第3回 吉永医院 在宅医療連絡相談会
コンセンサス・ミーティング
認知症について 総論
医療法人 社団永仁会 吉永医院
内 科
吉永 治彦
本日のスライドは、
かかりつけ医認知症対応力向上
セミナーで使用されるものの一
部で、認知症サポート医に配付
されたものです。
Eijinkai Yoshinaga Clinic
http://www.yoshinaga.org
<連携-30>
かかりつけ医が参画した早期からの認知症高齢者支援体
制
企画
立案
各都道府県・政令指定都市に、
研修の企画立案等を担当する
医師(サポート医・医師会)
(かかりつけ医の)
サポート医
連携
相談・助言
かかりつけ医認知症対応力向
上研修(県または医師会が委託
を受け開催)
• 専門医療機関への
受診誘導
• 一般患者として日
常的な身体疾患対
応、健康管理
• 家族の介護負担、
不安への理解
• 地域の認知症介護
サービス諸機関と
の連携 等
鑑別診断やBPSD
(周辺症状)への対応
連携
か
か
地
り域
会
つ医
支援
本人
家族
け
師
医
連携
ケアマネ・
介護職等
専門医療機関
連携
• 早期段階での発
見・気づき
可能な範囲
でアドバイス
連 携
(具体的な連携方法や関係づくり
をどのようにするか)
地
域
包
括
支
援
セ
ン
タ
ー
<連携-3>
要介護(要支援)認定者における
認知症高齢者(自立度Ⅱ以上)の将来推計
(単位:万人)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
65歳以上
人口比
(%)
2002 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045
6.3
6.7
7.2
7.6
8.4
9.3 10.2 10.7 10.6 10.4
高齢者介護研究会報告書 「2015年の高齢者介護」 2003 を基に作成
<連携-4>
認知症高齢者の所在
認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上 149万人(47.5%)
その他
13%
療養型
8%
居宅
48%
老健
13%
特養
18%
高齢者介護研究会:「2015年の高齢者介護報告書」2003より
<基本-5>
身近な人の認知症を一番最初に相談した相手
(N=675)
かかりつけ医
その他
4.6%
4.1%
専門医
9.6%
配偶者・兄弟
姉妹・親族・
友人
相談して
いない
57.6%
24.1%
(本間、老年精神医学雑誌投稿中、2008)
<基本-6>
初診時の医師の対応
(受診経験者:N=81/331)
(%)
肯定的・
積極的な対応
69.1
否定的な対応
28.4
0
20
40
60
80
本間昭:老年精神医学雑誌 2003; 14: 573-591.
認知症とは?
Eijinkai Yoshinaga Clinic
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<基本-10>
家族が最初に気づいた認知症高齢者の日常生活の変
化
 同じことを何回も言ったり聞いたりする
(N=123)
 財布を盗まれたと言う
 だらしなくなった
 いつも降りる駅なのに乗り過ごした
 夜中に急に起き出して騒いだ
 置き忘れやしまい忘れが目立つ
 計算の間違いが多くなった
 物の名前が出てこなくなった
 ささいなことで怒りっぽくなった
東京都福祉局 「高齢者の生活実態及び健康に関する調査・専門調査報告書」 1995より
<基本-9>
認知症の考え方 (DSM)
記憶
障害
判断の障害
実行機能障
判断力の障害
害など
+
計画や段取りを立て
られない
社会生活・対人関係に支障
器質病変の存在・うつ病の否定
+
意識障害
なし
認
知
症
American Psychiatric Association. Diagnostic and statistical manual
of mental disorder, 3rd ed revised(DSM-IIIR)
<基本-11>
認知症の中核症状と周辺症状
生活機能の障害
中核症状
周辺症状
認知機能障害
思考・推理・判断・適応・問題解決
•
•
•
•
•
•
記
憶
障
害
判
断
力
低
下
見
当
識
障
害
言 失 失 ほ
語 行 認 か
障
害
(
失
語
)
•
•
•
•
•
•
せん妄
抑うつ
興奮
徘徊
睡眠障害
妄想
ほか
<基本-14>
認知症と間違えられやすい状態
● 加齢に伴うもの忘れ
● うつ病(仮性認知症)
● せん妄
<基本-15>
加齢に伴うもの忘れと認知症のもの忘れ
加齢に伴うもの忘れ
認知症のもの忘れ
体験の一部分を忘れる
全体を忘れる
記憶障害のみがみられる
記憶障害に加えて
判断の障害や実行機能障害がある
もの忘れを自覚している
もの忘れの自覚に乏しい
探し物も努力して見つけようとする 探し物も誰かが盗ったということがある
見当識障害はみられない
見当識障害がみられる
作話はみられない
しばしば作話がみられる
日常生活に支障はない
日常生活に支障をきたす
きわめて徐々にしか進行しない
進行性である
東京都高齢者施策推進室「痴呆が疑われたときにーかかりつけ医のための痴呆の手引き」1999より引用・
改変
<基本-17>
うつ状態とアルツハイマー型認知症の臨床的特徴
うつ状態
発 症
週か月単位、
何らかの契機
もの忘れの
強調する
訴え方
アルツハイマー型認知症
緩徐
自覚がない、自覚あっても
生活に支障ない
答え方
否定的答え
(わからない)
作話、つじつまをあわせる
思考内容
自責的、自罰的
他罰的
失見当
軽い割にADL障害強い
ADLの障害と一致
記憶障害
軽い割にADL障害強い
ADLの障害と一致
最近の記憶と昔の記憶に
最近の記憶が主体
差がない
日内変動
あり
乏しい
<基本-18>
せん妄と認知症の臨床的特徴
せん妄
認知症
発 症
急激
緩徐
日内変動
夜間や夕刻に悪化
変化に乏しい
初発症状
錯覚、幻覚、妄想、興奮
記憶力低下
持 続
数時間 ~ 一週間
永続的
知的能力
動揺性
変化あり
身体疾患
あることが多い
時にあり
環境の関与
関与することが多い
関与ない
認知症の診断
Eijinkai Yoshinaga Clinic
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<診断-9>
認知症の中核症状のアセスメント
質問式と観察式の特徴
<質問式>
<観察式>
●生年月日だけ分かれば施行
●日常生活の様子がわからなけ
できる
れば評価できない
●本人が協力的である必要
●協力的である必要なし
●うつ状態などによって成績が
●うつ状態などによる影響なし
影響される
●家族などからの情報がないと
難しい
<診断-10>
代表的なアセスメント・ツール
● 質問式
認知症のスクリーニングを目的とすることが多い
① 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
② ミニメンタルステート検査(MMSE)
● 観察式
患者を直接観察することや家族・介護者からの情報によ
り評価
①Functional Assessment Staging (FAST)
②初期認知症徴候観察リスト(OLD)
<診断-11>
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の項
目
項
目
1.年齢
点 数
1
2.時間の見当識
4
3.場所の見当識
2
4.3つの単語の直後再生
3
5.計算
2
6.数字の逆唱
2
7.3つの単語の遅延再生
6
8.5つの物品課題
5
9.言語の流暢性
5
合計点数
30
加藤伸司ほか:老年精神医学雑誌 1991; 2: 1339-1347.
<診断-12>
ミニメンタルステート検査(MMSE)の項目
項
目
1.即時記憶
2.遅延再生
3.見当識(時間+場所)
4.注意の持続
5.認識
6.観念運動
7.書字
8.読字
9.図形模写
カットオフ値
点 数
4
3
10
5
2
3
1
1
1
23/24
加藤伸司ほか:老年精神医学雑誌 1991; 2: 1339-1347.
<診断-7>
FASTによるアルツハイマー型認知症の
重症度のアセスメント
1.正常
2.年相応
物の置き忘れなど
3.境界状態
熟練を要する仕事の場面では、機能低下が同僚によっ
て認められる。新しい場所に旅行することは困難。
4.軽度のアルツハイマー型
認知症
夕食に客を招く段取りをつけたり、家計を管理したり、買
物をしたりする程度の仕事でも支障をきたす。
介助なしでは適切な洋服を選んで着ることができない。
5.中等度のアルツハイマー
入浴させるときにもなんとか、なだめすかして説得するこ
型認知症
とが必要なこともある。
6.やや高度のアルツハイ
マー型認知症
不適切な着衣。入浴に介助を要する。入浴を嫌がる。ト
イレの水を流せなくなる。失禁。
最大約6語に限定された言語機能の低下。理解しうる
7.高度のアルツハイマー型
語彙はただ1つの単語となる。歩行能力の喪失。着座能
認知症
力の喪失。笑う能力の喪失。昏迷および昏睡。
Reisberg B et al: Functional staging of dementia of the Alzheimer type. Ann NY Acad Sci 1984; 435 481-483
<診断-13>
初期認知症徴候観察リスト(OLD)の項目
① いつも日にちを忘れている
② 少し前のことをしばしば忘れる
記憶
忘れっぽさ
③ 最近聞いた話を繰り返すことができない
④ 同じことを言うことがしばしばある
⑤ いつも同じ話を繰り返す
語彙・会話内容
の繰り返し
⑥ 特定の単語や言葉がでてこないことがしばしばある
⑦ 話の脈絡をすぐに失う
⑧ 質問を理解していないことが答えからわかる
会話の
組み立て能力
と文脈理解
⑨ 会話を理解することがかなり困難
⑩ 時間の観念がない
⑪ 話のつじつまを合わせようとする
⑫ 家族に依存する様子がある(本人に質問すると家族の方を向くなど)
見当識障害
作話
依存など
Hopman-Rock M, Development and validation of the Observation List
for early signs of Dementia(OLD)
Int J Geriatr Psychiatry.2001Apr;16(4):406-14.
<診断-14>
OLDの用い方
● 本人との問診で観察できる具体的症状
→ 記憶障害、失語、失見当識など
● 必ずしも、全ての項目をチェックしなくてよい
● 該当項目数にはこだわらずに
(オリジナルは4項目)
● この内容を意識して問診できるようになったら、
自分なりのスタイルで
<診断-27>
必要な検査とは
● 尿検査一般
● 血液検査
血液一般
生化学
肝・腎機能・電解質・
甲状腺ホルモン(TSH、FT3、FT4)ほか
● さらには・・・
梅毒・アンモニア高値などの疑いがあれば行う
ビタミンB1・B12・葉酸・カルシウムなども可能な限り行
う
<診断-29>
画像診断とは
● 脳の形態学的側面の変化を画像としてとらえる
CT 石灰化病変に強い。短時間で撮像できる
MRI 解像力に優れる。種々の方向の断層を得られる
● 脳の機能的側面を画像としてとらえる
SPECT 多くの施設で実施可能。統計解析画像により
小
さな変化の描出が可能となった。やや高価
PET サイクロトロンが必要。SPECTより解像力優れる
認知症に対して保険適応がない
認知症の分類
Eijinkai Yoshinaga Clinic
http://www.yoshinaga.org
<基本-8>
認知症を呈する主要な疾患
代表的な疾患





アルツハイマー型認知症
血管性認知症
レビー小体型認知症
前頭側頭葉変性症
その他の認知症
可逆性の疾患

甲状腺機能低下症

慢性硬膜下血腫
正常圧水頭症
ビタミン欠乏症


<診断-28>
可逆性の認知症とその鑑別法
疾 患
鑑別のための検査
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモン測定
(TSH、FT3、FT4)
ビタミンB1・B12欠乏
ビタミンB1・B12測定
脳炎
髄液検査
正常圧水頭症
CT、MRI、髄液排除試験
慢性硬膜下血腫
CT、MRI
脳腫瘍
CT、MRI
<基本-19>
DSM-Ⅳ-TR(米国精神医学会診断統計便覧第4版)
によるアルツハイマー型認知症の診断基準
AD
A) 記憶を含む複数の認知機能障害
B) 社会的・職業的な機能の障害/病前の機能の著しい低下
C) ゆるやかな発症と持続的な認知機能の低下
D) A)の障害が下記によらない
1.中枢神経系疾患(脳血管障害、パーキンソン病、ハンチントン病、
硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍)
2.全身性疾患(甲状腺機能低下症、VB12/葉酸/ニコチン酸欠乏症、
高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症)
3.物質誘発性の疾患
E) せん妄の経過中にのみ現れるものではない
F) 障害が他の第1軸の疾患では説明されない
大うつ病性障害、統合失調症など
<基本-20>
アルツハイマー型認知症の症例
AD
73歳 女性
1年ほど前から前日のことを忘れることが多くなった。通帳や大切なものの
しまい忘れがめだつようになり、物が見つからないときに夫のせいにする。
結婚した娘のところに何度も電話してくるが、前にかけてきたことを覚えてい
ない。買い物へはいくが、同じものを大量に買ってきてしまい冷蔵庫内で腐
らせてしまう。料理もレパートリーが減り3日続けて同じ料理を作った。好き
で通っていた書道教室へ最近いろいろ理由をつけていかなくなった。
MMSE 23/30 (時間の見当識 1/5 場所の見当識 5/5 記銘 3/3 集中・計
算 5/5 再生 0/3 言語 8/8 構成 1/1)
今日は何月の何日ですか?
何月でしたっけ。夫のほうを振り返って尋ねる。今日は新聞もテレビも見て
こなかったものですからと言い訳する。
<基本-21>
アルツハイマー型認知症のMRI
AD
<基本-22>
アルツハイマー型認知症のSPECT
脳血流シンチ
左脳表面
①頭頂側頭連合野
左内側面
②楔前部
③後部帯状回
AD
<基本-23>
NINDS-AIRENによる 血管性認知症の診断基準
1.認知症
a. 記憶障害および認知機能に障害があること
b. それらは神経心理検査で裏づけされたうえで診察で証明
c. これらの脳卒中による身体的ハンディーキャップによらない
2.脳血管障害
a. 脳血管障害による局在徴候が神経学的検査で認められる
b. 脳画像検査で対応した脳血管性病変がみられること
3.認知症と脳血管障害との関連
(a.b.が単独でみられるか両者が見られる場合)
a. 脳卒中発症後3ヶ月以内の認知症発症
b. 認知機能の急速な低下、あるいは認知機能障害の動揺性
あるいは階段状の進行
Román GC et al: Vascular dementia; Diagnostic criteria for research studiesReport
of the NINDS-AIREN International Workshop. Neurology 1993; 43: 250-260
<基本-24>
血管性認知症の症例
67歳 男性
平成○年1月12日 昨日のことも、今日のこともなんにもわか
らないという。
前日話した内容を覚えていない。
身のまわりのこともできず尿失禁していた。
1月19日当科初診。その後も著明な健忘と傾眠傾向あり。
左半側空間無視あり。トイレの位置がわからず、洗面所で排
便したり、玄関で放尿してしまう。
デイサービスに行っているが行ったことや、そこでしたことを覚
えていない。
MMSE 16/30 (1/5, 1/5, 3/3, 3/5, 2/3, 6/8, 0/1)
頭部MRI上、両側被殻、左視床、両側皮質下白質にラクナ梗
塞多発し、中等度のPVHあり。海馬の萎縮は年齢相応。
<基本-25>
レビー小体型認知症
1.歴史 1976年小阪らが報告
1990年代になって欧米でも注目されるようになった
1995年統一された病名と診断基準が提唱
2.頻度 正確な頻度は不明であるが変性性の認知症では
アルツハイマー病の次に多いといわれている
3.病理 大脳皮質(前頭葉、側頭葉前部、帯状回、島回)
にLewy小体が多数出現.脳幹(黒質、青斑核、縫線核
迷走神経背側核)や間脳(視床下部、Meynert核)
にも出現する
DLB
<基本-26>
レビー小体型認知症の診断基準①
DLB
1.社会生活に支障がある程度の進行性認知症の存在
初期は記憶障害は目立たないこともあり、進行とともに明らかになる。
注意力、前頭葉皮質機能、視空間認知障害が目立つこともある。
2.以下の3項目の中核症状のうちprobable DLBでは2項目、
possible DLBでは1項目が認められること。
1)注意や覚醒レベルの明らかな変動を伴う認知機能の動揺
2)現実的で詳細な内容の幻視が繰り返し現れる
3)パーキンソニズムの出現
McKeith IG,Dickson DW, Lowe J et al :Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies(DLB).
Neurology 65: 1863-1872,2005
<基本-27>
レビー小体型認知症の診断基準②
DLB
3.DLBの診断を示唆する症状
1)レム睡眠時行動異常
2)重篤な抗精神病薬過敏
3)PET、SPECTでの基底核でのドパミントランスポータの減少
4.DLBの診断を支持する症状
1)繰り返す転倒と失神 2)一過性の意識障害 3)重篤な自律神
経障害 4)幻視以外のタイプの幻覚 5)系統的な妄想
6)うつ 7)CT、MRIで側頭葉内側が保たれている
8)SPECT・PETでの後頭葉の取り込み低下
9)MIBG心筋シンチの異常
10)脳波での徐波と側頭葉での一過性の鋭波
McKeith IG,Dickson DW, Lowe J et al :Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies(DLB).
Neurology 65: 1863-1872,2005
<基本-28>
レビー小体型認知症の症例
DLB
66歳 男性
主訴:意欲低下。動きが遅くなり眠ってばかりいる
家族歴:特記すべきことなし
現病歴:約10年前頃から下肢の動きにくさを自覚
約6年前頃から会話が筋道をたててできない
洋服がうまく着られない。機械を扱う仕事をしていたにもかか
わらずカメラが使えない。目覚まし時計があわせられない。
1日中うとうと眠っているかと思うと易怒性あり。5年前の1月
大学病院の神経内科に入院。パーキンソン病といわれたが
L-DOPAの効果は明らかでなく、D2アゴニストを使用した
ところ幻覚が出現したという。
5年前の5月初診 筋固縮は軽度だが動作緩徐が強い。
傾眠.自律神経症状(起立性低血圧、神経因性膀胱、発汗低下、
MIBG心筋シンチの異常)。 MMSE 24/30 WAIS‐R IQ 83
<基本-29>
DLB
レビー小体型認知症の画像
①
②
③
④
<基本-30>
前頭側頭葉変性症
分類:
前頭側頭葉変性症
前頭側頭型認知症
Pick型
運動ニューロン疾患型
前頭葉変性型
進行性非流暢性失語
意味性認知症
FTD
<基本-31>
前頭側頭型認知症の特徴
臨床的特徴
初老期におこり、一部は家族性をしめす。
臨床症候群であり、進行性の前頭・側頭葉変性
を示す。
臨床症状は高度の性格変化、社会性の喪失、
注意、抽象性、計画、判断等の能力低下が特徴
言語面では会話が少なくなり末期には緘黙となる。
記憶、計算、空間的見当識は比較的保たれる。
画像では病理の萎縮部位に対応する選択的な
前頭葉・側頭葉の異常が描出される。
Ex. 近所で有名なゴミ屋敷
FTD
<基本-32>
FTD
前頭側頭型認知症の症例①
70歳 女性
主訴:異常行動 家族歴:姉が認知症
現病歴:平成X年4月頃から不眠、7月ごろから無口
になった。本来は社交的でおしゃれな性格だった
が家族とも口をきかなくかった。平成X+1年6月頃から
異常行動出現
1)安全ピンを1日に何回も買いにいき、お金を払わずに
帰ってくる。
2)スーパーのビニール袋を際限なく引っ張り出す。
3)全裸で洗濯物をかわかす。
4)ヘアドライヤーで洗濯物を乾かし続ける。
5)他人のゴミ袋に自分の家のゴミをいれる。
<基本-33>
前頭側頭型認知症の症例②
FTD
現病歴:これらの異常行動を夫が非難すると反抗的になり
暴力をふるった。平成X+1年10月銀行から大金をおろし
てしまいどこへしまったかわからない。部屋のなかは泥棒
が荒らしたかのように散らかっている。
夫が片づけても再び散らかす。
平成X+2年1月当科初診
神経学的に特記すべき所見なし。
MMSE 19/30 (2/5, 4/5, 3/3, 1/5, 2/3, 6/8, 1/1)
病識は全くなく、夫のいっていることはすべて嘘であると
言いきる。
<基本-34>
前頭側頭型認知症のMRI画像
FTD
認知症の治療とケア
Eijinkai Yoshinaga Clinic
http://www.yoshinaga.org
<治療-5>
認知症の患者さんに接する時の視点
1.患者さんは強い不安の中にいることを理解して接す
る
2.外来での医師への態度はご本人の一番良い状態を
見せていることが多い
3.感情面は保たれているという認識で接すること
4.認知症の症状は基本的には理解可能として接する
5.いつもと様子が違うと感じたら身体合併症のチェック
を
<治療-7>
認知症の人への支援
もの忘れがあっても充実感を持ち、安心して暮らせる
ように、できる限りの治療や支援を行うことを本人に
伝える
もの忘れを自覚する辛さを受け止め、残された能力が
十分あることを伝える
認知症患者の前での家族に対する病状説明は、慎重
に行う
家庭で何らかの役割を分担すること、社会参加やデイ
サービスの利用をすすめる
身体疾患を早めに見つけて治療をする
<治療-10>
アルツハイマー型認知症の薬物療法
治 療 の 対 象と な る 症 状
1. 中 核 症 状
2. 周 辺 症 状
<治療-11>
アルツハイマー型認知症の臨床症状の経過と
塩酸ドネペジルの効果
軽度
症
状
の
経
過
塩酸ドネペジ
ル
何も治療しない
場合
時間の経過
重度
塩酸ドネペジル服用
の場合
塩酸ドネペ
ジル
服用を途中
で
止めた場合
監修:筑波大学精神科 教授 朝田 隆
<治療-13>
投薬に際して注意すべきこと
● 薬の保管・管理と定期的な服薬ができること
(患者本人または介護者が行う)
● 薬の効果と副作用の観察が行えること
(患者が独居の場合は訪問看護や訪問介護など
を利用して適宜支援と確認ができる)
● 定期的な受診と服薬指導が受けられること
<治療-15>
服用の仕方や副作用の説明
● 消化器系副作用を抑えるため1日3mgを1~2週間服用
その後、1日5mgに増量する
高度アルツハイマー型認知症に対しては1日5mgを4週間
以上服用後10mgに増量することも可能
● 嘔気や食欲不振などが出ることがある
軽い場合には様子を見る
食事量が低下するようなら、薬を一旦中止して相談を
● 薬の効果の一部だが、意欲の亢進による不穏、興奮、易怒、
攻撃などがみられることがあり、介護負担が増える場合があ
る。
その時には相談する
<治療-16>
塩酸ドネペジルの使用上の注意点
1.アルツハイマー病に使用
2.洞不全症候群、房室伝導障害は要注意
3.気管支喘息、閉塞性肺疾患の既往
投与前に心電図、胸部X線をとることが望ましい
4.消化性潰瘍の既往、非ステロイド系消炎剤使用中の患者
重大ではないが頻度の高い副作用
食欲不振、嘔気
嘔吐、下痢、便秘、腹痛
興奮、不穏、不眠、眠気
徘徊、振戦、頭痛
顔面紅潮、皮疹
3%以上
1~3%
1~3%
1%未満
1%未満
<治療-19>
効果はあるが副作用のため継続困難な場合の対
応
● 用量は1日1回5mgとされるが、高度の場合は10㎎も可である。
しかし、5mgでも副作用(吐気、食欲低下、下痢など)のために
継続困難になることもある。
その場合、3mgに減量すると副作用が目立たなくなり、かつ効
果も持続する場合がある。
また、5mg錠を隔日に服用している患者もいる。
しかしながら、いずれも保険診療では認められていない投与
方法である。
しばらく様子を見て5mgの再投与を試みる。
<治療-20>
薬剤の治療効果を判定するための中断
(再開する場合の中断の影響)
● 効果がみられない場合*、服用を一時中断するのも一つ
の方法である。悪化すれば効果のあることが確認される。
しかし長期間中断すると再開しても中断前の状態に戻ら
ないため注意が必要である。
米国のデータでは、3週間の中断は再開により、中断前
の状態に戻ったが、6週間の中断では再開しても戻らな
かった。
* 進行性疾患なので、不変でも効果があると考えられる
<治療-追加>
認知症治療の展望
○ 薬物療法
○ 免疫療法
● 受動免疫 (抗体療法)
● 能動免疫 (ワクチン療法)
<治療-26>
周辺症状に対する薬物療法
認知症に伴う精神症状や行動症候に対して
適応を得ている薬剤はないが、実地臨床では
いくつかの薬剤が用いられる

抗精神病薬

睡眠導入剤

抗うつ薬

抗不安薬
<治療-27>
周辺症状に対する非薬物療法

行動に焦点をあてた療法
・個別対応
・環境調整

感情に焦点をあてた療法
・回想法
・バリデーション療法(確認療法)

刺激に焦点をあてた療法
・音楽療法
・芸術療法
・ペット療法
・園芸療法など
<連携-6>
認知症高齢者ケアの基本
~ 高齢者の尊厳を支えるケアの確立 ~
認知症高齢者の特性
生活そのものを
ケアとして組み立てる
・記憶障害の進行と感情
等の残存
・環境の変化を避け、生活の
継続性を尊重
・不安・焦燥感
⇒行動障害の引き金
・高齢者のペースでゆっくりと
安心感を大切に
・環境適応能力の低下
・心身の力を最大限に引き出
して充実感のある暮らしを
構築
(環境変化に脆弱)
高齢者介護研究会報告書 「2015年の高齢者介護」 2003より
<連携-7>
日常の生活圏域を基本とした
サービス体系の構築
望ましい条件
普遍化に向けた展開
・小規模な居住空間
・グループホーム
・家庭的な雰囲気
・小規模・多機能ケア
・なじみのある安定的な
・施設機能の地域展開
人間関係
・住み慣れた地域での生活
の継続
高齢者介護研究会報告書
「2015年の高齢者介護」 2003より一部改変
・ユニットケアの普及
☆ 事業者・従事者の専門性・資質
の確保向上
終末期を視野に入れた
生活に配慮した医療サービス
<連携-8>
認知症の人のためのケアマネジメントセンター方
式
<共通の視点>
1. その人らしいあり方
2. その人の安心・快
3. 暮らしのなかでの心身の力の発揮
4. その人にとっての安全・健やかさ
5. なじみの暮らしの継続
(環境・関係・生活)
(URL:http://www.itsu-doko.net/center/01.html)
お知らせ
Eijinkai Yoshinaga Clinic
http://www.yoshinaga.org
モバイル・コミュニケーション・サービス
SkyCastle(スカイキャッスル)
開発~運用中
携帯電話・パソコン(主として携帯電話を想定)のインターネット接
続を利用し、在宅ケア担当者間の連携を図る。
(株)エバーメディカ モバイル・コミュニケーション・サービス専用サイト
http://www.evermedica.jp
Eijinkai Yoshinaga Clinic
http://www.yoshinaga.org
everMedica OpenLab 開始
毎週水曜日
夜6時~9時
ただし研修会や会議のため
不定期の休みあり要確認
吉永医院 2階 (株)エバーメディカ・オフィスにて
パソコン、インターネット、その他もろもろ
ご相談にのります。
http://www.evermedica.com/openlab
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