技報
海洋情報部研究報告 第 48 号 平成 24 年 3 月 23 日
REPORT OF HYDROGRAPHIC AND OCEANOGRAPHIC RESEARCHES No.48 March, 2012
航空磁力計の更新
宮嵜
進*1,緒方克司*1,小山
薫*1,熊川浩一*2,加藤正治*2,斉藤昭則*3
Renewal of the airborne magnetometer
Susumu MIYAZAKI*1, Katsushi OGATA*1, Kaoru KOYAMA*1
Koichi KUMAKAWA*2, Shoji KATO*2, and Akinori SAITO*3
Abstract
Japan Coast Guard has carried out aeromagnetic surveys of the marine volcanoes in the adjacent seas of Japan, especially in the Nanpo−shoto and Nansei−shoto area for the safety of ships and airplanes to the volcanic explosion.
Now, with renewal of the airplane, the magnetometer is also renewed. We introduce the system and specification of
the new airborne magnetometer.
1
導入した航空磁力計等の性能や航空機に搭載する
はじめに
海上保安庁では,船舶の航行安全や航空機の安
ために追加した内容等について紹介する.
全運航のため2
005年(平成17年)まで全国磁気
測量を実施し,海図や航空図に磁針偏差や年差を
2
航空機の概要
航空機は,海上保安業務に使用するために,速
掲載してきたところである.
また,海域にある火山島や海底火山の火山噴火
度性能,高度性能,航続性能等が検討され,ボン
予知調査の目的で航空機による南西諸島や南方諸
バルディア式 DHC−8−315型を導入することが決
島の火山監視観測時におのおの年各1回を目途に
定された.
航空磁気測量も実施している.これらの測量に
Photo.
1にこれまで使用してきた航空機 LA701
1969年(昭和44年)から使用してきた航空機 LA
701(日本航空機製造式 YS−11A 型)を,MA725
(ボンバルディア式 DHC−8−315型)に更新する
こととなり,これに併せ,今まで使用してきた航
空機用磁力計(プロトン磁力計)
,磁気データ表
示装置,航空機位置表示器を更新することとし
た.
航空機,航空磁力計等の更新にあたり,新規に
*1 航法測地室 Geodesy and Geophysics Office
*2 大陸棚調査室 Continental Shelf Surveys Office
*3 海洋情報課 Oceanographic Data and Information Division
− 101 −
Photo.
1 LA7
0
1(Nihon Aircraft Manufacturing
Corporation YS−1
1)
.
Susumu MIYAZAKI, Katsushi OGATA, Kaoru KOYAMA, Koichi KUMAKAWA, Shoji KATO, and Akinori SAITO
*目視観測用窓でカメラや VTR の撮影が可能で
あること.
+できる限り直下の撮影が可能であること.
,観測機器の操作に必要な員数が搭乗できるこ
と.
Photo.
2 MA7
2
5
(Bombardier Inc. DHC−8−3
1
5)
.
4
Table1 The essential point of LA7
0
1and MA7
2
5.
航空磁力計等の性能
4.
1 航空磁力計の機種選定とテールステ ィ ン
ガーの構造
新しい航空磁力計等の機種選定は,外気温度,
気圧,湿度,高度等の影響が少なく,航空機のス
ピード等を考慮して可能な限り計測間隔が短い機
種を選択し,計測間隔に対応可能な GPS 受信機
を選定した.
を,Photo.
2に 新 し く 導 入 し た 航 空 機 MA725
また,航空機自身から発生する磁気雑音を少な
を,また Table1にそれぞれの航空機の要目を示
くするために,約2m 程度の非磁性素材のカー
す.
ボン製円筒形「テールスティンガー」を取り付
け,その先端部分に検出器を取り付けることとし
航空磁気測量と火山監視観測のための装備
た.Fig.
1に非磁性のテールスティンガーの構造
航空磁気測量等を実施するために,特に次のよ
を,Photo.
3に MA725最後部のテールスティン
3
うな装備等についての検討を依頼した.
!非磁性のテールスティンガーを機体最後部に設
け磁気検出器を収納できること.
"検出器はなるべく振動が少ない場所に格納でき
ること.
#検出器や敷設ケーブル付近に直流電流が流れな
いこと.
$専用の GPS データを受信できる機能があるこ
と.
Fig.
1 The structure of the tail stinger
(non−magnetism)
.
%磁気検出器から観測席までのシールドケーブル
が敷設できること.
また,火山監視観測も併せて実施することか
ら,
&熱映像装置を臨時積載できること.
'熱映像装置と可視カメラを合わせて投下口に臨
時積載できること.
(与圧隔壁を通してのモニター用ケーブル接続が
可能なこと.
)観測機器を固定するための取り付け架台を有す
ること.
− 102 −
Photo.
3 The tail stinger attached to after
most part of MA7
2
5.
Renewal of the airborne magnetometer
4.
2.
4 磁気データ収録器
ガーの状況をそれぞれ示す.
Photo.
4にテールスティンガーに取り付けた検
記録媒体:USB メモリー
出器を,Photo.
5に回路部を取り付けた点検口の
記録周波数:最大 20回/秒
位置,Photo.
6に点検口付近に取り付けた回路部
記録項目:時刻・緯度・経度・高度・磁力
の状況をそれぞれ示す.
内蔵 GPSレシーバー:Hemisphere Crescent GPS
L1 OEM モジュール
4.
2 新規導入航空磁力計等の主な仕様
今回導入した GPS アンテナとカナダ GEM シ
ステム社製の航空磁力計の主な仕様等を以下に示
・タイプ:L1,C/A code
・チャンネル数:12CH 並列
す.
4.
2.
1 GPS アンテナ
S67−1575−96(SensorSystemsInc.製)
周波数:1567−1585MHz(L1),
1217−1237MHz(L2)
電圧安在波比:2.
0:1
インピーダンス:50Ω
空中線利得:3[email protected]
電圧:DC4∼24V
電流:6
5mA
Photo.
4 The detector installed in the tail
stinger.
温度:−80∼+203°F
振幅:10Gs
高度:7
0,
000ft
4.
2.
2 検出器(センサー)
方式:カリウム蒸気による光ポンピング型
感度: 1.
5pT@1Hz
分解能:0.
1pT
測定範囲:20000∼100000nT
許容磁気勾配:10000nT/m
測定可能センサー角:10∼80°及び100∼170°
b(センサー長軸に対して)
Photo.
5 Location of the inspection hole.
使用温度範囲:−30∼+55℃
外形:φ64×148
重量: 0.
7kg
4.
2.
3 回路部
データ出力:RS232C
使用温度範囲:−30∼+55℃
外形:223×69×240
重量: 0.
9kg
サンプリング周波数:20Hz
使用電源電圧:DC22∼32V
Photo.
6 The circuit part attatched near the
inspection hole.
消費電力:50W(起動時)12W(通常時)
− 103 −
Susumu MIYAZAKI, Katsushi OGATA, Kaoru KOYAMA, Koichi KUMAKAWA, Shoji KATO, and Akinori SAITO
・位置精度:<2.
5m
収録機器等を取り付けた機器搭載ラックの強度計
・適合アンテナ:S67−1575−96(SENSOR
算について紹介する.
な お , 強度 計 算 は ,Autodesk 社 Inventor2011
SYSTEMS 社)
・外部出力:RS232C 1チャンネル
の構造計算プログラムを用いて計算しており,安
・位置情報出力:RS232C 2チャンネル
全率の評価には『ラックやフレームを構成する部
・表示器:7インチ液晶
材の降伏 強 さ』と,
『 強度 計 算 に よ り 得 ら れ た
・外形:430W×149H×350D
フォンミーゼス応力・最大主応力・最小主応力の
・重量:2.
5kg
うち,最も大きくなる値』を使用している.
・使用電源:AC100V±10%
DC28V
機器搭載ラックに,Table3の資機材を搭載し
(0.
4A)約10W データ収録器
て,Table2に示す前方荷重9G,側方荷重4G,
上方荷重3G,下方荷重6G,後方荷重1.
5G を
のみ
・FUSE:AC2A DC5A ミゼット型
加 わ え た 場 合 の 安 全 率 の 解 析 結 果 を Fig.
2,
・電源出力:AC100V 時 DC24V
Fig.
3及び Fig.
4に示す.
Fig.
2(左)は,安全率5つま り5×9G=45G
DC 入力時 DC と共通
がくわえられたときラックの柱部分が損壊する可
・FUSE:5A ミゼット型
能性を示している。
5
計算による最低の安全率は,それぞれ,前方
航空機に搭載するための条件
航空機に磁気データ収録器,磁気データ表示
2,側 方1.
2,上 方2.
8,下 方1.
4,後 方6と な
器,航空機位置表示器をまとめて搭載可能な収録
り,当該ラックは前方で18G,側方4.
8G,上方
機器搭載ラック(Photo.
7)等の観測機器を積込
8.
4G,下方8.
4G,後方9G の荷重に耐え う る
むためには,第一の条件として Table2に示す条
こととなる.
件に耐えうる必要がある.これらの条件も合わせ
て発注仕様書に織り込んだ.
Table2 Maximum G factor
in each axis.
ここでは,一例として観測機器の制御,データ
Table3 Dimension and weight of components.
Photo.
7 Equipments attatched in the rack(!:
Rack with equipment, ":Airplane position indication equipment, #:Magnetic
data indicator, $:Infrared camera data
collection container, %:Magnetic data
collection container)
.
− 104 −
Renewal of the airborne magnetometer
Fig.
2 Safety factor(left side figure : forward9
G, right side figure : lateral axis load4G)
.
Fig.
3 Safety factor (left side figure : upward
load 3G, right side figure : downward
load6G)
.
Fig.
5 Track lines for measurement of aircraft’s magnetic field.
25日に実施した結果と今回の新システム(磁力
計:光ポンピング磁力計,航空機:MA725)で
2011年2月1
0日に実施した機首方位における平
均値からの差を示す.
Fig.
4 Safety factor(backward1.
5G)
.
また,観測結果から得られた機体磁気補正の近
似曲線を Fig.
6に示す.旧システムでは,機首方
6
位角 H による機体磁気補正曲線 DF は,
航空機の機体磁気測量
DF =−11.
69−7
1.
94×cos
(H )+28.
43×
航空機を用いて地磁気測量を実施する場合,航
sin
(H )+7.
61×cos
(2H )
空機自体から発生する磁気雑音も測定することと
なることから,前述したように航空機に非磁性
で表すことができる.
新システムでは,有効桁数を下4桁とした.
(カーボンファイバー製)の円筒形のテー ル ス
ティンガーを取り付け Photo.
4に示すとおりそ
DF =−0.
1045−18.
5991×cos(H )−1
0.
5438×
sin
(H )+6.
4313×cos
(2H )
の先端に磁力計検出器を固定することとした.
航空機の機体磁気はそれ自体の残留磁気と地球
となり,振幅は,旧システムでは約±70nT にも
磁場によって機体に誘導される磁気の合成であ
および,新システムでは約±20nT 程度であり.
る.(小山・他,20
07)誘導磁気は地球磁場を切
約3.
5倍の差がある.観測値に補正する量が新シ
る方向によって異なる.そのため測定は磁気異常
ステムのほうがはるかに少ないことが一目瞭然で
の変化が少ない場所の上空で8方位の観測を実施
ある.
して,観測結果を方位角による周期関数で近似す
今後も,測量の都度,機体磁気測量は必要であ
る.Fig.
5に新島上空で実施した測線図を示す.
るが,天候等の都合により実施できない場合は,
また,Table4に旧観測システム(磁力計:プロ
今回の値を基準として,補正値を求めることも可
ト ン 磁 力 計 , 航空 機 :LA701)で 2000年1
1月
能である.
− 105 −
Susumu MIYAZAKI, Katsushi OGATA, Kaoru KOYAMA, Koichi KUMAKAWA, Shoji KATO, and Akinori SAITO
Table4 The aircraft’s magnetic field in eight direction for the LA7
0
1and the MA7
2
5.
Photo.
8 Calibration house in the premises.
7
航空磁力計の校正
新規に導入した航空磁力計を2
011年3月1
0日
∼11日の間,茨城県石岡市柿岡にある気象庁地
磁気観測所の比較較正室(Photo.
8)にて,気象
庁所管の MO−PK(B)プロトン磁力計(基準器)
Photo.
9 Inside of the calibration house (!:
Magnetic sensor of J.C.G, ":Magnetic
sensor of the J.M.A)
.
との比較観測を実施した.その結果を紹介する.
Photo.
9にあるように比較較正室の E 台に基準
器プロトン磁力計を,その反対側に被検査器であ
る今回導入した光ポンピング磁力計検出部を乗せ
台にのせ,北から右回りにて8方位の観測をそれ
約2分間5秒間隔でデータを取得した.その後,
ぞれ5
0秒間1
0秒間隔で実施した.その結果を
基準器を W 台に乗せ被検査器を E 側として同様
Fig.
7に示す.
新規に導入した光ポンピング磁力計には,方向
の観測を実施した.その結果,器差=1.
5881nT,
磁力計精度=0.
0287を得た.次に被検査器を E
によって差があり北のとき−1.
61nT∼南のとき
Fig.
7 Instrumental error to standard magnetmeter(The cable exit was made N)
.
Fig.
6 The result of the measurement.
− 106 −
Renewal of the airborne magnetometer
−2.
36nT∼北 のと き−1.
64nT の 凹 状 放 物 線 の
値を示すことが判明した.
これらは,− 2±0.
5nT であり機体磁気測量を
実施することによって補正可能である。しかし,
今後,これらが変化する可能性もあることから,
比較観測を実施し検討する必要がある.
8
おわりに
本システムの更新には,航空機の機種選定から
約5ケ年が経過している.この間,導入航空機の
機体が変更になったことや担当職員の異動なども
あり,引き継ぎが如何に重要であるかを新たに認
識させられたところである.
関係者の皆様には多々御迷惑をお掛けした.御
協力いただいた気象庁地磁気観測所,装備技術部
航空機課,第三管区海上保安本部羽田航空基地の
方々に対し,ここに記して感謝する.
そして,1969年(昭和44年)3月から解役ま
での41年間,火山監視観測,航空磁気測量に携
わってきた LA701に「お疲れさまでした.たく
さんの火山監視観測・磁気測量ありがとう!!」
と言いたい.
参考文献
小山薫,熊川浩一,植田義夫(2007),最近の航
空磁気測量について,海洋情報部技報 ,25,
87‐95.
要
旨
海上保安庁では,船舶及び航空機の航行安全の
ため,海域における火山噴火予知の基礎資料を得
ることを目的として,南方諸島や南西諸島の航空
磁気測量を実施している.
この度,航空機の更新に併せ航空磁気測量に使
用してきた磁力計を更新したので,その性能や航
空機への装備について紹介する.
− 107 −
ダウンロード

航空磁力計の更新 技報 - 海上保安庁 海洋情報部