CERNandLHCATLASPoster-V8.3J, http://atlas.kek.jp/sub/poster/index.html
アトラス実験で何がわかるか
ヒッグス粒子
- 質量の起源にせまる -
20 世紀後半、著しい理論・実験の発展により素粒子物理学では素粒子の標準理論が構
築されました。標準理論は数多くの精密実験により検証されています。その基本は、(1)
3 世代のクォークとレプトン (2) 3 種類のゲージ粒子による力の媒介 (3) BEHメカニズ
ムによる質量の創出です。
(2)の力(相互作用)は全てゲージ理論という美しい数学的枠組みで記述されます。しか
し、ゲージ理論では粒子は質量を持つことができません。南部陽一郎が唱えた自発的対
称性の破れの考えを R. Brout, F. Englert, P.W. Higgs 達がゲージ理論に応用し、真空が
凝縮したヒッグス場で満たされていれば粒子が質量を持つことができるという事を提案し
ました (BEHメカニズム)。このアイデアを電磁力と弱い力に適用して統一したのがグラ
ショー・サラム・ワインバーグの電弱統一理論で、標準理論の重要な一部となっています。
BEHメカニズムが正しいならば、対称性が破れた後に少なくとも1種類のスカラー粒子
(ヒッグス粒子) が存在しなければなりません。LHC加速器・LHC実験の第一の目的は、こ
「標準理論」の世界。ヒッグズ粒子の発見により構成粒子は揃ったかに見える。
れを確実に捕えることです。
ヒッグス粒子を発見!!
2012年7月4日アトラス実験とCMS実験は、ヒッグス粒
子と思われる新粒子を発見したと発表しました。右図は、
この新粒子が2つの光子に崩壊した場合と、4つのレプ
トン(電子、あるいはミュー粒子)に崩壊した場合のデー
タを示してあります。どちらにも126GeV付近にピークが
見えます。
( 左 ) P.W. Higgs と ア ト ラ ス 測 定 器
(2008 年 4 月 15 日撮影) Higgs等
はヒッグス粒子の存在を予言した
(1964年)
(右)南部陽一郎 2008 年度ノーベル
物理学賞受賞者
これが本当に標準理論の予言するヒッグス粒子かどう
かなど、この粒子の性質をこれから何年もかけて精密
に調べていきます。
2光子崩壊での不変質量分布。黒点がアトラスのデータ
で、赤点線がヒッグス粒子がない場合の予想分布 。
126GeV付近に盛り上がりが見える(矢印)
左図は4レプトンへの崩壊モードの事象候補の例
4レプトンへ崩壊での不変質量分布。赤が
ヒッグス粒子以外からの予想分布、ヒッグス
粒子の質量が125GeVの場合の予想分布。
データ(黒点)はヒッグス粒子が存在する場
合の分布とよく合っている(矢印)
TeV エネルギースケールに展開する新しい物理パラダイムの探索
-ヒッグス粒子だけでは終わらないー
超対称性粒子の探索
隠れた次元を探る
ヒッグス粒子の発見により自然界の構成粒子は一見
揃ったかに見えます。しかし、標準理論だけでは、宇宙
初期の高エネルギーで「力の大統一」、階層性問題
(BEHとプランクスケールのエネルギーがかけ離れてい
る事に起因する諸問題)、宇宙の暗黒物質問題、等の
解決にはほど遠いのが現実です。これらの問題に対し
現在最も有力視されているのが、超対称性理論です。
超対称性理論とは通常の素粒子と同じ性質を持ちな
がらスピンが異なる新しい粒子群の存在を仮定します
(例えば、通常の素粒子はスピン1/2、その超対称粒子
はスピン0)。これまでの諸実験は、TeV領域にその可
能性を示唆しています。
更に、、、超弦理論なるものも提案されてい
ます。超弦理論では、10 次元の世界にお
いて、我々の世界は 4 次元の膜(ブレーン)
に貼りついていると考えます(ブレーンワー
ルド宇宙論)。
超対称性粒子が発見されれば、素粒子・宇宙物理学
にとってヒッグス粒子発見に劣らぬ1大革命的な発見と
なります。これまでに収集したアトラスのデータでは、
1TeV以下の領域にはまだ徴候は見えていません。い
ろいろな崩壊モードでの探索と、2015年からのLHCの
13TeV運転に期待が高まっています。
これが正しければ LHC のエネルギーで重
力子の直接生成も可能で、また、余剰次元
に逃げ込む重力子の効果を観測することが
出来るとも期待されています。ミニブラック
ホール生成の可能性も指摘されています。
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