18.租税入門
18.1 租税原則
18.2 公平性(Equity)
18.3 包括的所得と消費
18.4 消費税と支出税
18.5 所得税と累進性
18.6 平均化所得課税としての支出税(消費税)
1
18.1 租税原則
<アダム・スミスの4原則>
1)公平性の原則
2)明確性の原則
3)便宜性の原則
4)最小徴税費の原則
税負担は各人の政府から受けた便益あるいは負担能力に応じて支払うべき。
税率・課税標準などが明確で恣意的であってはならない(租税法律主義)。
納税の時期と方法は納税者の便宜に沿うようにすべき。
「納税費用+税務行政費」を最小化すべき。
<課税原則>
明確な課税標準の下での税負担の配分が公平でなければならない。
1)公平性
2)中立性(効率性) 超過負担(=厚生損失、死荷重)が発生しないようにする。
税制の仕組を簡素にして、納税者に理解し易く、財務行政を非恣意的にする。
3)簡素(公正性)
「租税 3 原則」の中の「中立性」は第 22 章で効率性の観点から議論される。また、
「公平
性」については本章の 18.2 節以降で議論する。そこで、この節の以下の部分では、残る「簡
素(性)」に関してだけ、
「公正性」との関連で検討する。
2
<簡素(性)>
「簡素(性)」のもたらすメリットとしては、徴税費用を小さくすることを通じて租税の効率
性を高めることが考えられる。しかし、それ以外にも簡素であることは「公正性(fairness)
」
を高めることを通じて、効率性を向上させることが期待できる。
まず、「公正な租税制度」とは「誰もが恣意的に変更することができない明確なルールに基
づき課税される制度」のことである。なお、そのような制度の背後にあるのは「課税要件
明確主義」と呼ばれる考え方であり、それは
①課税庁(税務当局 or 課税当局)の自由裁量の余地を認めない、
②納税者が課税要件とは何かを明確に判断できて適切な納税予測ができるようにするため
に課税要件は明確でなければならない
とする考え方である。
そして、課税要件が明確になっていない場合は、納税者に将来予測される納税額の不確実
性を大きくしたり、無駄な租税回避行動を生じさせたりすることを通じて、資源配分の効
率性を低下させることになる。したがって、租税制度にとって課税要件が明確になってい
るという意味で「公正」であることは、租税制度の効率性を高める上で重要な要件である
と言える。
3
そして、租税のルールが非常に「複雑なルール」である場合は、課税当局にとってはその
ルールを容易に理解できる「明確なルール」であるとしても、納税者にとってはそのルー
ルを理解することは困難であり「明確なルール」とは言い難いことになる。その意味で、
「簡
素」であることは「公正性」を実現する上で、租税制度が満たすべき重要な要件であると
考えられる。
以上より、租税ルールが「簡素」であれば、租税ルールの「公正性」が実現されることを
通じて、資源配分の効率性を高めることが期待されることになる。
4
18.2 公平性(Equity)
応能原則、能力説(ability to pay principle)
=租税を負担する能力の大きさに応じて租税を負担するべきである。
(例)所得税(国税)
、法人税(=配当課税の源泉徴収)
応益原則、利益説(benefit principle)
=政府活動から受ける便益の大きさに応じて租税(料金)を負担すべきである。
(例)住民税、事業税、高速道路の通行料金
5
(問題 18-1)個人 A と個人 B がある市に住んでおり、その市役所は都市公園を整備する事業だ
けをおこなっているとする。
個人 A は都市公園の近くに住んでいて所得水準は低いのに
対して、個人 B は都市公園から遠くに住んでいて所得水準は高い。このとき、その市の
活動の費用(市民税)を個人 A、個人 B どちらが多く負担すべきかを、応能原則と応益
原則の立場から検討しなさい。
6
課税標準(tax base)=課税客体を数量化したもの(指標)
(問題 18-2)健康で体力もある個人 A と病弱で体力も無い個人 B では、租税負担能力の大きい
のはどちらの個人であろうか。また、健康状態や体力を課税標準とする場合の問題点に
ついて検討するとともに、所得を課税標準として採用することで健康状態や体力などを
間接的に捉えることができるとする考え方について検討しなさい。
7
「水平的公平(horizontal equity)」とは「課税標準が同一の主体は同額の税を負担すべきで
ある」という考え方であり、この考え方にもとづけば、個人 i の「税額 T i 」は「課税標準 X i 」
のみに対応して決まる。つまり、関数 f ・( ) を用いて
T=
f (Xi )
i
と表現できることになる。
それに対して、
「垂直的公平(vertical equity)」とは「課税標準の大きい経済主体がどれだけ
多く税を負担すべきか」に関する考え方のことであり、それは関数 f ・( ) の形状で表現され
ることになる。
8
(問題 18-3)ビジネスに成功したが質素な生活をしていた人が 100 億円の遺産を子供に遺して亡
くなったとする。そのとき、次の2つのケースを考えてみよう。
ケース1:子供は全く働かずに父親の遺してくれた遺産から毎年 1 億円を使って贅沢な
生活をしている。
ケース2:子供は全く働かずに父親の残してくれた遺産から毎年 200 万円を使って質素
な生活をしている。
これらのケースを参考にして、所得税、相続税、消費税の果たす機能について応能原則
と応益原則の観点から検討しなさい。
9
18.3 包括的所得と消費
担税力を測る指標としての「(ある期の)包括的所得」をサイモンズは以下のように定義している。
W0 =期首の資産額
W0 =期首に保有していた資産のキャピタル・ゲイン(マイナスならキャピタル・ロス)
W1 =期末の資産額(含む資産の新規購入額)
YF =その期の要素所得(賃金、利子所得など)
C =その期の消費額(=消費支出額)
⇒
C  W1  YF  W0  W0
(18-1)
10
Y =(サイモンズの)包括的所得(comprehensive income)
=期末の資産額 W1 を期首の資産額 W0 以上に保ちながら可能な消費額の最大値
すなわち、
(18-2)
Y  YF  W0
である。なお、現在の日本では、包括的所得に基づく総合課税と分離課税とが並存してい
る
(問題 18-4) W1 が W0 以上であるときに、消費 C が満たすべき不等式を(18-1)より求める
ことで、(18-2)を導きなさい。
C  W1  YF  W0  W0
W1  YF  W0  W0  C  W0
YF  W0  C  0
C  YF  W0
(18-2)
11
18.4 消費税と支出税
消 費 支 出 額 を 課 税 標 準 と す る 課 税 に は 、「 消 費 税 (consumption tax) 」 と 「 支 出 税
(expenditure tax)」がある。そして、
「消費税」は「購入 1 回毎の消費(支出)額を課税ベー
スとする税」であり、
「支出税」は「1 年間の消費(支出)額を課税ベースとする税」である。
ある期の資産額の増分(=純貯蓄)を W とおくことにする( W  W1  W0 )
。そのとき、
(18-1)、(18-2)より、その期の包括的所得 Y は次のように表すことができる。
Y  C  W
(18-3)
(問題 18-5)(18-3)を導出しなさい。
12
(問題 18-5)(18-3)を導出しなさい。
C  W1  YF  W0  W0
C  W  YF  W0
W  W1  W0
Y  YF  W0
Y  C  W
(18-3)
(問題 18-6)1 年間の消費(支出)額 C を税務当局が購入 1 回毎の消費額を積み上げること
で捕捉することの実務的な困難性について検討しなさい。また、個人の 1 年間の
所得と純貯蓄を用いて、1 年間の消費支出額を間接的に捉える方法について、そ
の実務的な側面にも着目して説明しなさい。
13
18.5 所得税と累進性
所得 Y に対応する所得税額を T とおけば、平均所得税率は T / Y である。
累進所得税制度=所得 Y の増加とともに平均所得税率 T / Y が増加する所得税
逆進所得税制度=所得 Y の増加とともに平均所得税率 T / Y が減少する所得税
比例所得税制度=所得 Y が増加しても平均所得税率 T / Y が変化しない所得税
(所得 Y における)限界所得税率=所得が Y から 1 単位に増加するときの所得税額の増分
超過累進所得税制度=所得 Y が増加するときに限界税率が減少しない累進所得税制度
14
上述のような課税制度の特徴について理解を深めるために、線形所得税制度
T  tY  (Y  Yˆ )
(18-4)
に着目してみよう。
Yˆ =所得控除額(=控除所得額)
Y Yˆ  課税所得
t Y =限界所得税率( tY  0 )
(問題 18-7)線形所得税制度が累進、逆進、比例となるのは Yˆ がどのような条件を満たすときか。
15
所得 Y の増加とともに平均所得税率 T / Y が増加
T
T  tY  (Y  Yˆ )
累進所得税制度
線形所得税制
T1
T0
平均所得税率
T 0 /Y 0
T 1 /Y 1
tY
Yˆ
限界所得税率
Y 0 Y1
Y
控除所得額
16
T  tY  (Y  Yˆ )
Yˆ  0
逆進所得税制
Yˆ  0
T
比例所得税制
Yˆ  0
(超過)累進所得税制
tY
Yˆ
Yˆ
Yˆ
Y
17
超過累進所得税制度のなかの

if Y  Yˆ
0
T 
 TY (Y )
ˆ
ˆ

tY  (Y  Y ) if Y  Y
(18-5)
という特殊ケース(部分的線形所得税制度)について考えてみよう( Yˆ  0 )
。
18

if Y  Yˆ
0
T 
ˆ
ˆ

tY  (Y  Y ) if Y  Y
T
非線形所得税制
(超過)累進所得税制度
tY
Yˆ
限界所得税率
Y
控除所得額
19
(限界所得)税率
<限界税率を用いた所得税制度の表現>
tY
Yˆ
Y
控除所得額
20
(限界所得)税率
<日本の所得税制度>
(%)
課税所得(万円)
税率(%)
195
330
695
900
1800
∞
5
10
20
23
33
40
20
10
5
Yˆ
Yˆ  195
Yˆ  330
∧
Y+430
Y
(万円)
控除所得額 =基礎控除+配偶者控除+扶養控除+・・・
課税所得が430(万円)
21
のときの所得税額 =195×0.05+135×0.1+100×0.2=9.75+13.5+20=33.25
超過累進所得税制度のなかの

if Y  Yˆ
0
T 
 TY (Y )
ˆ
ˆ

tY  (Y  Y ) if Y  Y
(18-5)
という特殊ケース(部分的線形所得税制度)について考えてみよう( Yˆ  0 )
。
(18-5)のもとで、野球選手(=個人 B)とサラリーマン(=個人 S)のように所得を得る時期の
集中度に差がある場合に、年間所得を課税標準とする所得税が公平性の観点からどのような問題
をもたらす可能性があるかを検討しよう。なお、単純化のため個人の生涯が 2 年間であり、利子
率はゼロであるとする。
22
Yt i =個人 i のt年目の所得( i  B, S ; t =1,2)
TY (Yt i ) =個人 i のt年目の所得税額( i  B, S ; t =1,2)
(問題 18-8)個人 i の t 年目の所得 Yt i が次の表で与えられているとする。このとき、(18-5)の非線
形所得税制度のもとで tY =0.2、Yˆ =600 のときの個人 i の所得税額 TY (Yt i ) を求めなさい。
また、両者の2年間の所得総額と課税総額との関係を比較しなさい。
t
Yt B
1
2
合計
2200
0
2200
TY (Yt B )
320
0
320
if Y  600
0
TY (Y )  
0.2  (Y  600) if Y  600
Yt S
TY (Yt S )
1100
1100
2200
100
100
200
(18  5)
23
18.6 平均化所得税としての支出税(消費税)
所得税は徴税技術的な問題などもあり、年間所得を課税標準として課税されるのが原則で
ある。しかし、担税力を測る指標としては、生涯所得あるいは平均化所得(すなわち生涯
を通じた平均的な年間所得)のほうが相応しいとする考え方も有力な考え方であろう。
(問題 18-9)課税標準を生涯所得あるいは平均化所得とした場合の徴税技術上の困難性に
ついて検討しなさい。また、課税標準として、年間所得と生涯所得(あるいは平
均化所得)のどちらが望ましいかを公平性の観点から検討しなさい。
24
年間の消費支出額を課税標準とする支出税(あるいは消費税)が実質的に平均化所得税と
しての機能を果たす可能性について検討しよう。まず、野球選手(個人 B)とサラリーマ
ン(個人 S)の 2 人の個人がいるとする。そして、2 人とも生涯は 2 年間であるとして、t
年目の所得を Yt i であるとする
( i  B, S 、t  1, 2 )。
したがって、個人 i の生涯所得は、Y1i  Y2i
であり、個人 i の平均化所得(=恒常所得)を Y i とおけば、 Y i  (Y1i  Y2i ) / 2 である。
(消費)支出 C に対応する支出税額を T とおいて非線形支出税制度(部分的線形支出税制度)のな
かの

if C  Cˆ
0
T 
 TE (C )
ˆ
ˆ

t E  (C  C ) if C  C
(18-6)
という特殊ケースについて考えよう。なお、 t E は限界支出税率である( t E  0 )
。
25

if C  Cˆ
0
T 
ˆ
ˆ

t E  (C  C ) if C  C
T
tE
Ĉ
非線形支出税制
限界支出税率
C
控除支出額
26
各年の平均化可処分所得(すなわち税引き後の平均化所得)は、(18-6)より Y i  TE (Cti ) で
ある。そして、消費支出関数は平均化可処分所得だけに依存し、その増加関数であると想
定する(
「恒常所得仮説」
)。そのとき、 C1i  C2i が成立するので、2 年間を通じた予算制約
式を満たすためには、個人 i の各年の消費支出 Cti は、
Cti  TE (Cti )  Y i
(18-7)
の関係を満たす必要がある( t  1, 2 )。
(問題 18-10)C1i  C2i が成立することを示しなさい。また、個人 i の 1 年目の貯蓄額を S i
と置いて、個人 i の 1 年目と 2 年目の予算制約式を表しなさい。そして、(18-7)
が成立することを示しなさい。
27
(問題 18-10)C1i  C2i が成立することを示しなさい。また、個人 i の 1 年目の貯蓄額を S i
と置いて、個人 i の 1 年目と 2 年目の予算制約式を表しなさい。そして、(18-7)
が成立することを示しなさい。
背理法で説明する。
(1) C1  C2 で あ る と 仮 定 す る 。 そ の と き 、 TE (C ) が C の 増 加 関 数 で あ る こ と か ら 、
i
i
Y i  TE (C1i )  Y i  TE (C2i ) である。そして、消費支出 C は平均化可処分所得 Y i  TE (C )
i
i
i
i
の増加関数であるから、 C1  C2 が成立することになるが、これは C1  C2 と仮定した
i
i
ことと矛盾する。したがって、 C1  C2 が成立することになる。
(2) C1i  C2i であると仮定する。そのとき、(1)と同様にして、 C1i  C2i が成立することにな
るが、これは C1i  C2i と仮定したことと矛盾する。したがって、C1i  C2i が成立すること
になる。
以上の(1)と(2)より、 C1i  C2i が成立することになる。
28
(問題 18-10)C1i  C2i が成立することを示しなさい。また、個人 i の 1 年目の貯蓄額を S i
と置いて、個人 i の 1 年目と 2 年目の予算制約式を表しなさい。そして、(18-7)
が成立することを示しなさい。
C1i  TE (C1i )  S i  Y1i
C2i  TE (C2i )  Y2i  S i
C1i  C2i  TE (C1i )  TE (C2i )  Y1i  Y2i
C1i  C2i
Cti  TE (Cti )  Y i
(18-7)
29
(18-6)と(18-7)より、個人 i の消費支出関数は、次のように表すことができる。
Y i
if Y i  Cˆ

C ti   1
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  t E C ) if Y  C
E

[ C (Y i )]
(18-8)
(問題 18-11)(18-8)を導出しなさい。
(18-7)と(18-8)より、平均化所得が Y のときの支出税額 TE (C (Y i )) は、
i
0
if Y i  Cˆ

TE (C (Y i ))   t E
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  C ) if Y  C
E

(18-9)
と表されることになる。
(問題 18-12)(18-9)を導出しなさい。
30
(問題 18-11)(18-8)を導出しなさい。
(18-6)と(18-7)

if Cti  Cˆ
0
Y C  
i
i
ˆ
ˆ

t E  (Ct  C ) if Ct  C
i
i
t
Y i
if Cti  Cˆ

Cti   1
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  t E C ) if Ct  C
E

Y i
if Y i  Cˆ

C ti   1
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  t E C ) if Y  C
E


if C  Cˆ
0
T 
 TE (C )
ˆ
ˆ

t

(
C

C
)
if
C

C
E
(18-6)
Cti  TE (Cti )  Y i
(18-7)
[  C (Y i )]
(18-8)
31
(18-6)と(18-7)より、個人 i の消費支出関数は、次のように表すことができる。
Y i
if Y i  Cˆ

C ti   1
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  t E C ) if Y  C
E

[ C (Y i )]
(18-8)
(問題 18-11)(18-8)を導出しなさい。
(18-7)と(18-8)より、平均化所得が Y のときの支出税額 TE (C (Y i )) は、
i
0
if Y i  Cˆ

TE (C (Y i ))   t E
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  C ) if Y  C
E

(18-9)
と表されることになる。
(問題 18-12)(18-9)を導出しなさい。
32
(問題 18-12)(18-9)を導出しなさい。
TE (Cti )  Y i  Cti
(18-7)と(18-8)
(18-7)
0
if Y i  Cˆ

TE (C (Y i ))  
1
i
Y

(Y i  t E Cˆ ) if Y i  Cˆ

1  tE

(18-8)
0
if Y i  Cˆ

TE (C (Y i ))   t E
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  C ) if Y  C
E

Cti  TE (Cti )  Y i
Y i
if Y i  Cˆ

C ti   1
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  t E C ) if Y  C
E

(18-9)
(18-7)
[ C (Y i )]
(18-8)
33
担税力を測る指標(すなわち課税標準)としては年間所得より平均化所得のほうが相応し
いとする考え方を採用するとしよう。そのとき、問題 18-8 で検討したように、年間所得を
課税標準とする所得税制度(18-5)においては「水平的公平性」が満たされない。それに対し
i
て、(18-9)より、支出税額 TE (C (Y i )) は平均化所得 Y が同一である限り、各年の所得水準 Yt i
のパターンが異なっていても同一である。したがって、「水平的公平性」の問題は生じない
ことになる。
さらに、所得が安定している(すなわち Y1i  Y2i  Y i である)個人 i の任意の平均化所得 Y
i
における、累進的所得税制度(18-5)のもとでの 2 年間にわたる所得税額の和と累進的支出税
i
制度(18-6)のもとでの 2 年間にわたる支出税額の和が一致するためには、任意の Y につい
て TE (C(Y i ))  TY (Y i ) が成立しなければならない。したがって、(18-5)と(18-9)より、t E と
Ĉ は次の関係を満たす必要がある。
t E  tY /(1  tY )
Cˆ  Yˆ
(18-10)
(18-11)
(問題 18-13)(18-10)と(18-11)を導出しなさい。
以上より、(18-10)と(18-11)を満たすように t E と Ĉ を定めた支出税制度(18-6)のもとでは、
「水平的公平性」の問題が生じないとともに、所得が安定している個人の 2 年間にわたる
支出税額の和が所得税制度(18-5)のもとでの 2 年間にわたる所得税額の和と一致する。
34
(問題 18-13)(18-10)と(18-11)を導出しなさい。
(18-5)と(18-9)
Cˆ  Yˆ
t
tY  (Y i  Yˆ )  E (Y i  Yˆ )
1  tE
tY 
(18-11)
for any Y i  Yˆ
tE
1  tE
t E  tY /(1  tY )
(18-10)

if Y  Yˆ
0
T 
 TY (Y )
ˆ
ˆ

t

(
Y

Y
)
if
Y

Y
Y
(18-5)
0
if Y i  Cˆ

TE (C (Y i ))   t E
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  C ) if Y  C
E

(18-9)
35
(問題 18-14)個人 i の t 年目の所得 Yt i は問題 18-8 で与えられているものであるとする。
i
そのとき、個人 i の平均化所得 Y を求めなさい。また、問題 18-8 で与えられて
いる所得税制度(すなわち tY =0.2 かつ Yˆ =600)におけるサラリーマンの所得税
額と、支出税制度(18-6)のもとでのサラリーマンの支出税額が一致するためには、
t E と Ĉ をどのように定めればよいかを説明しなさい。さらに、その支出税制度の
もとでの個人 i の消費支出額 Cti と支出税額 TE (Cti ) を求めなさい。
t
Yt B
CtB
TE (CtB )
Yt S
CtS
TE (CtS )
1
2
合計
2200
0
2200
1000
100
1000
100
1000
100
1000
100
2000
200
1100
1100
2200
2000
200
t E  tY /(1  tY )
Cˆ  Yˆ
Y1i  Y2i
Y 
 1100
2
i
t E  tY /(1  tY )  0.2 /(1  0.2)  0.25
Cˆ  Yˆ  600
(18-10)
(18-11)
Y i
if Y i  Cˆ
1

C  1

(1100 0.25 600)  1000
i
ˆ ) if Y i  Cˆ 1  0.25
(
Y

t
C
E
1  t
E

i
t
0
if Y i  Cˆ
0.25

TE (C (Y ))   t E

(1100 600)  100
i
ˆ ) if Y i  Cˆ 1  0.25
(
Y

C
1  t
E

i
36
消費税でも平均化所得税としての水平的公平性を達成することができる。しかし、消費税
は比例税であるので累進性を持たせることはできない。すなわち、税率 t C の消費税では支
出税において t E  t C かつ Cˆ  0 と置いたときと同じ税収が得られることになる。
「消費税」を実質的に累進性を持った状況を実現するための方法として、「給付付税額
控除」と「納税者番号制度」が活用できる可能性について検討しなさい。
37
18.租税入門
18.1 租税原則
18.2 公平性(Equity)
18.3 包括的所得と消費
18.4 消費税と支出税
18.5 所得税と累進性
18.6 平均化所得課税としての支出税(消費税)
38
コベントリーに住むレオフリック伯爵
ゴディバの名は、11世紀の英国の伯爵夫人レディ・ゴディバに由来します。
シンボルマークである馬に跨った裸婦こそが、重税を課そうとする夫を戒め、苦しむ領民を救うた
め自らを犠牲にした誇り高き彼女の姿です。
領主である夫は領民への重税の免除と引き換えに、彼女に一糸纏わぬ姿のまま、馬で町を駆け
廻ることを言い渡したのです。領民たちはそんな彼女の姿を見ないように、窓を閉ざし敬意を表し
ました。
ゴディバの創始者ジョセフ・ドラップスと妻ガブリエルは、レディ・ゴディバの勇気と深い愛に感銘し、
1926年ベルギーに誕生した自らのブランドに「ゴディバ」の名を冠しました。
以来約80年、ゴディバはその愛の精神をチョコレートに込め続けています。
味わう人すべてをしあわせで満たす芳醇な味わいは、人を思いやる深い愛を伝えます。ゴディバ
のチョコレートを味わうひととき…それは愛に満ちた時間です。
(出所)GODIVAのホームページ
39
(問題 18-8´)個人 i の所得 Yt i が次の表で与えられているとする。このとき、(18-5)の非線形所得
税制度のもとで tY =0.2、Yˆ =600 のときの個人 i の所得税額 TY (Yt i ) を求めなさい。また、
両者の2年間の所得総額と課税総額との関係を比較することで公平性について検討しな
さい。
t
Yt B
1
2
合計
1100
0
1100
TY (Yt B )
100
0
100
if Y  600
0
TY (Y )  
0.2  (Y  600) if Y  600
Yt S
TY (Yt S )
550
550
1100
0
0
0
(18  5)
40
(問題 18-14´)個人 i の所得 Yt i は問題 18-8´で与えられているものであるとする。その
i
とき、個人 i の平均化所得 Y を求めなさい。また、問題 18-8 で与えられている
所得税制度(すなわち tY =0.2 かつ Yˆ =600)におけるサラリーマンの所得税額と、
支出税制度(18-6)のもとでのサラリーマンの支出税額が一致するためには、 t E と
Ĉ をどのように定めればよいかを説明しなさい。さらに、その支出税制度のもと
での個人 i の消費支出額 Cti と支出税額 TE (Cti ) を求めなさい。
CtB
t
Yt B
1
2
合計
1100
0
1100
t E  tY /(1  tY )
Cˆ  Yˆ
Yi 
TE (CtB )
Yt S
550
550
0
0
1100
0
550
550
1100
(18-10)
(18-11)
Y Y
 550
2
i
1
i
2
CtS
TE (CtS )
550
550
0
0
1100
0
t E  tY /(1  tY )  0.2 /(1  0.2)  0.25
Cˆ  Yˆ  600
Y i
if Y i  Cˆ

Cti   1
 550
i
i
ˆ
ˆ
1  t (Y  t E C ) if Y  C
E

0
if Y i  Cˆ

TE (C (Y ))   t E
0
i
ˆ ) if Y i  Cˆ
(
Y

C
1  t
E

i
41
ダウンロード

PowerPointファイル