2012 年度森基金研究成果報告書
市民発循環型地域活動――千葉県白井市の例
2013 年 2 月 20 日
政策メディア研究科 81224770
田畑洋子
研究背景
千葉県北西部に位置する白井市は、2004(平成 16)年に「市民参加条例」を制定し、まち
づくりを市民と市の共通課題としてとらえ、市民団体の公益活動を支援するために補助金
を出している。
「EM 白井野菜の会」は 2008 年度から 2013 年度までの 6 年間、
「有用微生物(EM)活用
による白井市内の河川・プールの環境浄化活動、小学校のトイレ清掃と生ごみリサイクル
活動、白井市福祉作業所の自主財源確保支援活動など」に対して、補助金を交付されてい
る。
(白井市ホームページ, http://city.shiroi.chiba.jp/detail/3397031451.html)
EM (Effective Microorganisms)とは、琉球大学名誉教授の比嘉照夫氏が開発した多目的微
生物資材で、その効果については賛否両論がある。賛同者が日本国内はもとより、タイ、
ブラジル、ヨーロッパなど世界中に広がっている一方で、学界では科学的な証明がないと
して、否定または無視されることが多い。本稿では EM についての記述がたびたび出てく
るが、その効果や正当性についての判断はしない。
1.「EM 白井野菜の会」の循環型地域活動
1-1.2012 年 8 月 16 日 代表の若倉利勝氏インタビュー
「EM 白井野菜の会」は、1997 年に白井市が開催した比嘉照夫氏の「EM 活用講座」の参
加者により結成され、EM を使った有機野菜の栽培や EM ボカシのよる生ごみ堆肥化など
を行っていた。
2006 年に、白井市社会福祉協議会に対し、障碍者施設における EM ボカシの制作・販売に
よる財源確保、家庭における生ごみをボカシによって堆肥化し、白井市の可燃ごみの 45%
を占める生ごみの減量化を提案した。これをきっかけに、福祉作業所、小学校、市役所、
一般市民をうまく循環する活動が始まった、
1-2.2012 年 9 月 6 日白井市を訪問
野菜の会の若倉利勝氏、高田健次氏とともに白井市立第一小学校水崎誠司校長、白井市福
祉作業所渡邉恵所長、白井市市民活動支援課矢ケ崎純子副主査、環境課環境保全班福田忠
夫副主査、きれいな街づくり班平井務氏にインタビューをした。
1-3
野菜の会を中心とした循環図
インタビューの結果を総合して、以下のような循環的な関係図ができる。
団子づくり協働、運動会参加
白井市
白井市立小学校(3 校)
福祉作業所
プール用活性液
・プール清掃
・EM 団子の作成・河川浄化
・EM 廃油石鹸作り
・鮭の飼育と放流
EM 団子・資材
技術指導
資材提供
EM 製品販売
環境教育の提案
自主財源確保支援
有機野菜販売
白井市環境フォ
プール清掃指導
プール清掃用活性液代金
そうじ講座
ーラムで河川浄
鮭の稚魚提供
EM 団子資材代金
化活動、鮭の飼育
活動発表
EM 白井野菜の会
環境浄化コーディネーターの役割
河川への送迎バス
活動参加
団子投入場所整備
運搬・指導
活動提案
補助金
EM 製品購買
堆肥化講座講師派遣
講座参加
家庭菜園指導
肥料,苗,機具提供
ボランティアの提案
白井市役所
・教育委員会
・市民活動推進課
・環境課
EM 団子代金
河川浄化活動参加
生ごみ堆肥化講座
地域企業・市民
1-4 循環型地域活動
野菜の会 → 福祉作業所
1. 野菜の会は福祉作業所に EM 資材を提供し、技術指導をする。
2. 福祉作業所は、有機肥料の EM ボカシや水質浄化のための EM 団子、プール清掃のた
めの EM 活性液をつくる。
3. また、野菜の会は(財)自然農法国際研究開発センターの協力を得て、作業所周辺の土壌
を検査し、それに合う作物を提案。畑にボカシなどの有機物を投入し、有機野菜の栽
培を提案、指導。
4. 福祉作業所は自分たちで作る有機肥料を利用して有機作物を栽培し、近隣の住民に販
売し、自主財源の一環とする。
野菜の会 → 小学校
1. 野菜の会は市内の小学校に環境教育として「金山落」という用水路の水質浄化のため
に EM 団子を投入することを提案。
2. 作業所で作った資材を小学校に提供し、作業所の人も一緒に EM 団子を作る。資材の
代金は野菜の会負担。
3. 河川の浄化が進んだところで、鮭の卵イクラを小学校に提供して生徒が環境学習とし
て稚魚に育て、川に放流。
4. プール、トイレの清掃に EM 活性液使用を提案。作業所の活性液を提供し、生徒の清
掃を指導。
5. 作業所のボカシで有機野菜の栽培を提案。
6. 小学校は河川の浄化活動や鮭の飼育活動をまとめ、白井市主催の環境フォーラムで発
表。
7.
野菜の会 → 市役所
1. 福祉作業所での EM を使ったボカシなどの制作・販売による自主財源確保、EM 製品
を使った生ゴミの減量を提案。
2. 小学校の環境教育として EM 団子を使った河川浄化に協力要請。市教育委員会が生徒
の送迎バスを提供し、団子投入場所の整備、団子の運搬を行う。環境課が指導。
3. 河川浄化用の EM 団子を市が福祉事務所より購入。
4. 「生ゴミ堆肥化講座」の提案。環境課が講座を主催し、野菜の会が講師派遣。
5. 市民活動支援課の補助金を申請し、平成 20 年より 2 期 6 年継続して受領
野菜の会 →
1.
地域企業・市民
地域の企業、市民に作業所の畑への肥料、苗、農業機械等の提供を呼びかけ、ボラン
ティアの在り方を提案。提供してくれる企業や市民が出てきている。
2.
EM 資材を使った生ゴミ減量、掃除方法、有機野菜栽培などを講座で提案。
3.
河川浄化などの行事に参加を呼びかける。
4.
小学生の環境学習発表の場に参加を呼び掛ける。
以上のほかにも、野菜の会からの働きかけで各機関が相互に作用しあった地域活動を生ん
でいる。
2. 成功の要因
2-1.EM 野菜の会の存在
上記の関連図でもわかるように、すべては EM 野菜の会の提案から、福祉作業所も小学
校も市役所も動き始めている。野菜の会は提案するばかりでなく、作業所の自主財源確
保のための EM 資材の提供、有機野菜栽培のための肥料や苗、農業機械などの無償提供
呼びかけ、環境教育のためにイクラ(鮭の卵)まで提供している。また、実際の作業に
ついても技術指導や、実地指導をしている。
市から補助金があると言っても、すべての出費を賄うことはできないので、会員の持ち
出しになっているが、お金だけでなく、時間も労力もまた交渉もすべて野菜の会がして
いると言っても過言ではない。その熱意こそが成功の第一要因である。
2-2
福祉作業所と小学校の協働
福祉作業所、小学校、市役所が野菜の会の提案にすぐ対応し、福祉作業所は EM 製品の
制作、小学校はそれを使って環境教育を実践し、市役所はそのサポートにあたった。そ
れによって、作業所の人々と小学校の生徒が、団子づくりを共同で行ったり、運動会に
参加したりと、自然な交流ができていった。もともと白井市立第一小学校には特別支援
学級があり、生徒たちが作業所の人に違和感を持たなかったということもある。
2-3
市役所の柔軟な対応
野菜の会の働きかけを受けて、環境課が環境教育の推進のために EM 団子の購入や、
河川浄化の際のバス提供など支援している。環境課としては、環境学習のほかにも、
環境問題に子供が関心を持つことによって、親も環境問題を意識するようになり、本
人が大人になっても環境への問題意識が残ることを期待している。
野菜の会に対しは、第三者で構成される補助金評価委員会が補助金の支払いを決定し、
それを受けて、2 期 6 年補助金を出している。生ゴミの堆肥化についても市主催の講座
に野菜の会から講師を要請するなど、連携を強めている。
3.今後の課題
1.野菜の会が、この循環型活動を継続していくためには、財政的、人的基盤の拡大が必要
となろう。白井市からの補助金以外の助成金を確保する、支持基盤を拡大して寄付を募る
などの方策が考えられる。また、実際に活動する人員の確保も必須と思われる。
2.EM を活用した小中学校の環境浄化活動に対しては、白井市以外でも多くの例があり、
中には環境大臣賞(福島県郡山第 6 中学校)や文部科学大臣賞(名古屋の岡崎緑ヶ丘小学
校)を受賞した活動がある。しかし EM はまだ 100%社会に受け入れられていないところ
があるため、EM の活用をうたうことには十分に注意を払う必要があろう。
3.白井市の循環型活動が本当に地域に根付いた活動になるには、野菜の会から地域住民に
活動の主体が広がり、地域の活動となることが大切である。そのためには上記 1 とも関連
して、現在の野菜の会の活動に対する理解と協力を得るための PR 活動も必要となるだろう。
以上。
ダウンロード

市民発循環型地域活動――千葉県白井市の例