平成24年8月31日
宮城県気仙沼市内の海岸堤防に関する意見交換メモ
首都大学東京
横山勝英
1.日時
8月31日 15時~16時40分
2.場所
国土交通省 水管理・国土保全局 海岸室
3.趣旨
気仙沼市内の海岸堤防に関係する行政一般に対する要望書(別紙)を基に、国交省海岸
室ならびに首都大・横山の間で意見交換したもの。
5.主な意見交換の内容
(1)設計津波の水位と海岸堤防の高さについて(海岸室)
・中央防災会議専門調査会において、比較的発生頻度の高い津波(L1津波)から住民の
生命や財産を防護するために、引き続きハード対策を進めることとされた。
・この政府方針に沿って、国交省と農水省において、学識者からなる委員会で被災三県の
土木部局・農林水産部局とも議論を重ねた。その結果を踏まえ、昨年7月に「設計津波
の水位の設定方法等について」が国交省・農水省から各海岸管理者に通知された。
・この方法に沿って、各県は関係市町村に説明した上で、昨年9月から10月にかけて具
体的な「高さ」を順次決定・公表した。
・この「高さ」は、数十年から百数十年に一度発生する規模の津波に対し、後背地の一定
の安全を確保するために必要な「高さ」を示したとの意味合いを持っている。
・このため、海岸堤防という「手法」のみによらずとも、高台移転や地盤嵩上げなどによ
って、この一定の安全を確保することも可能である。
・復興庁が公表している「事業計画」においても、海岸堤防の整備にあたっては、市町村
が策定してきている復興計画を踏まえ、他事業との調整等を行った上で、施工準備がと
とのった海岸から、順次本復旧工事を実施することとされている。
・例えば、岩手県大槌町等においては、後背地の土地利用などの復興計画を策定した結果、
高台移転が決定した地区については、漁港海岸の海岸堤防の高さを東日本大震災前と同
じ高さで災害復旧するとしている。
・なお、「設計津波の水位の設定方法等について」において、「堤防等の天端高は、設計津
波の水位を前提として、環境保全、周辺環境との調和、経済性、維持管理の容易性、施
工性、公衆の利用等を総合的に考慮して海岸管理者が適切に設定」とされている。
・いずれにせよ、人の命に関わる話なので、設計津波の水位を参照しつつ、住民と海岸管
理者が十分に話し合って、災害復旧する海岸堤防の高さを議論することが重要である。
・その際、海岸堤防を越える津波に対応するための地域づくりのツールとして、津波防災
地域づくり法の活用を検討することも可能である。
(2)海岸堤防の法線について
・宮城県山元町や岩手県大船渡市では、被災前よりも法線を内陸側に変更して災害復旧を
行う事例がある。
(海岸室)
・海岸堤防の敷幅が大きくなり、限られた面積の平地に大きなつぶれ地が発生することや、
地盤沈下により海岸線が後退している場所で、地域にとって貴重な前浜が失われたりす
ることは、好ましいことではない。(海岸室)
(3)河川堤防について
・気仙沼市の只越川では、川幅が 5m くらいの小川を標高 10m くらいの堤防で守る計画に
なっており、その敷幅が 30m くらいとすると、堤防と小川とで幅が 60~70m となり、
限られた平地の大半が堤防で占められることになる。(横山)
・河川に遡上する津波から後背地を防護する方式として、バック堤方式と水門方式とがあ
り、それらを経済比較するのが一般的である。
(海岸室)
(4)災害復旧事業について
・復興庁が公表している「事業計画」において、被災した海岸堤防の本復旧は、概ね5年
での完了を目指すこととされている。(海岸室)
・宮城県・気仙沼市は秋から設計に入る模様であり、H24 年度中に設計を完了し、H25~
H27 に工事を行うとすると、
住民による検討時間や住民合意のための時間がほとんど無い。
(横山)
(5)気仙沼市舞根地区(漁港)について
①防潮堤(漁港)及び海岸堤防(漁港海岸)の必要性について
・舞根地区の現状として、被災した住宅は全て高台に移転することとなっており、その標
高は約 40m である。また、舞根湾の両岸に被災を免れた漁業者の家があるが、どちらも
標高約 12m 以上の高台にある。したがって、設計津波の水位に相当する高さより低いエ
リアには、人は住まない。
(横山)
・また、次の津波に備えて、漁業者は重要な産業施設(冷凍庫など)を高台に移設しつつ
ある。
(横山)
・これらの跡地には何も建設する計画はなく、民地の提供や干潟・湿地にすることについ
て、地域の了解が得られている。
(横山)
・東日本大震災前も防潮堤・海岸堤防がなかった場所なので、この地区の漁港管理者・海
岸管理者である気仙沼市長はこれらを造らないことに理解を示しているが、まだ結論は
出していない。
(横山)
・宮城県と気仙沼市が本地区の住民に対して説明した記録によると、「海岸沿いの道路も守
るべき資産なので防潮堤が必要」とある。道路も守るべき「資産」の一つではあるが、
他に一般資産がないのであれば、海岸堤防によらずとも道路管理者が自ら道路を守る方
策を講ずればよい。
(海岸室)
②付替道路について
・本地区の住民は市に対して、水没した海岸沿いの市道(林道)の内陸側への付替を要望
しているが、既に、市は原形復旧する内容で申請し、県はこれを了承していることから、
災害復旧事業での対応が難しくなっている模様。(海岸室)
・必要な用地の提供は地権者から得られるのであれば、災害復旧事業以外の事業制度(復
興交付金(復興庁)等)も活用して対応可能と思われる。(海岸室)
(6)その他(今後の進め方等)
・市内の地区ごとに検討委員会のようなものを設置して、行政と住民とがしっかり議論し
た方が良い。
(海岸室)
・海岸堤防の話は景観や生態系とも大きく関連するので、慎重に進めないと後生に禍根を
残しかねない。
(土研)
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海岸室協議録