安心して飲んでいただくために
福島第一原発の事故以来、日本茶に含まれる放射性物質について報道される日が続いています。
(社)日本茶業中央会では、安心してお茶を飲んでいただくための資料を作成しました。
ぜひお役立てください。
発行日:2011年6月28日 (社)日本茶業中央会
お茶は一滴一滴!
首都大学東京 健康福祉学部 放射線学科
大谷浩樹
原発事故から三か月が過ぎ、収束へ向けての整備が進められている中で、暫定規制値を超える放射性物質が検出された
農産物がありました。それは日本人の喉も心も潤すお茶であり、その一番茶は誠実で只々ひた向きでした。それと言うのも
3月の大規模な放射性物質の放出時、新芽はせっせと栄養分としてのカリウムなどを取り込む時期で、奇しくも性質が似て
いる放射性セシウムも取り込んでしまったからです。茶の樹は美味しくなろうとしていたのです。
お茶に対する放射性物質の暫定規制値はありませんでした。放射性セシウムについても同様で、分類としては「その他」
に属し1kgあたり500ベクレルとなっています。これは国際基準で定められているものを日本人の食生活に合わせて算出
したものです。それでは、この量の茶葉からお茶を淹れた場合に健康への影響はあるのでしょうか。
仮に製茶1kgあたり500ベクレルあったものとし、私たちがお茶として飲む場合の影響を計算してみましょう。
1日に飲用茶1リットル飲む場合、放射性物質のお茶への浸出量は80分の1(★)になるものとし、放射性セシウムの経口摂
取した場合の実効線量係数は0.013とします。その結果、人体への影響は0.08125マイクロシーベルトと計算されます。
仮に毎日1リットルを1年間(365日)飲んだ場合でも、29.6563マイクロシーベルトです。
例えば、胸部X線集団検診1回0.3ミリシーベルト(=300マイクロシーベルト)の1/10であることがわかります。つま
りそれを飲んでも何ら健康には影響ありません。1kgあたり500ベクレルという暫定規制値はとても厳しい値であり、計
算結果からもわかるように私たちの安全を守るために決められた数値なのです。
(例)1kgあたり500Bqの製茶を25g使って1リットルのお茶を淹れた場合
1リットルのお茶に必要な製茶は
製茶25gに含まれるセシウムは
お湯に溶け出す量はおよそ50%
6.25BqをμSvに換算すると
1年間毎日1リットル飲むと
25g
500Bq×0.025
=12.5Bq
6.25Bq
1
=
500Bq
80
12.5Bq×0.5
=6.25Bq(★)
6.25Bq×0.013
=0.08125μSv
0.08125μSv×365日 =29.6563μSv≒0.03mSv
日本人にとってお茶は欠かせないものです。お茶は一滴一滴。私はお茶の旨味と成分の恩恵を、最後の一滴まで無駄にせ
ず毎日毎日飲んでいます。
放射性物質の単位について
事故以前から放射線は身近にあった
放射性物質は不安定な物質で、時間とともに壊れていき、
いずれ自然消滅します。放射性物質が時間の経過によって
壊れる瞬間に、放射線が発生します。
放射性物質も放射線も自
然界に存在しているもの
です。ごく普通に暮らして
いれば、誰でも自然と被曝
しています。
地域によって異なります
が、人間は世界平均で1年
間に約2.4mSvの自然放
射線を受けています。
このように、自然の放射線
や、食べ物に含まれるカリ
ウム40や炭素14などを
摂取することで、人体も普
段から放射能が出ていま
す。大人の場合、5,000∼
8,000ベクレルです。
ベクレル(Bq) :1秒間に壊れる放射性物質(原子核)の数
シーベルト(Sv) :放射線が人体に与える影響の度合い
グレイ(Gy) :物が放射線から受けたエネルギーの量
それぞれ、単位が表すものが違います。
また放射性物質の種類によって放射線の強さが違うため、例
えばセシウム137の1Bqは0.013μSvと換算されます。
Bqは原子核というとても小さなものを表す単位であるの
に対し、Svはとても大きな単位ですので、1,000分の1の
mSvや100万分の1のμSvが用いられます。
人体が1年間に受ける
自然放射線(世界平均)
食品から
約0.29mSv
大気から
世界平均
大地から
(空気中の
約 2.4mSv 約0.48mSv
ラドンなど
の吸入)
約1.26mSv
宇宙線
約0.39mSv
『改訂版放射線のABC』をもとに作成
Q &A
お茶と放射性物質などについてのQ&A集です。
放射能と聞いて不安を感じるのは、私たち茶業関係者も皆様も同じです。
お茶が飲みたい、でも不安、というときにお読みください。
荒茶から検出された数値が高くて怖い。製茶にしたら、もっと数値が上がったりしてしまいませんか?
Q「荒茶にすると放射性物質が濃縮される」
というのは本当?
A
荒 茶 の 1 k g は 、茶 の 生 葉 の
5kg分に相当します。
お茶の製造工程において、葉に含ま
れる水分が飛んで、茶の葉の質量は
小さくなります。
つまり、荒茶1kgで検査するというこ
とは、実際には茶の生葉5kg分を検査
しているのと同じことになります。
・荒茶:茶の生葉に熱を加え乾燥させたもの
・製茶:荒茶にさらに熱を加え、味・形を整えた
もの。仕上茶ともいう。
Q
A
水道水で淹れても大丈夫で
すか? 熱湯だと放射性物質
が溶け出したりしません
か?
お住まいの地域の水道水から放射性
物質が検出されていなければ、問題ありま
せん。気になる方は、市販のミネラルウォー
ター(ただし軟水)をお使いください。
また、飲用茶(お湯で淹れたお茶)の検査で
は、90℃という熱いお湯で検査され、溶出
率は50%程度です。
(※)食品成分表と同じ
【飲用茶の検査方法】
(1)煎茶10gを
(2)90℃のお湯430mlで
(3)1分間浸して抽出
1kg
水分が蒸発して
質量が5分の1に
茶の生葉
味・形を
整える
約200g
荒茶
【計算例】ひとり分の煎茶 茶碗一杯分の場合
※「お茶の淹れ方標準表」煎茶の場合、茶の葉3g、茶碗一杯80ml
オモテ面の計算式を使って、1kgあたり500Bqの製茶の場合、計算すると、
製茶に含まれるセシウム137は
お湯に溶け出す量は50%
マイクロシーベルトに換算
1年間毎日5杯ずつ飲んだら
500Bq×0.003=1.5Bq
1.5Bq×0.5=0.75Bq
0.75Bq×0.013=0.00975μSv
0.00975×5×365日=17.79375μSv
※17.79375μSv=胸部X線集団検診(レントゲン撮影)1回あたりと比較すると約16分の1
Q
A
お茶を粉末にして飲んだり、
料理に使っていますが、大丈
夫でしょうか?
お茶を粉末にして飲むなど、お茶そ
のものを全量摂取する場合は、次の
ようになります。
(例)1kgあたり500Bqのお茶を粉末にし
て、一日5回1年間飲んだ場合
(粉末にして飲む場合の茶量は通常、1杯当たり1g以下)
①1回分に含まれるセシウムは
500Bq×0.013μSv×0.001=0.0065μSv
③1年間毎日5回飲んだら 0.0325μSv×365日=11.8625μSv/年
④mSvに換算すると 11.8625μSv/年=0.0118625mSv
放射能に
Q お茶の産地では、
対してどんな対策を取って
安全で
Q どの産地のお茶なら、
すか? 生産者を応援したい
葉( お 茶 の 樹 か ら 摘 み
A 生取った葉)
、荒茶(生葉を乾
流通しているものは、ど
A 現在、
の産地のものでも、検査によ
いますか?
燥させたもの)、製茶のそれぞれ
の段階で検査・分析し、安全を確
認できたものだけを出荷してい
ます。
製茶→
検査
荒茶→
検査
検査
生葉→
各検査の段階で暫定規制値
500Bq/kgを超えたものは出荷制限
出荷
店頭・
ご自宅へ
製茶
②1日に5回飲むと 0.0065μSv×5回=0.0325μSv
・軟水:カルシウムやマグネシウムの含有量が
少ない水のこと。WHOでは硬度120
以下を軟水としています。
約200g
包装して
流通へ
気持ちはありますが、やっぱり不
安です。 り、暫定規制値を下回ったものだけ
です。
暫定規制値をオーバーしたものは、
出荷を自粛し、自主回収しています。
また、ホームページやブログをやっ
ているお茶農家もありますので、応
援のメッセージを送っていただける
と、それだけでも励みになります。
Q
A
お茶のカテキンは健康に良
いと聞きますが、放射能に
効くということはあります
か?
細胞が放射線を受けると、細胞を構
成する主成分である水が分解され、OHラジ
カルと呼ばれる活性酸素が生成されます。こ
のOHラジカルがDNAを損傷させることで、
ガンが発生すると考えられています。
静岡県立大学環境科学研究所の実験で、DNA
に緑茶の抽出液やカテキンの溶液を混ぜて放
射線を照射したところ、DNAの損傷を抑える
ことが分かりました。これはカテキンがOH
ラジカルを消去する「抗酸化作用」を持ってい
るためで、特にカテキンの中で最も多い、エピ
ガロカテキンガレートの効果が大きいことも
分かりました。このことから、放射能そのもの
に効くとはいえませんが、放射線の影響を抑
えることは考えられます。
Q 来年以降のお茶は大丈夫で
すか? 対策はしているの
ですか?
検出されているもの
A 現在、
は、2011年3月の大規模な
放射性物質放出の際に、古葉(昨年
芽吹いた葉)に付着し、取り込まれ
たものです。
次の茶摘みに向けて、放射性物
質が付着したと考えられる葉を
刈り落とすなどの対策を取って
います。
参考サイト・文献
『食品と放射能Q&A』
(消費者庁)http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/110530food_qa.pdf)
(社団法人静岡県茶業会議所、静岡県立大学環境科学研究所 吉岡 寿)
(http://www.wbs.ne.jp/bt/chacha/main/chs_0007.htm)
「茶カテキンの抗酸化の機構を探る」
『改訂版放射線のABC』
(社団法人日本アイソトープ協会)
発行日:2011年6月28日 (社)日本茶業中央会
ダウンロード

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