら実現体は話ディスコースでは区別して保持せられた。俗ラテ
ン語 '*ssu(<(#rsu)と,',ssuは, ossu/uessoとして区別された。二重母音の
要素(複)の安定は、疑いもなくM.Pidalが言っているように(Orígenes
p.122)《言語の決定的な文学的文化》によって助長された。それら
の変種の1つを一般化することによって得られた。カステリアでは
その要素を他の/i, e, u/と同一視することにより、二重母音/ie, ue/は
独立した音素的単位であることをやめ2つの音素の連続/i/+/e/ と
/u/+/e/の結合の実現体となった。これによって現存のカステリア語
の体系が設定された。
u
i
o
a
e
16
スペイン語通時音韻論
弱位置では、常に%,/%!と',/'!は同一化し、その結果の/e/, /o/は、音素/i/, /u/
と共に動揺した。語末位では、この動揺は早くから口蓋母音と合併
し/e/または軟口蓋母音(24)と合併して/o/となっていた。しかし現存
の体系は教養語、他(§95)によって語末で/i, u/を許している。(25)
146.bis
146
146.
ラテン語の子音体系からロマンス語へ
母音体系の発展は比較的簡単であるが、子音体系の変化と修正
(reajuste)は大いに複雑さを示している。
古典ラテン語の子音音素の目録は次の系列(serie)を示す。
w
1)無声閉鎖音/p, t, k/(と/q /、もしこれを単一の音素的価値がある
と見るならば)
w
2)有声閉鎖音/b, d, g/(と/g /,もしこれを一つの音素と考えるなら)
3)摩擦音(無声の実現) /f, s/
4)鼻音 /m, n/
5)流音 /l, r/
位置の序列 ordenes de localización
1)唇音序列 /p, b, f, m/
2)歯音序列 /t, d, s, n, l, r/
3)舌背序列 /k, g/
w
w
4)唇軟口蓋序列 /q , g /
17
スペイン語通時音韻論
これに加えて、早い時期から消えていた気息音/h/があった。
半母音の[j] [w](非音節的位置でのi, u)は、古典ラテン語では音素
として考えることはできない。(26) 同じく唇軟口蓋音[qw,gw]の単音
素的価値についても疑問がある。(27) この体系では唇軟口蓋音をは
ずせば三角形である、そして次の弁別的特徴を有することがわかる。
a) 3つの位置 唇、歯と舌背
(二項的にやれば、これらの特徴は次のように対立する)
集約性/拡散性(denso/difuso)
低音調/高音調(grave/agudo)
b) 鼻音性とその欠如
c) 連続音と中断音の対立。これは/s, f/という連続音とそれに対応
する閉鎖音に対立させる。そして/r, l/ 間でお互いに対立する。
d) 有声性/無声性の違い。これは閉鎖音内でのみ弁別的
e) 流音と他の子音的音素の区別
次に疑わしいものは( )に入れてラテン語の体系を示す(28)。
歯音
閉鎖系.無声
唇音
歯音
p
t
非唇音 唇音化音
k
流音
(qw)
r
w
閉鎖系.有声
b
d
g
(g )
摩擦音系
f
s
(h)
-
鼻音系
m
n
-
-
l
口語ラテン語では、この体系はすぐにその音声的実現体に関して変
化(modification)を示すようになる。この厳密に言って音声的現象は、
時間と共に音声的indoleのperturbaciónを作るようになる。
これらの音声変化が一般化した時期をかなり正確に示すことは可
能である、しかしどちらが俗ラテン語の音韻体系であったか、また
はいつ古典ラテン語を交替したかを知るのは不可能である。これは
18
スペイン語通時音韻論
影響を受けたいろいろの変化は同時に起きなかった、つまりあるも
のは急速に固定し、全ロマニアに広がり、あるものはロマンス語期
までは音韻的有効性を持たなかった、そしてロマニアの全地域に広
がることはなかった。このようにしてここで表わしたのは俗ラテン
語についての音韻体系であり、また作られた色々の音韻変化が向う
点である。そのような体系は種々の要因の干渉によって帝国のいか
なる地区においても完全に凝結しなかったけれども。
(el punto a donde se encaminaban los distintos cambios fonologicos
producidos o iniciados, aunque tal sistema no llego a cuajar plenamente en
ningun region del imperio por la interruncin de diversos factores.)
147.
まず最初に、半母音(子音的機能をもつ母音)[j] [w]は俗ラテン語
において狭い実現体(realización estrecha)これは半母音を多少強く摩
擦音調音や完全に母音/i, u/ とことなったものに変えてしまう。少な
くとも1世紀後半頃には完全な子音として調音されていなかったよ
うである。
文法家(たとえば5世紀のPonpeyo)や綴字は、2,3世紀ころよりこれ
を示している。他の音との混同によってこれを確認される。
ZANUARIO :
Januarioに対して
ZERAX
:
Hierax
SUSTUS
:
Justus
CODIVGI :
coniugi
etc.
これらは[j]によって達した摩擦(または破擦音)性格を示している。
同じくVelio Longo(2世紀の始め)は[w]《sont cum aliqua aspiratione》
と言っている。そして碑文はすでに1世紀よりuとbの綴字の交替を
示している。
19
スペイン語通時音韻論
BALIAT(ualeat), IVVENTE, LEBARE, IVBENTUTIS, BICTORINO,
VENE (bene),etc.20(29)
これらの混同は2つの現象を反映している。
1)有声摩擦子音の出現、軟口蓋音と唇音、唇音は無声音素/f/の有
声の相関として体系内に容易に入って来る。
2)前の音素/b/は場合により弱化する。もしこれが書記において新
しい音素/v/と混同すると。
しかしながら、すでに見たように両者の全面的な混同はない、そし
てあるロマンス語では語頭位で/b/と/v/の区別を保存している(例:
仏語boire-vivre)有声摩擦音系列の創造と硬口蓋序列の創造のため
の最初の変化(pasos)が見られる、一方/b/=/v/の混同(合一)の最初
の証跡が見られる。つまる/v/は[,]と実現され/b/はポーズや子音の後
では閉鎖音[b]と、また母音の後では摩擦音[,]と調音された。つまり
最初の文脈では/b/-/v/の区別は不可能であった。もし/b/が[,]に弱化
しているなら、この系列の他の音素/d/と/g/は同じ母音間の文脈で同
類の弱化を受け[,],[-]と調音されるであろう。21
148.
古典ラテン語では、hiatusになっている母音は時々二重母音となっ
た。larua (Horacio), saluos(Catulo), deinde, eorum (bisilabos),etc.弱音節
の全ての場合。30 bis (30)
Intensidadアクセントの増大によって多分hiatusになっているすべて
の母音は半母音となり大変縮小された調音となり消失しえた。
20
Juret, op.cit. p.30, 34, 156; Devoto,op.cit. p.291; Meillet, op.cit. p.251-252;
Sommer, Handbuch der lat. Laut- u. Formenlehre, 1948, p.156, 163, 198; Kent,op.cit.,
§60, 44, 61
21
参照:Koch, Zur Theorie des Lautwandels, p.160, 190 以下
30 bis
Sommer, op.cit. p.118, 131 以下
20
スペイン語通時音韻論
pariete>parete, quietus>guetus, guattuor>quattor等、ある場合には反
対にこの新しい半母音は子音になった。まえの半母音の運命に従っ
て(manuale>manguale-対-manuaria>manera)22(32).
Hiatusより生まれた新しい[w]の場合をほっておく、そしてわれわれ
はiatusになっている/e, i/よりきた新しい[j]をよりどころとする。
(dejemos los casos del meno[w] nacido de los hiatos, y atengamonos al
meno[j] procedente de /e,i/ en hiato.)
この[j]は種々な結果に導いて、まえの子音を染め始める。一つはす
でに口蓋化した前の子音と[j]の全面的融合、もう一つは子音のまえ
の硬口蓋要素のtransposicion、つまり図式すると、23(33)
N. [1]
y
=
N + y> N >
y
N [2]
第一の場合、yodはそれに先立つ子音の1つの特徴(口蓋性)を縮小
して消失する、2の場合は反対に子音には影響しないけれども母音
に影響を与える、それによって接触し、子音がその調音点のゆえに、
口蓋音化を受け難い時に一般におこる。俗ラテン語では(?de cuando?)
口蓋化がある子音のときでは作られ、そして全てのロマンス語では
作られないならば、旧い子音に対立して口蓋化した子音の全ての系
列が存在したとは見ることができない。24(34)
さて、口語ラテン語は非音節的機能の前の/i/の子音化によっておこ
った硬口蓋子音の1序列を創造する傾向にあったが、一時にすべて
これが音韻論的に現れたと言うことはない、ということは明瞭であ
22
参照:J. G. C. Herculand de Carvalho, Coisas e palavras, Coimbra,1953, p.146 以
下
23
参照:Martinet, Economie, §6.19
A. Burger, Phonématique et diachronie, in CFS, 13 (1955), p.22 以下で提案された
硬口蓋音の相関関係(correlacion)をわれわれは拒否する。また次を参照:E.
Petrovic, Le roumain a-t-il hérité du roman commun la corrélation palatale des
consonnes?, in Revue de Linguistique, 3 (1958), p. 5-11. Cf. W. Koch,op.cit. 232 以下
24
21
スペイン語通時音韻論
る。長い期間、口蓋実現体は体系を動揺させなかった、というのは
これらは単に結合変種または歯音系列と軟口蓋系列との間に大きな
margen de seguridadが存在していたからである。25(25)
これらの口蓋化のもっとも旧いものは、グループ/tj/である。それら
の例は、失われた。(CRESCENTSIANNUS(140d.c)の綴字や4世紀の
多 く の 綴 字 、 PRETZIOSA, VICENTZA, TERENSVS, TERSIO,
MARSALIS (Martialisにかわて)他、これらは文法家の証拠と一致す
る。たとえばPapirianoは次のように言う。
《lustitia cum scribitur, tertia syllaba sic sonant quasi constet ex tribus
litteris t z i》 また Pompeyoは、
《Quotiens cumque post ti uel di syllabam
seguitur udcalis, illud ti uel di in silibum uertendum est.》26(36). これら
の証拠は、次の[j]によって染まった[t]は、多少のsibilante音を作った
(これは綴字のsやzに、またPompeyoの<sibilum>という言によって
反映されている)ということを示している。ただ/j/が前の子音に吸
収された時にだけ口蓋音化された新しい子音について話すことが可
能である。しかし必ずしも硬口蓋音ではない。/tj/ともっと後で口蓋
音 化 し た /kj/ の 綴 字 が MUNDICIEI(136 d.c) FATIO, NUNCIARE,
DEFENICIONES, IVSTICIAのような綴字の交替がある場合でも、両
者の全面的合一も確証することはできない。というのはあるロマン
ス語では、その変化結果を区別して保存している27。(37) というこ
25
硬口蓋音化のためには、先に述べたことの上に更に必要なことがある:次
を参照のこと、Haudricourt-Juilland, op.cit., 79 以下、また Martinet, Occlusives and
Affricates with reference to some problems of Romance Phonology, in Word, 5 (1949),
p.116-122, Cf. Koch, op.cit.,p.219 以下
26
Juret, op.cit., p.161.による引用。また次を参照:Sommer, op.cit.,p.218, 219; R. G.
Kent, op.cit.,§47.II; Juret, p.34, 160-161; Devoto,op.cit., p.301 は硬口蓋音化の地方
での起源について言及している。
27
すでに Sommer は、指摘している、p. 218 及び 219: /kj/《blieb noch palatales
k+!", als t!" sich bereits assibiliert hatte… Erst sehr spät ist der Übergang zum
Zischlaut zu belegen》
22
スペイン語通時音韻論
とはつまり/tj/がただ1つの子音を形成していた時、/kj/はまだ硬口
蓋音化はしていたが2音素的(difonemático)価値を有していたという
ことである、一方/tj/の実現体は前硬口蓋地区より後にいってはいな
かった、それはむしろ歯茎破裂音[/!s]のような音であり、一方/kj/は
より奥の方の調音点を有する完全な口蓋破擦音であったであろう、
つまり[ty]、この摩擦音的apendiceはsiseanteよりは、<ich-laut>に近い
タイプの音であったであろう。有声のグループ/dj//gj/は完全に/tj//kj/
によって口蓋音化した。すでに見たように/d/と/g/は/b/音素と同じく、
より弱く摩擦音の[0]や[1]と同じく調音されるということは可能性が
ある。[02]や[12]は閉鎖を欠いているので、口蓋伝染(infección palatal)
は最初の要素と二番目の要素を完全に同化し、旧い子音の/i/のそれ
と類似している二重子音[yy]という実現体になるのが可能であり(あ
るロマンス語の結果より仮定されるように)[3434y]または[5650]という
タイプの破擦実現体と交替される。/dj/や/gj/の完全な口蓋音化は、
旧い/i/との綴字の一致によって確認される:AIECTUS (por adiectus)
IVSUM(por dearsum) AZUTORIBUS (por adiutoribus), GLOVE (por
love) MAGIAS (por maias) ZANUARIO (por Januario)
OZE (por
hodie)etc.(38).
Yod(これは時により、吸収されるかまたは消失する)による子音
のinfeccionするという同じ過程に/lj/と/nj/のようなグループの口蓋音
化が属している。これは縦に(a la larga)口蓋音化を音素化した。[1.]
と[2.](例えばfiliu、uinea)これらの口蓋音化がすべてのロマニアに
(ちがった実現体を伴っていることは明らかであろうが)広がった
時に、口蓋音化の二次的過程が起きた、ということは/e,i/の母音が
まえの子音/k,g/に及び、そしてその調音点を口蓋(paladar)に、また/kj/
と/gj/の同じ位置に変えた(desplazan)
。
23
スペイン語通時音韻論
(例:[7450∼574∼556 ],[2.3∼
0 584∼848]4
しかしこれと口蓋音化の第一次的過程は全面的に違っている、その
年代と本性において。
/kj/と/gj/の全面的口蓋音化は、グループの両構成要素の融合によっ
て唯一の口蓋音になった。 現在前母音の前の/k/と/g/の口蓋音化は
elemento indictorの/e,i/の消失をたえしのばず、保持された。これは
後の現象である。綴字はこれを5世紀より証明している。
INTCITAMENTO,
DISSENSII
(por
discessit)
SUSSITABIT,
SEPTUAZINTA, TRIENTA (=triyenta)28(39) そしてこれをどの文法家
も証言していない。
Procopio(6世紀)は、/kj/のためのasibiladaした綴字を示し、/ke/を
まだ軟口蓋音として記述している29。(40) あるロマンス語地区では
この二番目の口蓋音化は普及するにいたらなかった、サルド語やダ
ルマチア語の軟口蓋調音やラテン語のゲルマン語、アルバニア語、
バス ク 語で の 借用 語 の軟 口 蓋音 調 がこ れ を 示し て いる 。( 例 え
ば,pake)
。
イスパニアでは西ゴートの名前の/ke,ki/を冒してはいたが30、ゲルマ
ン族の侵入以前に一般的になっていなかった。
/e, i/の前の/k, g/の軟口蓋変種はなぜ広がったのかを明らかにしなく
てはならない。このような文脈において/k, g/は、より前のほうで調
音されるのは自然なことである。しかしなぜこのような口蓋化をふ
やしたのか、すでにわれわれは半母音の[w]が子音と結んで弱化す
るという現象を引いた。
/qw/という結合では、一般的だった(ある場合を除いて)
。それによ
28
29
30
Sommer, op.cit. p. 181, 198
A. Alonso, Las correspondencias…, in RFH, 8 (1946), p.38 n.1
R.Lapesa, Historia de la lengua española, 4 ed. P.90-91
24
スペイン語通時音韻論
ってqueやceという古典的な二音節は区別されなくなった。その時
/que, qui/がその[w]を失い[ke, ki]と実現された時に、古い/ke, ki/はそ
の調音点を更に前進させ、[94%,94-]となる、そして完全に硬口蓋音で
はなくなる、それによって一方では、/kj/の硬口蓋音の実現体を脅か
すことになる。このようにして、連鎖的に下記のような反応が形成
されたのである。31。
/qui/
[ki]
/ki/
[:. 54 ]
(/kj/ [:. 54] [:! s]( /tj/)
149.
古典語の体系に一瞥して、この音声的変革はそれが勝利し、一般化
するための体系的仮定を有している。
つまり有声摩擦音素も口蓋音素もなかった。それゆえ、非音節的位
置の/u/は混同の危険もなく、そのcerrazonを増大させ、/v/に変化し
た。そして舌背音や歯音のある変種は、まえに存在していた音素と
合一するおそれもなく口蓋系列にその調音位置を変えることが可能
であったのである。それゆえ空いた位置(casillas vacias)があった:unas
tierras de nadie hacia la que ciertos fonemas podian ampliar su campo de
dispersion sin cruzar el margen de suguridad que los separaba de otros.)
(ある音素が他の音素より分けている安全圏を交差することなく拡散
の領域を広げることのできる地域)
31
A. Martinet, Function, Structure and Sound Change, in Word,8 (1952), p.11-12, 及
び、Economie, §2.29. Cf.Koch, op.cit. p.215 以下
25
スペイン語通時音韻論
ここに口蓋音系列のために、この過程の図式を示す。
軟口蓋音
[ka]
硬口蓋音
歯音
[ta]
半母音
/t/
/k/
[kj]
,i
[ke ]
[ga]
[tj]
[da]
/d/
/g/
[gj]
[dj]
[j]
e,i
[g ]
e,i
e,i
もし/kj//tj/とまた/k /一方/gj//dj//j/と/g /の間の区別をしようとしな
かったならば、各々一つづつの口蓋音素となっていたであろう。そ
れで全ての実現体は同じ調音点を進んだ。原理的には/kj/と/tj/と/ke,i/
に関しては区別した、しかし常にお互いに区別する小さな確実性の
e,i
外縁を保存したのではなかった。第一次的経過では/tj//kj/と/k / 対
して、次の実現体があったであろう。
[:* s]
[:. 54 ]
[9.]
e,i
/k /の調音点を/kj/のzonaに進める時、/kj/もまた前進し、/tj/と合一
するようになるということが起こった、例えばルーマニア語で起こ
っている。/tj/=/kj/一般に[:* s] されている(綴字t)
、一方/ke,i/は[:.s] と
実現され(=[50])ている。
しかしこのような合一の前に、ある地区ではこれを避けようとし
た。最初にyodによって導入された二重子音により、これは/ki/に作
用した(この口蓋摩擦音的apendiceを保存しようとして)、しかし/tj/
に対してではない。(より口蓋音化しようとしてすでに唯一の音と
なった、そしてyodなし。
)
このようにイタリア語で/tj/は[:!s]と実現され、一方/kj/は二重子音化
26
スペイン語通時音韻論
e,i
して[:4:4;)]となり、/k /は[:4;6]として保存された。
西ロマニアでは、すぐ見るように母音間の単純子音の有声化を作
った。/tj/や/kj/は別々に保存されたなぜなら最初のは有声化し、二
番目のは無声子音として単純化した(仏語、カタラン語)
。
e,i
すぐあとで/k /は有声化し、その調音点を前進させ(/gj/他の変化結
果と混同させないように)/tj/(つまり[c0]の実現体と同一となってし
まった。しかしスペイン語では(ボルトガル語)/kj/グループの場合
のyodによる二重子音化は部分的にしか作用しなかった、多分有声
化はもっと早く広がり始めていたか、または/kj/の要素は早くより合
体していた。そしてその結果はすぐ/tj/のそれと合一し、より遅くな
e,i
って/k /(つまり[3*z])のそれ(結果)と同一になったからであろう。
それゆえ、次の様になるであろう。
/tj/
第一相(共通)…
[t7s]
第2相(中央) [t7s]
[t.y4]
[t7s]
[t4y<]
[t4s0]
[t4s6]
[t7s]
[t44ts4 0]
[t s]
第3相(有声・西語)
[k.]
[t4ty4 <]
第3相(rumania)
第3相(有声・仏語)[t
/k /
[t4y<]
第2相(周辺) 第3相(italian)
e,i
/ki/
s
-]
[t4s6]
[-d z-]
[t s-] [-d z-]
[t4s6]
[t4s0-] [-d4z0-]
[t4s6-]
[d4z6-]
[t4s6]
第4相(西語)
別の
起源
[t s-] [-d z-]
[-d4z0-]
/gj//dj//ge,i/の場合:変革の過程はもっと簡単であった。最初の2つ
27
スペイン語通時音韻論
のグループはお互いに合一し、また同じラテン語の子音的/i/と合一
した。それで前者の2つには2つの実現体[yy](または[d4d4y])と/ge,i/
には[y]があった。これは一般に区別して保存された。あるいは最初
のを二重子音化し(たとえばイタリア語で)て保存し、それを単純
化し二番目のを消失してしまった(例えばスペイン語)(43)
このようにして、われわれが二番目の面と呼んでいる前ロマンス
語期に限定して、新しい音序列(口蓋音)を作った。そして古典的
三角p/t/kは四角、p/t/t4s=/kと交替した。要約して、ロマニアに一般的で
ある<prerromance>体系、言いかえればロマンス語にすべて共通な体
系(diasistema)(§89)は次のようであったろう。
唇音 歯音 口蓋音 軟口蓋音
閉鎖音・無声
p
t
t4s
k
閉鎖音・有声
b
d
d4y
g
摩擦音・有声
v
-
y
-
摩擦音・無声
f
s
-
鼻音
m
n
n4
流音
r
l
l4
-
150.
このような傾向と一体となり、体系よりも西ロマンス言語の研究よ
り始めなくてはならない。ここの所ではわれわれはディスコースで
の状況より独立した音素を変えて体系にはね返っている音声的変化
を考慮してきた。しかし旧い半子音/i.u/の補強や考慮された口蓋化
の よ り 後 で ( pero con posterioridad al refuerzo de las antiguas
semiconsonantes /i,u/ y a las palatalizaciones consideradas).ディスコース
での位置(つまりsucesividades)のeje(軸)のシンタグマティック
的関係より独立して)によってある音素の実現体を変化させたのと
28
スペイン語通時音韻論
同じくらい重要な他の変化が作られた(44)。
語中において、ラテン語は多くの子音的グループを示していた(45)。
帝国時代に同化の過程によってそれを作っていた子音を同一化する
傾向を発展させた。
lactuca>lattuca(s.III), scriptus>scritus, vixit>visit, ipse>isse, sursum >
susum, persica>pessica, ansa>asa, infans>ifas, infer>ifer.
語と語の間でもおこった。イタリア語でdoppiamentoと呼ばれている
ものがこれを示している。tres kkani<tres canes, e ttu< et tu.(46).
このような田舎的同化のうち、もっとも旧いものはpt, rs, ns, nfの同
化のようである。これによって他のもののうち/f/のような古典ラテ
ン語ではまれな(たとえばrufus、これはラテン語起源ではない)あ
る音素が母音間の位置で頻繁におこるようになる。
他の同化は後のことであったに違いない。というのはその広がり
は西方に課すにはいたらなかった。もし/kt, ks/がガリヤまたはイス
パニアに[tt][ss]として発達していたら、そこで発達したロマンス語
はもとからある二重子音の/tt/と/ss/と混同していたであろう。この
ことは生起しなかった。
西方ではそれゆえ/kt, ks/は同化しなかった、そして他の傾向を発達
させるのに時間があった。同化ではなく弱化である(47)。これは最
初の子音を弱化させてそれを母音化して[i>t][i>s]に至った(48)。
このようにして二重子音の過多または口蓋音(yod)の要素をともな
う新しいグループという結果を示した。
一方母音間の位置では色々な系列が別々に機能していた。
(1)有声閉鎖音 (2)無声閉鎖音 (3)二重子音(49)
他の子音と共に可能性は2つになるであろう。
(1)単純音 (2)二重音
つまり古典ラテン語では
29
スペイン語通時音韻論
-b-
-d-
-g-
-p-
-t-
-k-
-s-
-m-
-n-
-pp- -tt- -kk- -ss- -mm- -nn-
-l-
-r-
-ll-
-rr-
これらの系列に帝国時代の口語ラテン語では新しい口蓋音素を加え
な け れ ば な ら な い で あ ろ う 。 /c0/ と /c0c0/ ( procedentes de las
palatalizaciones estudiadas) /y/と/yy/または /d.y/と/d.d.y/(/ge,i/ と/gj, dj,
j/より派生)
帝国時代よりロマンス語の初期までに、3つの音声学的現象(母音
間の位置でのこれらの子音の弱化によって性格づけられる)があっ
た。
(1)ある有声閉鎖音の摩擦音化(ラテン語では/b/は[b]になった)
(2)無声音の有声化 (3)二重子音の単子音化
手近にあるドキュメントは、この順序でこれらの過程を示している。
しかしながら音声変化の一般化における緩和(lentitud)とこれらの現
象の体系的関係を考慮しなければならない(51)。ということは、こ
れらの3つの現象は、関連し合い、あるいは他を引きづっている。
西方で典型的な有声化の現象は単純化する傾向の二重子音があった
こと、またこの二重子音は前の無声単子音が変化したこと(弱化す
る有声閉鎖音をおしのけて、または引きつけられて)のゆえに勝利
したのである。
つまり1つの唇音序列に限定して:
-pp- →
-p- →
-b- → -b- → %
この図式はラテン語の3つの母音間の/pp//p//b/の可能性が[p][b][b]に
変ったということを示している。
この[b]は、子音が/u/よりきた摩擦音と混同してしまった。
体系内の大きな統合はロマニアでは[b]を唇歯音の[v]に変えてしまっ
た。無声の/f/の有声の同一器官の音として。
30
スペイン語通時音韻論
まず最初に、実現体のdeslizamento(推移)は体系を変えなかった、
それで母音間ではない位置では音素はその旧い実現体を保っていた。
つまり純粋に音声学的な現象がおきた。これによって各音素は2つ
の変種を示した。1つは強音(ポーズの後、または子音の後)と弱
音(母音の後) これはケルト語に似ている現象である。これによ
ってある学者はこのロマンス語での発展をケルト語基層に帰してい
る(52)。
しかしロマンス語の現象はケルト語がなかった地区にも広がり、ま
た-その音声的実現体は一致しないが- Weinrich(53)が言っているよう
に同じvariaciónは非西方地区にも現われている。
有声化の現象を区別することはできない。イタリア語の現象、た
とえばgorgia(トスカニア語)そこでは各音素は2つの変種つまり強音
と弱音を示している(後者は有声化しているのではなく気息音化し、
後に摩擦化している)
a kkasa (<ad casa)に対して la kasa (<illa casa)それゆえ西方の現象の
ケルティズム(celtismo)はたいへん相対的である。
基本的なことはラテン語のすべての音素は子音やポーズの後より
母音間の位置ではより弱く実現されたということである。このよう
な状況(そこでは変化は純粋に音声学的)は例えばトスカニヤ語で
つづき、しかし他のロマンス語では存続しなかった。このvariación
は(他の音素のconcurrenciasによって)強音と弱音の変種の音素化
音素化
に導いた。これはつまり(唇音序列に限定して)
語頭(子音後または休止後)母音間
a) ラテン語
31
/pp/
1.[-pp-]
/p/
1. [p-] 2.[-p-]
/b/
2. [b-]
3.[-b-]
/v/
3. [b-]
4.[-b-]
スペイン語通時音韻論
b) 第一変化
(variacion)
/pp/
1. [-pp-]
/p/
1. [p-]
2.[-p-]
/b/
2. [b-]
3.[-b-]
/v/
3. [b-]
4.[-b-]
このような状況では西方において(ここでは子音的な音量は消失す
る。フランス語のように母音によって、またスペイン語のように母
音によって、またスペイン語のように音節的等時(isocronía silábica)
二重子音[pp]を保持するのが不必要となる、それでその無声性のゆ
えに母音間の/p/より十分に区別されていた。
(これはつまり[b])
それで単純化する。
(しかしイタリア語では保持されている。
)
そしてその時、母音間の[p]が可能となると(/pp/より出た)音素/p/
と一致する。その母音間の変種[b]は/b/の語頭の変種と一致する。そ
してとの時にこの(/b/)の弱変種[b]は、旧い/v/の実現体と一緒に音素
化するのである。これはつまり、
c) 修正
1. p-
1. -p-
(<-pp-)
2. b-
2. -b-
3. v-
3-4.-b-(v) (<-b-,-v-)
(<-p-)
同じことが歯音と軟口蓋音素にも起こる。
/tt/ > /t/
/t/ > /d/
/d/ > /d/
/kk/
> /k/
/k/ >
/g/
/g/
> /g/
他の音素に関しては、variacionとその下位的変化はより複雑性が少
ない。
例えば/-s-/と/-ss-/の間、つまり母音間では/s/は有声の実現体[z]を有
する。そして二重子音の/ss/は/ps/と/rs/のグループと合一し、無声の
/s/と単純化する。
32
スペイン語通時音韻論
その時、[z]が音素化し、摩擦系列に対して有声性の相関関係を持
つようになる。
f/vに対してs/zというペアーが現われた。同じように新しい口蓋音
(§149で見たように)2つの有声、無声という音素に分割される。も
のごとのこういう状態variacion過程による変種の音素化は西ゴート
朝時代にイスパニアの大部分の地区に存在していたことによる。こ
れを全半島に放射した、ただ首都の近くの地域を除いて。イスパニ
アのほとんどの方言はこの体系を受け継いだ。しかし北部ではバス
ク地区に隣り合っている地区では、ローマ化されていないので、こ
の現象は同じ力では広がらなかった。そしてこのようにして高地ア
ラゴン地区では母音間の無声音は今日までそのまま保存されていた
(54)。
イスパニアでは、それでガリアと同じく初期のestadio(段階)を仮
定しなくてはならない。ここでは/p/,/t/等々はディスコース内で
variacionを示していた。たとえばcorcega(55)の北部の口語で今日も
それを示しているように。これはまずつまり次のようなものを有し
ていた。
/t/ terraしかし* la derra, prado(<terra pratum) /tt/の単純化によって変
種 [t] が 母 音 間 の 位 置 で も 可 能 と な る 時 、 語 の 語 頭 位 で の 変 種
(variacion)[t]∼[d]が変種[t]によって動かなくなった。
*la dierra∼con tierraの代りに常に la tierra, con tierraとなった。[t]を
ともなって(56)。一方語中の変種[d]は音素/d/の閉鎖変種[d]と一致し
た。
151.
二重子音の/ll, rr, mm, nn/とそれに対応する単音素/l, r, m, n/(母音間
の)の間のラテン語の区別は、見てきたように閉鎖音と摩擦音に採
33
スペイン語通時音韻論
用したと同じ解決法によって保存されなかった。ここでは、3つの
代りにただ2つのメンバーがある。つまり二重子音と単子音である。
つまり常に有声音、それゆえvariacionを作る時、また母音間で弱音
の変種を採用する時、次の様になる(57)。
(語頭)
(母音間)
/ll/
-
[-ll-]
/l/
[L-]
[-l-]
/rr/
-
[-rr-]
/r/
[R-]
[-r-]
/mm/
-
[-mm-]
/m/
[M-]
[-m-]
/nn/
-
[-nn]
/n/
[N-]
[-n-]
二重子音を単純化する時、単子音と区別するために強調音(la que
fuere)を保存し、そしてそれゆえ、その実現体は単子音の強変種と
一致した。ただ/mm/と/m/の場合、その結果は[m]に合一した。しか
し他の場合、強音と弱音の間の区別を保とうとした(58)。または二
重子音は単純化し、そしてそれによって単純音は消失するまで弱化
した。または二重子音は単純音を保存しながら、その調音法、調音
点に関して変形させた。
すべての場合、二重子音の結果と単純音の強変種(語頭、休止後)
を一致させて、語頭の子音は同じ運命を受けた。ある例外を除いて、
このようなことは/rr/-/r/の区別に起こった。
この音量的違いは、音質的なものとして[r"]-[r]として解決された(全
半島で)
。
/ll/-/l/と/nn/-/n/のペアーに関しては種々の変化(variedad)がある。強音
の実現体の/L//N/と弱音の実現体/l//n/より出発して次の3型の結果を
34
スペイン語通時音韻論
有する。
1. /L/-/l/
――――→
/l/ - %
/N/-/n/ ――――→ /n/ - %
2. a)
/L/-/l/ ――――→ /l./ -/l/
/N/-/n/ ――――→ /n./ -/n/
b)
/L/-/l/ ――――→ /d./ -/l/
/N/-/n/ ――――→ /d.8/ -/n/
最初の例は、ガリエゴ語-ポルトガル語で起こった。弱音は弱化され
消失した。二番目のは弱音を保持しようとする時、変化をうけたの
は強音である。これには2つの方向がある。その調音の強調は舌の
背のaplicacionを大きくした(そしてそれによって[l.] や[n.] のような
dorsopalatales(舌背硬口蓋音)または、調音的強調(exageracion)は多
少そり舌音として舌端として確実にされた。(そしてそれより[d.]の
ようなソリ舌(cacuminal)それに対応する鼻音[d.8])
。
舌背口蓋音の結果はイスパニアの大きな地域に広がり(イスパニ
ア語、カタラン語)一方、舌端-硬口蓋音的解決はastur-leonesとaltoaragones(半島外ではガスコンとイタリアのmeridional方言(57))の
地区に接しているところに残った。そこではわずかであるが、舌端硬口蓋音はのち変化を受けた。音素の他の実現体の干渉の結果や体
系内にうまくそれを統合しようとする傾向の結果:(それで舌端-硬
口蓋鼻音はいかなる地区でも保存せられなかった、そして舌端-歯茎
音(apico-alveolar)と合一した、また[d4]は無声化し、またはその調音
点を前進させて今日では地区により[t4][t4s][c0][t]となっている。
)
まず二重子音と単子音の結果の間の区別は母音間だけで強く与え
られた。しかしvariaciónの現象はまた語頭でも作られたので子音後
や休止の後では語頭子音は母音の後よりも強かった。この語頭の変
種は二重子音の実現体と、また語中の単子音と同一視された、つま
35
スペイン語通時音韻論
り区別(語中でpertinente)l./l, r"/r他、は語頭位にも広げられた。(始
めは弁別的価値なしに)
。
それでその位置により分布しているラテン語のはじめのペアー/l, n,
r/と/ll, nn, rr/を示していたものは導入現象(fenomenos indicados)によ
って次の様な変種の役割を示すことになる。
語頭
語中
子音後又は
母音後
休止後 単音
二重子音
/l/
-o la-
-os la-
-ola-
-olla- (-oLa-)
/n/
-o na-
-os na-
-ona-
-onna- (-oNa-)
/r/
-o ra-
-os ra-
-ora-
-orra- (-oRa-)
上に示した現象によって、次のような変種のペアーがもたらされる
であろう:
/l/ -o la
-os l.a-
-ola-
-ol.a-
/n/
-o na
-os n.a-
-ona-
-on.a-
/r/
-o ra-
-os r"a-
-ora-
-or"a-
それで、語頭の変種の文脈的交替(alternancia)[ l ]∼[l.],[ n ]∼[n.],
[ r ]∼[r$]は、そのうちのひとつの一般化によって消失した。Leones、
catalanでは<fuerte>変種([t4suna][luna], lluna<luna):カステリア語は
反対に、/l/の場合に対して弱音変種(luna):全半島において/n/の場合
には弱変種(時々現在の[n]は旧いcacuminalの結果であるが)、レオ
ン方言地区を除いて(ñariz):
/r/の場合には強変種[r$]は閉鎖子音について(もし§150の終りの仮定
を受入れるなら)おこったと同じことがすべての方言に起こった。
明らかに初頭子音がそのvariabilidadを止めて、そのまえの文脈と独
36
スペイン語通時音韻論
立的に唯一の実現体を取るという事実は、一部強変種の音素化の結
果や、また内位置での弱変種の音素化の結果であり、また前の語の
語末の母音や子音の消失が語頭の変種を文脈的motivacionなしにお
互いに表われるようにした結果である。たとえば*viened l4uego>*viene
l4uego>viene luego>viene luego; *venide luego>venid luego
しかし明らかにすることのできないことは、ある場合には語頭位で
強変種が一般化し、他の場合には弱変種が一般化したのはなぜかと
いうことである(60)。つまり語頭の/r/はなぜすべての場所で/rr/と同
じになったか、なぜ語頭の/l/は、gallego-portugues, leones, catalanで
は/ll/と同じになったのか、なぜ語頭の/n/はgallego-portuguesやレオ
ン地区では/nn/と同じになったのか、そして反対に、カステリア語
の語頭の/l/や/n/は、二重子音の/ll/や/nn/の結果と同じく[l.]や[n.]と同
じにならなかったか。
例外的なことは、語頭の/l/や/n/のカステリア語での取扱いであろ
う。語頭の/l/の保存を説明するために、語頭グループ/pl//kl/と/fl/の
結果を示すことにする。これはよくしられているように、カステリ
ア語では[l.]となった。その時、語頭の/l/のための[l]の一般化は、こ
れらのグループの結果[l.]に関して区別しようとする意図であったろ
う。反対になっていたら( de lo contrario).
lana
plana (> lana, llana )
lama
flamma (>lama, llama)
lausa
clausa (>losa, llosa)は一致していたであろう。
カタラン語ではこれらのグループは保存され、語頭の/l/は二重子音
の[l.]に合一した。しかしレオン語では一般に語頭の/l/と同じく3つの
。
グループも二重音と同じになった([l.]または[t4s])
そして3つのグループの結果が語頭の/l/とちがう地区では、二重子音
と同じである。そしてアラゴン語では、グループはそのまま存続し
37
スペイン語通時音韻論
(カタラン語のように)
、語頭の/l/は、しかしながら実現体[l]を示し
ている(カステリア語のように)
。それゆえDiego Catalanによれば、
no es valida la explicacion propuesta.(示された説明は有効ではない。)
しかしながら、2つの実現体がある地区では合一し(区別をなくし
て)たという事実は、全ての場所で弁別的意図を捨ててしまったと
いうことではない。レオンでは/pl, kl, fl/の結果と語頭の/l/(この強
変種を一般化して)と合一したけれども、カステリア語では語頭[l]
の/l/の弱変種(61)の一般化によってこの合一化が避けられるという
ことは不可能であると信じる動機はない。
(no hay motivo para creer imposible que en el castellano se evitara esa
influencia mediante la generalizacion de la variante debil de /l/ inicial [l].)
152.
152
イスパニアロマンス諸語の初期には§149の終りで示した傾向の図式
に基づいて子音体系を仮定することができる。これは次の系列を含
んでいたであろう。
1)無声閉鎖音/p, t, k/
(<語頭または子音後の/p, t, k/や/pp, tt, kk/や/pt/のような同化し
たグループ)
/t4s+/(<語頭または子音後の/ke,i/より、また/kke,i/や子音後のグ
ループ/tj/や/kj/より>(62)
2)有声閉鎖音/b, d, g/
(<語頭または子音後の/b, d, g/)
(</bb, dd/や/-p-, -t-, -k-/)
口蓋音または口蓋化音/d4z/と/d4y</
(/ d4z/は母音間の/ke,i//tj//kj/(62)の有声化によって)
/ d4y<</は/dj//gj/と子音的/j/と、語頭または子音後の/ge,i/の結果)
38
スペイン語通時音韻論
(63)
3)無声摩擦音/f,s,s+/
(/f, s/は語頭または子音後の/f, s/よりまた/ff, s,s+/より。また/nf//rs/
より)/s#/は(/ks, ssj/等々のような口蓋化の結果として中位置
に現われるだけである。
)
4)有声摩擦音 /v, d, g, z/
子音の/u/の結果、または母音間の/b//f/の
結果。/d/,/g/,/z/は母音間の/d, g, s/の結果
/v/と/z/は無声の相関を示している。
(/f,s/)、しかし/d//g/は示していない。
/v/はまた語頭位でも現われるが、一方他の3つは母音間に現
われるだけである。
5)鼻音 /m,n,n4/(/m/は/m, mm/地区により/mb/より, /n/は/nj,gn,nn/より
6)流音 /l, l./
/l/は/l./より。/ll/は/lj/より
(またグループ/kl, gl, tl/と合一して)
後に/ll/より
それと振動音/r, r"/、母音間の/r/より作られた、また/rr/と語頭
の/r/より。
これらの子音音素の位置は次の種々の序列にまとめられる。
1)唇音 /p, b, m/両唇音: /v, f /地区により違うが両唇音かまたは歯
唇音の間
2)歯音 /t, d, d/
3)舌端-歯茎音 /s, z, n. l, r, r"/(64)
4)軟口蓋音 /k, g, g/
5)/s+,
l4, n4/と/d4y, t4s, d 4z/について
もし最初の4つがあきらかに口蓋音であるなら、/ t4s /と/ d4z/の
位置について疑問がある。
39
スペイン語通時音韻論
/ke,i/や他の変化結果、つまり/t4s/は、その実現体に近い音素グループ
または他の音素の変種が現われない一方(例えばカステリア語で
/it>//lt/の解決)。その調音点を前進させるためのなんの動機もない。
(これはすでに§149で示した、/kj/より来た[t4s]は/ke,i/より来たものよ
り前に前進していた。
)
しかし母音間の位置でのこれらのグループ(それと/tj/より)の音
声的実現体は、有声の変化結果やまた/gj//dj/の口蓋音の結果と合一
するのを避けるために歯茎-歯音地区に移行したに違いない。これで
もし初期のロマンス語の口蓋序列のうちに/ t4s/を含ませるならば(モ
サラベの証拠が示しているように)/d4z/は決して同じ序列に含まれる
ことはない。つまりたいへんはやい時期より、口蓋序列と、舌端-歯
茎序列の間の中間的位置の音素であったのであろう。またはそれを
含めて最終的には有声閉鎖音(破擦音)として統合される。結局、
イスパニアのdiasistema共通体系は、次のような組織体を示してい
た。
唇音 歯音 歯茎音 口蓋音 軟口蓋音 流音
ts
k
r
d4y
g
l
閉鎖無声音
p
t
閉鎖有声音
b
d
d4z
摩擦有声音
v
d
z
摩擦無声音
f
−
s
s+
−
流音
m
−
n
n4
−
r"
−
l4
g
153.
カンタブリヤ方言の特有性
この体系または体系の傾向はイスパニアの各地で異なって発達し
た。現在われわれは、カンタブリヤ地区で始めに作られ、政治的お
よび文化的理由で現在のカステリア語の全地区に広がった変化を見
40
スペイン語通時音韻論
るのが興味あるのである。
半島の大部分では相対的に一致して以前に示した傾向を発達させ
る一方、北部の小さな地区、つまりEbroのcuenca alta(高い窪地)
では、新しさを示している。
これはカステリア語の発生地である。そこで最初の文学的ドキュ
メントの言語を特徴づけた特色あるものが作られた。
1つはよく問題にされるラテン語、語頭のf-の気息音[h-]への移行で
ある。これを基層(sustrato)に帰すのは疑問の余地のないように見え
る。
バスク語と同じくカステリアが生まれるであろうこの隣接地区の
住民の前ラテン語の言語(バスク語と親縁があるか、またはない)(65)
は、語頭のf-がなかった。それゆえラテン語の唇歯音のf-を聞く時、
彼のやり方で(自己流に)それを行なわなければならなかった。M.
Pidalによればそれを表わすために用いられた土着語の音素は気息音
の[h]であったろうと言う。この意見に対する音声学的視点より行わ
れた反論は、それを無効にはしないが、しかし音韻的分野より
Martinetにより表明された意見(67)は注目に値する。それで、この現
象は基層論の事実であると信じることより出発し、しかし/f/を知ら
ないいかなる言語もlaringea(喉頭)の子音によってこれを表わすと
いう、つまりもし気息唇閉鎖音を持っているなら/ph/を利用し、持
っていないなら/p/を使用する。まず摩擦性ではなくその唇音性を考
慮して(68)、/h/による/f/の直接的交替の場合がそうであったように。
Martinetによれば、カンタブリヤ語にバスク語で仮定したと同じ状
態を受け入れて、つまり無声気息唇閉鎖音の存在を受入れられ、そ
れはすぐ両唇の[f]になり、弱化した[h]と気息化した。バスク語に、
この遠い時期に2つの語頭閉鎖音系列を想定する。1つは気息音無
声/ph, th, kh/ともう一方はsordas lenes/b<, d<, g4/。それで/p/と/f/という語
41
スペイン語通時音韻論
頭のラテン語の音は受け入れられなければならなかった。ラテン語
の無声非気息音fortisの/p/は無声のlenis/b4/(後になって有声化する)
によって真似された, o de la aspirada /ph/ (que se debilitaría luego en [φ]
y [h]); 。たとえばpulus>*phoilo>oilo”gallina”、同じことが/f/にも起
こった。 filu>*philu>*φilu>*hilu>iru。
もっとあとのラテン語法(ph>hとなった時)は、/f/と/b/を交替さ
せるようにした。 体系に残っている唯一の唇音である故に。
fagu >b4agu, festa >b4esta, pake/bake(<pacem)の交替はロマンス語の/p/の
あとの影響であろう。同じ方法でカステリア語の起源にも起こった
であろう。ラテン語のfarinaは*pharina>φarina> harinaまたは
*b4arina>*parinaと受け取られるであろう。最後の可能性の残りは、
Pidalが引いている río Porma<forma (Origenes 3.§41 6b)。
さてバスク語やカンタブリヤ語に仮定された状態の推測や、この
カンタブリヤ地区での気息音と呼ばれる[h]という音が音声学的にど
んな音であったか分からないということが反論されるであろう。
これはまったく弱い声帯の気息音であったか、また単にカステリ
ア語が南の方に広がった時は、弱音であったろうか?。これはアス
トリアの東部やサンタンデールの西方[x]で保存している音(現代カ
ステリア語のjと混同される)のような真の軟口蓋摩擦音またはuvular
摩擦音ではなかったか。この場合仮定されるのは、[x]を/f/で交替さ
せるのは、他の仮定(69)に反対する困難さを示すことはない。
Sea de ello lo que fuere. この[h]がことなった言語学的地区に入って
来る時(そこではもっと教養のある人がラテン語の唇歯音[f]を根気
よく保持している)2つの異なる傾向の衝突が起こる。より教養の
劣った北部人は常に[h]を使い(harina, huerteと同じく)またはそれな
しに使う(lacio<flaccidu)保守的でよく学んでいる中部人は[f]を使用
する。(farina, fuerte, flor)。
42
スペイン語通時音韻論
この新らしいburgalesの雰囲気での2つのmodalidadesの音素的価値
は、常に文体的変種(社会文体)であったろう。
[h]はより田舎的である、よりvulgarでより親密である。そして[f]は
より文学的で、より際立っている。しかしある例を除いて文学言語
では綴字のf-を保存したが数世代の後に妥協に達したのであろう。[h]
は音節的母音のまえでは用いられ(harina)、[f]は非音節的音のまえで
用いられた(flor, fuerte)。もっとも教養のある人は、ある語(例えばfe)
などには[f]を使用し続け、そしてゆっくりと[h]と[f]という両変種は、
そのことなった征服地において固められた。同じ位置に現われる時
は、ちがった音素となった。これは教養語においてXV世紀の終り
に観察される状況である。
もっと一般的で親密な語において、このf/hの音素的な違いは完了し
なかった(田舎語法の a la he, a la fe に対して)を思い出せ。[h]が
消失した時、音素の唯一の実現体として他の変種[f]が残った。(70)
154.
Castilla la Vieja(en su fraccion mas antigua)での音素/f/の特別の音韻的
状況は相対的に音素/v/より離れて留まっていた。これは16世紀まで
半島の大部分では唇歯音の摩擦音であった。(72)
最初よりカステリア語が生まれた地区は、唇歯音調音を無視し、/v/
のためには(つまり子音の/u/と母音間の/b/)両唇音の発音を保持し
ていたらしい。
両唇音[f]の無声の相関の/v/を欠いて、その代りに[f]∼[h]を対立さ
せる時、その位置でその摩擦の音質(calidad)は弁別的なものとし
て支配的であった。それはb(語頭の/b/と母音間の/p/より来た)の
閉鎖音と対立していた。しかしバスク語地区に近いカンタブリア地
区では早くより/v/と/b/の間の混同の証拠がある。そこでは有声閉鎖
43
スペイン語通時音韻論
音/b, d, g/(それとまた/d4z/と/d4y/)に変動(variación)現象が起きた。つ
まり母音間、句でも語においてのinternosではより弱くなった。それ
で、それらのうちの一つにくくりつけるために、/b/は子音、休止の
前では閉鎖音であった。そして母音の後ろでは摩擦音[b]になった。
それによって母音間の/v/と/b/は混同するようになり、そしてより
後になって/v/は類推によって、また強変種となった。このカステリ
ア語の状況(これはアラゴン語でも同じでありカタラン語には14,15
世紀頃広がった)は、16世紀に全半島に唇歯音[v]の消失の奨励
(fermento)である、そして変動する(con variación)有声子音系列の創造
の奨励である(つまり、文脈によって閉鎖音または摩擦音)、そこ
では初期の2つの有声系列(73)は混同し、
閉鎖音…...............b, d , g
摩擦音…...........…v, d, g
そこで、この二つの系列内において/b/と/v/は混同し/d/と/ d/、/g /と
/g/も同じく混同する(閉鎖音の弛緩はしばしば摩擦音/d/と/g/の消失
を伴ったが)
。そして/b, d, g/系列は[b∼b],[d∼d],[g∼g]として実現さ
れるようになる。母音間の同じような弛緩は/d4z/と/d4y/にも起こる。
しかしその結果はまず他の音素と混同しない。(74)
155.
イスパニアの共通体系(diasistema)(§152)は、有声音の口蓋化の結果
/d4y/によってsimbolizadoした。しかしもとの音は全面的に合一しなか
った、というのは、母音間では二重子音の[d4d44y](または[y6y0])と単
音の[d4y](または[y])が区別されていたからである。
上で研究された変種の過程は、語頭ではその結果は二重子音と合致
し、二重子音を単音化する時、母音間の単音はロマンス語では消失
するということが期待できる。
44
スペイン語通時音韻論
ポルトガル語、カタラン語によって提示される状況は以下のような
ものである。(75)
語 頭
/ge,i/ generu > gendre, genro …….....
/i/
januariu > gener, janeiro…….....
/dj/
deorsu > jus, juso ……..............
/gj/
Georgiu > Jordi, Jorge ……......
[z#9] [z#]
母 音 間
cogitare > cuidar, cuidar ……....................... %
maiore > mayor, ieiunare > jejuar ……
radiare > rajar, hodie > hoje ……...........
[z#]
fugio > fujo, fujo......................................
そして、同じようにして、アラゴン語、レオン語(最終的無声化を
除いて)反対にカステリア語は、これらの調音の大きなablandamiento
(緩和、軟化)を示す。つまり母音間の位置において。
その結果のreparticion(区分、分割)は、同じ(identica)である。それ
で/gei/は消失し、他のものは保持せられる。または後に隣の口蓋母
音に吸収されて消失する。そしてcuidar, maestro, selloに対して一方
ではpeor, hastío, poleoまた一方、mayor, rayar, hayaがある、図式すれ
ば:
1./-ge,i-/
> %
2./e,i j∼dj∼gj-/
> -y-
3./a j ∼dj ∼gj-/
> -yy- > -y-
> %
語頭位では、二重子音と同じ取扱いが期待される、つまる[y]。しか
しディスコースでは母音または子音に先立つことができたので、こ
45
スペイン語通時音韻論
の[y]は保持せられ、最初の例では強化せられ、二番目の例の場合は
弱化した。
1.-A ge,i- ―――→ -A %e,i (母音間として消失)
-N ge,i- ―――→ -N ye,i
2.-A j-N j-
―――→ -A y- (maiorのように)
―――→ -N y0-
実際に/j, dj, gj/は常に保持された、[y]としてまたは[z9#](または[z#]と
して)
。ya, yace, junta, juego, jamás, junto. 初期のカステリア語が常
に[z#]を持ち、[y]が中央地域の解決(mozárabe)であった可能性がある。
または統辞的構文において大きな頻度の結果として、(どちらか一
方の)変種が一般化する可能性がある。
語中においてmayorに対して、arzillaを有すると同じく、語頭におい
ても交替する:elo yugo∼elos y6ugos, elo yúez∼elos y6uezes, non seya ya
mas∼non seyan y6a mas. そして後になって、二つの変種の一つが広
がった(yugo, juez, jamás)32(76).
反対に/ge,i/の消失が一般化した。hermanos, helar, encía(それでyermo,
yelo, yemaの現在の[y]はyesoの場合を除いて、/e#/よりまた二重母音/ie/
の結果である、これは特別の説明を必要とする。33(77)
156.
一方、二重子音/ll/はすでに見たようにその音量を[l.]の硬口蓋音の音
質と交替するようになる。それでその実現体はラテン語(俗)の/lj/
と/k’l/グループの結果と混同するようになる。
32
後母音の前の語頭の/y/の消失の場合は、別の現象、異化(disimilación)によ
る; 例:iungĕre > *[yúnyere] > *[únyere] > uñir, uncir
33
Art.cit. 注 75, p.339
46
スペイン語通時音韻論
Burgos 地 区 で は 34(78), 旧 い 音 素 /l./(</lj//k’l/ は 強 化 さ れ , 新 し い
[l.](</ll/)に関するその区別を保持するために、他の実現体を採用する
ようになる。これは綴字や、後の結果が示しているように摩擦音の[z#]
または、これに対応する破擦音[z#9]であり、まさに母音間では用いら
れなかった音である.35(79)
この傾向は、つまり
/ll/―――→[l4]
[l.](</lj/, /k’l/)―――→[z#]
一方、ディスコースにおける音素的分布は、
(語頭位)
l4-
(母音間)
-l4-(</lj/, /k’l/)←―――/ll/
z#-(< /j/)
−
音韻変化によって、次の様になる。
(語頭位)
(母音間)
l4-
-l4- (< /ll/)
z#-
-z+- (< /lj/, /k’l/)
そして/lj/はyeistaの状況[y]を通って[z#]に移っていったのではない(ア
メリカのスペイン語でのようにll>y>z#):というのは、その時すべて
の[y](例えばmayo, poyo)は[z#]に達していたからである(*maz+o, *poz+o)
Martinet(80)は、[l.](<lj)シシリア(またはアストリアでの-ll-のように
cacuminalの[d.]に変り、次に体系にかみ合うために[z+]と混同してよろ
34
旧カスティーリャの北部では、[l.]が存続した:mallo, garuyo, cascullo, amella,
cervilla; これはバスク語と同じである(GARCIA DE DIEGO, Gramárica Histórica
Española, Madrid, 1951, p.84 y 99)、しかし、MICHELENA, Fon. hist. vasca, p.195
以下を参照。
35
無論、-nj-と-nn-は、区別をなくして、[n.]に合一化した。
47
スペイン語通時音韻論
めいた(rehilarse)と仮定する。
しかし/lj/と/k’l/グループのためにBurgosのカステリア語では、[l.]の
段階を想定する必要があろうか。全ての半島では実際これが結果で
あったようにである。そしてカステリアでは?。yodを伴った他の
グループは一般的結果に対して他のdigergenteを示していることを想
え、例えば/dj/(radiu>rayo)のグループのノーマルな解決[y]に対して、
例えば[?](radia>raza [c0](radia>racha)又は[x](inodio>enojo)に出会う。
このような結果はdを音節の最後そして/j/を最後として考えるグル
ープの異なった分節法のせいであろう。またyodによって作られた
子音の二重子音化の結果と考えることができる。この場合、/dj/は
[d4d4y]と実現され、そのexplosiva(外破的)部分は、そのグループが
子 音 後 で あ っ た よ う に 進 展 す る 。 (argillo>arcilla) そ し て ま た
radia>*[rad4d4ya]>raza、inodio>*[inod4d4yo] *enodz+o>enojo
/lj/と/k’l/の場合、その口蓋音化の結果はブルゴ地区ではyodに吸収さ
れ な か っ た 、 そ し て い く ら か 非 側 音 化 し た (mas o menos
deslateralizada) [l4l4]または[d4d.]口蓋二重子音となったと仮定できる。
これは単純化しasibilante化して[z#]9 (または[z+])となったと仮定される。
語頭では[l4]になった/pl, fl, kl/グループは、子音が前にくる時は、非
側音化(deslateralizaron)した。
(そして無声化したmancha, ancho)
:そ
してカステリア語の初期の二重子音綴字:
Cogga, Nogga, Naggara, Taggada, ualegga, viegga (81)etc.
この時は次のように想定される。
palea>*pal4ya>*pal4l4a>*pad4d4a>*pad4z+a>paz+a>paja.
157.アルフォンソと中世カステリア語
cancilleresca言語に対するカステリア語のelevacionいともなって、そ
の特徴が一般化する(普遍化する)。書き始められた言語は、−ラ
48
スペイン語通時音韻論
テン語の影響をもつー hablar docto とhablar popularとの間の協約で
ある。ここより語頭の/f/の代りに[h]のような、そんなに旧い現象の
書記における欠如。(これによって語頭の/f/の代りに[h]を用いるよ
うな旧い書記の現象が欠如することになる)
原文:De ahi la ausencia en lo escrito de fonemeno tan arcaico como [h] en
lugar de /f/ inicial.
Alfonso Xの綴字(正書法)の一般化によって、この最初の文学の音
韻体系はどれであるかを決定するために信憑性のあるまたは明白な
データを有している。そこでは、北部のものとの特徴(本来的特徴)
は一部分中央の方言の特徴と接触して変化を受ける。
トレード地区で固まったこのような体系はNebrijaがそれを書いて
いる所よりすると16世紀までに発展したカステリア語を特徴づけて
いるものである。
しかし次に見るように、すでに中世において北部で付加されてい
る。Se incuban そして一般化する変化を拡大して現代で勝利する。
Alfonsoの体系においては、次の音素的状態に出会う。
1.閉鎖音・破擦無声[p, t, k,s6,c6](綴字:p, t, c, ç-c, ch)
2.有声閉鎖音 [b, d, g]
3.有声破擦音(または摩擦音)[z6, z+∼
@ z#] (綴字:z, j-g)
4.有声摩擦音[b, d, g]と[v,z] (綴字:v-u,-s-)
5.無声摩擦音 [f∼h, s, s#] (綴字:f-h, s-∼-ss-, x)
6.鼻音 [m, n, n.]
7.側音 [l, l.] [r, r"]
音韻論的に、これらの音は種々の系列にグループ分けできる。
49
スペイン語通時音韻論
無声閉鎖音/有声閉鎖音/有声摩擦音/無声摩擦音/鼻音/流音
(序列)
)
○ 唇音序列(両唇音/p, b/と唇歯音/f, v/との違いがある。
(もし母音間の
○ 歯音序列(または歯茎音)ここには/t//d/がくる。
/d/の結果がまったく母音間の/t/に関してdistintivoであるなら、それ
は多分そうではない。
)そしてまたc-çと書かれる[ŝ]とzと書かれる
[z6](</ke,i//kj//tj/) 「これらは多少、舌背歯音または舌背歯茎floja調
音であった」は、今日の舌端歯茎音[s][z]であったろう。そして
それゆえこれらだけで唯一の特別の序列を形成することができる
る他の破擦音/ĉ/と音素/z#/(すでに破擦音や摩擦音変種を伴って
実現された)は、en puridad(純粋に)同じ器官(同質の器官)の序
列を作らなかった。両者は/š/のように舌背音であった。しかし
/ĉ/しかに今日のように/z#/や/š/(両者は口蓋音)よりも前進して
いた。
軟口蓋序列のためには問題はない。/k/と/g/。またさらに/f/は2つの
変種(文脈的というより文体的)を示していた。つまり[f]と[h]。
そしてこれは音素的にどの序列に属しているかを決定するのは危険
である。
これらの音素の弁別的性格に関してある弁別的照合(coteja)によ
って証明されている:閉鎖の有無は/b/と/v/を区別し:
uebos(<o#pus)/uevos(<o#vos),cabo(<caput)/cavo(cavo)
そして有声性の中性化の位置では、お互いに一致せずに、/b/は閉鎖
音の/p/と、また/v/は摩擦音の/f/と混同した:Lob Diez (Lopeに対して)
nuef(nueve) nief(nieve) of (ove)
北部のある地区で(多分カステリアではない)有声性はすでに
pertinenteではなかった。これは/s/と/z/、/s0/と/z6/ 、/s+/と/z#/を区別する
特徴であった(そして一部調音の多少弛緩した性格である)
。
50
スペイン語通時音韻論
osso(<ursu)/oso(<auso)
posso (<pulsu) / poso(< pauso)
cosso(<cursu)/coso(<consuo)
espesso(<spissu)/espeso(<expensum)
façes(<fasces)/fazes(<facis)
foçes(<falces)/fozes(<fauces)
deçir(<discedere)/dezir(<dicere)
faça(<fascia)/faza(<facie, ad)
puxar(<pu#lsare)/pujar(< cat.pujar <*po#diare)
coxo(<*coxu,coxit/cojo(<colligo)
fixo(<fixum)/fijo(<filium)
ここに体系を示すと。
舌端
舌背
唇音
歯音 歯茎音 歯音
口蓋音 軟口蓋音 声帯音
c6
流音
k
−
r
r$ −
z+@
g
−
l
l4
z+
−
−
無声閉鎖音
p
t
−
s0
有声閉鎖音
b
d
−
z0
有声摩擦音
v
−
z
−
無声摩擦音
f
−
s
−
s+
− (h)
鼻音
m
−
n
−
n4
−
−
ある対立は、動揺したことを示さなくてはならない、まず最初にそ
のメンバー間の確実性の小さな縁(margen de seguridad)二番目にデ
ィスコース内でのその不完全(defectiva)な分布によって。たとえ
ば舌端-歯茎音と舌背口蓋音の間には中世カステリア語ではしばしば
交替(trueques) (82)があった。
visitar ∼ vegitar([z]-[z#]), tiseras ∼ tigeras, cosecha ∼ cogecha, simio ∼
ximio([s]-[s#]), sastre∼xastre
51
スペイン語通時音韻論
そして/s/の代りに決定的にすえられた/s+/の場合を含んでいる。特に
語頭位で(jabón他)(83)
また2つの有声系列の間の区別もあきらかではなかった、たしかに/d/
と/g/はすでに変種(動)を示していた(そしてその中でラテン語の
母音間の/d/と/g/のあるrestosと混同していた。)そして同じく/z+/、こ
れは子音、休止後では破擦音であり母音後では摩擦音であった、そ
して/b/と/v/に関して、その区別は文明語(lengua cultivada)外では動揺
していた。
158.
結局、この体系は言連鎖での音素的分布を除いて、そして/f/の特別
な状況を除いて(これは少しずつ2つの変種[f]と[h]を音素化する可
能性を発展させながら)イスパニアの他の方言と少し違っている。
一見して、16世紀までこの体系はvariacionなしに保持された、しか
しドレードの人ではなく北部人の口語のある特徴はトレード体系の
ある対立の小さなrendimientoによって少しずつ広がってそれをむし
ばんだ。
有声を伴っている閉鎖-摩擦のちがいの省略は、それが広がるのは自
然である、そして/b/-/v/の場合においてのみpertinenteであった。同
じようにsibilantesと結合した有声-無声の区別は母音間においてだけ
pertinenteであった。そして/s0/=/z6/:/s/=/z/:/s#/=/z#/の混同が(カステリ
ア語だけでなく)北部で始まる。
一方、軟口蓋序列(たとえば唇音に対して)は多くのlaguna(空間)
を示していた。そして反対にdentopalatales(/t/,/ŝ/,/ĉ/他の違い)北部で
の 音 素 的 な 法 外 な 集 積 で あ っ た : 綴 字 で は baldia 地 区 に 対 し て
barbechoでは(en barbecho休閑地)法外なcultivoがあった。
(habia otras
de excesivo cultivo).
52
スペイン語通時音韻論
経済はまだ利用していない調音的可能性を利用してまた紛糾して
板葉の蔵った地区(zonas enmaranadas y frondasas)を明るくしなが
ら、その成員をうまく統合しながら体系を再組織しようとするのは
当たり前であろう。
他のロマンス語においても起こっているものに音韻的に平行して
いるこの修正は古典時代に行われた。(centurias clásicas)しかしそ
の本質的な特徴(破擦音のaflojamiento)弁別的調音点の縮小、他)
は、他のロマンス語(ポルトガル語、カタラン語、仏語)に共通で
あろうとも、それが起こった方法によって修正が音声学的に作られ
るように導く動機は、半島に特有であり、それゆえイスパニアの特
有の状況によって条件付けられている。(基層、二言語併用、同一
地区における共存、または輸入方言のnivelación等々)
。
たとえば口蓋音化よりきた破擦音は弛緩し、そしてgalo hispano地
区では、その調音点を変えた(desplazado)、そしてこの発展的特徴の
comunidad(共通性)を受入れられる(各地での年代的な違いはあ
るが)
:しかしこのようなプロセスの結果は各方言で異なっている。
159.
16,17世紀の修正
この時期に一般のまた文学カステリア語に植え付けられた変化は一
見してネブリハの規範(85) (nebrisense)と、例えば1世紀後のCorreas
がまもっているものと比較する時わかるような早い進展または音声
的革命の結果ではない。その時までに、より磨かれたものとして考
えられているものに対して、まえより存在しているmodalidadや方言
的modalidadの勝利を取扱う。
つまり、これは音韻的規範の変化であり、それを作った音声的現象
は中世紀またはある地区より派生している。
53
スペイン語通時音韻論
新しい規範の勝利は社会的なものであり、丁重な言語学的価値判
断の壊乱である。(es una subversión de la estimativa lingüística cortesana)
この壊乱の原因を探るということは、言語学的データの中で探る
のではなく、純粋に歴史的=社会的データの中で探らなければなら
ないのである。そしてここではこの問題に入ることはできない。し
かしながら、新しい規範の性格は一部かなり分散した体系を、そし
て経済的でない体系を(特に歯音と軟口蓋の中間の序列で、つまり
多分旧い体系の弱い点は、新しい体系が勝利するための受動的条件
であった)再組織化するようになるということを忘れてはならない。
中世に対して現代のカステリア語の音声的特有性は次のようなこ
とである。
(1) トレードの音素/f/と/h/に対して[これはCastilla la Viejaでは
中世の終りに既に/f/またはゼロであった(初期の2つの変種[f]cultismos y dialectalismos-と[h]の音素化によってうまれた)]現在は/h/
の消失の広がりによって外縁地区を除いて(そこでは/h/が存続して
いる(他の音素と混同して)/f/だけが残った。
(2)中世のb/vの対立に対して、現在は混同している。これは北
部においてたいへん旧い。
(つまり閉鎖または摩擦の結合変種を示
す/b/)
(3) Sibilante間における有声/無声の区別の消失:無声変種によっ
てs/z, s6/z6, š/žは同じになる(北部においてはたいへん古くから起こっ
ていたようである)
(4)旧い口蓋音/s+, z#/の軟口蓋音化
(5)旧い歯破擦音(/s6, z0/)の閉鎖音の消失と歯間音化。
1より3までの現象はたいへん旧く、これは16世紀の始めの中頃に
は、トレードの規範(cortesana)と、その違いを保持している旧いカ
ステリア語と対立させていた。それらの中では、3つの変化がすで
54
スペイン語通時音韻論
におこっていた。(/h/の消失、b/vの同一化、有声性の消失)(86)
/b/と/v/の同一化に関しては、それは有声の子音の一系列を形成を完
了するようになったことを示している。
その閉鎖または摩擦という調音法は、そのsintagmaticaな位置での
純粋な結果である。このようにして、旧い閉鎖音/b, d, g,z+@/と摩擦音/b,
d, g, z+/ の2系列は、唯一のものとなり、すでに前に存在していた
[d]~[d]/d/、[g]∼[g]/g/、[z#9]∼[z#]/z#/(87)の間のvariacionは他の唇音のメ
ンバーにまで広がった。Castilla la Viejaやその近隣の地区で早くよ
り起こっていたと同じこと/b/-/v/→[b]∼[b]が起こった。
160.
3つの現象は、大変興味深い研究の対象である。(89) 要約すれば16
世紀の間、無声と有声のsibilanteの不区別(最初は、北部カステリ
アでのみ典型的であったが)はトレード王朝にまたカステリア語の
すべての半島に課せられるようになった。このようにして
Villalon(castellano viejo)1558年 Benito Ruiz(madrileno)1587年語彙学者
Covarrubias( ト レ ー ド 人 )1610 年 Bonet( ト レ ー ド で )1620 年 、
Correas(extremeno)(サラマンカ大学教授)は、この同一化を証言し
ている。
おの現象が広がる場合に疑いもなく旧い有声-無声の対立(s/z,
s0/z0, s#/z#)の少ない機能負担量が影響している。
Martinetによれば(90)、この現象の起源はバスク語に似た基層の影
響下で生まれたカンタブリアの初期の体系の数世紀に亘るゆっくり
した行動(acción)に期すのが理屈に合うようである。
そこでは有声のsibilanteは無視され、それゆえsibilanteの有声性の消
失は、多年にわたるまた多くの地域にわたる現代の全カステリア地
区に確実にゆっくりと課された広がりの結果であろう。(91)
それで1より3までの現象は、旧いカステリア語によるトレードの
55
スペイン語通時音韻論
社会的規範の変化の結果以上のものではない。ここで取扱うことが
できない社会的動機はprestigioを北部の話に移した。これはマドリ
ードのcorteに課されて、他の地区へも広がった。地理的には北部-南
部へ広がり、社会的には一般大衆より教養人への広がりをとりあつ
かう。(92)
たとえば4、5の2つの現象は、異なったプロセスに帰している。
/s#, z#/の軟口蓋音化は、レオン語や、カタラン地区、カステリア化し
ていないピレネーのアラゴン地区には侵入しなかった。 一方、軟
口蓋音化の証拠は、相対的に遅くただ17世紀に遂行されたのである。
16世紀の間、その口蓋音的性格の証拠は疑いもないものであり、し
ばしばイタリア語またはフランス語の発音と比較される。/s#/ 仏語
chevalier, 伊語 poscia,pesci /z#/ 伊語generoso他:
その世紀の終りごろ、ある文法家はたいへん後退した舌背口蓋音調
音ドイツ語の[ich-Laut]タイプに言及している。
たとえば、Torquemadaは、<se pronuncian en lo ultimo del paladar, cerca
de la garganta> 1574年)
Ordium (se pronuncian <retournant la pointe de la langue vers le haut du
palais et en de dans de la gorge>)
しかし17世紀にはSumaran(1626)、Correas(1630),Muleruis (1636)そし
て他の人は、これをドイツ語のch([x]∼[y4])ギリシャ語の?、またはト
スカニヤ語の/k/の気息音の変種と(la <gorgia>)比較している。
そして el sevillanoとしてJuan de Robles o Correasは、この新しい軟
口蓋調音と<el vulgo de Andalucia la laja>)(92)の間で作られる旧い気
息音/h/との混同を示している。
体系内では、革新が勝利するための条件が存在していたというこ
とは明らかである。軟口蓋音序列には、無声の摩擦子音は存在して
56
スペイン語通時音韻論
いなかった、そして他方、ほとんど口蓋音の舌端-歯茎音の/s,z/は/s+,z#/
の調音点にたいへん近かった。この軟口蓋音化は、有声と無声の合
一の前か、または後に起きたのであろうか、つまり/s+/と/z#/はまずは
じめに/s#/に合一し、次に/x/になったのであろうか、または/s+, z#/はま
ずはじめに/x/と/g/になって、後に合一したのであろうか。
有声性の消失が先立ったようである。まず最初に北部でまず証明
されている。そして2番目には/z#/よりの*[g]は、/g/音素の変種[g]と混
同するであろう、しかしこれは起こらなかった。
5の現象、/s0/ と/z0/ の歯間音化は、たいへん後になって行われたプ
ロセスであるにすぎない。そしてもし[?]調音の明らかな証拠が18
世紀(94)のものであるなら、17世紀の2番目の半分の前に広がってい
たと信じることはできない。
しかし歯間音化区別を保持するための小さな修正であるにすぎな
い。これはただ他の現象は旧い破擦音/s0/と/z0/をあらかじめ変化させ
ていたから起きたのである。
実際歯間音化のための条件(アンダルシアやアメリカのceceoの現
象のために)は、これらの破擦は、その閉鎖音要素を失って弛緩す
るということである。
このようなプロセス ―年代的にではないが― 多くのロマンス語
に共通である、そしてこれはまず有声音素/z0/に起きたと仮定できる。
そしてこのような有声音は、有声の他の閉鎖音(/b//d//g//z#/)の文脈的
varicacionのプロセスの内で起こった。
つまり子音や休止後の位置では[z0]であった、しかし母音間では/z7/で
あったろう。(una fricativa, dorso-dental y no apico-alveolar como el
fonema /z/)(95).
そして16世紀の中頃において/s0/と/z0/は/p//b/や/t//d/他と同じように対
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スペイン語通時音韻論
立していたことは確かである。つまり有声性によって対立してい
た:つまり単純子音(閉鎖音)/p,t,s6/に対して有声音/b,d,z66/しばしば
閉鎖音/b,d,z6/または摩擦音[b,d,zA]が対立していた。
少し後になって、破擦音の弛緩は/s0/ に達した、多分有声舌端-歯茎
sibilante/z/や口蓋音/z#/に対して無声の摩擦音/s/と/s#/が対立するならば
同じように有声sibilante[z7](/z0/)に対して、無声摩擦音(そして破擦音
ではない)[sA]、また前舌背歯音が対立していたであろう。
ある地区では、この両者の破擦音の弛緩音化は早かった。セビー
リアやその全地区では、15世紀には/s6,z0/は前舌背-歯音[sA,z7](今日の
ポルトガルの北部)であるにすぎなかったという証拠がある。(96) そ
れゆえ、この破擦音の摩擦音への変形は、唯一の無声音への両者の
合一よりも早かった。(97) /s0/=/z0/の合一化の広がりの時期は、16世
紀の文法家や作家の証拠によって跡付けられる、それによれば旧い
カステリアの影響(すでにその世紀の始めに行われていた)は、そ
の世紀のel ultimo tercioにマドリードやトレードの首都の話に浸透し、
en el ultimo cuartoでは学校の教師すらも区別していなかった。(98) そ
して次の世紀ではCovarrubiasもCorreasも区別していなかった。
161.
/s0/と/z0/の弱化は、カステリア語に典型的なものではなく、他のロマ
ンス語にも共通なもであることを見た。カステリア語や近隣の方言
を特徴づけているものは、摩擦音化した前舌背-歯音/s7/の調音点の最
終的な変化である。
その時(2つの破擦音を弛緩し、合一化していた地区で)3つの無
声摩擦音があった、sibilanteタイプの音。
その間には、たいへん小さな確実性の縁しかなかった、つまり:
/sA/ 前舌背-歯音(/s6,z0/より来た)
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スペイン語通時音韻論
/s+/ 舌端-歯茎音
/s#/
口蓋音
最後の2つの間の小さな違い(すでに中世において両者の交替を作
っていた)は、/s#/の軟口蓋摩擦音の[x]casilla vaciaを満たした。
それで、混同の予防の同類のdesplazamientoは新しい/s7/をもおかした、
これはpredorso-dental/apico-alveolarの違いによって旧い/s+/を区別して
いた。そして同じ時に舌の端や/s/の調音でのincisivos superioresのfilo
(縁)に干渉して、これは閉鎖音/t/やその有声の相関/d/の摩擦音の
同じ器官のものとなった。つまり歯間音(/d/の歯間変種として)
図式すれば:
/s/ ←→ /s+/ ←→ /s#/ 現代イスパニア語での結果
/s/
/θ/
/x/
それによってp/fにおいて与えられている無声の閉鎖/摩擦の対立は
全体系に広がり、t/th,c6/s,k/xを持つことになる。
一 方 中 世 の 体 系で の 歯 音 序 列 よ り 口蓋 音 ま での 対 立 の disociada
situacion sistematica:
p
t
s6
b
d
z6
c6
k
g
v
z
z+
f
s
s+
(trabazón)
はより大きな関連性を要求する。
p
t
b
d
f
?
c6
k
g
s
x
つ ま り apico-dental(/t/ の )apico-alveolar(/s/ の ) 、 dorso-dental (/s0/ の ) 、
dorso-palatal(/c0/の)の弁別的位置に対して、2つの序列だけが弁別的
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スペイン語通時音韻論
となるのである;1つは歯音序列(/t//:/)他は歯茎-口蓋音序列(/c6/
及び/s/)である。
162.
旧い破擦音/s6/と/z0/(>/?/に関するこのような状況は、レオン・アラゴ
ンにおいても与えられるものである、そしてgallegoに浸透した。他
のロマンス語(ポルトガルの北部の方言)は[s7]/[s+]の区別を不変化
のまま(有声性は除いて)保持し、また区別するかわりに混同する
解決法を表わしている(そのようにしてカタラン語ではより早く新
しい前部舌背の/s7/は舌端の/s+/に吸収され、また中南部のポルトガル
語では[s7]と[s]の合一は、唯一の音素/s/にして位置によっては口蓋音
[s#(ここでは音素/s#
]
/と中性化する)として実現しながら作られた。(99)
カステリアの広い地域に亘って、アンダルシア(そしてカナリヤ
やアメリカへの拡大に伴って)では、旧い破擦音の弛緩化は、カス
テリア語のそれに先立っていた、また舌端の/s+/と前部舌背の/s7/を区
別しなかった:有声性の消失が南部に達する前に、2つのsibilante
は16世紀にceceo([s7]による/s0/と/s/の同一化)の現象や、zezeo([z7]に
よる/z0/ と/z/の同一化)の現象を引き起こして、前部舌背[s]の実現体
と合一した。
この現象によって、無声と有声音のカステリアの合一化が16世紀
の末に南部に及んだ時はceceoだけが残っていた。これはpredorsodentalによるpredorso-dentalとapico-alveolarの同一化(igualacion)を意味
する、つまり/s7/も/s+/も[s7]として実現される)一方seseoはカタランで
のように舌端の[s+] と実現して、このigualaciónのために保持してい
る)(100)
ただ現代にいたって、他の基準をともなって、アンダルシアのceceo
とseseoを区別している。それによると最初の前部舌背の[s7] は se
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スペイン語通時音韻論
realice con un orificio plano (como nuestro[:]) o con un canal longitudinal
(como las sibilantes). しかしこの現象の今日でのアンダルシアの全変
種(variedades)は(dento-interdental[:] o predorso-dental [s7] o coronodental[s"])歴史的にはceceo(16世紀の発音では[s7es7e+o])である、つま
り旧い舌端の/s+/の調音を/s7/と同じような前部舌背としての調音。
要約すれば、中世の体系の状況を変革させながら、16,17世紀にお
いて広がった諸現象は次の図式のように表わされる。
p
t
b
d
v
f
(:)
s0
c0
z0 z
z0
s
s0
k
g
(x)
疑いもなく、この同じ時期に、旧い口蓋音/s#,z#/が軟口蓋音化する時、
/b,d/他のvariaciónと同類のvariaciónを受けて子音的位置での/i/[y∼j]
の強化(refuerzo)が始まったのである。つまり休止後または子音後で
は[dy]として(または[y0]そして母音間では[y]として)実現される、
それで今日でも少ししか利用されない序列(§113)つまり口蓋序列
での有声音のvacioを埋めようとしていた、それで無声の/c0/はdorsoalveolarまたはprepalatal そして反対に摩擦音の/s/はapico-alveolar、一
方新しい音素/y/はdorso-palatalである、そして/c0/より少し後退してい
る。
このような状況は、一部ある地区でこれらの音素の調音的変化を
説明する。口蓋よりむしろ歯茎音の頻度:la articulacion rehilada y
estrecha de /y/ (como [z#]) que se desplaza hacia adelante aproximandose a
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スペイン語通時音韻論
/c0/ etc. しかしまだalveolo-palatal序列と呼ぶことのできるものは構成
されていない。
163.
現在の体系の変化(修正)
17世紀にかたまったカステリアの一般的体系は今日なお動揺してい
る地域的特有性にもかかわらずintercomunicacionの便利やintercambio
の現代的容易性によって、また話しの権威ある形式の広がりによっ
て保持されている。
正しい言語においてこの時代より現代までに重大な変化を示すこ
とが必要である。これは体系内の変化ではなく、ディスコース内で
のある音素の分布での変化を取扱うのである。
実際、多くのcultismosや18世紀よりAcademiaによって果されてき
た規範的及び語源的圧力はスペイン語に以前には許されていなかっ
た子音音素グループの受け入れを課した。つまりそれらは次の音節
がはじまる子音を次にもってくる音節末の子音によって構成される
グループである。それによって、それまで排除されていたラテン語
グループがスペイン語の分布的図式で可能となるようになった。
pacto,apto, obnubilar, digno, etc.(cfr。§124)
公式の規範によって許されていないが、他の変化はカステリア語
において大なる拡大に達した(アンダルシア-アメリカのseseoを除
いて)
。
2つは、これから示す現象である。
1)/l./と/y/の混同
2)ある地区での語尾の/s/の消失または弱化
両事実は、しかしながらイスパニア語の特有性ではない。そしてcon
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スペイン語通時音韻論
anterioridad、たとえばフランス語において行われた。最初のものに
関して、この両者の合一は今日社会的尊重を得ていて、この区別を
保持している大きな保守的な地区に対して都会的な現象として取扱
われているということを認めるべきであろう。
マドリードはyeistaである、そして首都のhablaはEspañaではフラン
スのパリにおいて所有しているようなpoder irradiente(放射力:情報
発信力:影響力とすべきか)を有していない。
し か し な が ら こ れ (ello) は igualacion が 教 養 言 語 に お け る 全 面 的
admisionを享受するようにさせる。大きな特徴に対して(a grandes
rasgos)半島の南半分はyeistaである。アメリカのように(孤立したあ
る地区を除いて)一方イスパニアの北半分(多くの市やその影響の
ある地区を除いて)/l./-/y/の区別を残している。
とは言っても、このigualacionの動機の1つはこのような対立の孤
立している性格であるようである。この合一の結果の実現体は地域
により、その位置によって[dy]と[y]の変種を有する普通のyeismoよ
り、方言的及びvulgarな調音[z+]または[s#]までのタイプがある。(101)
2番目の現象、内破音/s/の弱化は多くの段階になっている。もっと
も驚くことの少ないもの(el menos chocante)
(そしてそれゆえそれ
を行なっている人には殆ど無意識である)は、有声子音の前での摩
擦音[;]の実現体である。マドリードで典型的(desde[de+;de])そしてこ
れは疑いもなく半島の南半分、カナリア、アメリカで最も進んでい
る弱化の起源である。
この地区では、内破音の/s/は[h]と発音されしばしばこのような変
種を次の子音の間でuna fusionを作るに至っている(例えばMachaで
。
rasgoとrajo、これらはそれぞれ[r"áxo]と同じように実現される)
この状況はアンダルシアで最も進んでいる。ここでは実現体[h]は消
失するまでに至っており、すくなくとも休止の前では。また東アン
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スペイン語通時音韻論
ダルシアでは(またアメリカ地区で)このような現象は母音体系に
おける重大な結果を引き起こしている。これは音声的に2つの下位
体系に分裂する、1つはより長く、またより広く、そして他はより
狭くまたはより短くなる←初期(primitiva)の内破の/s/をその母音
が従えているかいないかによって。
語尾の母音のこの区別はまた、語の前の母音にmetafoneticamenteに
作用する。それによってある場所で、例えば複数の母音はすべて開
母音であり、それに対応する単数の母音はすべて閉母音である:
[bje,.ho$]/[bje*.ho*]。
さて、休止の前でない他の場所では、母音は開かれるが、長くは
ない、そして次の子音は変化され、二重子音化する。音韻的にはデ
ィスコース内で音素/h/の場合にその存在を認めなくてはならない。
その行動(accion)は、前の母音および次の子音に対しても反射する。
los vesはlo veより[lo, φφe+$:]/[lo* be+!]という実現体によって区別される。
この東アンダルシアの音素/h/はそれゆえ旧いカステリア語の/h/(排
他的に語頭の)の継続音(heredero)であり、旧い口蓋音/s+,z#/(これ
はカステリア語で/x/に軟口蓋化した)の継承者(heredero)であり、そ
して最後に内破の/s/の継承者(heredero)である。
(102)
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1 第4部 スペイン語通時音韻論 140. スペイン語は - E