鄒語中日語借詞之音韻變化
陳麗君
摘要
少數民族為求生存,通常所採取的手段並不是藉由訴諸其文化的特
異性來強調其存在,大多數都是接受週遭優勢民族的語言文化而被同化.
本文觀察的對象是阿里山鄒族.南島語族鄒語在日本 50 年的統治後,又經
過中國語政權 50 年以上的持續浸透後,仍舊有不少的日語詞彙表現.研究
方法乃是透過田野調查的方式,採集在各個使用場面中使用的鄒語出現
的日語詞彙.結果發現,首先在借用詞彙的種類上,日語借用詞甚至滲透
到鄒語的「基礎詞彙」.如利用日語的人名以及數字和月份等.其次,日語
詞彙借用島鄒語中發生有體系的音韻變化.在子音上可見以下幾項規
則:(1)無聲摩擦音[]→無聲脣齒音[f],(2)有聲塞音[b]→有聲脣齒音[v],
(3)有聲齒根音[d]→無聲齒根音[t],(4)有聲軟顎音[g]→無聲軟顎音[k]/
有聲軟顎鼻音[],(5)詞頭的[ph] [th] [kh]→無氣音化,(6)ちょう[tio] →
[tso].另外,鄒語的日語借用詞的重音則一致都變成在倒數第二音節上.
關鍵詞: 鄒語,日語借用詞,基礎詞彙,音韻體系,音節
Phonological Pattern of Japanese Loanwords in Tsou
Language
Tan, Le-kun
ツォウ語に入った日本語の二、三の特徴
陳麗君
1.
はじめに
阿里山 18 号公路を二時間ほど上って行き「奮起湖」の手前の交差点
で達邦への案内看板にしたがって右折すると、今度は急な下り坂にな
り、クルマ一台分ほど幅の狭い道になる。さらに落石を避けながら砂
利道を 30 分間ほどずっと下って行くと原住民風のカラフルな鳥居のよ
うな門があって、その下に綺麗な花壇があった。そして、その上には
「Aveoveoy(祝福・感謝)
」という文字が書いてある。そこから 200
メートルほど進むと現地の人がよく使う可愛いらしい喫茶店「街角」
が見える。日本から中国語に訳された漫画のセットが前後二層構造の
大きな木の本棚にずらりと並べてある。安くて美味しい本場のコーヒ
ーが飲めるその喫茶店で一休みをしているとき、隣の客の会話から
「nanzi 何時」という語彙が耳に入った。
今度は今のツォウ族の人に欠かせない日曜朝の教会集会について行
ってみた。ツォウ族の牧師による年寄りたちへのツォウ語での宣教に
は「fukuin 福音」や「kamisama 神様」や「tensi 天使」などの日本語
が多く混ざっていた(図1を参照)
。さらに、小学校の卒業式では教導
先生が中国語での送辞の後に短いツォウ語のスピーチを行い、その中
では「seito(生徒)」
「sensei(先生)」
「sotsukio(卒業)」などの日本語語彙
が何回も繰り返されていた。このように今でもツォウ族の生活の中に
は所々に日本語の面影が窺える。
約 50 年間(1895∼1945)の日本による殖民浸透によって「人間関
係」や「時間」や「数量詞」など「基礎語彙1」と思われるものまでも
がツォウ語に入っていた。そのうえ、中国語政権(1945∼)の強行的
な「国語」政策によって再び植民が強いられ、50 年間以上にわたった
台湾各語族の母語禁止政策の結果、ツォウ語は死に瀕する言語となっ
てしまい、今や言語の混交状態というより中国語が全面的にツォウ語
に取って変わろうとしている。
本文は阿里山ツォウ族を対象にフィールドワークでツォウ語に入っ
てきた日本語を集め、その音韻的な特徴および語彙の種類について考
察したものであり、ツォウ語における日本語の社会言語学的な言語使
用に関する調査の中間報告である。
図1
2004 年山美カトリックの集会で配られたプリントの一部である。
聖書中の一節が、中国語とツォウ語に訳されているが、「福音」を
「fukuin」としていることが見て取れる。
アメリカの言語学者モリス・スオデッュ(M. Swadesh)によると基礎
語彙とは「すべての人間集団に共通の概念や経験に結びつく日常の表現」
である。
1
2.
南島語族におけるツォウ語の位置づけ
1706 年 Hadrian Reland がマダガスカルや東インド群島などの島々
における言語には親族関係があると初めて提案し、1899 年になって
W. schmidt が南島語族(Austroniesian)という用語を用いた。南島語
族の起源については今でも確定した理論があるとは言えないが、現在
太平洋各地に分布している南島語族の拡散は台湾から始まっていると
いう説が近年強く支持されてきている(言語学者 Bellwood, P.(1991),
Blust, R. (1995), Ross, M. D. (1994), Melton, T.(1995), Lum, J. K. &
Cann, R. L. (1998))。Blust, R. によると、古南島語族の四大分枝のう
ちの三つの語族が台湾に位置しており、ツォウ語がそのうちの一語族
であるとされている。したがって、南島語族の歴史言語学的な研究に
とっても、人類学や遺伝生物学などの分野にとってもツォウ語族はま
さにわずかに残された貴重な宝である。しかし、台湾内政部 1995 年の
資料によると、現在のツォウ族の人口は 6 千あまりであり、ほぼ漢族
に同化された都市原住民を除くならば 3675 人しかいない。加えて、30
代以下はツォウ語が出来ないということから、ツォウ語は消失の危機
に瀕した言語と言える。
3.
歴史背景の昨今
日本殖民時代において、原住民の「管理および教化」のために 1904
年 11 月 4 日阿里山郷達邦村で教育所が設置されたのを皮切りに、台湾
各部落地に次々と「番童教育所」が設立された。1930 年には、台湾全
体で番童教育所が 173 箇所もあり、学習者は 6681 人に上った(川村
1998)。ちなみに 1930 年のツォウ族の総人口は 2255 人であった(衛
1952)。このように約 30 年間に渡る浸透により、日本語は台湾各部族
間のリンガフランカになっており、現在でもその現象が続いていると
いう報告がある。そのためツォウ語においては、基礎語彙にまで日本
語語彙が所々見られる。その後、1949 年に国民政府が台湾に入り、再
び新たな「国語政策」によって中国語を強いて「方言」の使用禁止ま
でも命じ、
「高砂族」を「山胞」と改称した。1994 年になって「山胞」
を「原住民」に改称し、2001 年からは部落の小学校で原住民「母語教
育」を始めたが、すでに手遅れといっても過言ではない。現在行われ
ている週に 40 分の授業だけでは、すでに活力を失い若い世代が使用し
なくなってしまった言語を救うことは到底難しい。一方、少しではあ
るが国の研究機構による南島語の研究が言語の類型や構造研究を中心
に行われている。しかし、データ保存としての紙面言語が重視されて
きており、すでに政府はこの言語危機を見限ってしまったようだ。言
語が存続するには、ある一定の数の使用者がいて、実際の言語活動・
交流によって言語伝承が行われる必要がある。ところが、現在国内で
は言語使用・生態および世帯間の伝承や社会での存続力などに関わる
社会言語学的な研究は軽視され、消失の危機に瀕した言語を生かすこ
とにつながる研究は進んでいないのが現状である。
4.
調査地および調査方法
フィールドワークの調査は台湾阿里山郷達邦村を中心に、その周辺
特富野・里佳村・山美村で行った。本文で扱ったツォウ語に入った日
本語借用語は 2004 年春から 2005 年までの一年間にわたって、一般生
活の各場面から拾ったものである。具体的には、小学校を中心に行う
各種行事の集会や宗教関係2の集まり、結婚式でのカラオケ大会、夕暮
2
現在阿里山ツォウの部落では、カトリック、キリスト教および真耶蘇教
といった三つの宗教団体がそれぞれ力を持っているが、汪&浦(1995)に
よるとカトリックおよびキリストが比較的母語使用を重視するのに対し
て、真耶蘇教はそうでもない。筆者が主にカトリックの活動へ参加し、言
語活動を観察した。
れ時の老人たちによる涼亭での語らいの場面や、若者などが炭で焚け
た火を囲んで酒を飲んで楽しんでいる場面や、民宿の経営者たちの会
議などの場面である。さらに普通の民家にお邪魔して、ただそばで家
族の会話を聞くということもあった。また、昼間の農作業が終わり、
夜になってから話をしてくれる教示者安孝明氏の内省による提示も多
くあった。忘れられないのは、どんな集会へ行っても必ず炭で焼いた
いのしし料理が欠かせないものになっていたことである。その味はま
さに絶品であった。
図2
台湾南島語族の分布および阿里山郷ツォウ族の行政地域図
出典:『台湾原住民研究概覽』(2002)および阿里山郷公所
http://www.alishan.gov.tw から手加えたものである。
5.ツォウ語に入った日本語の音韻変化
ツォウ語と日本語とはまったく異なる類型の言語であるが、両者間
における音韻的な特徴の類似点は、二言語とも開音節で、短母音で一
音節一拍を形成することである。つまり、二個の母音が連続としたと
き、二重母音ではなく、二つのモーラ母音が連続した「連母音」が形
成される。
5.1
日本語とツォウ語の音韻体系の対照
ツォウ語に取り入れられた日本語語彙には、受容際に生じたいくつ
かの体系的な音韻変化が見られる。まず、ツォウ語の音韻体系を次の
表 1、2 に示した。
表 1. Tsou 語子音(IPA 表記)
両唇音
破裂音
歯唇音
p
歯(茎)音
軟口蓋音
t

有声入破音
硬口蓋音
k

ts
破擦音
f
無声摩擦音
s
v
有声摩擦音
鼻音
m
接近音
w
z
h
n

j
表 2. Tsou 語單母音
舌の位置
前(front) 中(central)
高(high)
i
中(mid)
e
低(low)

後(back)
u
o
a
声門音

次に日本語の音韻体系を表 3、4 に示す。
表 3. 日本語子音(IPA 表記)
両唇音
歯(茎)音
硬口蓋音
軟口蓋音
声門音
(bilabial)
(dental)
(palatal)
(velar)
(glottal)
無声/有声
破裂音(plosives)
p b
無声/有声
無声/有声
t d
k
g
ts dz
破擦音(affricate)

摩擦音(fricatives)

s z
h

はじき音(flaps)
m
鼻音(nasal)
n
接近音(approximants)


j
w
表 4. 日本語母音(IPA 表記)
舌の位置
前(front) 中(central)
後(back)
高(high)
i

中(mid)
e
o
低(low)
a
表1と表3に示した両言語の子音の音韻体系を対照すると、日本語
の子音のうち、破裂音の[b][d][g]、摩擦音の[]および弾き音[]が、ツォ
ウ語には無いことが見て取れる。したがって、日本語を受容するため
にツォウ語にある近似子音を用いるのがもっとも手取り早く、音韻体
系に影響を及ぼさなくてすむことになる。母音については、表2と表
4を対照すると分かるように、すべての日本語の母音に対応している
ツォウ語があることが分かる。ただし、調音上では日本語の[]はツォ
ウ語の[u]と違って非円唇母音であることに注意していただきたい。な
お、以下ツォウ語の音韻表示は羅馬字3で表示するもので、
「−」は音節
を区切る符号である。
5.2
ツォウ語に入った日本語の子音変化
(1)子音の変化
ア、無声摩擦音[]→無声歯唇音[f]
日本語
ツォウ語
福音
fu-khu-in
風呂
fu-lo
毛布
moo-fu
イ、有声破裂音[b]→有声唇歯音[v]
日本語
ツォウ語
バケツ
va-ke-cu
そば
so-va
弁当
ven-too
ウ、有声歯茎音[d]→無声歯茎音[t]
日本語
ツォウ語
大根
tai-kon
ドンブリ
tong-v-li
半そで
hang-so-te
まど
ma-to
電池
ten-ci
エ、有声軟口蓋音[g]→無声軟口蓋音[k]/有声軟口蓋鼻音[]
3
日本語
ツォウ語
天国
ten-ngo-ku
ツォウ語の音韻について、最初に考察記録を残したのは小島由道(1918)
であり、その後ネフスキー(1935)が完成形に近い音韻体系を整えてから、
董(1964)が現在のツォウ語音韻体系を完成させた。それをさらに、何人
かの言語学者(何(1976)、李(1979、1992))および教会関係者が修正
して現在部落の小学校の教科書に使われている羅馬字システムが完成し
た。
学校
ka-´koo
学生
ka-ku-sei
オ、語頭の/p/ /t/ /k/→ツォウ語では完全に無気音化
日本語とツォウ語ともに有気と無気の対立がなく、/p/ /t/ /k/を[p] [t]
[k]や[ph] [th] [kh]のどちらかに入れ替えても語の意味に影響を与えな
いものである。しかし、日本語では語の先頭、強勢母音の前に立つ/p/ /t/
/k/は[ph] [th] [kh]と有気音になり、現れる位置によって有無気の自由
異音を持っている。これに対し、ツォウ語では無声子音が語頭に来て
も有気音にならなく、基本的には無気音を維持するままである。
日本語
ツォウ語
パンツ/ p an-cu/
pan-cu
ペンチ/ p en-ci/
pen-ci
タオル/ t ao-lu/
tao-lu
たまご/ t a-ma-ko/
ta-ma-ko
タンク/t ang-k/
tang-k
枕/ ma-k u-la/
ma-ku-la
櫛/ k u-si/
ku-si
車/ k u-lu-ma/
ku-lu-ma
コップ/ k op-p/
kop-p
氷/ ko -o-li/
ko-o-li
h
h
h
h
h
h
h
h
h
h
カ、その他
ちょう[tio]
→
[tso]
日本語
ツォウ語
郷長
koo-coo
所長
so-coo
課長
kha-coo
ガチョウ
nga-coo
日本語の拗音[tio]はツォウ語に入ると[i]が抜けることが多い。ツォ
ウ語には[j]という半母音もあり、
「
(C)
(C)V」という音節構造も採る
のに、[tio]という発音をしないのは/yo/の前にある子音 [t]のすわりが
よくないためではないかと考えられる。また、現在あるツォウ語語彙
を調べてみると、やはり/cyo/という綴りの語彙は見られなかった。
5−3
アクセントの一貫的な変化
現在ツォウ語のアクセントのほとんどは後ろから二番目の音節に置
くことになっている。また、後ろから三番目の音節に置くこともある
が、その音韻規則は
V→V/
(C)(C)V# だと言われている(何 1976)
。
例えば「振り返る/e u o ve i/」がそれである。これまで集めたツォウ語
に入った日本語のアクセントは元の日本語のアクセントを問わず、二
番目の音節にアクセントを置くパターンになっている(単語表を参照)
。
6.ツォウ語に入った語彙種
他言語を借用する場合、
「抽象表現」や「娯楽関係」や現代社会に適
用する道具類などこれまでその言葉になかったものを借用するのはご
く当然のことである。しかし、ツォウ語に入った日本語には「人間関
係」を表す固有人名・親族呼称や「時間」や「数量詞」など「基礎語
彙」と思われるまで見られる。
6.1
固有人名について
技術系のお医者さんや看護婦の名称は今でも一般的に借用された日
本語が使われており、さらに四十歳以上のほとんどの人には日本語の
名前が付けられ、犬の名にも日本語を用いている。また、現代組織構
成員の呼称である郷長、所長、校長なども日本語を使用することが分
かった。
汪&浦(1995)の調査によると、もともとのツォウ語の固有氏名 40
あまりのうちの 10 個を取り上げて 152 人に調査したところ、10 個す
べてが分かると答えたのは 37.2%であり、半分以上分かると答えたの
は 26.2%、半分以下しか分からないのは 18.3%、全然分からないと答
えたのは 11%であった。つまり、日本語の名前はまだすこし残ってはい
るが、段々消えていくことが予測され、二回の外来政権の統治によって
ツォウ族自身の固有氏名までもが使われなくなって忘れられてきてお
り、現在かなり漢民族に同化されつつあることが窺えた。
6.2
量について
数字について、汪&浦(1995)の調査によるとツォウ語の数詞を1か
ら11まで数えることができるのは40.2%であり、数字のうちの半分以
上を数えることができるのは31.1%、半分以上分からない人は18.3%、
全然出来ない人は3.7%であった。また、ツォウ語が堪能なある教示者
によると、ツウオ語での数字使用は1から12までで、それ以外は日本
語の使用が多いと言う。数量詞の使用も見られるが、量詞の使用は数
詞による濁音・半濁音・促音の区別が無く、すべて無気の清音に統一
される。例えば、匹は形態素/piki/だけを用い、/pikki//hiki//biki/
などの異形態が用いられることはなく、本/hong//bong//pong/の場合
は/pong/の形態素だけが用いられる。
さらに、1月から 12 月までの順位記号をツォウ語で言える人は
12.2%しかおらず、全然分からない人が 70.1%をも占めていた。しかも
今では日本語を使うことも少なくなっており、月の数え方も数量詞も
現在は中国語表現が多くなっている。
7.
終わりに
長時間の言語接触により異系統の言語同士であっても、語彙の借用
のみならず、文法現象まで類似してくるといった言語連合
(sprachbund)の現象が起こりうる。さらに、最終的には密接借用と
いう言語取替えにいたることもある。言語は生きているもので常に変
化が起きることは言うまでもないが、少数民族のことばは強勢言語の
一部だけを取り入れて新しい言葉を生産することは少なく、取り替え
られて消失の運命を歩むことが多く見られる。本文はそのような一時
期の外力によって変化させられたツォウ語の一過程を覗こうとしたも
のである。日本語の後、新しい強勢言語中国語の 50 年間以上の浸透が
続くことで、ツォウ語に取り入れられた日本語語彙および受容によっ
て借用語に起きた音韻変化について考察した。その結果、日本語の借
用によってツォウ語の音韻体系が変わるまでのことはなかったものの、
固有人名や数量詞といった基礎語彙までもがツォウ語に定着していた
ことが分かった。また、日本語の借用語がツォウ語に入ったとき、ツ
ォウ語に受容するために行われた音韻変化をまとめると以下のようで
あった。
ア、無声摩擦音[]→無声歯唇音[f]
イ、有声破裂音[b]→有声唇歯音[v]
ウ、有声歯茎音[d]→無声歯茎音[t]
エ、有声軟口蓋音[g]→無声軟口蓋音[k]/有声軟口蓋鼻音[]
オ、/p/ /t/ /k/→完全に無気音化
カ、その他
ちょう[tio]
→
[tso]
単語表
Ⅰ
固有呼称類
(1)固有人名
女性人名:はるこ、なつこ、きみこ、せつこ、はなこ、たきこ、ま
さこ、れいこ、えいこ
男性人名:こうじ、よしかず、ひかる、とめきち、さとる、よしま
さ、まさひろ
(2)親族呼称
家族
お母さん類:お母さん、母さん、お母ちゃん、母ちゃんなど
お父さん類:お父さん、父さんなど
兄弟類:兄さん、姉さん、いもうと、おとうと
親戚
日本語
ツウオ語
ツウオ語語意変化
おじさん
..
o-zi-sang
おばさん
..
o-va-sang
(3)社会地位呼称
先生
お医者さん
看護婦
王様
頭目
警察
郷長
校長
所長
課長
代表
非親族男性年長者に対する
呼称
非親族女性年長者に対する
.
.
sen-sei
..
o-i-sia-sang
..
kang-ko-´ku
..
oo-sa-ma
..
too-mo-´ku
..
kei-sa-cu
.
.
goo-coo
.
.
koo-coo
.
.
so-coo
.
.
kha-coo
.
.
tai-hio
(4)犬の名
日本語
シロ
クロ
マル
マキ
ポチ
Ⅱ
ツウオ語
.
.
si-lo
..
ku-lo
..
ma-lu
..
ma-´ki
..
po-ci
ツウオ語語意変化
黄色い犬を指す
数量詞類4
(1)計量単位
日本語
メーター
ツウオ語
.
mee-ta
ツウオ語語意変化
(2)数詞と量詞
(3)順位記号
4相手によってことばを使い分けている。年寄りには日本語を用い、年下に
は中国語の数量詞を用いている。
いちがつ、にがつ、さんがつ、しがつ、ごがつ、ろくがつ、しちが
つ、はちがつ、くがつ、じゅうがつ、じゅういちがつ、じゅうにが
つ
Ⅲ
生活用品
(1)食事類
道具類
日本語
コップ
箸
ドンブリ
さら
飯台
弁当箱
釜
そばや
氷
ビール
味噌
にんにく
缶詰
..
△果物
梅
そば
お茶
弁当
紫蘇
砂糖
黒砂糖
ツウオ語
..
ko-´p
..
ha-si
.
tong-v-li
..
sa-la
.
.
hang-tai
..
ven-to-va-ko
...
kha-ma
..
so-va-ia
食用品
.
ko-o-li
.
.
vi-lu
..
mi-so
.
.
nin-ni-ku
..
kang-zu-me
..
ku-ta-mo-no
.
u-me
.
.
so-va
.
.
ot-cia
.
.
ven-too
.
.
si-sio(si-so)
..
sa-to
..
ku-lo-sa-to
ツウオ語語意変化
液体を飲用するための容器
机の総称
麺類
醤油
ミルク
サイダー
たまご
△あめだま
雑魚
.
so-iu
.
.
mi-lu-ku
..
.
sai-ta
..
ta-ma-go
.
.
a-me-ta-ma
..
za-´ko
粉ミルク
たまごや丸い形の飴
飴
干した小魚
(2)衣着類
日本語
下駄
ツウオ語
.
.
su-li-´pa
..
ke-ta
靴
ku-cu
靴下
kü-cu-sü-´ta
.
.
.
po-tin-ta
.
o-´vi
スリッパ
ボタン
おび
パンツ
せびろ
△はかま
スカート
半そで
シャツ
長靴
糸
きれ
...
pan-cu
.
.
se-vi-lo
..
ha-ka-ma
..
su-ka-to
.
.
hang-so-te
..
sa-cu
..
na-ga-ku-´cu
.
i-to
.
.
ki-le
ツウオ語語意変化
帯、ベルト、子供を背負う
ための帯
下着(下)
スカート
下着(上)
ゴム製の靴
織物の切ったもの
(3)住居類
日本語
かがみ
いた
まど
洗面器
ツウオ語
...
kha-nga-mi
.
i-´ta
..
ma-´to
...
sen-men-ki
ツウオ語語意変化
△雑巾
バケツ
風呂
△風呂場
風呂敷
タオル
枕
櫛
たたみ
毛布
芝生
.
..
zoo-kin
..
va-ke-cu
.
.
fu-lo
.
.
fu-lo-va
.
.
fu-lo-si-´ki
.
..
tao-lu
..
ma-ku-la
..
ku-si
...
tha-tha-mi
.
moo-fu
.
.
si-va
頬かむりする際に使う布
照明道具
蝋燭
電気
電灯
ランプ
loo-so-´k
.
..
ten-ki
.
..
ten-to
.
...
lang-pu
電と電灯
懐中電灯を指す
鉄の缶に灰色の土を入れ、
水を加えることによって
たま
.
.
ta-ma
生じた瓦斯のこと。
電球
(4)交通
日本語
トラック
車
バス
運転
クラッチ
自転車
オートバイ
飛行機
(5)生活道具類
ツウオ語
.
.
to-la-´k
ツウオ語語意変化
ku-lu-ma
..
va-su
.
.
un-ten
.
.
khu-la-´chi
.
.
zi-ten-sia
..
o-to-vai
..
hi-ko-ki
タイヤ
運転手、運転
日本語
ドライバ
カバー
かなてこ
△鎹
ペンチ
タンク
釘
油
瓦斯
あみ
紙
鉛筆
メガネ
かぎ
時計
傘
かばん
ツウオ語
.
.
.
lo-lai-va
..
ka-´pa
.
.
kha-na-te-ko
.
ka-su-ngai
...
pen-ci
.
...
tang-k
...
khu-gi
.
´a-v-la
..
ka-su
.
´a-mi
...
kha-mi
.
.
en-pi-cu
..
me-nga-ne
...
kha-ngi
.
.
to-´kei
...
kha-sa
..
ka-vang
ツウオ語語意変化
雨具の意味もある
ツォウ族の人が使用する
竹製の手作りの手提げに
対して、外から輸入してき
手提げ
ガラス
糊
針金
針
旗
はさみ
電池
..
te-sa-nge
.
.
ka-la-su
..
no-li
..
ha-li-ka-ne
..
ha-li
..
ha-´ta
..
ha-sa-mi
.
..
ten-ci
たものを指す
マッチ
ライター
手袋
水筒
柄杓
箱
新聞
肥料
エンジン
ミシン
こよみ
ハンカチ
Ⅳ
..
m´a-ci
.
lai-ta
..
te-vu-ku-lo
..
.
sui-to
.
.
.
hi-sia-ku
..
ha-ko
..
sin-vun
.
.
hi-leo
.
.
en-zin
.
.
mi-sin
.
.
ko-io-mi
..
hang-ka-ci
娯楽
日本語
映画
テレビ
バレーボール
たばこ
写真
たまうち
たまつき
ラジオ
アンテナ
トランプ
相撲
腕相撲
陣取り
旅館
旅行
ツウオ語
.
.
´ei-nga
.
.
te-le-vi
..
ma-li
..
ta-ma-ku
.
.
sa-sin
.
ta-ma-´u-ci
..
ta-ma-cu-ki
la-zi-o
.
.
´ang-te-la
.
...
to-lang-pu
..
su-mo
..
un-ten-zu-mo
.
.
zin-to-li
.
.
.
lio-kang
.
.
.
lio-ko
美容関係
ツウオ語語意変化
ビー玉
バリカン
床屋
パーマ
Ⅴ
..
va-li-kang
..
to-ko-ia
.
pa-a-ma
植物・動物名
(1)植物名称
日本語
さくら
花
柿
檜
枇杷
トマト
杉
葱
茄子
梨
スイカ
わさび
大根
キュウリ
もも
三つ葉
△もみじ5
△山茶花
(2)動物名称
アヒル
ガチョウ
七面鳥
5
ツウオ語
...
sa-khu-la
..
ha-na
..
ka-´ki
..
hi-no-khi
.
.
vi-va
..
to-ma-to
..
su-ngi
..
ne-ngi
..
na-su-vi
..
na-si
..
.
sui-ka
..
ua-sa-vi
..
tai-kon
.
.
.
kiu-li
..
ke-mo-mo
..
mi-cu-va
..
mo-mi-zi
...
sa-zan-kha
ツウオ語語意変化
.
.
´a-hi-lu
..
nga-coo
.
.
si-ci-men-cio
阿里山郷にある村名「楽野ララウヤ(lalauya)」はもみじという意味で
あり、昔はもみじが多かったということからついた名だと思われている。
白鷺
Ⅵ
抽象表現
日本語
家族
ツウオ語
.
.
khi-lei
..
zi-kang
....
nang-zi
..
khe-kong
..
li-kong
.
.
ka-zo-ku
会議
khai-ki
きれい
時間
何時
結婚
離婚
Ⅶ
医療
注射
入院
病院
Ⅷ
ツウオ語語意変化
.
.
.
.
ciu-sia
.
niu-in
.
vioo-in
工業と建設
日本語
アルミ
ゴム
セメント
コンクリート
機械
油紙
Ⅸ
..
si-lo-sa-ngi
ツウオ語
.
.
a-lu-mi
..
ko-mu
...
sen-men-to
..
kong-ku-li
..
ki-kai
..
a-vu-la-ka-mi
ツウオ語語意変化
ホース、ゴム
軍事関係と公共行事
日本語
機関銃
飯盒
兵隊
戦争
禁止
ツウオ語
ツウオ語語意変化
....
ke-kang-zu
....
hang-ko
.
.
he-tai
.
.
sien-soo(あるいは sensoo)
.
.
.
kin-si
主に川の盗漁を禁止する
といった掲示
Ⅹ
警備
..
.
kei-vi
会議
.
khai-ki
主に盗猟を防ぐための夜
の巡回警備を指す
学校関係と宗教関係
学校関係
日本語
学校
学生
生徒
△卒業
天国
天使
福音
神様
伝道士
ツウオ語
..
nga-koo
.
ka-ku-sei
.
sei-to
.
.
so-cu-gio
ツウオ語語意変化
宗教関係
...
ten-ngo-ku
.
..
ten-si
...
fu-khu-in
..
kha-mi-sa-ma
.
..
ten-too-si
記号:「△」はあまり一般的に用いられていないことを示す。単語の上付
き傍点はアクセントを示す。ツォウ語の羅馬字表記では「´」は声門閉鎖音
を示すものである。
後記
初めて阿里山の Tapangu(達邦)へ出かけたのは 2004 年の大学の
春休みの時期であった。アンケート用紙と研究のための必要品のほか
に何を用意して行けばいいかも分からず、とりあえず山盛りの食料品
および電気スタンドを車に詰めた。そして、地図があるといっても初
めて山道を運転するわたしのために、ナビを付けた頼れる姉の車が先
頭に走って道案内をしてくれたことが心強かった。今では、電話で阿
里山公路管理局に今日の道通行が可能かどうかだけを確認し、土砂崩
れや落石がひどくなければ大急ぎで車を飛ばして一日で往復してしま
うようなこともよくある。
筆者は今でもツォウ語はできないものの、教示者とのコミュニケー
ションは上手にできるようになってきた。その対応は年齢によって異
なっており、60 歳以上の方の多くはきれいな日本語を操るし、それよ
り年下の相手とは中国語でコミュニケーションを取っている。ほとん
どの年寄りは言語才能を持ち、日本語・ツォウ語・すこしの中国語を
操ることができるため、フィールドワークを行うにあたって言語上の
支障をきたすことがほとんどないことは良いのだが、それはつまり中
国語化が非常に進んでいることをも意味する。この状況下で社会言語
学的な研究によって警鐘を鳴らし、少数言語の生存保存の記録だけに
留まらず、言語政策をも動かすような力の一端になることができれば、
と切望している。
以上
謝辞
本研究のために、たくさんの方にお世話になった。当時の達邦小学
校の校長先生浦忠勇氏に感謝を申し上げる。そして、安孝明氏並びに
石秀蘭氏をはじめアンケートおよびインタービューにご協力してくだ
さったツォウ族の方々に感謝の意を申し上げる。また、あらゆる面で
助けてくれた二人の姉にも謝意を申し上げたい。
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鄒語中日語借詞之音韻變化 摘要 Phonological Pattern of Japanese