経済学研究 「日本の財務再構築」連載
第三回: 事業法人セクターの問題点と解決の選択肢
九州大学経済学研究院 産業マネジメント専攻教授
村藤 功
2005年 12月28日
目次
3-1. 企業財務の基本BS
3-2. ストックとフローの対応関係
3-3. 企業価値推移
3-4. 資本構成推移
3-5. 所得支出勘定推移
3-6. 資本調達勘定推移
3-7. 事業リターンと金利推移
3-8. 土地株価格と自己資本への影響
3-9. 財務再構築の方向性
3-10.財務再構築のアプローチ
3-11.事業ポートフォリオの時価評価と債務の株式化
3-12.東アジアの成長への参画
3-13.財政投融資と公営事業
3-14.連結国土交通省と箱モノの民営化
3-15.道路公団の民営化
3-1.企業財務の基本BSと企業価値の定義
通常のBS
現預金
金融資産
①
有利子負債
金融資産
営業負債
現預金
有利子負債
②
① 投融資
営業負債
営業資産
自己資本
企業財務の基本BS
BSの組替え
営業資産
自己資本
組替え手順
① 現預金を資産サイドから負債サイドに移す
② 営業資産と営業負債をネットし、純営業資
産とする
企
業
価
値
事
業
価
値
③ 純有利子
負債
② 純営業資産
④ 自己資本
①投融資:金融資産-現預金
②純営業資産:営業資産と営業負債のネット
③純有利子負債:有利子負債-現預金
・ 事業価値:純営業資産
・ 企業価値:事業価値+投融資
3-2.ストックとフローの対応関係
企
業
価
値
投融資
事
業
価
値
純営業資産
企業価値(投融資と純営業資産)に
対応するリターン
EBIT(Earnings Before Interest,Taxes)
⇒営業部分(純営業資産)と投融資を合わ
せた企業活動全体のリターンを、営業
部分に対しては営業利益、投融資に対
しては営業外収益として計る
純有利子負債
自己資本
PL
営業利益
事業価値(純営業資産)に
対応するリターン
売上~営業利益、営業CF、FCF
+ 営業外収益(≒投融資収益)
- 営業外費用(=金利)
経常利益
+ 特別損益
税引前利益
- 税金
当期利益
営業CF=
営業利益+減価償却費
営業FCF=
税引後営業利益+減価償却費
-運転資本増加-設備投資額
3-3. 企業価値推移
企業価値推移
700
600
500
400
300
200
100
0
1986
1988
1990
投融資合計
1992
1994
運転資本合計
1996
固定資産
1998
2000
有形非生産資産合計
2002
3-4.資本構成推移
資本構成推移
800
700
600
500
兆円 400
300
200
100
0
1986
1988
借入
1990
1992
株式以外の証券負債
1994
1996
発行株式・出資金
1998
2000
正味資産
2002
3-5.所得支出勘定推移
事業会社の所得支出勘定推移
80
60
40
20
兆円
0
-20
-40
-60
-80
1986
1987
1988
1989
1990
1991
営業所得合計
1992
1993
財産所得合計
1994
1995
財産支出合計
1996
1997
1998
経常移転純支払
1999
貯蓄
2000
2001
2002
2003
3ー6.資本調達勘定推移
事業会社のキャッシュフロー
80
60
40
20
0
兆円
-20
-40
-60
-80
-100
-120
1986
1987
1988
1989
貯蓄+固定資産減耗
1990
1991
純受取資本移転
1992
1993
1994
純営業資産投資合計
1995
1996
投融資純増合計
1997
1998
1999
純有利子負債純増合計
2000
2001
自己資本増加合計
2002
2003
3-7.事業リターンと金利推移
事業リターンと金利推移
8.0%
6.0%
4.0%
2.0%
0.0%
1986
1987
1988
1989
1990
1991
事業リターン
1992
1993
1994
1995
有利子金融資産リターン
1996
1997
1998
1999
利子支出/有利子負債
2000
2001
2002
2003
3-8.土地株価格と自己資本への影響
土地株価格の変動と自己資本への影響
200
150
100
50
兆円
0
-50
-100
-150
1986
1988
賃貸料収入
株式評価損益
1990
1992
1994
土地の評価損益
経常純利益
1996
1998
2000
2002
配当収入
正味資産評価損益
3-9.企業財務再構築の方向性
現状
中期計画
予算
株価: xx円 (2005/3/31) 格付け: R&Iでxx
負債比率: xx%(連結)
ムーディーズでxx
株価:
xx円 (2006/3/31)
負債比率:xx%
格付け: R&Iでxx
投融資
経営理念の変化
純有利子負債
事業価値
自己資本
株価: xx円 (2008/3/31)
負債比率: xx% 格付け:ムーディーズでxx
構造改革
開示
1.親会社/法人別経営
連結経営
2.原価主義/実現主義
時価主義
3.協調/共同決定主義
自己責任の原則
4.家族主義経営
投資家重視経営
投融資
純有利子負債
事業価値
自己資本
方法論
純有利子負債
必要投融資
その他
子会社甲
親会社
負債
資本
負債
XXXXXX
資本
負債
XXXXXX
必要投融資
事業ポートフォリオ
の最適化
負債
事業価値
の最適化
不要投融資
遊休不動産
資本
事業運営の効率化
投資家
重視経営
資本
投融資の最適化
金融部分
の最適化
最適資本構成の実現
その他
資本
B連結
事業部
A連結
事業部
純有利子
負債
純有利子
資本
負債
XXXXXX
資本
純有利子
XXXXXX
負債
資本
3-10.企業財務再構築のフレームワーク
問題意識
実行テーマ(例)
将来のビジョンと戦略は?何
がコア事業か?コア事業でど
う生き延びるか?事業価値全
体にマイナス効果を及ぼして
いる事業をどうするか?
・
・
・
・
・
連結事業部経営
事業の統合
戦略提携
事業の売却・閉鎖
中国の内包化
各事業の
事業運営の効率化
既存事業の運営方法の最適
化、効率化によってコストを
下げ、売上を上げる方法はな
いか?
・
・
・
・
・
BPR
SSC/アウトソーシング
Eコマース
サプライチェーンマネジメント
年功型廃止、成果型人事制度導入
不要な投融資
の処分
リスクに見合ったリターンを生
んでいない資産を抱え込んで
いないか?
・ 持合い株式処分
・ 不要な融資処分
・ 遊休不動産売却
グループ全体だけでなく連結
事業別にも見る。事業に応じ
た平均資本コストを最小にす
る資本構成は?格付け向上
のためには負債比率をどの
程度に維持するか?
・
・
・
・
・
事業ポートフォリオ
の最適化
事業価値の向上
投資家
重視経営
金融部分の最適化
資本構成の最適化
社内自己資本制度の導入
社内貸付制度の最適化
自己資本充実施策の実行
優先株、トラッキング・ストック
プロジェクト・ファイナンス
3-11.債務の株式化のメカニズム
DEC前
DEC後
純有利子負債
企業価値
Net Debt 1
=
投融資
+純営業資産
企業価値
有利子負債借り換え後
純有利子負債
純有利子負債
Net Debt
Net Debt
D増加分
Debt 2
企業価値
Equity 2
Equity 1
Equity
Equity 1
増加分
Debt 2
Equity 2
D増加分
= 信用リスク改善による有利子負債の時価増加
E増加分
= WACC減少による、企業価値増加分 + 企業正常化による収益機会の獲得
E増加分
3-12.中国の成長への参画
中国市場の
研究
中国用の
製品開発
中国の原材料
人による製造
中国国内の
販売・流通
中国人へ
のサービス
差別化戦略
大規模/低コスト戦
略
一部しか持って
帰らない
日本や欧米のニーズ
とはちょっと違う
日本国内の
販売・流通
日本人へ
のサービス
3-13.財政投融資と公営事業
内閣
経済産業省
石 油公団
中小企業 金融 公庫
商工 組合中央金庫
日本貿易 振 興 会
電源 開発株式会社
備蓄勘定は一般政府セクター
一般勘定は金融機関セクター
国土交通 省
道路局
住宅局
道 路 公団
住 宅金融 公庫
首都高速道 路 公団
都市基盤 整備公団
阪神高速道 路 公団
本州 四国連 絡橋 公団
赤が事業法人セクター
青が金融セクター
3-14.連結国土交通省と箱モノの民営化
資産:126兆円(公共用財産124兆)
負債:1兆円+182兆=183兆
資産超過:125兆-182兆=-57兆
一般会計
特別会計
道路整備、空港整備、港湾整備
自動車損害賠償保証事業、自動車検査登録
都市開発資金融通、治水
特別会計
一般会計と特別会計の合算
資産:
138兆円
負債:
5兆-182兆=187兆
資産超過: 133兆-182兆=-49兆
連結対象特殊法人
道路公団、首都高、阪神高速、本四連絡橋
都市基盤整備公団、住宅公庫
新東京国際空港公団
独立行政法人 土木研究所、建築研究所等
連結
資産:
281兆円
負債:
138兆円
資産超過: 143兆円
公債が182兆円配分されれば、39兆円の債務超過
3-15.道路公団の民営化
東日本高速道路株式会社
中日本高速道路株式会社
西日本高速道路株式会社
首都高速道路株式会社
阪神高速道路株式会社
本州四国連絡高速道路会社
評価
国土交通 省
建設を判断できるが建設しない理由はあまりない
民営化会社
管轄
保有・債務
返済機構
6社
金融市場
道路建設・管理・
料金徴収
ユーザー
通行料金は45年後に無料、
道路資産は道路管理者に
帰属させる。
有利子負債
正味資産
正味資産
道路局
リース料:採算性が悪い路線は低いリース料を想定
銀行
道路サービス
現在約40兆円の借金。
4%の金利を前提に
45年で返済
機構解散時に税金を投入しないと解決不能
になりうる。
保有
整備計画9,342キロの残り2,000キロのうち、143
キロを見直し、ほとんどは建設する予定。このう
ち700キロを国と地方が税金で建設する「新直
轄方式」とし、残り区間の扱いは新会社が判断
する。
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3-2. - 九州大学