日本経済入門
日本と東アジアの成長と貿易
アジア研究所
小山直則
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今日学ぶこと
第12章 不確実性とリスク
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第12章 不確実性とリスク
●不確実性とリスク
⇒気象現象など繰り返し起きる事象では客観的
に確率が知られている。
例. 降水確率、サイコロの目の確率
⇒しかし、企業が研究開発を行い、さらに、事業
化に成功するかどうかは、一回限りで確率が
わからない。
⇒このように将来ある現象が生じるかどうかと
いう確率が不明な場合を不確実性という。
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第12章 不確実性とリスク
●不確実性とリスク
⇒気象現象など繰り返し起きる事象では客観的
に確率が知られている。
例. 降水確率
⇒このように将来ある事柄が発生するかしない
かの確率が客観的にわかる場合をリスクとい
う。
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第12章 不確実性とリスク
●不確実性とリスク
⇒リスクの場合は確率が予想できるのでリスク分散が
できる。
例. 国債、株式、保険、為替など。
⇒不確実性は確率がわからないのでリスク分散できな
い。
⇒不確実性への対処は企業経営者の決定に次第で
ある。
例. オムロンの自動改札機開発
*近鉄電車が世界で始めて自動改札機を導入する計
画を立てたが、その開発に協力した企業はオムロン
だけであったらしい。
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第12章 不確実性とリスク
●大数の法則とリスク分散
⇒例. 個別、独立に生じる火災の発生が大量に観察さ
れると火災の発生確率は一定の値(真の値)に近づ
いていく。
⇒したがって、保険会社は火災の発生確率から保険
料率を計算できる。
⇒この場合、火災は不確実性ではなくリスクである。
⇒火災はリスク分散できるが、地震の場合はリスク分
散できない。
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第12章 不確実性とリスク
●リスク分散と経営
⇒経営におけるリスク分散は経営の多角化で
ある。
例. 文具店は企業のみを顧客とする場合、景気
変動によって営業利益が変動する。
⇒しかし、写真立てなど個人の顧客の商品も販
売することによってリスクを分散できる。
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第12章 不確実性とリスク
●リスク分散と情報の非対称性
⇒自動車保険にはリスク分散機能がある。
⇒しかし、保険加入者の情報は保険会社にはわから
ないので情報の非対称性がある。
⇒情報の非対称性には、①隠された情報問題と②隠
された行動問題(モラルハザード)がある。
⇒保険加入後に加入者の行動の変化は隠された行動
の問題である(危険走行) 。
⇒この場合、保険料を高くしなければ保険が成り立た
なくなる。
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第12章 不確実性とリスク
●リスク分散と情報の非対称性
⇒他の例
①製造物責任
②医療保険
③介護保険
⇒情報の非対称性問題(モラルハザード)がある
とき、保険によるリスク分散には限界がある。
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第12章 不確実性とリスク
●保険に替わるリスク分散
①賃金契約
②フランチャイズ
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保険に替わるリスク分散
運転手の所得
①タクシー運転手の賃金
契約(リース契約)
⇒リース契約ではタクシー
の売上はすべて運転手
の所得となる。
⇒しかし、毎月会社に固
定費(自動車、制服、無固定費
線)を支払わなければ
ならない。
45°
タクシー
売上
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保険に替わるリスク分散
運転手の所得
①タクシー運転手の賃金
契約(大手・中小会社)
⇒大手の方が中小よりも
固定給が多い。
固定給
⇒傾きは売上のうち、運
転手の所得になる割合
(変動給の割合)を表す。
中小会社
大手会社
タクシー
売上
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保険に替わるリスク分散
運転手の所得
①タクシー運転手の賃金
契約(大手・中小会社)
⇒大手会社の傾きが小さ
いということは、顧客一
人当たりの売上からの
所得が小さいことを意 固定給
味する。
⇒問題 大手と中小の賃
金契約の違いをリスク
分散、情報の非対称性
の観点から議論してく
ださい。
中小会社
大手会社
タクシー
売上
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保険に替わるリスク分散
●リスク分散
⇒タクシー会社は事故の危険(リスク)を分散したい。
⇒賃金契約によって運転手の事故を減らすインセン
ティブ(誘因)を考える。
⇒大手会社は中小会社よりも固定給が大きく、変動給
の割合(傾き)が小さい。
⇒これによって、大手会社は乱暴運転によって顧客数
(売上)を増やそうとインセンティブを減らすことがで
きる。
⇒理由①固定給が高いから②大口客が多いので乱暴
運転は顧客を減らす。③顧客数を増やそうと乱暴運
転をしても所得が増える割合(傾き)が小さい。
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保険に替わるリスク分散
●リスク分散
⇒タクシー会社は事故の危険(リスク)を分散したい。
⇒賃金契約によって運転手の事故を減らすインセン
ティブ(誘因)を考える。
⇒中小会社は大手会社よりも固定給が小さく、変動給
の割合(傾き)が大きい。
⇒これは、中小会社の運転手の乱暴運転を誘発し、事
故の危険を増やす可能性がある。
⇒理由①固定給が低いから②変動給の割合(傾き)が
大きいので、顧客数を増やそうと乱暴運転をしようと
する。
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保険に替わるリスク分散
●リスク分散
⇒リース契約の場合、会社は運転手から毎月固定費
を受け取っている。
⇒したがって、売上高の変動のリスクはすべて運転手
に転嫁されている。
⇒運転手は売上を伸ばさないと所得は無くなるので、
仕事に対するインセンティブは高まる。
⇒しかし、一定水準以上売上がないと所得がないので、
顧客を増やそうとして危険走行をする可能性が高い。
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第12章 不確実性とリスク
●保険に替わるリスク分散
①賃金契約
②フランチャイズ
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保険に替わるリスク分散
●コンビニの場合
⇒コンビニにも本部と店長との間にリスク分散の問題
がある。
⇒コンビニは多密度多店出店方式(Strategic
Dominance)によって配送費用を削減している。
⇒店長のリスクが大きいと出店者がいなくなり、このメ
リットを生かせなくなる。
⇒したがって、店長のリスク分散政策が必要となる。
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保険に替わるリスク分散
●コンビニの場合
⇒本部と店舗は、フランチャイズ契約をしている。
⇒本部は店舗側に経営方法を提供し、その見返りに
本部にフランチャイズ料(Franchise Fee)を支払う。
⇒このFeeは固定費ではなく売上高に応じた額となっ
ている。
⇒したがって、不景気のときの売上高の減少リスクは
店舗と本部でリスク分散できる。
⇒なお、固定費の場合は景気変動のリスクはすべて
店舗が負うことになる。
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保険に替わるリスク分散
●情報の非対称性
⇒タクシー会社は運転手が安全運転をするか
危険走行をするかという情報がわからない
(情報の非対称性)。
⇒雇用契約後の行動がわからない(隠された行
動の問題)。
⇒賃金契約の方式によって安全運転を誘因を
高める。
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不確実性
●例. 結婚式
⇒結婚式の招待状を100人の送ったとする。
⇒出席者が何人になるかは天気予報のように客観的
に予想できない(出席確率はわからない)。
⇒したがって、この場合はリスクではなく不確実性であ
る。
⇒一人10,000円の費用で100人分のテーブルを用意
したとする。
⇒出席者が80人なら20人分の食事が無駄になるし、
120人であれば20人分の不足が生じる。
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不確実性
●例. 結婚式
⇒不確実性を回避するには、出席者に食材と
飲み物を持参させればよい。
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期待効用理論と保険
●期待所得
⇒確率1/4で火災が発生
し、そのとき所得が400
万円だけ残る。
⇒確率3/4で火災がなく
1,000万円の所得があ
る。
⇒期待所得
=1/4*400+3/4*1,000
=850万円
●効用と年収
年収
効用
400万円
100
700万円
130
850万円
135
1,000万円 140
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期待効用理論と保険
●期待効用
⇒確率1/4で火災、所得が
400万円。
⇒確率3/4で所得が1,000
万円。
⇒期待効用
=1/4*100+3/4*140
=130
●効用と年収
年収
効用
400万円
100
700万円
130
850万円
135
1,000万円 140
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期待効用理論と保険
効用
●保険に加入するか?
⇒保険に加入しない場合
の期待所得は850万円。
⇒保険に加入する場合の130
最低所得850万円。
*保険金600万円
保険金150万円
火災のときの所得400万
円
*400+600-150=850
400
850
1000
700
年収
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期待効用理論と保険
効用
●保険に加入するか?
⇒保険に加入しない場合
の期待所得は850万円
と火災のときの最低所 130
得を比較しても保険に
加入する行動をうまく説
明できない。
⇒期待効用を調べる。
400
850
1000
700
年収
26
期待効用理論と保険
効用
●保険に加入するか?
⇒期待効用を調べる。
⇒火災のときと火災がな
130
い場合の所得の期待
効用は130であったこと
を思い出してください。
⇒130の効用をもたらす
所得は700万円である。
400
850
1000
700
年収
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期待効用理論と保険
効用
●保険に加入するか?
⇒期待所得850万円の期
待効用と確実な所得
700万円の効用が等し 130
いので、700万円を確
実性等価という。
⇒すなわち、この人は150
万円失っても最低700
万円の所得が得られれ
ばよいと考えている。
400
850
1000
700
年収
28
期待効用理論と保険
●保険に加入するか?
⇒この人は、最低700万円の
所得が保証される保険に
加入してもよいと考えてい
130
る。
⇒最低600万円の所得しか保
証されないのであれば加入
しない。
⇒危険が嫌いな人ほどリスク
プレミアムが大きくなる。
*リスクプレミアム
=期待所得ー確実性等価
効用
850
400
1000
700
年収
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(1) 規模の経済性
●総費用
⇒総費用TC=可変費用VC+固定費用FC
⇒例. 固定費用 広告費、製品開発費用
⇒例. 可変費用 顧客の注文処理費用
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(1) 規模の経済性
●可変費用(VC)
⇒単純化のため、
VC=定数c×生産量X
と考える。
⇒例. 生産量が100個、定
数が10円ならば、
c
可変費用は10円×100個
可変費用
=1,000円となる。
⇒図の青い領域
100個
生産量
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(1) 規模の経済性
●総費用(TC)
⇒各生産量に対する可変
費用に固定費用を上乗
せすれば、
⇒総費用は青い四角形と
緑の四角形の面積の
合計となる。
c
固定費用
可変費用
100個
生産量
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(1) 規模の経済性
●平均費用(AC)
⇒平均費用
=総費用/生産量 平均固定費用
この高さが平均費用
AC=(VC+FC)/X
=c+FC/X
平均可変費用
⇒図
固定費用
c
生産量が多くなるにつれ
て、固定費用が分散さ
可変費用
生産量
れて平均費用が小さく
なっていく。
100個
200個
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(1) 規模の経済性
●平均費用(AC)
⇒平均費用
=総費用/生産量
=(c×X+FC)/X
平均固定費用
この高さが平均費用
=c+FC/X
⇒平均費用 平均可変費用
=定数+平均固定費用
固定費用
⇒生産量が拡大すると平 c
均固定費用が小さくな
可変費用
生産量
るので、平均費用が低
下する。
100個
200個
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(1) 規模の経済性
●平均費用(AC)
平均費用曲線
⇒平均費用
=定数+平均固定費用
⇒生産量が100個から 平均固定費用 この高さが平均費用
200個に拡大すると平
均固定費用が小さくな
平均可変費用
るので、平均費用が低
固定費用
c
下する。
可変費用
⇒規模の経済性による固
生産量
定費の分散。
100個
200個
35
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講義資料