炭酸ガスレーザー超音速噴霧法
によるポリマー微粒子の作製
山梨大学大学院医学工学総合研究部
(工学部応用化学科担当)教授 鈴木
章泰
1
炭酸ガスレーザー超音速マルチ延伸法と炭酸ガスレーザー超音速噴霧法とは?
原理
◎炭酸ガスレーザー超音速延伸法
速い空気の流れ(超音速流)の中で、炭酸ガスレーザーを繊維に照射
して繊維を融かし、融けた繊維を伸ばして(超延伸)ナノファイバー
を作製する。
◎炭酸ガスレーザー超音速噴霧法
速い空気の流れ(超音速流)の中で、炭酸ガスレーザーを繊維に照
射して繊維を融かし、融けた繊維を吹き飛ばして(噴霧)微粒子を
作製する。
超音速流を発生させる方法は?
2
CO2 レーザー超音速延伸装置
図1
CO2 レーザー超音速延伸装置の外観
3
CO2 レーザー超音速延伸装置
繊維供給リール
マイクロメーター
Zn-Se窓
0.001
Fiber
Flow rate
/ m s-1
Temperature
/K
305.3
294.8
557.0
Temperature
/K
302.9
297.3
495.1
433.2
371.3
260.5
284.3
291.7
241.5
273.8
286.1
222.5
263.8
280.5
203.6
252.8
274.9
184.6
242.3
269.3
123.8
165.7
231.8
263.7
61.9
146.7
221.3
258.1
0.0
127.8
210.8
252.6
200.3
247.0
108.8
真空度計
Fl
/m
パワーメーター
1.0 mm
279.4
CO2レーザー発振器
1.0 mm
298.4
1.0 mm
618.9
Temperature
/K
Orifice
Fiber
Orifice
Fiber
(c)
Orifice
Fiber
(b)
Orifice
(a)
(a)
1.0 mm
繊維供給オリフィス
309.4
真空ボックス
247.5
185.7
真空ポンプ
Z
Y
X
図2
CO2 レーザー超音速延伸装置の概略図と流体解析で求めた速度分布および温度分布
4
有限要素法による流体解析
(b)
Orifice
445.7
401.1
Fiber
Flow rate
/ m s-1
323.7
291.3
495.1
356.5
259.0
433.2
312.0
226.6
371.3
267.4
194.2
309.4
222.8
161.9
247.5
178.3
129.5
185.7
133.7
97.1
123.8
89.1
64.7
61.9
44.6
32.4
0.0
0.0
0.0
298.4
279.4
Temperature
/K
305.3
294.8
(c)
Fiber
Temperature
/K
302.9
297.3
260.5
284.3
291.7
241.5
273.8
286.1
222.5
263.8
280.5
203.6
252.8
274.9
184.6
242.3
269.3
165.7
231.8
263.7
146.7
221.3
258.1
127.8
210.8
252.6
108.8
200.3
247.0
図4
Orifice
Fiber
1.0 mm
Temperature
/K
1.0 mm
Fiber
(b)
Orifice
(a)
40kPa以下
オリフィス直下の速度分布
Orifice
図3
Orifice
1.0 mm
557.0
Flow rate
/ m s-1
1.0 mm
618.9
(c)
Fiber
Fiber
Flow rate
/ m s-1
=50 kPa
Orifice
1.0 mm
(a)
=30 kPa
1.0 mm
pch=10 kPa
オリフィス直下の温度分布
図5 有限要素法による流体解析で得られた
流速と気体流の温度のチャンバー圧依存性
5
CO2レーザー超音速延伸および噴霧装置
延伸装置
JST本格研究開発ハイリスク
挑戦タイプ (2009年‐2011年)
リール巻取り型
量産型装置
の開発
コンベア捕集型
連続巻取装置
噴霧装置
6
炭酸ガスレーザー超音速延伸法と炭酸ガスレーザー超音速噴霧法とは?
微粒子
オリフィス
オリフィス
3.6mm
1mm以上
離す
3.6mm
ナノファイバー
1mm
図6
1mm
レーザー照射位置と流速分布との関係
・ビームトップを初めに照射しない。
・ビームトップを初めに照射する。
・低結晶性ポリマー
・高結晶性ポリマー
低いビーム強度で繊維が溶融する。
→ 連続的に塑性変形する。
高いビーム強度で繊維が溶融する。
→ 瞬時に溶融粘度が低くなり、超音速
流により、噴霧される。
炭酸ガスレーザー超音速延伸法
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法
7
原繊維
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法における繊維の熱処理効果
260℃10分熱処理
Exo.
原繊維
繊維の溶融状態
結晶化度=7.3%,
熱処理温度 : 260℃
熱処理時間 : 10min
熱処理繊維
CO2 レーザー照射
Tcc=135.4℃
Tm=254.7℃
Endo.
SEM写真
原繊維ではナノファイバーと微粒子が生成
結晶化度
=41.0%
Tm=254.5℃
50
100 150 200 250
Temperature / ℃
熱処理繊維では微粒子が生成
300
図7 PET原繊維および熱処理PET繊維
のDSC曲線および広角X線回折図
図8 原繊維および熱処理繊維のレーザー照射部
の写真および得られた試料の走査電子顕微鏡写真
8
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法における照射位置とチャンバー圧依存性
30kPa
50kPa
70kPa
X=3mm
2mm
1mm
0 mm
pch=10kPa
図9 レーザー照射位置(X)とチャンバー圧(pch)を変えて得られたPET試料のSEM写真
(レーザー出力:34W、繊維供給速度:0.1mm/min)
9
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法におけるレーザー出力とチャンバー圧依存性
pch=10kPa
30kPa
50kPa
70kPa
PL=34w
20w
10w
原繊維
図10 レーザー出力(PL)とチャンバー圧(pch)を変えて得られたPET試料のSEM写真
(照射位置:0mm、繊維供給速度:0.1mm/min)
10
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法で作製したPET微粒子の平均粒径・粒径分布
(b) Pch= 10kPa
30kPa
50kPa
dav
dav = 0.618 μm
dmax = 1.510μm
dmin = 0.230μm
σ =0.263
dav
70kPa
= 1.330 μm
dmax = 3.130
dav = 1.330 μm
dmin = 0.540
dmax = 3.130μm
σ = 0.534
dmin = 0.540μm
σ = 0.534
dav = 1.586 μm
dmax = 3.340μm
dmin = 0.670μm
σ =0.508
dav = 2.65 μm
dmax = 11.20μm
dmin = 0.69μm
σ = 1.62
dav
= 0.618 μm
= 2.65 μm
dmax = 11.20
dmin = 0.69
σ = 1.62
dmax = 1.510
dmin = 0.230
σ =0.263
dav
= 1.586 μm
PL= 10w
dmax = 3.340
dmin = 0.670
σ =0.508
図11
レーザー出力34Wにおける平均粒径のチャンバー圧依存性と粒径分布
11
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法で作製したPET微粒子の諸特性
表1 チャンバー圧(pch)とレーザー出力(PL)を変えて得られた試料のDSC測定から求めた融点
(Tm)、低温結晶化温度(Tcc)、結晶化度(Xc)および赤外吸収スペクトルから算出したトランス
(845.6cm-1)/ゴーシュ(893.8cm-1)比(T/G)
PL
/W
10
20
34
pch
/ kPa
10
30
50
70
Tm / ℃
254.9
255.2
255.8
251.9
Tcc / ℃
121.2 / 133.1
118.5
117.5
140.8
Xc / %
16.7
17.9
14.6
7.3
T/G
1.06
0.85
0.82
0.70
Tm / ℃
252.6
255.6
255.3
255.2
Tcc / ℃
105.6
121.9
124.0
120.1
Xc / %
17.5
16.9
19.6
14.8
T/G
0.74
0.80
0.83
0.83
Tm / ℃
252.1
251.8
249.7
249.1
Tcc / ℃
103.1
103.9
101.9
102.4
Xc / %
5.4
9.3
9.1
5.3
T/G
0.73
0.75
0.77
0.76
12
PET微粒子の平均粒径・粒径分布の繊維供給速度依存性
Ss =0.2 m min-1
=0.15 m min-1
=0.10 m min-1
dav
dmax
dmin
σ
=0.921 μm
=2.650
=0.390
=0.422
dav
dmax
dmin
σ
=0.864 μm
=1.840
=0.380
=0.282
dav
dmax
dmin
σ
=0.701μm
=1.890
=0.300
=0.271
1.0
0.8
0.6
0.4
=0.05 m min-1
=0.002 m min-1
図12
dav
dmax
dmin
σ
=0.627 μm
=1.430
=0.270
=0.222
dav
dmax
dmin
σ
=0.485 μm
=1.460
=0.170
=0.227
粒径分布の繊維供給速度依存性
0.2
0.0
図13
0.1
0.1
0.2
0.2
繊維供給速度 / m・min-1
0.3
平均粒径の繊維供給速度依存性
13
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法で作製した種々のポリマー微粒子
ポリエチレンテレフタレート
(x5,000)
ポリエチレン (x8,000)
ポリプロピレン(x5,000)
添加剤や溶剤を
含まない真球度
の高いポリマー
微粒子を作製で
きる。
ポリ乳酸
図14
(x5,000)
ナイロン66 (x5,000)
炭酸ガスレーザー超音速音速噴霧法で作製した微粒子の走査電子顕微鏡写真
14
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法の特徴
1.ビニル系および縮合重合系ポリマーに適用できる。
2.得られる微粒子の真球度は高く、添加剤や溶剤を含まない。
3.作製過程で溶剤を使用しないため、作業環境および微粒子の安全性は高い。
4.減圧度やレーザー出力など噴霧条件を変えることで容易に粒径を制御できる。
5.装置は小型であるために設置場所を選ばず、少量・多品種の生産に適している。
6.全ての工程を減圧容器内で行うため、微粒子の飛散を防止でき、作業環境の安全
性は高く、微粒子への不純物の混入はない。
7.局所的なレーザー加熱であるため、使用するエネルギー量は少ない。
8.低温気流中での加熱・噴霧のため、造粒後、急冷できる。
9.装置の減圧度は低真空領域であるため、高度な真空技術を必要としない。
10.オリフィス配置やレーザーの光学系を工夫し、複数台のレーザー発振器を用いる
ことで、数百本の繊維を微粒子化でき、拡張性にも優れている。
15
ポリマー微粒子作製法の従来技術
重合造粒法
(ビニル系ポリ
マー微粒子)
・乳化重合法
・懸濁重合法
・分散重合法
化学的合成法
分散造粒法
(縮合重合系ポリ
マー微粒子)
微粒子作製法
機械的粉砕法
・スプレードライ法
・液中硬化法
・相分離法
・ジェットミル
・圧縮せん断型ミル
・ローラーミル
16
従来技術とその問題点
作製法
ブレイクダウン
ビルドアップ
重合造粒法
・乳化重合法
・懸濁重合法
・分散重合法
適用材料
粒径
真球度
生産
効率
ビニル系ポ
リマー
(PMMA,ポリ
スチレン、ポ
リ酢酸ビニル
≧10nm
高い
低い
など)
分散造粒法
一般的に
縮合重合系
≧100nm は高い
・スプレードライ法 ポリマー
(作製法に 低い
(PET,ナイロン、
・液中硬化法
より異な
ウレタンなど)
る)
・相分離法
機械的粉砕法
・ジェットミル
・圧縮せん断型ミル
・ローラーミル
全ての高分
≧1000nm
子材料
低い
低い
方法
問題点
原料モノマーのラジ ・微粒子から 添加剤
カル重合で得られ、
等を完全に除くこ
重合過程で粒子を形
とが困難である。
成する。重合方法を ・ビニル系ポリマー
変えることで、様々
に限定される。
な粒径が得られる。
モノマーあるいは前 ・前駆体の状態で粒
駆体を低粘度で粒子
子形状を保持する
形成し、形状を維持
ことが困難である。
して速やかに高分子 ・ 縮 合 重 合 系 ポ リ
量化し、粒子を作製
マーの実用化の例
する。
は少ない。(ウレ
タン粒子、ナイロ
ン粒子など)
ポリマー微粒子を機 ・ナノ粒子が得られ
械的に粉砕し、微粒
ない。
子を作製する。
・真球度の低い微粒
子である。
・大きな機械エネル
ギーを使用するわ
りには、微粒子の
生成効率が悪い。
17
新技術の特徴・従来技術との比較
ビルドアップ
作製法
適用材料
重合造粒法
ビニル系ポ
リマー
分散造粒法
縮合重合系
ポリマー
ブレイクダウン
全ての高分
機械的粉砕法 子材料
CO2レーザー 熱可塑性高
超音速噴霧法 分子材料
粒径
真球度
生産 添加剤や溶
効率 剤の使用
≧10nm
◎
○
乳化剤、懸濁
剤、分散剤、
溶剤、触媒
≧100nm
△
×
溶剤、触媒
≧1000nm
×
△
無
≧100nm
◎
◎
無
微粒子の形態
18
想定される用途
◎メディカル分野
・細胞培養担体
・再生医療用マトリックス
・検査・診断
◎製紙分野
・光沢の付与
・白色度の向上
・不透明度の改善
◎塗料分野
・自動車用塗料
・工業用塗料
・艶消し剤
◎化粧品分野
・光沢特性の付与
・日焼け止め
◎エレクトロニクス分野
・電子ペーパー
・液晶ディスプレー
・シリコンウェハ用研磨剤
図15
ポリマー微粒子の用途
19
実用化に向けた課題
・一方向からのレーザー照射
による不均一溶融
・粒径分布の広い微粒子
レーザー
図16 高速度カメラで撮影したポリ
エチレン繊維の溶融部分(x500)
図17 ポリエチレン微粒子の
走査電子顕微鏡写真 (x8,000)
・均一な微粒子の作製
・より小さい微粒子(100nm以下)の作製
・微粒子化の高効率化
1.均一な微粒子を効率良く作製できる機構を開発
・多方向からのレーザー照射による均一溶融
・複数本の繊維の微粒子化
・微粒子捕集法と分級法の確立
2.本方法の適用可能なポリマーの探査
20
企業への期待
炭酸ガスレーザー超音速噴霧法は、現行のポリマー微粒子
作製法より、適用できる材料の範囲が広く、得られるポリ
マー微粒子の安全性は高く、作製過程の安全性も高い。
•微粒子作製技術を持つ企業、添加剤を含まず、真球度の
高いポリマー微粒子を求めている企業との共同研究を希
望します。
•本技術で作製したポリマー微粒子の安全性は高く、医療
分野や化粧品など、高品位なポリマー微粒子を必要とす
る用途に適しています。
21
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :熱可塑性ポリマー微粒子から
なるマイクロビーズの製造手段
• 出願番号 :PCT/JP2012/068647
• 出願人
:山梨大学
• 発明者
:鈴木 章泰
22
産学連携の経歴
2002年~2004年
大学発事業創出実用化研究開発事業費補助金に採択(NEDO)
マイクロファイバー加工機の開発
2007年~2010年 G社と共同研究実施
2008年~2011年 A社と共同研究実施
2009年
2007年~
JSTシーズ発掘試験研究に採択
炭酸ガスレーザー超音速延伸法で作製した高強度ナノシートの開発
J社と共同研究実施中
2009年~2010年 E社と共同研究実施
2009年~2011年
JST本格研究開発ハイリスク挑戦タイプに採択
炭酸ガスレーザー超音速マルチ延伸装置の開発
2011年~
M社と共同研究実施中
2012年~
F社と共同研究実施中
23
お問い合わせ先
国立大学法人
山梨大学
産学官連携・研究推進機構
室長
還田
地域連携室
隆
TEL:055-220-8758
産
FAX:055-220-8757
e-mail:renkei-as@yamanashi.ac.jp
Industry
官
学
University
Administration
24
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炭酸ガスレーザー超音速噴霧法 によるポリマー微粒子の作製