R-GIROの活動報告
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MEMS と BME(bio medical engineering)のマルチスケールフュージョン研究
遺伝子・核酸医薬の実用化を後押しするドラッ
有 効なドラッグ・デリバリー・システムがない。
抱えているためです。患部の細胞内にまで薬効を届ける技術の確立は、
それ が 遺伝 子・核 酸 医 薬の実 用化を阻 んで います。
遺伝子・核酸医薬の実用化を後押しし、医療に革新をもたらすに違い
グ・デリバリー・システム
めに、一匹のマウスを何度も開腹しなければならない点です。
私たちは両大学の技術を融合させ、PBA を用いてマウス体内の標的組織
03
人への応 用を視 野に入れた D DS を開 発し
マウスでその 有 効 性を確 認しました。
を押圧する埋め込み式のマイクロシステムを開発しました。PBA は、薄膜
ありません。
立命館大学と京都大学は、科学技術の高度化と社会への迅速な還元を
上に膨張収縮するマイクロバルーン構造と空気を送り込むマイクロ流路
さらに私たちは人への応用も視野に入れた DDS として、新たに「吸引
目的に学術交流に関する包括協定を結び、学問領域を超えた連携や施
立命 館の M E M S と京都大学の核 酸 導入 技 術を融 合させ
を形成し、流路から空気圧を加えてバルーン構造を膨張させることがで
法」を用いた核酸導入方法を開発しました。こちらには立命館大学の持
設・設備の共同利用などさまざまな形で協力し合いながら研究に取り組
核 酸の D DS を開 発しました。
きるアクチュエータです。「小さい」「柔らかい」「安全」という特徴を持
つ「マイクロ吸盤」の技術を応用しました。マイクロ吸盤とは、マイク
ち、医療用ツールに適しています。この PBA を搭載したマイクロシステ
ロポンプと吸着固定吸盤を一体化したもので、ポンプから空気を吸引し
ムをマウス体内の患部に埋め込み、外から空気圧を加えてバルーン構造
て物体を吸盤に引き付け、固定することができます。このデバイスは内
を膨張させることで、組織を押圧しようと考えたのです。
視鏡の先端などに取り付けて標的組織まで運ぶことができるため、体内
んでいます。中でも、京都大学大学院薬学研究科の「革新的ナノバイオ
創薬研究拠点」に立命館大学も参加する形で進んでいるのが薬工連携の
立命館大学の研究グループは半導体製造技術をナノサイズで実現する
画期的な試みです。京都大学が持つバイオテクノロジーや DDS(Drug
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)の
Delivery System)技術と、立命館大学が持つマイクロマシン・ナノテク
研究に取り組んでいます。とりわけバイオ・医療への応用(BME)に力
ま ず 疑 似 腎 臓 で マ イ ク ロ シ ス テ ム の 効 果 を 確 か め た 後、 マ ウ ス を
に埋め込む必要がなく、人間への応用も可能です。この仕組みを利用し
ノロジー技術を融合させ、新しいナノバイオ医療技術を開発しようとし
を注ぎ、これまでにもさまざまなバイオメディカルデバイスを開発して
使って実験しました。まずマウスの右腎臓にマイクロシステムを装着
たマイクロシステムを作製し、マウスの体内に挿入しました。標的組織
ています。
きました。その中の一つ PBA(Pneumatic Balloon Actuator:空圧駆動バ
し、プラスミド DNA を投与しました。次いで PBA を駆動させて腎臓
に吸引圧をかけ、臓器を変形させることで、組織内に核酸を導入するこ
ルーンアクチュエータ)の技術を、遺伝子・核酸医薬の DDS に応用しよ
を押圧したところ、いずれも腎臓内で DNA の発現を認められました。
とに成功しました。[参考文献 3]
うというのが今回の狙いでした。
この結果、マイクロシステムをマウスの体内に埋め込めば、開腹する
本研究によって薬学、工学がそれぞれの強みを発揮し、これまで克服
こ と な く 何 度 で も 腎 臓 を 押 圧 し、 核 酸 を 導 入 で き る こ と が 明 ら か に
困難とされてきた遺伝子・核酸医薬の DDS 開発に立ちはだかる課題に突
なったわけです。[参考文献 1]
破口を開いたことは、今後の遺伝子・核酸医薬実用化につながる大きな
こ の 連 携 で 特 筆 す べ き 成 果 の 一 つ が、 遺 伝 子・ 核 酸 医 薬 に お け る
DDS の 開 発 で す。DNA や RNA か ら 構 成 さ れ る 遺 伝 子・ 核 酸 医 薬 は、
その作用メカニズムから、従来とは一線を画した新しい薬剤になり得
一方、京都大学では、本来細胞膜を透過しない核酸を生体組織の細胞内
る可能性を秘めているとして注目を集めています。しかし新薬として
に導入する独自の方法を開発しています。血中に核酸溶液を投与した直後
の開発が進む一方で、その実用化を阻んでいるのが「有効な DDS がな
に標的とする組織を押圧することで、組織内の細胞に核酸を導入するとい
マウスなどの生体組織に核酸導入法を適用できるようになれば、遺伝
前進と言えるでしょう。さらにこの共同研究は、細胞レベルから生体ま
い」という問題です。DNA や RNA は体内で分解されやすく、薬効を患
うものです。マウスの血中に核酸溶液を投与した場合、開腹して手技で直
子治療の前臨床試験や遺伝子・核酸医薬のスクリーニング、機能解析も
でマルチスケールで研究を進めることで、バイオ、医療、工学など幅広
部にまで届けるのが難しい上、核酸は電荷密度が高く、たとえ患部に
接標的組織を押圧します。この「組織押圧核酸導入法(押圧法)
」を研究
進展します。現在は、マイクロシステムの改良を進める一方、押圧法に
い分野での成果が期待できます。こうした薬工連携研究から将来革新的
届いても容易に細胞膜を透過することができないという二重の難題を
に用いる場合、課題になるのが、効果を持続させたり、実験を繰り返すた
よる核酸導入のメカニズムも解明しようとしています。[参考文献 2]
なテクノロジーが生まれることも夢ではありません。
空気圧
腎臓ケース
(写真左)
R-GIRO 客員研究員
京都大学大学院薬学研究科特定助教
清 水一 憲
体外
押圧された腎臓
メカニズム解明を目指した
細胞伸展培養用
マイクロデバイスの開発
長期的な
核酸デリバリーのための
体内埋め込み式
マイクロシステムの開発
Ka zunor i Shimizu
吸引マイクロデバイス
を用いた低侵襲な
核酸デリバリー手法の開発
皮下
腹腔
膨張したバルーン
(写真右)
小西 聡 教授
針
空気圧供給ポート
Pneumatic balloon actuator (PBA)
核酸デリバリーへのマルチスケールな MEMS 応用
マウス体内埋め込み式マイクロシステムの概要
Satoshi Konishi
● 参考文献/ 1 MEMS デバイスによる核酸デリバリー技術 , 遺伝子医学 MOOK20 号「ナノバイオ技術と最新創薬応用研究」p185-p189(1 月半ば発刊予定)
2 Development of a
Biochip with Serially Connected Pneumatic Balloons for Cell-stretching Culture, Sensors and Actuators B: Chemical, 156: 486-493(2011) 3 導入対象物質の送達装置の作動
方法および導入対象物質の送達方法 , PCT/JP2011/062102
● 連絡先/立命館大学 びわこ・くさつキャンパス(BKC)
電話 :
(外線)077-566-1111 HP:http://www.ritsumei.ac.jp/se/~ konishi/mems/home.htm(小西研究室)
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R-GIRO Quarterly Report vol. 08 [Winter 2011]
R-GIRO Quarterly Report vol. 08 [Winter 2011]
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小西 聡教授 清水一憲