位相遅延量を使った飛翔体の相対VLBI観測
-excess delay 補正についての検討-
関戸 衛、市川隆一、近藤哲朗(NICT)、
吉川真、加藤隆二、村田泰弘、望月奈々子(JAXA)、大西隆史(富士通)
苫小牧(北大)
1.はじめに
深宇宙飛翔体のナビゲーションには、これまで主に
距離とその変化率(R&RR)が使用されている。R&RR
が主に視線方向に高い感度を持つのに対し、VLBIは
R&RRと相補的に視線方向と垂直な面に感度をもち、
両技術を併用することで、飛翔体のナビゲーション精
度が飛躍的に向上すると期待されている。
JPL/NASAは1980年代からVLBIの群遅延量と
R&RRを併用して、深宇宙探査機のナビゲーション精
度を高めている。しかし、飛翔体の群遅延決定精度は
高々1ns程度に制限される(電波の帯域が高々数MHz
程度である)ため、高い空間分解能を得るにはDeep
Space Networkのような大陸間の長基線が必要である。
しかし、もし不定性の問題を克服して位相遅延量が
使用できれば2桁近く高い分解能で遅延計測が可能と
なり、日本国内の基線でも高精度な探査機ナビゲー
ションが実現できる。(表1)
山口大
岐阜大
2004年10月16日 小惑星探査機
HAYABUSA(以下HYBS)と2.5度離れた
基準電波源(2126-158)のスイッチング試
験観測を行った。図3~6に鹿島ー内之浦
基線のHYBS及び基準電波源の遅延量を
示す。
図3.HYBS
と基準電波
源の観測遅
延量
図1. 火星探査機NOZOMIの位相遅延量の例。
各scan毎に位相を接続し、更に閉合位相(山口ー
岐阜ー苫小牧)をつかって整合性を取った。最下
段の図は閉合遅延量、遅延の精度は20ps程度。
原点は
R&RR によ
る確定軌道
図4.基準電波
源の観測遅延
量ー幾何学的遅
延量(理論値)
=excess Delay。
実線(青)は多項
式Fitによる近似
Algonquin基線を含む
図5.HYBSの観
測遅延量と
excess Delay補
正後の残差。補
正後(緑)は表示
のためオフセット
分ずらしてある。
表1 群遅延量と位相遅延量の比較
群遅延
位相遅延
分解能
精度
~1ns
高精度
~10ps
不定性
なし
あり(2πn)
飛翔体の
信号
広帯域が必要
(2Way)
キャリア信号
があれば何で
も OK
高空間分
解能
長基線必要
数千km
短基線
OK
現状
JPL/NASAが活用
DDOR
研究中
2.位相遅延の不定
性を解く
位相遅延量には2πnの不定性があり、各観測点のn
を未知数としたままでは未知数の数が多すぎて目的
とする飛翔体の位置を推定することはできない。そこ
で、「隣接する観測点の間が不定性なしに接続でき
ればその分だけ未知数nを減らすことができる」こと
を利用すると、高分解能な位相遅延を使用して飛翔
体の位置を推定することができる。
図1は火星探査機NOZOMIのVLBI観測データから
位相遅延量を算出し、閉合位相を計算したものであ
る。
NOZOMIの観測では、VLBI観測でほぼ連続的
な探査機追尾を行ったので、位相遅延量を長時間
(24時間以上)にわたり不定性無く接続することに
成功し、飛翔体の位置をかなりの精度で求めること
ができた。(図2)
図2. 位相遅延を使って推定されたNOZOMI
の位置をR&RRの推定結果(原点)と比較した
もの。基線数を増やすに従ってR&RRと整合
性のよい結果が得られ、国内基線だけを使っ
た場合でも、50mas以内で一致している。
R&RRの誤差はおおよそ100mas程度。
ターゲットと参照電波源が両方とも無限遠
点の電波源であれば両者の観測方程式が
同じであるので直接差分をとることにより
両電波源の離隔と基線ベクトルの積に関
係した量となるが、ターゲットが有限距離
にある飛翔体の場合には、直接差分をとる
のではなく、それぞれ、観測量と幾何学的
遅延モデルとの残差を計算し、残差どうし
を差し引くことが必要である。この場合両
者の大気遅延量を同じとみなすことにより
Δsec(z)の誤差と有限距離電波源の視差に
よる仰角差の効果が残ることに留意する
必要がある。
しかし、このような連続追尾方法の場合、未知量で
ある大気や観測装置のexcess Delayと飛翔体の位
置の情報がカップリングし、飛翔体の位置誤差と
なってしまう。 そこで、スイッチングにより大気など
の遅延量を補正した観測を行うことを考える。
c t arget  ( R02  R01 )  c etc,t arg
3.相対VLBIによる
Excess Delay 補正
表2 16 Oct. 2004 のスイッチング
試験観測の諸元
HYBS-scan
50 sec
2126-158
50 sec
Switching
cycle
3 min.
Stations
鹿島34(O),
筑波32(T),
内之浦34(V),
臼田64(U)
c ref  S  B  c etc,ref
c( t arget   pred )  R012  c etc,t arg
c( ref   ref . geom )  c etc,ref
 c( t arg   ref )  R012  c etc,(t argref )
図3は位相接続後のHYBSの位相遅延量
と基準電波源の群遅延(バンド幅合成) を
並べたもの。
図4は基準電波源の群遅延残差と標準大
気を仮定した場合の大気遅延量。このを
残差をExcessDelayとして、HYBSの値残
差からExcessDelay分(多項式補間)を差し
引いた結果が図5。ExcessDelayがほぼ補
正された遅延量が得られていると考えら
れるが、検証はこれからの課題。
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