新たな保健・福祉活動の戦略
- 地域づくり型保健活動のすすめ -
ヘルスプロモーション研究センター
岩永 俊博
地域づくり型保健活動に
ついて説明する前に、個別
ケースへの関わりについて
考えてみましょう。
視点は、問題解決の手順
ということです。
臨床の場面では
働き盛りだというのに、血圧が高く、中性脂肪の値も高
く、いくら注意しても改善しない
話を聞いてみると
運動不足だ
食事の偏りもある
休養も十分にとれていない
こんな人や
進行性のがんで治療中の患者さん
話を聞いてみると
愚痴ばっかり
話がくるくる変わる
どうも本音を言ってなさそう
こんな人に出くわします
働き盛りだというのに
血圧が高く、中性脂肪の値も高い
話を聞いてみると
なぜだ?
運動不足だ
食事の偏りもある
休養も十分にと
れていない
さらによく聞いてみると
本人もそのことがよくないことは分かっているみたい
仕事もとても忙しそう
家族の中でもいろいろ悩みがあるみたい・・・・
どこから、どう関わればいいのよ?!
進行性のがんで治療中の患者さんに
どう対応したらいいのか
なにが問題?
話を聞いてみると
愚痴ばっかり 話がくるくる変わる
どうも本音を言っ
てなさそう
さらによく聞いてみると
家族の将来についていろいろ不安があるみたい
自分の気持ちの整理もついていないみたい
治療の先行きにも不安があるみたい・・・・
どこから、どう関わればいいのよ?!
どこから、どう関わればいいのよ?!
なぜそれが分からないのだろう?
コミュニケーションの取り方が悪いのか
対象の把握の仕方が不十分なのだろうか
把握した資料の分析の仕方が悪いのか
もっと頑張らなくちゃ
でも、どう頑張ればいいのよ?!
ケースへの対応では
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
という進め方をします
この進め方では、問題を解決するためには、現
状アセスメントが最も重要ということになります。
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
つまり、現状をきちんと把握しなければ、問
題は解決しないということです。
では、「問題」とは、なんでしょう
「問題」とは、そもそものあるべき姿
と現実とのギャップと定義されます
そもそもあるべき姿
現在の状況
ギャップ
そう考えると、問題を認識するために
最も重要なことは何だと思いますか?
問題を認識するために最も重要
なことは、「そもそものあるべき姿」
を認識することということになります。
本来的なあるべき姿とニーズ
目的とする状況
(そもそもの状態)
足りない部分 = ニーズ、現状の問題とし
て認識される
ここで2つの問題が生じます。
1.現状アセスメントから入る進め
方は何なんのか?
2.「そもそものあるべき姿」はどう
やって認識できるのか?
まず、現状アセスメントからはいる進め方につ
いて考えてみましょう
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
原因の追究
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
原因の発見と
原因の除去
という解決方法を期待しています
地域の健康づくり、健康課題の解決のためにも
このプロセスが用いられることが多くあります。
問題があるのかを調べるために資料を収集する
集めた資料から、どれが問題なのかを調べる
そのために‥‥‥
全国値や平均値、同様な地域の値と比較する
悪ければ問題
原因や要因へ対応
なぜそういう状態になって
いるかを調べる
その原因や要因を探す
介護の必要な老人が多い
脳卒中になるからだ
運動不足だ
栄養の偏りだ
家に閉じこもるからだ
ストレスだ
外にでよう!
筋力が落ちな
いように
若い頃からの生活習慣を改善しなくては
運動しなくては!
栄養の偏りをなくしましょう
ストレスをためないように!
施設を作ろう
人的資源も必要
機会を作らなければ
教室活動、自主グループ活動、さまざまな活動・・・・・
・介護の必要なお年寄りは減っていますか
・介護者の負担は軽減していますか
糖尿病やその予備軍の人が多い
生活習慣がよくないのだ
運動不足だ
栄養の偏りだ
ストレスだ
若い頃からの生活習慣を改善しなくては
運動しなくては!
栄養の偏りをなくしましょう
ストレスをためないように!
悪化しないようにしなくては
煙草をやめよう
お酒を控えよう
運動を続けよう
定期検査を受けよう
知識を深めよう
仲間での励まし合いも大切
周囲の理解も必要
教室活動、自主グループ活動、さまざまな活動・・・・・
・糖尿病やその予備軍は減少していますか
・病状は軽減し、悪化する人はいなくなりましたか
もとになる考え方
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
原因の追究
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
原因の発見と
原因の除去
評
価
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
原因の追究
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
原因の発見と
原因の除去
この考え方はいろいろな分野で用いられます
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
原因の追究
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
原因の発見と
原因の除去
ところが、この方法で、高齢者の問題や健康の問
題、教育の問題だけでなく、私たちを取り巻くさまざ
まな問題は解決どころか、ますます増加し、複雑化
しています。
それはなぜでしょう
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
原因の追究
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
原因の発見と
原因の除去
実は、この方法は、問題の原因と結果の結びつ
きが明確な場合にだけ、解決が期待できる進め
方なのです。
次のような場合はどうする?
何が起こっているのかほぼ分かっていて
原因も大まかに分かっていて
何かの原因があっても、同じ結果が起こるとは限らない
あるいは原因と思われることが複雑に絡んでいる
原因と結果が単純に結びつかない場合です
最近の健康問題や私たちが直面する多くの問題
は、このようなタイプの問題なのです。
糖尿病や高血圧などの最近の健康問題
や子育て、高齢者を取り巻く問題などは
●生じている問題の原因と結果が単純
に結びつきません
●地域の歴史と文化、つまりその地域
に住んでいる人たちの暮らしや考え方な
どが複雑に結びついています。
問題の原因を探し、それを取り除くという進
め方では問題の解決は困難です。
各人のいまの状況に、その人がどのよう
に対応するかということは、
●同じ状況が起こっていても、同じ対応が起
こるとは限りません。
●その人の暮らしの歴史やその過程ではぐく
まれた価値観やものの考え方などが複雑に
結びついています。
●現状を引き起こしている原因は単純ではあ
りません。
問題の原因を探し、それを取り除くという進
め方では問題の解決は困難です。
原因と結果が単純に結びつかない問題を
原因探しの方法で解決しようとすると
現
状
は
ど
う
な
っ
て
い
る
?
な
ぜ
そ
う
な
っ
た
?
ど
う
す
れ
ば
い
い
?
の
は
ず
な
の
に
解
決
犯人探し
誰が悪い?
誰のせい?
原因と結果の結びつきが明確な
場合は、原因を特定し、それを取り
除くことで問題は解決する
私たちは、本当は原因とは言えないものを
原因と特定したり、もっと本質的な原因がある
ことを見失っていたりすることがないだろうか
疫学調査をすれば何でもわかるという誤解
現状や原因を知らなければ先へ進まないという先入観
原因を知りたいという好奇心
では、どう考えたらいいのか
現状
理想の姿を考える
理想の姿を実現するために
必要な条件を考える
ずれ
問題として
認識される
条件を整えるために、
誰が、何をすべきかを考える
目的を果たすために、
それぞれの役割を果たす
連携と
役割分担
健康問題の解決のための方法は2つあるのです
理想の姿の追求
原因が複雑な問題の
場合
本来の姿は?
あるべき姿に向かう
何かが起こっている
原因と結果が単純に
結びついている場合
原因の追究
原因を取り除く
なぜ起こった?
これまで、なぜこのことが問題に
ならなかったのでしょう
それは、時代的、社会的特徴と関
係することです
現状を分析するとは・・・・分析的対応策
現状
これまでの、さまざま
な要因の積み重ね
将来像
結果の当てはめ
分析
明日からも昨日までと同じようなことが起こる時代は対応できていた
現代では、現在の状況を分析した答えを、未来に当ては
めようとしても手遅れになります。
現代→「不確実の時代」「多様化の時代」
昨日までと同じことが明日から続くとは限らない
過去から学ぶ対策ではなく、将来像から現在を
見る視線が大切なのです。
現状
これまでの、さまざま
な要因の積み重ね
将来像
結果の当てはめ
検討
統合的な見方からの検討手順
現状を把握する場面と目的
1.その地域やその人のことをまったく知らない
ために、情報を集める必要がある。
初めて受け持った患者、初めて担当した地域
2.その地域やその人に起こっている現象の原
因を探すために、情報を集める。
食中毒の発生、痛みを訴える患者など
3.何らかの介入を行う際、その介入の効果を
測定するために事前に情報を収集する。
治療の開始時、集団健康教育、政策の実行など
なんのためにその情報が必要なのかを明確にしないと無駄
な情報を集めることになります 情報収集が目的ではない
ここで、人がものごとを分かる、理解するということを
考えてみましょう
スキーマ
私たちはさまざまな概念や事実、社会で
の役割、状況に対処する手続きなど、自分
の経験をもとに、新たな知識や概念、手続
きなどを自分のものにしていきます
過去の反応や過去の経験
が組織化されたもの
スキーマ
スキーマ理論
スキーマ理論
KAPモデル
・知識→態度→行動
・人間の行動を規定
するものはもっと複雑
なのではないか
・脅迫的行動には有
効かもしれない
認
知
心
理
学
の
発
達
・人は認識を構造化する
・人は意識の中に、もの
ごとを認識したり判断す
るための枠組みを持って
いる
・その枠組み=スキーマ
・スキーマが変化するよう
な働きかけ
スキーマ
経験
スキーマ
行動や態度
学習
つまり、人の行動は、それまでの自分の経
験や、学んだことからできあがった自分なりの
スキーマから出てきているのです。
どこで学ぶか: 学校、家庭、地域 、教室など
誰から学ぶか:テレビ 、友達、家族、専門家など
スキーマの特徴
聞き慣れない固有名詞や親しみのない細
かな点は記憶されない(選択)
自分のスキーマにあった情報には注意を向ける
スキーマがなければ、自分に感心があったり非
常に衝撃的だったりする部分は記憶に残っても、
細かいことは記憶に残らないし、何が大切な情報
なのかの選択ができません。
スキーマの特徴
新しい情報を受け入れる際に、自分の
スキーマにあうように、再構築して受け入
れる(解釈)
とくにこれまで持っていたスキーマと全く違う考
え方や方法に対して、本人が意識しているいな
いにかかわらず、いままで持っていたものと、つ
じつまを合わせようとする危険性があります。
話を1度聞いただけで意識改革や行動
の変容はできません
教室などを企画する場合、スキーマを
促すように、方法や内容を工夫したり、
単発ではなく教室の体系化を図ること
が大切です。
私たちの問題解決スキーマは
(
ア
セ
ス
メ
ン
ト
)
現
状
の
把
握
問
題
点
の
抽
出
解
決
策
の
決
定
解
決
策
の
実
施
評
価
という流れではないでしょうか
問題から出発する手順の問題をもう一点、
考えてみましょう。
問題の解決を図ろうとするときに、「問題は
なにか」から出発したり、「どうしたらいいか」
というところから出発することがあります。
そのような進め方では・・・
どうしたらいい?
ああすべき!
これが問題
何
が
問
題
か
?
こうすべき!
ああすべき!
あれも問題
こうすべき!
こんな問題
ああすべき!
こうすべき!
という進め方になることがよくあります
この進め方では、次のような会話になること
がよくあります。
えーっ?そうじゃないでしょ。
これこそ問題よ!
こういうことが問題だよね
「これからどうすべき?」という問いに対して
そんなことをしてどうするんだ。
こうすべきだ!
これについては、今後、
こうすべきだと思います
なぜ食い違うのでしょう
「問題」とは、そもそものあるべき姿
と現実とのギャップと定義しました
そもそもあるべき姿
現在の状況
ギャップ
そもそものあるべき姿が人によって違っていると、問題と思う
ことが違ったり、「どうすべきか」という提案も違ってきます
こうすべきよ!
こうですよ!
いまの状況
こうすべきだ!
こうしないと!
そうならないために・・・・
まず最初にするべきことは、話し合いに参加する
人たちが、「そもそもあるべき姿とはどうあること
なのか」ということを十分話し合い、共有すること
なのです。
つまり、いまの状況を見直した
り、これからどうすべきかを考え
る際に、まず最初に考えることは
「そもそものあるべき姿」「理想
の姿」「将来像」なのです。
目的とする状況やそれを実現するための条件は、
行政、住民、専門家、当事者などが知恵を出し合っ
て探し出していくことが重要です。
目的とする状況など
生活者としての
希望や期待など
多様な実体験
ぶ思
つい
かや
り知
合識
いな
とど
醸の
成
専門家としての知識
経験から得たもの
もし自分だったら
たくさんの情報
ここでまた一つ問題があります
目的の具体性、階層性ということです
まず、目的の階層性ということ
を考えてみましょう
個別のケースに対応するとき、
何らかの目的を達成するために、
いろいろな人が、いろいろな関
わりやケアをします。
地域の活動でも、生活習慣病
対策や高齢者対策、子育て支援
など、さまざまな分野の行政の
人たちや住民グループなどが、
それぞれの活動を進めます。
それを次のようなイメージで
表現してみます
各活動の目的
また別の活動
別の活動
個々のやり方の工夫に頭を痛めたりします
ある活動や事業
それぞれの事業の目的
がつながりを持つと強い
住民みんなが安
心して健康な生
活をおくれる町
健康づくり全体
安心して妊娠、出産、育児
の経過をたどれる町
高齢者やその家族が安心し
て健康な生活をおくれる町
高齢者
子育て
上位の目的
障害者
目的
ある事業
別の事業
また別の事業
それぞれの事業は全
体の目的を達成するた
めの手段のはずです。
住民みんなが安
心して健康な生
活をおくれる町
健康づくり全体
安心して妊娠、出産、育児
の経過をたどれる町
高齢者やその家族が安心し
て健康な生活をおくれる町
高齢者
子育て
上位の目的
障害者
目的
ある事業
別の事業
また別の事業
例えば糖尿病対策で考えると
すべての市民が安
心して健康な生活
をおくれるまち
糖尿病対策
糖尿病への移行を防ぎ、安
心して経過観察ができる
糖尿病にならない
悪化を防ぎ、安心
して療養できる
異常のない人
治療の必要な人
気持ちよく運動
ができる
経過観察の必要な人
手段
それぞれの事業や活動
All community
people live together
without any anxiety
これはエイズ対策
で考えた例です
ACT project
They can live
without any anxiety
They can live without
worry about infection
Un-infected
upper level
objective
Symptomatic PHA
objective
activity
asymptomatic PHA
activity
activity
計画を立てるということは
現在の活動の状況
理想の活動の様子
個別のケアでも、地域活動でも、
この三角構造を意識しておくこと
はとても大切なことなのです。
次に、目的の具体性ということで
す
目的や目標、目指す姿が抽象的な
表現になっていることがよくあります
ゆとりのある・・・・
生きがいのある・・・・
支え合い
ふれあい
自立した生活
周囲の理解
健やかな
自分らしい生き方
目的が抽象的に表現されている場合の問題点
抽象的な表現は、いろいろな意味を含んでいます
実際の生活場面に当てはめて考えたとき、
いろいろな場面をイメージすることができます
抽象的な表現のままでは、それに同意したそれぞれが自分
の持っているイメージで認識します
しかし、同じ言葉で表現されるため、他の人も同じことを考え
ていると思い込んでしまいます。
つまり、見せかけの共有が起こってしまうのです
この町では、みんなで支え合って暮らすことにしましょう!!
えーっ?それは少し違
うんじゃないの?
支え合うってこういう
ことだよね
行政で母親教室の目的を話し合います
でも、最終的には安心して
妊娠出産ができるということ
が大事なのよ
教室だから、仲間づく
りということも大切じゃな
いかしら
まず、母性意識の向
上が大事だよね
そうそう、そのためには妊娠
や出産について正しい知識を
持つことが大切よ
その会話を文章にするとこうなります
母親学級
妊娠、出産についての知識を深め、母性意識の向上を
図り、仲間づくりの場とし、安心して育児のできる地域を目
指す
リハビリ教室
脳卒中後遺症についての知識を深め、社会参加意識の
向上を図り、仲間づくりの場とし、障害を持っても安心して
生活できる地域を目指す
糖尿病教室
糖尿病についての知識を深め、自己管理意識の向上を
図り、仲間づくりの場とし、糖尿病を持っても安心して生活
できる地域を目指す
目的が抽象的
母性意識
社会参加
自己管理
安心して生活
○分かったつもりになりやすい
○本当はどういうことなのか分かっていない
○いい言葉なので、いいことのように思える
○達成度が測定できない=評価ができない
きれいな言葉は心地よく、安心するから要注意
「わかったつもり」状態
他人から、または後になってからの当人
からは、「実際はわかっていない」と判定さ
れる状態
けれども、当人からは「わかった」と意識さ
れている状態
わかったと意識を持つことが出きる
状態は1つではないために起こる
同一の対象に対して、複数の「わ
かった」状態がある
こちらは階層性が意識されていない例です
ある町の基本計画(5の基本指針)
「21世紀の豊かな暮らしを支える都市空間の創造」
「安全で快適な暮らしを支える快適環境の創造」
「明るく生きがいのある暮らしを支える健康・福祉の創造」
「個性を生かした豊かな心を育てる教育・文化の創造」
「明日の発展を支える産業の創造」
「明日の発展を支える産業の創造」
「商業の振興」
「経営の安定化と近代化を促進するた
め利子補給の拡大など融資制度の充
実に努めます」
「商店街が活性化のために実施する
共同事業などを支援します」
そこで、私たちの提言です!
達成すべき目的を、自分たちの地域で
の具体的な住民、当事者の暮らしの姿とし
て語ろう!
これが地域づくり型保健活動の第1段階です
山間のある町での、障害を持った老人の健康な生活

お年寄りが、自分の家の庭で、子どもたちと、
竹トンボや竹馬を作っている。

孫の運動会で、家族と一緒に応援している。

近所の友達の家で、友達と碁を打っている。

地区の旅行で、一緒に温泉に行く。
都会のある地域でのお母さんの子育ての姿
仕事の帰りに、友達とお茶でも飲んで、育児の
悩みや憂さ晴らしができる。
たまには夫と映画を見に行ける。
友達と、コンサートに行ける。
夜寝るときに、子どもに、気持ちよく本を読んで
やることができる。
公園で、近所のお母さんたちと、育児の悩みを
話し合う。
具体的な姿の抽象化
お年寄りが、自分の家の庭で、子どもたちと、竹ト
ンボや竹馬を作っている。
(世代を越えた地域での交流)
 孫の運動会で、家族と一緒に応援している。
(家族との交流、家で楽しく生活できる)
 近所の友達の家で、友達と碁を打っている。
(近隣との交流)
 地区の旅行で、一緒に温泉に行く。
(地域での交流、障害を持っても健常なときと同
じ生活ができる)

具体的な姿の抽象化
 仕事の帰りに、友達とお茶でも飲んで、育児の悩みを相
談したり 憂さ晴らしができる。
(母親がゆとりを持って育児ができる)
 たまには夫と映画を見に行ける。
(夫婦のゆとり)
 友達と、コンサートに行ける。
(自分らしい生活をしながら育児ができる)
 夜寝るときに、気持ちよく本を読んでやることができる。
(子どもと接する時間がある)
 公園で、近所のお母さんたちと、育児の悩みを話し合う。
(母親同士がお互いに育児を支援できる)
世田谷区北沢地区での例
子育て中のお母さんが友達とランチ。
 2~3才の子どもと小学生がどろんこ遊び


中学生が梅祭りで自分たちで音楽演奏をする

中学生が梅祭りの企画に参加する

杖を忘れて近くの公園でグランドゴルフ

障害を持った高齢者が友達とタウンホールで落
語を楽しむ
個別のケースで考えると
血糖のコントロールをしている人が
☆友達とレストランで楽しく食事ができる。
☆家族で、クリスマスパーティーをする
☆夫婦で気持ちよく近所の小道をランニングする
ある状況を実現するためには、
さまざまな条件が必要です!
実現すべき状況が見つかると、それを
実現するための条件を考えることができ
ます
さらに、それらの条件を自分たちの地域で実現する
ための、具体的な活動方法やさまざまな機関、団体、
あるいは行政の役割が見えてきます。
これが地域づくり型保健活動の第2段階です
「A」という状況を実現するためにはさまざまな条件が必要です
条件を満たすための政策や活動などが必要です
AAA
AA
A
A3
A1
A2
A1-1
A3-1
A2-1
A1-2
A3-2
A2-3
A2-2
A3-1-1
A1-1-1
A1-1-2
A2-1-1
A2-3-1
A3-1-1
A3-1-2
A1-2-1
A
B
A2-1-2
A2-2-1
C
A
D
E
F
B
C
E
自分らしい老後を送
ることができる
例えば・・・
二次的な病態を
持つ人が減る
早い時期から身体が動
かなくならない
血糖のコントロー
ルができる
ウォーキング大会
でいろんなコースを
設定する
夫婦で楽しくウォーキング
近所にウォーキ
ングする場を
知っている
本人が運動の大
切さを知っている
自分で探す
歩いている
人が誘う
誘うことを思
いつく
早い時期から体
力が落ちない
ウォーキングの
マップづくり
誘うといやがられ
ると思わない
家族が勧める
歩く楽しみを知る
きっかけがある
近所の人が暇そう
という目で見ない
近所の人が忙しく
ても運動をするこ
とが大切だという
ことを知っている
ウォーキング大会で、歩
く楽しさが分かるように
工夫をする
たとえ血糖のコントロー
ルをしていても楽しい
日々を送ることができる
血糖のコントロールを
している人が友達とレ
ストランで食事
自分の食べる量
がわかる
料理の種類と量
でだいたいのカ
ロリーがわかる
友達が無理
に進めない
自分にあった
摂取量がわ
かる
友達(地域の人)
が、地域には、自
分の食べる食事
のカロリーを気に
している人がいる
ことを知っている
レストランの人が、
料理のカロリーを
説明できる
レストランの人が
お客の中には、食
事のカロリーを気
にしている人がい
ることを知っている
目的とする状況やそれを実現する
ための条件を、行政、住民、専門家
が知恵を出し合って探し出していく
ステップが、地域づくり型保健活動
の中の参加的目的描写法なのです。
地域づくり型保健活動(SOJO-Model)とは
健康な(豊かな、健やかな)地域の実現、
ケースにとっての健康な(豊かな、健やかな)
暮らしの実現のために、関係者が到達目標を
理想とする健康なイメージとして具体化、共有
し、その実現に向けてそれぞれが役割を果た
す展開方法
地域づくり型保健活動(SOJO-Model)とは
どんな目的で用いる
健康な(豊かな、健やかな)地域
や暮らしを実現する、そのすべての
過程をとおして得られる、参加者や
関係者個人の能力や創造される仕組
みを獲得することが目的である。
地域づくり型保健活動(SOJO-Model)の手順
準
備
期
ファシリテータの育成
コミュニティとの調整
実現すべき理想の姿の仮設
活
動 理想実現に向けた条件や行動
方 の検討
針
検 行動や活動を中心とした検討
討
期
計画書、報告書の作成
活
動
期
参加型目標描写法(PGVM)
現状把握
(事前調査)
比較検討
展開方法、条件、
目標の再検討
条件充足に向けた行動の実施
理想実現や条件充足の状況把握
(事後調査)
新たな行動の展開
評
価
再
検
討
期
参加的目的描写法(PGV step)に
よるワークショップ
全体を見渡し、進め方をマネジメン
トするスーパーバイザーと、グルー
プ内での話し合いを促進させるファ
シリテータが必要です。
参加的目的描写法の手順
第1段階:実現すべき姿の箇条書(目的の例示)
第2段階:例示目的達成のための条件の検討
第3段階:事業や行動を中心にした検討
第3段階:役割行動表の作成
第4段階:事業計画、基本計画として文章化
スーパーバイザー
ファシリテータ
5~6人のグルー
プを作ります
スーパーバイザー
ファシリテータ
広い紙を準備します
それが記録用紙です
第1段階
実現すべき理想の姿の箇条書
お年寄りが、自分の家の庭で、子どもたちと、竹トン
ボや竹馬を作っている。
 孫の運動会で、家族と一緒に応援している。
 近所の友達の家で、友達と碁を打っている。
 友達と一緒に箱根温泉に行く。

参加者それぞれが、自分の考える健康な姿を、具体的
な生活の姿や行動の例で表現し、それを記録係が箇条
書にします。
障害があっても楽しい日を送ることができる
抽象化
上位目的
障害を持つ前と同じように家族と楽しく過ごす
家族と家族の
行事を楽しむ
孫の運動会で、家族と一緒に応援している
孫が誘う
孫が体が不自由でも外にでるこ
とは大切だと知っている
患者会で子供
と話し合う
校長が「あんな人が
来ている が何も起
こらなければいいが
…」と思わない
先生が体が不自由でも外にでること
は大切だと子供たちにいう
先生が体が不自由でも外にでること
は大切だということを知っている
先生たちの研修会で場を設定で
きないか、教育委員会と相談する
校門の前の急な坂
で、通りがかった人
が車椅子を押す
通りがかりの人
が車椅子の扱い
方を知っている
広報に車椅
子の扱い方
を載せる
健康福祉まつり
で車椅子体験
コーナーを開く
地域づくり型保健活動では、進め方も大切ですが、基
本的な考え方と発想の転換がとても重要です。
問題解決の思考枠組み
分析思考から統合思考へ
健康のとらえ方
疾病との対比概念から生き方としての健康へ
住民、当事者と行政、専門家との関係
出席、相談型の参加から協働型の参加へ
目的を具体的に考える
専門用語から生活のイメージへ
もちろん進めていく過程で、発想は転換するものです。
実践してみないと本当のところ
は分からないのが地域づくり型保
健活動の特徴ですので、説明を
聞いただけですべてを理解しよう
としないでください。
私は、なぜこんなことを考えたのか
私も保健所で仕事をしていた頃は・・
病気にならないことが大切です
痴呆にならないようにしましょう
身体が不自由にならないように
運動しましょう、食事に気をつけましょう
休養をちゃんととりましょう、健診を受けましょう
そして、ふと感じたことは・・・・
がんばる人はがんばるけど、そうも出来ない人も・・・・
がんばっても病気になる人もいる・・・・
がんばらなくても元気で長生きする人も・・・・
そもそも健康づくりとは何を作るのだろう?!
そもそも健康って、なんでしょう?
病気にならないこと?
そういうときに、神経難病の患者さんたちと出
会いました。
とても大変な病気を持ちながら一生懸命生き
ようとしている姿でした。
うーん? これって健康なのでは?
そんな視点で自分たちの地域をみてみると・・・
私たちの地域にはいろんな人が暮らしてることに気
づきます
病気や障害もなく、生き生き暮らしている人
ちょっとした病気やけがなどで療養している人
治ることが難しい病気や障害を持って暮らしている人
生まれつきの病気や障害を持っている人
病気があっても元気な人
検査値が異常でも元気で長生きしている人
すべての検査値が正常でも愁訴を訴える人
同じような体の状態で、生き生き暮らしている人、そう
でもない人
そんな私たちの町の健康づくりって何なのでしょう
私たちの地域にはいろんな人が暮らしています
自分の健康問題を何とかしたいと思っている人
健康問題に気づいてはいるが、気づかない振りをしようとしている人
問題だとは思っているが、気づきたくないと思っている人
問題だともなんとも思っていない人
とても関心が高く、たくさんの活動に関わっている人
誘えば参加する人
関心はありそうだが誘っても参加しない人
関心のない人
関心を持とうとしない人
知らないので関心の持ちようのない人
そんなことを考えてきて、私たちは健康づくりの目的とし
ての健康を分けて考えることに気づきました
健康づくりの目的としての健康
病気かどうかという意味の健康
病気があるかどうかが重要なことになる
生き方としての健康
自分の状態をどう捉えて、どう生きるかが重要なことになる
目指すべき健康のベクトル
目指すべき健康な生き方
それぞれの状態での
健康を目指す方向
非常に
よい状態
よくなる方向を目指す
治療や医学の研究
非常に
悪い状態
死
そう考えると「健康づくり」とは
住民一人一人が、自分なりの「目指すべき健康な生き
方」をもって、それを実現することができるようになること
自分の身体の状態を
知って、必要な行動を
とることができる
自分なりの健康な
生き方を自分で考
えることができる
専門家の支援
家族や近隣の理解と支援
さまざまな制度や社会のしくみ
地域の健康づくりでは
地域の人たちが、自分たちなりの「目指すべき健康な生き
方」をもって、それを実現することができるようになること
自分たちの地域の状
態を知って、必要な行
動をとることができる
自分たちなりの健康な
生き方を自分たちで
考えることができる
専門家の支援
家族や近隣の理解と支援
さまざまな制度や社会のしくみ
生き方としての健康とは(蘇陽町で考えたこと)
1.病気や障害、悩みなどがなく、社会的にも適応した
生活を送ることができる。
2.病気や障害、悩みなどがあっても、自分でその状態
に対応しながら、適応した生活を送ることができる。
3.病気や障害、悩みなどがあって、自分で対応できなく
ても、周囲の支えを得て適応した生活を送ることができる。
◎どの段階にあっても、自分の役割や生きがいを持ち、
自分だけでなく周囲の人もよりよい生活を送ることが
できるように、環境に対して働きかけることができる。
そんな暮らしのできるまちをつくる => 健康なまちづくり
では、具体的な健康な暮らしの姿とは・・・・
例えば、寝たきりになっても、花見に行きたい
なと思う、そういう気持ちを持ち続ける
そういう気持ちさえあれば、健康な生き方ということにしよう
そこで「健康な暮らしのできる町」とは
例えば、寝たきりになっても、安心して、楽しく花
見に行くことができる。
そのような私たちの町を実現するためには・・・
寝たきりになっても、安心して、楽しく花見に行くことができ
るためには・・・・。
本人
家族
近隣・親戚など
共同社会
教
育
医
療
福
祉
保
健
健康な暮らしを実現するための地域のしくみ
保健所での仕事の意義は!!
寝
た
き
り
に
な
っ
て
も
気
軽
に
花
見
に
行
け
る
町
健
康
な
暮
ら
し
の
で
き
る
ま
ち
の
実
現
家庭訪問
本人
介護教室
家族
リハ教室
近隣・親戚など
共同社会
住民組織
健診
医
療
福
祉
家族会
地域の健康づくり
寝
た
き
り
に
な
っ
て
も
気
軽
に
花
見
に
行
け
る
町
健
康
な
暮
ら
し
の
で
き
る
ま
ち
の
実
現
自分の地域に仕組みを創造する
その過程でそれぞれの役割を!
町
本人
推進員
家族
医療機関
近隣・親戚など
共同社会
福祉施設
各専門職
医
療
福
祉
住民
本人
家族
近隣・親戚など
共同社会
教
育
医
療
福
祉
保
健
これは、高齢者のことだけではないのでは・・・
そうか、健康づくりとは「しくみづくり」「地域づくり」なんだ!!
運動の必要な勤めに出ている人が自分の好
きな運動が継続できるために・・・・
子育て中のお母さんが自分の楽しみを続けな
がら子育てできるために・・・
お酒をやめようと思った
人が、それを継続できる
ために・・・
いずれにしても、地域に
しくみが整わないと不可
能なのでは?
本人
家族
近隣・親戚など
共同社会
教
育
医
療
福
祉
保
健
日本:大越町、板倉町、雄和町
→身体に障害を持った高齢者
日本:柏崎市→糖尿病の住民
日本:八千代市→小さい子供を持った母親
日本:御荘町→精神障害者
日本:三本木町→身体障害、知能障害の子供
タイ:パヤオ→HIV感染者
中国:甘粛省→予防接種の接種率向上
これらの地域でのワークショップを通して得られた
これらの対象者が健やかに暮らすための地域の仕組み
健康な暮らしを実現するための地域のしくみ
環境
個人
本人
家族
家族
近隣・親戚など
共同社会
教
育
近隣
・個人の力
・コミュニティ
の結びつき
・行政制度
医
療
福
祉
保
健
・社会システム
地域で、必要な仕組みを考えつくるプロセス
地域保健活動の構造
子育て
障害児対策
生活習慣
難病
対策
寝たきり老人対策
実現すべき
健康づくりの核
認知症対策
身体障害
者対策
精神障害対策
事業や業務がバラバラに行われている
難病対策
一つの事業、あるいは業務を入り口と
して核の形成を目指す
一つの切り口
実現すべき
健康づくりの核
さて、次のような意見が出てくることがあります
障害を持っている人がそんな生活が出来るわけが
ないでしょう。もっと大変なんですよ。
起こった問題への対応と問題が生じないための仕組みづくり
話し合うべき課題は多いのにそんな夢のようなこと
ばかり話し合ってていいのか
家の設計図の話し合いと問題箇所改修のための話し合い
もし身体が不自由になったときなんて、暗い話はした
くない。そうならないようにすることが大切ではないか。
「もしなったら」ではなく「たとえそうなっても・・・」
自分たちのまちの
自分たちの健康を
自分たちで考えてみませんか
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