自分と職場の
メンタルヘルス対策
九州労災病院 勤労者予防医療センター
保健師 日吉 悦子
心の病の増減傾向
(%)
61.5
58.2
48.9
29.4
25
24.8
20.9
13.4
7.6
1.8
増加傾向
横ばい
2006年
1.9
3.5
減少傾向
2004年
わからない
2002年
6割の企業で、この3年間に「心の病」が増加
社会経済生産性本部アンケート調査結果より
心の病の最も多い年齢層
(%)
61
49.3
41.8
27
22
19.3
11.5
13.1
10.4
9.6
5.6
1.8
10~20代
30代
2006年
40代
2004年
50代以上
2002年
社会経済生産性本部アンケート調査結果より
過重労働による健康障害
高
徐
々
に
高
ま
る
低
脳血管疾患
虚血性心疾患
健康障害のリスク
時間外・休日労働
増
月100時間 2~6か月平均で
月80時間
月45時間程度
少
ストレス耐性
ストレスを跳ね返す力
ストレス状態に
対する強さ
POWER
ストレス耐性の6要素
・感知能力:ストレッサーがあったときに気づくか、気づかないか。
・回避能力:ストレスを作りやすい性格か否か。
・根本の処理能力:ストレスの原因であるストレッサー自体をなくせるか、弱められるか。
・転換能力:ストレッサーを良い方向に捉え直したり、バネに変える能力があるか否か。
・経験:どんなストレッサーにどれくらいであった経験があるか。
・容量:ストレスをどれくらい溜められるか。
ひろしさんのある日
35歳のひろしさんは、日吉商事の営業部に勤務しています。妻と
2歳の息子がいます。まじめにコツコツ努力するタイプで、最近め
でたく係長に昇格しました。
ところが係長になるや否や、業務量が多くなり、忙しくなりました。
また、苦手な管理業務や事務作業が多くなり、上司にも叱責され
ることが多くなりました。
ひろしさんは、日中の業務で疲労しながらも、新たな仕事を早く覚
えようと、日中に処理しきれなかった仕事を家に持ち帰って夜遅
くまでかかってこなしていました。
ひろしさんのある日(続き)
3か月ほど経って、ようやく業務にも慣れて落ち着いてきた頃、
体の不調を感じました。夜中に目が覚めてしまい眠れなかったり、
昼食がのどを通らなかったり、頭痛も続いていました。
しかし、家族や職場には心配や迷惑をかけたくないので、何も話
しませんでした。
ひろしさんは思いました。「今度の三連休にゆっくり休めば楽にな
るだろう」と・・・・ところが迎えた連休は、何もする気がおきず、横
になっていましたが、いっこうに疲れがとれませんでした。
そして、出勤の日、いつものように朝起きようとしましたが、なんと
もいえない倦怠感が体を覆っています。
どうしても、布団から起き上がることができず、ひろしさんは絶望
的な気持ちになりました。
ひろしさんのある日(続き)
結局その日は会社を休み、次の日は何とか出勤しましたが、倦
怠感はとれません。
こんなひろしさんの状況に気がついた同僚のけんじさんに勧め
られ、気乗りしないながらも会社の保健室に相談してみました。
カウンセラーとじっくり話をする内に、このところとても無理をして
疲れていた自分を自覚しました。
そして、近くの心療内科を紹介され受診したところ「うつ病」との
診断で、しばらく仕事を休むよう勧められました。
ここでちょっと うつチェック!
□ 普通の風邪ぐらいでは休まない程度のガッツがある。
□ コツコツと手抜きせずに仕事をして、上司や同僚からの信頼
が厚い。
□ 仕事上の約束を破ったり、他人に迷惑をかけるのが嫌い。
□ 付き合いを大事にし、職場の飲み会では場を盛り上げる。
※二つ以上あてはまれば立派な「うつ予備軍」です。
きっかけになりやすいこと
①昇進、転職、就職
日常
からの
変化
②引っ越し、転勤
③結婚、出産
④負担の急激な増加ないし軽減
⑤生命にかかわらない程度の病
気、負傷
うつになりやすい人の特徴・性格
①周りへの心配りがあり、飲み会などでは場を盛り上
げる明るい性格
②几帳面で仕事熱心、向上心に富む。
③正義感にあふれルールや約束を守る。
④スポーツによって鍛えられた根性の持ち主
⑤他人の評価を気にする。
など誰から見ても好ましい性格
職業人として劣っているどころか、平均かそれ以上の
能力を持っている。
うつ病についての正しい知識
■うつ病の治療にはある程度時間がかかる。治療中
一進一退があるがきちんと治療すれば治る。
■きちんと治療すれば治る確率が高い病気だが、自殺
だけは注意が必要。自殺しないことをはっきりと、約
束してもらうことが必要。
自殺予告のサイン:「会社を辞めたい」
「どうしたらいいかわからない」
■治療が終了するまで退職や離婚などの人生における
重大な決定は延期する。
自殺者数及び自殺率の推移(厚生労働省)
※交通事故死の3倍
うつ病への様々な誤解
・うつ病は心が弱い人がなる病気だ。
・うつ病になった人は、暗く落ち込んで見える。
・うつ病になると仕事の能力を失い、周囲から
仕事のできない人と思われてしまう。
※うつ病は心の病気の一つです。
自分自身でこころがけること
1 疲労を清算する。
2 ストレスに負けない食生活
3 生活を楽しむ。
4 物事の良い面を捉える。
5 ため込まず人に相談する。
リラックスできる呼吸法は
ポイントは鼻から大きく息を吸って、口からゆっくり息
を吐くこと。
その他のリラックス法
◆日光浴
◆人に話す
◆音楽を聴く
◆好きなことをする
◆ストレス日記
◆スポーツをする
◆アロマテラピー
◆旅行など
◆ 笑い
周囲ができるこころづかい
1 不用意に励まさない。
「頑張って!」
2 気晴らしに誘わない。
「飲みに行こうよ」
3 症状がひどいときは受診をすすめる。
「専門の医師に相談してみては・・・」
4 本人の言動に注意する。
「仕事をやめたい」
ひろしさんのその後
ひろしさんは6ヵ月の休職後、職場に復帰することになりました。
復帰の前日、今までの遅れを取り戻したいと意欲満々のひろし
さんは、上司のところへ復帰の挨拶に出かけました。
(上司は、今の状態で、すぐには現職復帰は厳しいのではないだ
ろうか。しかし、特別扱いはできにくい。と考えていました。そこで
元気な頃のひろしさんは飲み会やイベントなどで、場を盛り上げ
る人気者だったことを思い出し、ある提案を考えていました。)
ひろしさんの挨拶のことばが終わると、上司は、いっそのこと病名
を課の全員に知らせたらどうだろう?正直言って、今の力量は前
の半分以下だ。だからといって焦れば再発が怖い。半年や1年は
協力がないと大変だ。
ひろしさんのその後(続き)
病気のことを知って皆が優しくしてくれるとは限らない。が正直
に話すことで協力してくれるかもしれない。という提案がありま
した。
ひろしさんは、上司の提案を受け入れ、復職の当日、皆のいる
前で、「半年間も休んでしまい皆様にご迷惑をおかけしました。
はっきりいってうつ病でした。長く仕事から離れていたため、復
帰といっても・・・もとの力の半分もないでしょう・・・少しずつ仕事
がこなせるようやっていきますので、よろしくお願いします。半
年
過ぎたら、多分、何とかなると思いますので・・・」皆は無表情で
うつむいていました。しかし、退社時、同僚のたろうさんが近づ
いてきて、「うつ病なんて発表してよかったの?事情はわかった
ので、協力するよ。でも無理は禁物だよ!」とささやいた。
ひろしさんの復職は、みごと、成功しました。
復職成功のための4条件
①本人に復職への強いモチベーションがある。
②本人自身が、病気によって低下した能力を
現実的に評価している。
③時間がたてば回復するだろうという見通しを
本人がもっている。
④周囲の協力と上司の支え
メンタルヘルスに係る様々な活用資源
活用資源
社内資源
社外資源
会社と関連
会社と無関係
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